2004.1218_sat
昨日も今日も目覚ましの力を借りないで起きられている。今日は6時にスタッフと約束しているが、それまでは時間がある。昨夜も散々「どこか行きたいところがあれば連れて行くから、予定を教えてくれ」と言ってくれたのだが、僕らただ無目的にそこら辺ぶらぶらするだけだから悪いので「大丈夫。近所で遊んでいるよ」と言って6時にしてもらう。よほど放っておくのが心配らしい。「君たちは一人でタクシーも乗れないし」ってそれはそうなのですけどね。二人でも乗れませんです。起きたのはいいが、ホテルのテレビに映るNHK-BSなぞをつい見てしまう。初めて「新撰組!」をそれも最終回を見たけど、大河ドラマってこんなに安っちい画面だったかなあ。出てくる奴出てくる奴みんなバラエティみたいだ。結局、香取慎吾に刀が振り下ろされるところまで見届け、その次に「日本語で暮らそう」などというとんちきな番組まで見てしまい(今回のテーマは「上手な他人の慰め方」。日本語ってむずかしい)いかん、このままではただの休日、と近くのデパートに朝飯を食べに行く。着いた初日の夜にも行った食堂でチキン&ライスなどを食っていると、外の景色がなんだかザワザワする。見ると大雨。さっきまで晴れていたのだがさすが熱帯の雨期。ちょっとすごい降り方だが、なんかみんなあんまり慌ててなくて、傘差さない人とかもいる。僕らは仕方ないので食後しばらくそこで時間をつぶす。窓の外では雨粒が迫って、子供が傘で遊んでいる。コドモずぶ濡れ。
雨降り駐車場。この子はほとんど傘で遊んでた
しばらく後、雨が弱まったようなのでつるつる滑るデパートの軒下を伝って店内に入る。今回二度目の両替をして、デパートをくまなく周り、土産物を買う。ここは一応本屋から伝統工芸品、スーパーまで入っているので土産物には困らない。本屋で自分用にインドネシア全図を買い、「シンカンセン」参加監督の某氏に進呈する塗り絵本を買ったりなど。漫画コーナーには日本の翻訳物もあったけど、メインは少年誌系と少女漫画、あとは絵本でポケモンばっか。日本のより総じて小さいサイズで、感じとしては新書みたいでした。いかにも「現地の」つう感じの工芸品フロアでは馬鹿でかい楽器やお面を見て喜んでいたのだが、物価が安いのに安心しているとここではひとケタ多かったりして油断出来ない。ここの買い物システムはややこしくて、商品を選んだら店員に言い、その人がまず明細を作成、それを1フロアに一カ所だけある会計所に持っていて先に払い、レシートを持ってさっきの店員さんから商品を受け取る、つう悠長なもの。去年も経験したが(忘れてた)、これにどんなメリットがあるのか判らない。何買うか、全館で散々迷って、一旦別のデパートにも行ってまた戻って土産を選びきり、ようやく部屋に引き上げる。
「セマラ6」内
ホテルに戻ると約束の時間にはあと一時間ある。これまで大体迎えは30分ほど遅れてくるので、まあごゆっくり、とシャワーなど浴びてだらだらしていると部屋の電話が鳴る。まだ30分前ですが。出ると女性の声で「もう階下に来ているので、用意が出来たら来てね」と言う。はい。出迎えてくれたのは一昨日一緒に飯食ったキャシー嬢。ちょっと待ってもらって、フロアの奥にあるパソコンでメールを受信する。イマイズミコーイチが相変わらずのスパム処理に追われているのを待つ間、キャシーと雑談。彼女が急に「豚肉料理が食べたい?」と聞く。特に食べたいとは思ってなかったので何で?と聞き返すと、「昨日あなたがヘルーに豚肉は食べないの、って聞いたみたいだから」と言う。忘れていたがそういやそんな事を言ったな。行ったところのメニューにあるのは大抵ayam(鶏)であとは牛肉か魚介類、ポークは見なかったからやっぱイスラム圏では豚は食わないのかなあ、と思ったのだった。キャシー曰く、「食べさせる所はある」との事で「行く?」と言ってくれるが、純粋に好奇心で聞いただけだったのでそれを説明して遠慮させてもらう。さて準備が出来て、今日の上映会場へ出かける。実は歩いていける距離なので「自力で行く」と言ったのだがそれはスタッフに止められたので(別にそんなに危なくは無いのだけど、ただ自分のように呆然と道を歩いていると確かに車に轢かれるかもしれない)、タクシーで行く贅沢。会場「Cemara6」に着くとそろそろ夕暮れ。上映は8時からだ。ここは蚊が強烈なのでちゃんと虫除けスプレーしていったのだが、ものともせずに喰われる。日本のクスリは効かないの?嫌がらせのように足の裏とか血を吸われる中、司会をするというキャシーに作品の説明をする。昨日クィアカラオケ大会で上映をしそこなったビデオも併せてやるので、一応どんなもんかを話す。判ったのか判らんのか微妙な表情のキャシーを残し、2階の上映ホールに行ってみる。ここは1階がギャラリーになっていて、2階がホール、そこにスクリーンを張って上映をしている。お客さんあんまりいないな、とやや不安。上映チェックとかをさせてもらって、画面や音の感じを確かめまあいいでしょうとあとはぶらぶら時間をつぶす。やがてイマイズミコーイチは何故か部屋の隅にある天蓋付きのベッドで居眠りをしだした。
時間になった。お客さんはあんまり増えずに上映は始まってしまった。ありり。映像も音も、前の会場よりずっとよい。ここでたくさんの人に見てほしかったなあ、とちょっと思う。「シンカンセン」が中盤にさしかかろうか、という所、ある作品のエンドクレジットのあたりで急に映像が出なくなった。スタッフは気づいていない。僕は慌てて近くにいた子を掴まえて「絵が出てない」と言う。暗がりでプロジェクターをいじくってみるが、光源が落ちてしまっている。対処法が判らないので一旦会場の明かりを付け、もう一度プロジェクターを付け直す。この間何人かお客さんが出ていってしまいましたとほほ。その後は取りあえず問題なく上映は進行して、なんとか終了。反応は、会場に比べて人数が少なかったのでちょっと笑うにしても文句言うにしてもはばかられる感じだったなあ、と。静かなもんでした。途中携帯電話で話し始めたおっさんがいたが、さすがにスタッフに注意されて外へ行ってしまった。
上映の証拠、にはならないか。
お客さんが少し残ってくれたのでQ&Aを、というか座談会くらいの人数で一人一人に感想などを聞いてみる。気に入った作品を聞いたらけっこう人それぞれで面白かった。テキストのある作品についての感想が多かったが、多分英語字幕の読める人たち(ということはこの国では結構な高学歴で、ついでに富裕層であろう)はどうしても文字に気を取られるのだろうなあと思う。中に一人、音楽が全体的に良かったと言ってくれた人がいてうれしい。持っていったサントラCDは一枚も売れなかったけど。他の質問には前回は出なかったようなユニークなものはあまり無かったけど、一つだけ「インドネシアで作るつもりはないですか」というのがあってちょっと返答に困った。そんなにこの国を知らないしなあ。「面白い人や企画があって、なおかつとれる環境があれば」などと当たり前すぎる返事でお茶を濁してしまった。残念ながらカラオケビデオについて何か言ってくれた人はいなかった。しおしお。ここでの上映はこれで終わり。ついでに僕らの上映もすべて完了。若干トラブルもあったけど、まあ無事終了ということにする。終わってスタッフが夕飯に連れて行ってくれると言う。屋台でいいか、と言うので大仰に首を縦に振ると、やがて道路沿いのテントのごとき店に着いた。入るとディレクターのジョンなどスタッフが居る。入り口付近の、強いて言えばショウケースになにやら謎の食材がどうやら生の状態で皿にぞんざいな感じで盛ってあり、蠅が周りを飛んでいる。さすがにこれ食うの?つう感じではあったが「選べ」というので鶏らしいもの、その内臓らしいもの、テンペらしいもの、豆腐らしいものに何故だか黄色い粉が振ってあるのをトングでこれまたきったないプラスティックのトレーに取る。とここで初めてこれらは客が選んでから店で揚げてくれるのだということに気づく。よかった。いくら何でもナマは。席に着くとフィンガーボウル(指先洗い用の水を張ったボウル)が来て、手で食べてもいいらしい。笹の葉に包まれた蒸し米(ココナッツミルクと塩で味が付いている)と、やがて届いた先ほどの揚げ物を食う。米がむちゃくちゃ旨いなあ。揚げ物は、旨いとえぐいのギリギリな感じ。
米が入ってます。うまい米です。
今日「SHINAKANSEN」観に来てくれたドイツの監督、ミヒャエル氏がいたので、お互いの国のゲイ映画ってどうなってるの?とかいう話をしたりする。聞いた感じでは状況は大同小異だと思ったけど、でも違うんだろうな。「映画作っているゲイはいっぱいいるけど、ゲイ映画を作るゲイはあんまりいない」とさ。やっぱ同じかも。あと「ゲイが多い職業って何?」とか。「×××」…やっぱ同じかも。さて食事も終わり、会計。どうやら僕らにも払わせてくれるらしいが、正確に金額を出そうとしているらしく、スタッフはレシートを囲んで何やら考え込んでいる。僕が「いくらくらい?」と聞くと「あなたが食べたのは、鶏と、レバーと、豆腐と、テンペ2個と」と数えだし、しかも途中で判らなくなって数え直し「鶏と、レバーと…」と3回くらい数える。「いやもうざっくりでいいですから」と日本語で言ってみるが通じるはずもなく、数えている子も気が触れてきて笑い出してしまう。僕も仕方なくへらへら笑い、みんなうひょひょひょひゃと笑う中ようやく「3万ルピア」という結論が出て、無事会計は終了した。帰り際、隣にいたニーノに「日本の漫画欲しい?」といきなり聞いて半ば無理矢理に持ってた漫画本を手渡し、タクシーに乗った。