2025.0801 金
今年の2月のこと、米国コルゲート大学の教員で今はハーバード大学に客員研究員として滞在しているアニさんという人から連絡があり、habakari-cinema+recordsの今泉浩一作品についてインタビューをしたいということで、ただ彼は日本語ができないため同じくハーバードのアレックスとキシさんという共通の友人を交えてzoomで複数回のインタビューを受けたのでしたが、6月になってそのアレックスからイマイズミコーイチに連絡があり、「8月に同志社大学で学会を開催する予定で、アニさんの論文発表もあります。また関係者限定で『伯林漂流』の上映もしたいのですが、申し訳ないながら監督をお呼びする予算がないのでzoomで上映後のQ&Aをお願いできませんでしょうか」と言われたイマイズミコーイチは「オンラインQ&Aというのはパンデミック期の台湾クィア映画祭で経験したけれど、聞いている人の反応が全くわからなくてあれほど悲しいものはなかった。予算がなければ大学の片隅で寝るのでもいいので現地に行きたいです」と返事をしたらしく、しばらくして「あれ?イワサくんにはCCされてなかった?」などと寝ぼけた事を言われて自分が加わった7月頭の時点では話自体が10日ほど止まっており、慌てた自分がアレックスと連絡を取り合い、アレックスも忙しいだろうにこちらの無理を聞いてくれて「夜行バス利用なら2人分の交通費と1泊分の宿泊が出せそうです。学会は8月1日〜3日なのですが、もし2泊したいなら2泊目はそちらで取っていただくことになりますが」ということで先方が選んで予約してくれた京都のホテルに電話を架け、こういう事情で1泊目と2泊目の予約が分かれてしまうのだが泊まる人間は同じなので、1日ごとにチェックアウトするのではなく連泊扱いにできますか、と聞くと「同タイプの部屋であれば予約を連結できます」という確約を得たので1部屋しか残っていなかった同タイプの部屋を…あれ金曜と土曜だと値段が5,000円くらい違う、ので自腹分の2泊目はずいぶん高くなってしまって逆だったら良かったなあ、とかセコい事を考えつつ予約してからホテルにまた電話し、同時進行で上映をする出町座に映画のファイルを送ったりして一週間くらい前に何とか形が付いて、やっと予定が決まったので京都の友人にもお知らせをすることができて、しかしここ連日暑いね、京都も「手加減なしの猛暑」と言われてビビりつつ荷造りしてでかいバックパックに着替えなどを詰め込む。

サイタマシントシン
出発は7月31日の夜、同じ夜行バスだけど自分はさいたま新都心から、イマイズミコーイチは新宿から乗る。上野東京ラインは(湘南新宿ラインもだが)しょっちゅう遅延するので用心して早めの電車で来たら集合時刻の30分前に着いてしまい、22時ともなると開いている店もほとんどないので生ぬるい屋外で時間を過ごす。理由は判らないが蚊が寄って来ないのがせめてもである。ここが始発なので集合時刻前から待機しているのかと思いきや遅れてやってきた(どうして…)バスに乗り込み、3列シートフルリクライニングという触れ込みだけどかなり無理矢理にシートを詰め込んでいるので通路の狭い車内を進み、自分は窓側の席だったので四苦八苦しながら荷物と身体を所定の位置に押し込む。数十分走って新宿、イマイズミコーイチが乗ってきて隣の席に座った。席を倒して横になるが、京都は終点じゃないので熟睡してしまって寝過ごしては元も子もないので寝たり起きたりの繰り返し、念のためイヤホンを着けておくとスマートフォン本体は鳴らずにイヤホンでだけ聞こえるアラームをセットしてましたが、到着予定時刻の30分前には目が覚めていて無事に下車して京都は午前7時、既に空気があったかい。降車地点の目の前にあるこのバス会社のラウンジは、搭乗者なら到着から午前10時まで無料で滞在可能だそうなのだけど既に人でいっぱいなので落ち着けず、トイレに入ってちょっと休憩してから出ることにした。「モーニングを出してる喫茶店に行きたい」と少し前に名古屋に行って彼の地のモーニング文化にいたく感銘を受けたらしいイマイズミコーイチは言うのだが、果たして京都にもそんなようなモーニングを出してる喫茶店はあるのでしょうか。ラウンジは京都駅の近くなので駅ビルの地下に入ってみるが空いているのはスターバックスくらいしかなく、検索すると駅から少し歩くと「喫茶みわく」というのが空いているようなので行ってみると店内喫煙可、モーニングメニューありということでそこにする。流石に名古屋みたいなモーニングではないけどトーストとサラダとゆで卵に紅茶が付いて500円くらいなので大変良心的。店内は冷房が効いているので羽織る用の長袖を持ってきて良かったと思ったことでした。
ただしモーニングは一食分とするにはやや少なく、イマイズミコーイチはもう1セット注文するというワイルドな方法で解決していましたが自分はもう少し小市民的に、店を出てからコンビニエンスストアでおむすびとか買って食べ足しました。それにしても暑い。ホテルのチェックインは15時なのでそれまではどこかで過ごさないといけないが、事前に決めていた案は9時半にオープンする京都国立博物館に行ってできるだけダラダラ滞在する、というものでした。京都駅からはバスが…しこたま出ているが博物館最寄りまで行く路線の乗り場には長蛇の列、なのだけれど止まっているバスの前で係の人が「博物館行き〜」と呼び声をかけているのに反応する人はほとんどいなくて、これ何の列なんだろうと確認する暇もなく自分らは小走りで車に乗り込んで、ガラガラ。5つくらい乗って三十三間堂の前に止まり、博物館の敷地内に入る。重要文化財の旧本館は閉まっていて外観だけ、展示がある新館は涼しいのでいきなり休憩する。今は特別展もなく平常展示のみで、人もそんなに詰めかけていないためちょっと観ては座り、休みながら観て…と2人してだらけている。ここは東博みたいにあれもこれもという感じの展示では無いし、見せ方も余裕があってゆったりしているので疲れない(疲れているのは元々)。自分は初めて観た「土馬」をえらく気に入り飽きもせずに眺めていた。博物館にはWi-Fiがあって繋いでみる。先に京都に来ているキシさんが「着きましたか?体調は大丈夫ですか?」とメッセージをくれていた。いま博物館です、と返事をすると「冷たい飲み物を持って博物館まで迎えに行きますよ」とまで言ってくれるのだがそれは悪いので、では13時にホテルで合流して先に荷物を預けてからチェックインまでお茶でもしましょう、ということにして更にしばらく博物館を観て回ってからまたバスに乗って丸太町へ、バス停を降りてイマイズミコーイチがPASMOにチャージしたいと言うのでセブンイレブンに寄ってからホテルに向かう。地下鉄駅が見えてきてたので一番近い入り口を覚える。ホテルは駅からすぐ近くなので、この暑い中をあまり歩かなくていいのは助かる。ホテルのロビーで待っていてくれたキシさんとは去年の7月に東京で会って以来2回目。ロビーにバックパックを預けてショルダーだけになり、近くのガストに入る。

京都国立博物館の「ラウンジ」。眺めはいいけどあんまり涼しくない
昼ごはん、という感じでもないのでそれぞれが甘いものやらドリンクバーやら中途半端なものを頼んで、自分は大量のフライドポテトとドリンクバーに白ワインという更にダメな感じのオーダーを通し、チームハバカリはキシさんと話し込む。キシさんは京都のパートナーさんの家に滞在しているそうで、この学会が終わってもしばらくは日本にいるけど米国に帰るのがねえ、正直なところ何が起きるか判らないので念のためエアカナダに乗ってカナダを経由して、そこで米国の入国審査を通ってから帰国という安全策を取ることにした、と言っていた。2時間はあっという間に過ぎてチェックイン時間になったのでホテルに戻り、「本日1泊ですね」と言われたのでええと面倒なことなのですが2泊なんです、2泊目の予約も同じ名前で入れているので連泊にしてください、とお願いする。キシさんにはロビーで待っていただいて向かった部屋は最上階の7階で、シングルベッドが2つにソファーベッドが1つ。バスタブはなくてシャワーブースだけど寝るだけなので充分である。顔を洗って着替えてから素早く階下に戻り、タクシーを拾って出町座に向かう。暑くなければ京都御所を斜めに横断して歩いて行ってもいいかもしれないくらいの距離ではあるがこの気温では無理。やってきた出町桝形商店街はアーケードのせいか自分は吉祥寺を思い出しましたがともかく今日の16時半からここで上映がある。出町座の前に屯しているとやがてカオルさんがやってきた。音楽家でDJの彼とはもう20年以上のお付き合いになるけど実際に会うのは結構久しぶりで、最後に会ったのは新宿で開催されたクラブパーティーで来ていた時かもしれない。今回の京都滞在では3日に会う約束をしていたのだけど今日も会えるよ、と言ってくれたので映画を観てもらうべくお呼びしたのでした。キシさんは「メトロでは何度もお見かけして一方的に存じ上げておりました」とか言ってるが「お二人(自分とカオルさん)似てませんか」と続けるので自分らは顔を見合わせて、まあカテゴリーとしては同じ珍獣枠ですから、とへなへな笑う。そしてアレックスとアニさんがやってきた。まさか今年中に会えるとは思っていなかったアニさんは思ったより小柄な人で、自分が暑いでしょう、と言うと「僕はインド出身なんでこれくらいは大丈夫」と言っていた。
出町座の建物内に入り、上映ファイルのやりとりをしていたTさんと話をして「1箇所だけノイズが入ってましたが他は大丈夫です」と言われる(気づいてなかった…。)今回の学会をアレックスと共催している菅野先生とは面識はないのだけど、カオルさんが紹介してくれてご挨拶する。自分は埼玉の自宅近くの店で5つ買った小分けの五家宝(五嘉寳)を今日会った人に五月雨式に渡していて、菅野先生に差し上げたらお仕舞いなのだが自分がショルダーバッグから次々ときな粉まみれの菓子を出している様は「ドラえもんみたい」と言われておったそうな。おおこの劇場では『罪人たち』は本日公開なのか、とか言ってるうちに時間になったので地下のシアターに移動し、おそらく映画館では最初で最後となる『伯林漂流』の上映が始まる。自分(とイマイズミコーイチ)は舞台下手の最前列に座ったために左のスピーカーの真ん前になってしまい、音がちゃんと出ているのかそうでもないのかの判断がつかなくて困ったが、それは仕方がないので諦める。上映自体は問題なく終わり、Q&Aは3階に場所を移して行うという。自分はその前にトイレに寄ったのだったが、放尿を終えて入室したらQ&Aがすでに始まっており、引きつった笑顔のまま壇上の、というか壇になってないけど空いている椅子に腰かける。司会進行兼通訳はアレックスで、出る質問は主にイマイズミコーイチに向けたものがほとんどであるので、自分はたまに補足したりするだけでしたが、この作品を作ってもう8年くらい経つんだなあ、というのは最中にふと実感したりしました。Q&Aの最中に友人でアニさんより前に今泉浩一(と橋口亮輔)作品で博士論文を書いた神戸大のアルノーが入ってくるのが見えた。映画祭とはまたちょっと違うけど、普段になく色んな人と一度に会えるのが何だか面白くなってきた。

キューアンドエー
本日の、というか今回の出張で我々に求められていたことを全て終え、夕飯は学会参加者が集って近くの沖縄料理店。Q&A後も残ってくれていたカオルさんも誘って一緒に飯を食い、初めての皆さんともたくさん話をして、あとアルノーとアニさんを紹介したりなどで時間は過ぎていき、会計が終わっても時間に余裕がある人はまだ店に残っていて大丈夫、ということで最後まで話し込んで(残った食事を全て平らげ)、店を出て歩きながらカオルさんに「夜の京都御所に入ってはいけない」「川に行ってはいけない」などの注意点を伺いながら今出川の駅まで送っていただき、ありがとうございましたでは明後日に、と別れて今回初めて地下鉄に乗る。自分のPASMOはオートチャージ機能が付いているので一定額を下回ったら一体になっているクレジットカードから自分が設定した額がチャージされるようになっているのだけど、京都の地下鉄では乗車は問題なかったけどチャージはされなかったので、着いた駅の券売機で現金でチャージをする。地下鉄・バス1日券を買った方がいいのかなとも思ったけれど、おそらくそれほどの回数を移動しない(多分ホテルと大学の往復くらい)と思って止めておく。ホテルに戻って鼻うがいをしてからシャワーを浴び(大変よくお湯が出ます)、横になったらあっという間に寝入ってしまった。
2025.0802 土
今日はアニさんの学会発表が9時台の回であるので早起きして、ホテルは朝食を付けていないプランなのでそのまま出かけるが、昨晩けっこう食べたせいなのかあんまり腹は減っていない。それでもイマイズミコーイチは丸太町駅構内にあるデイリーヤマザキでメロンパンとか買っている。地下鉄烏丸線で一駅乗って今出川駅、同志社大学の今出川キャンパスはほぼ駅直結と言っていいが、学会会場である烏丸キャンパスは駅を出てさらに少し北に行かないといけない。「旨辛チゲ風親子丼」という暑さに頭をやられたとしか思えないメニューを大プッシュしている「なか卯」の前を通り過ぎ、烏丸キャンパスの前に着いたところで喉が渇いた自分は、道を渡った反対側にファミリーマートが見えたので入ってお茶などを買った。戻るとき眼の前に「上御霊前交番」というのが出現して、これは何と読むんだろう、「ごれいぜん」じゃ香典袋だし…とどうでもいいことを考えながら校舎に入り、案内板に従って入り口近くの教室に入ると既にけっこう人が居る。アレックスも前方の席で何やらセッティングしている。自分らは右手真ん中より後ろの方の席に座る。イマイズミコーイチが「あのね、昨日の夕食会の時までアルノーがいるの判ってなくて、本人に言われて気がついたんだけど、いつ来たの?」と大変ボケたことを言い出すが、まあアルノーも会う度にメガネがあったりなかったりヒゲがあったりなかったりするというのはある。とか言っていたら当人がやって来たのでおはよう、聞くと神戸から京都に毎日通っているそうで(その方が安いから)大変そうである。時間になったので発表が始まった。90分の枠の中で4人が発表をして、最後にまとめて質疑応答があるとのこと。発表はほぼ英語で、イマイズミコーイチは横で「何となくでいいから訳して」と囁くのだが、やはり論文のような英語は人に説明できるほど理解できない。特に判らない単語が一つ出てきただけで躓いてしまって全体の主旨が取れなくなる、だもんでアニさんの発表内容もスライドの画像から何となく推察するのみである。対して日本語で発表してくれた名古屋大学の徐さんという方のテーマは大変興味深かった。
最初の回が終わり、ギリギリで来たので話ができてなかったキシさんに昨日小銭が足りなくて精算できてなかったタクシー代の残りを払い、キシさんは「これどうぞ」と出町ふたばの豆餅とよもぎ餅をくれた。「まだ頭が働いてないのもあるんですけど、(発表は)あんまり理解できなかったところもありました」と言うのでじゃあ自分が判ってなくても仕方がない、とアニさんにはテキストで今日の発表を読ませてください、とお願いする。すごく前、おそらくパンデミック直前くらいに東京(ユーロスペースだったはず)で会って話したケイトリンが来ていて話したり、先ほどの徐さんに発表がとても面白かったです、と伝えたりしていたら次の回が始まってしまったのでそのまま残る。やはり全編英語なのでなかなか辛いものがあるが、自分は学生時代にこういう学会発表のタイムキープのバイトをやったことを突然思い出した。自分の仕事は残り時間が3分とか30秒とか0とかになった時点でそれぞれ所定の回数ベルを鳴らす事だったのだが、ここではベルは使わずにカンペみたいのを発表者に見せる方式だった。今回は何だか活発に質疑応答が起きていて、内容はどうも芸者と芸妓と舞妓の用語の使い方についてのようなのだが(さっきのケイトリンも発言している)やっぱりよく判らないね、と終わるまで待つ。ケイトリンに何を話してたの?と聞くとやはりフィクションの中における用語と現実の齟齬みたいなものが問題になっていたようでした。お昼休憩になったので参加者は三々五々と昼食に出かけ、知っている顔もいなくなってしまいどうしよう、と何となく門の辺りまで出ると昨日の夕食会で話したミサキさんがアニさんと2人でいたので昼飯行かれるならご一緒させてもらえませんか、とお願いして「もちろんですよ」とのことだけど4人とも全く当てがないまま、でもあまり離れると戻るのが大変なので近場で探す。今出川駅まで来て「モナミ」という名の喫茶店があったので入ってみると、ランチメニューがあったのでイマイズミコーイチとミサキさんはオムライスを、自分とアニさんは「名物」と書いてあるクリームチキン(ライス付き)というものを頼んでみる。どうもこの店は店主一人でやっているようでものすごく忙しそうだが、出てきたご飯は大変おいしく、4人で楽しくお話をして2人は午後の回へ、自分らはスキップして次の用事まで時間を潰すことにした。

駅から会場に行く途中に生えていたもの
駅出口のある交差点にはコメダもあるのだが、別の角には「喫煙可」と書かれた喫茶店もあり、さっきの「モナミ」もそうだったけど東京より喫煙可能な店は多いような気がする。珍しいことにこの店は「分煙」となっていて、店の奥の方が禁煙スペースらしいのだがそこに行くまでに喫煙席スペースを通らなくてはいけない。イマイズミコーイチが「アイスコーヒー、砂糖なしで」と頼んだら「アイスコーヒーは最初から甘いんです」と言われたのでアイスカフェオレを頼み、出てきたものが甘くないので何一つ判らないという顔をしている。自分は中国茶をポットで頼みましたが量も多くて普通に美味しいお茶でした。しかし二十世紀後半から時間が止まっているようなこの店、椅子はやられているし他の客はパンチが効いてるしであんまりくつろげず、飲み終わったら出ることにした。次は同志社大学のクローバーホールというところで崟利子さんの『Blessed 祝福』の上映があって監督も来られるというので観に行くことにしていて、開始時刻まではまだあるけど開いてるかもしれないし、そしたらどこかで横になれるかもしれない、と向かってみる。クローバーホールは学会会場の烏丸キャンパスとは道を隔てて反対側にある「寒梅館」の中にあり、地下に降りるようだ。予想通り既に入れるようになっており、そして崟さんがいた。もうどれくらいぶりか判らないけど再会できて嬉しい。「元気〜?」と聞かれて「元気じゃないです〜」と正直に答える。そう言えばどうして自分らの上映会場はここじゃなかったんだろうと思いましたが後で聞いたところによると「昨日は空いてなかったから」だそうでした。上映が始まるとイマイズミコーイチは席を離れ、舞台袖の床で横になりはじめる。自分はこの映画を観るのは3回目くらいだと思うけど結構忘れてしまっているなあ、と新鮮な気持ちで観る。上映後のQ&Aも活発で、みんな研究者だからか最後の方は崟さんに「深読みしすぎ」と言われる人も出るくらいでしたが、珍しく自分も手を上げて全然深くない質問などをしてみました。上映後に地上に出てみんなを待っていると、アルノーが一人でよたよた出て来て何だかお疲れである(自宅からここまでは2時間くらいかかるそうで、日参は大変だと思う)。今日はこれで終わりなのであとは夕食会、「すぐに失礼すると思いますが、私も行きます」とアルノー。
お店の情報は事前にキシさんが送ってくれていたのがあり、自分らはその店(タイ料理店)が昼に入った喫茶店の隣だったので場所は判っていた。ただ皆さんに付いて行ってみると表から見える店舗ではなく奥にある離れを借りていて、参加者はぞろぞろと吸い込まれて行く。畳の上に座って自分らは崟さんたちと一緒のテーブルになる。注文は店の方から人が来て取るので、決まったら遠隔呼び出しボタンを押すのだが全然来ない。「どうなってるんでしょうねえ」と言いながらキシさんが百万回くらい押しているのでそれじゃあピンポンダッシュ的なことですが、ここはチェーン店ではないので大規模にシステムを組んでタブレットを導入、というわけにもいかないのであろう。何とか注文したものが来始め、何だかジリジリしていたイマイズミコーイチは「もういいと思う」と自分らのテーブルだけで乾杯を始め、なし崩し的に宴会が始まる。自分と崟さん、キシさんは瓶ビールとワインを頼んで莫迦のように飲み始め、どんな話をしたのかは覚えているけど話の流れが全く思い出せない、という感じでした。料理は旨くて良かったですが人数に対してかなりギリギリだったのであまり動けず、大抵みんな最初に座ったところで話しているのでこれはちょっとどっこいしょ、と終盤自分はすこし無理して動いてアニさんのテーブルに行き、「ハサン・ミンハジを知っていますか?」などと訳のわからない質問を手始めに話し込んでみた。アルノーが早々に帰ってしまったのが惜しいが、自分の語彙力不足な英語でも何とか話はできたと思う。アニさんは米国市民権は持ってるけれども、それでも帰国時に何かあるんじゃないかという心配はある、と言っていた。そろそろお開きということで店の外で集合写真を撮って解散、明日が最終日。

「同志」というのは中国語圏の人からジョークにされたりしてるんでしょうか、というのを聞きそびれた
ホテルに戻ったらカードキーが反応しない(エレベーターはセンサーにカードキーを当てないと各階行きのボタンが押せない仕様になっている)。多分チェックインした時にデータが1泊扱いで書き込まれていて今日のチェックアウト時間で失効したのだろう。フロントでキーを設定し直してもらって部屋に入ったら鼻うがい。イマイズミコーイチもやってみたいと言うので貸したら「おもしろいねコレ」と反対側の鼻から水をドバドバ出しながら楽しそうでありました。
2025.0803 日
チェックアウトは10時なので早めに起きて片付けをし、イマイズミコーイチはちょっと先のファミリーマートでコーヒーを買って、ついでにホテル脇の喫煙所で一服してくる、と出かけていった。自分はお茶を入れて部屋で待機。必要充分という感じの良いホテルでした。でも京都のホテルって案外普通に部屋が空いてたなあ、というのが今回自分でも探してみての印象で、探せば(そして高望みをしなければ&とりあえずAPAグループは避けるにしても)ここより安く取れるところもあった。カオルさんは「もう京都にオフシーズンは無くなってしまって」と言ってはいたけれども何せ今は暑いので、春や秋みたいなもっと快適な気候の頃だとより難しいのかもしれない。イマイズミコーイチが「暑かった…喫煙所に日陰がなくて…あとチェックアウト時刻に近かったからかエレベータが全然来なくて」とヨロヨロ戻って来たので部屋を出てフロントに…行くとすでにカオルさんが待っていてくれた。今チェックアウトするんで少々お待ちを、と手続きしてから、すぐに出ないといけないわけでもないのでちょっとロビーで涼んでいましょうか。さて自分らにとって未解決なのは『伯林漂流』メイン出演者のリョータくんとまだ会えてないということで、京都に来る前から連絡を取り合っていたのだけど来てみたら「海で熱中症になってしまって寝込んでます」とのことでそれはお大事に、としか言いようがないが突然「サムギョプサル食べに行きますか?」とか起き抜けの寝言のようなLINEが来るので状態がよく判らん、と思いながら最終日になってしまい、まだ寝てるかなあと思いつつ「今日の2時半くらいまでに今出川(同志社大学)に来てもらえたら一番スムーズなのですが、いかがなもんでございましょう」と書き送って後は野となれマウンテン。
そろそろいいですかね、とホテルを出て地下鉄で一駅乗って今出川、のサイゼリヤに入る。開店直後なので席は取り放題である。昨日もそうだったが同志社大学はオープンキャンパスらしく、しばらくすると若者グループがどんどん入ってきた。お互いの近況報告…というのもどこからが「近況」なのかも曖昧なくらい久々なのでその辺はやがて適当な感じになるが関西でhabakari-cinema+recordsの上映がしたい、という自分らの話を聞いてもらったり、などなどしているうちに時間は過ぎてイマイズミコーイチは烏丸校舎で知り合いの発表を聞きに行くのだが自分は行かなくていいかな、とサイゼリヤを出て、イマイズミコーイチを会場まで送り届けてからカオルさんと2人でさてどこ行きましょうか、と言っていたら昨日崟さんの映画を観た寒梅館のレストラン&カフェがオープンキャンパス期間だからなのか15時まで開いているとの事なのでこれはちょうどいい、と入って自分は普段は頼まない巨大な「白いホワイト」というよく判らない名前のパフェを頼んで席につく。カオルさんと知り合ったのはおそらく20年くらい前で、昨年20周年記念上映をやったオムニバス映画『Queer Boys and Girls on the SHINKANSEN』の一編に参加してもらった事から長らくお付き合いいただいていて、自分より3つほど年上で「同年代」と呼べないこともないけど音楽にせよ映画にせよその他の事にせよ知識量が圧倒的に段違いなのでいつまで経っても「先輩」としか言いようがないのでした。今回も古今東西の話をしながらいろいろ教えてもらい、とふと携帯を開けるとリョータくんから「今起きました。申し訳ないですが、また次回でよろしくお願いします!」てな御返信があり、学会とか夕食会に来てればモテモテペンギンだったかも知れないのに逃すなあチャンスを、とカオルさん(もちろん知り合い)と嘆息しあって、まあそういう★の下に生まれたのかも知れん、と2人揃っての自撮り写真を撮って送りつける。あ、コンデンスミルクをふんだんに使った「白いホワイトパフェ」は大変結構なお味でした。
発表終了時刻になったので烏丸キャンパスに戻り、閉会の挨拶も終わった会場で皆さんが歓談されている教室にイマイズミコーイチを迎えに行き、アレックス、菅野先生、アニさん、キシさん、などなどにお礼と挨拶をして引き上げ…ようと思ったらイマイズミコーイチが「あ、さっき話してた名古屋大の人(徐さんの事である)にこれをあげたい」と若尾文子の特集上映のチラシを取り出してぶんぶん振り出したが徐さんはおらず、アレックスが「徐さんならついさっき帰りましたよ」と言うので仕方なく自分が炎天下を走って今出川駅の方に行ってみたけど会えず、こらダメか、と思って烏丸キャンパスの方に戻って来た途中で優雅に日傘をお持ちになってる徐さんに会えたので自分は息も絶え絶え(暑いので)になりつつ「あの、これを、さっきのオトボケ爺さんがお渡し、するようにと、ぴい」とエラー音も発しながら差し出し、徐さんは面食らいつつ受け取ってくれたのでありがとうございます。頂いた本(ご著書を貰ってしまったのである)は2人で拝読いたします、と言ってお見送り。ああ疲れた、と教室に戻ってイマイズミコーイチに「チラシ渡せた、渡せた私がすごくえらいので何か冷たい飲み物を買ってくれ」と要求する。キャンパス入り口のところで学会関係者の皆さんとは別れ、時刻は16時くらいで自分らのバスは22時発、カオルさんはまだ大丈夫と言うので一緒に京都駅まで行って入れそうな店を探すが、日曜なのでどこも偉い混んでいる(しかしこの売店やらレストランやらがある感じは東京駅にそっくりである。)初日の朝に来た時は時間が早過ぎて閑散としていた駅ビル地下も人で満杯になっていて、これはダメかも、と決死の覚悟で外に出てカオルさん先導で駅の外にあるコロラドコーヒー(喫煙可)に入る。そこから更に下らなくも大事な話をして、気がつけば10時間くらい一緒にいたのだけれど、本来10年くらいかけてする話を1日でしたということなのかも知れない。京都駅で閉まる5分前の土産物コーナーで母親に頼まれていた菓子を買い、3人で最後に写真を撮っていたら通りがかった外国人旅行客風の男性が撮ってくれた。「おそらく我々は日本国内居住者だと思われてない」と3人で結論する。

ありがとうございました
感謝してもしきれないカオルさんにお礼をして京都駅で別れ、コンビニエンスストアで夕飯を買ってから夜行バスのラウンジに行き、素早く食べてからバスを待つ。相変わらず人がたくさんいて落ち着かないラウンジで、自分は今日の学会が終わった時にアレックスと話した時のことを思い出していた。彼は「制作者が目の前に居る事で、研究者たちも映画は実際に人が作っているんだ、という当たり前だけど忘れがちなことを実感できるので、いいことです」と言ったのだった。さて帰りのバスがやってきた。今回はイマイズミコーイチが先に新宿で降りて、自分があと。眠れたようなそうでもないような感じでさいたま新都心に着くと、朝なのにもう空気が熱くてああ帰って来てしまったなあ、とぼんやり思う。帰宅したその日の午後、前から予約を入れていた整形外科のリハビリに行ったところ担当の理学療法士さんは「長距離バスですか…僕はむかし福岡まで14時間かかるのに乗ったんですけど地獄のように辛くてもう2度と使わない、と思いました」だそうでした。
上映報告之記:一覧に戻る