人妻玲子 調教の軌跡(天使の接吻)
監督:常本琢招 脚本:井川耕一郎
出演:橘未希/勝野健二/多比良健/今泉浩一/吉宮君子/野上正義
原作:小菅薫(フランス書院文庫) 撮影:福沢正典 照明:赤津淳一 音楽:村山竜二 助監督: 久万真路、黒川幸則
製作:ピンクパイナップル 製作協力:フィルムキッズ プロデューサー:千葉好二
(1995年)70分
OV(オリジナルビデオ)のメーカー・ピンクパイナップルが官能小説を映像化する、「フランス書院文庫シリーズ」の第一弾として制作された。
夫と義父、家政婦と暮らす若妻の玲子は、なくした結婚指輪のありかを知るという謎の男からの電話を受け、
さまざまな体験を重ねるうち、自分の中にある被虐の血に目覚めてゆく…
そんなストーリーの原作の映像化にあたり、「ロマンポルノを復活させるからね」との殺し文句で
シナリオを依頼したプロデューサー・千葉好二の求めに応じた井川が、
原作をいかに解体し、井川的世界に落とし込んでいったかについては、井川自身による以下の文章に詳しい。
↓
https://inazuma2006.hatenadiary.org/entry/20070526/p2
井川と監督の常本は、計四本のOVでタッグを組んだ。
前作『成田アキラのテレクラ稼業』のコメディータッチから一転、崩壊する若妻を濃密な感触で描く本作のシナリオを一読した常本は、
「昏い興奮を覚え」勇躍準備にとりかかったというが、キャスティングは難航を極めた。
井川の文章にもある通り、シナリオがケタ外れのハードな内容と受け取られたのが主な理由だが、
撮影ギリギリになって、演技経験が全くなかった橘未稀に決定。透明感のある橘の起用は、結果的に大きなプラスになった。
井川は、監督常本の要望に応え、常本がクランクイン前に必ず行うリハーサルや、現場にも参加。
リハーサルでは常本とともに橘に演技指導を行い、現場では、常本の求めに応えシナリオの改訂作業も行ったという。
井川には、若い女性が精神的崩壊に陥っていく様子を、濃密に、つぶさに、描いていく一連のシナリオが存在する。
本作『人妻玲子 調教の奇跡』、『黒い下着の女教師』(96年。監督常本琢招)、『赤猫』(04年。監督大工原正樹)
などだが、井川のシナリオの中でも特に完成度の高い作品が集中するこのジャンルの執筆が、
その後、途絶したままになってしまったのは残念と言うほかない。
(常本琢招)