2005.0605 Sun #2 隊列行進、信号では止まりつつ
向かった先は宗廟(チョンミョ)という旧朝鮮王室の廟がある公園、近づくと人だかりがしているのでさすが、と思いきや良く見るとジイさんばかりでどうにもパレードの参加者ではない。出店のカセットデッキから流れる大音量のポンチャックに現実感覚が麻痺していくのを感じながら歩いているとソンワンが「ここは毎日老人が集まるところで、ついでに昔のハッテン場」と教えてくれるが別にこの人達が「昔ハッテンしてた人々」って訳ではないだろう。廟に向かってもう少し歩くと、「道に」直貼りされたKQCFのポスターが道案内をしてくれる。宗廟の門を背にして片側の荷台を全開にしステージにしたでかいトラックが横付けされていて、マイク持ったMCが喋っている。サングラス掛けたその男性にはどうにも見覚えがあるので近づいてみると4年前に僕らが泊めてもらったミノリさんであった。あんた司会か。壇上では色んな人が入れ替わり立ち替わり挨拶やらパフォーマンスやらしている。あっちゃこっちゃでいろんな事してて進行がよく判らないが、取りあえず自分らも支度を、と日本から持ってきた「シンカンセン」スチールのカラープリントを即席看板にし、ソンワンに「明日上映、来てね」とハングルで書いてもらうと「日本語を書いておくと興味を持つ人もいるからなんか書いとけ」と言われたので適当に「新幹線」とか走り書き。出来上がって早速首から掛けているとホントだみんな見ていく。首から「PRESS」というカードを下げた人がやたらいてみんな写真を撮っていくのだが、今日中にこの画像が出回らないことには意味がないので微妙。どっかの大学の取材だという男の子に軽く取材されたりミノリ氏に挨拶したり、ついでのように映画祭のディレクターに会って「テープは最後まで流すように」と念を押したりハングルが書かれた使い捨てライター拾って欣喜雀躍している内にトラックのわきでは民族衣装に身を固めた目だけ仮面の若い子たちが(女の子が多かった)サムルノリを始めた。複数の打楽器をうち鳴らしながら様々な形になって動いていくのだが、たのしい。初めて見る自分にもあんまり上手くはないんだろうという感じだったけれど、こういうオープニングはいいなあ、と。
このご老人方は「撮影不可」じゃあるまい。
公園にいるジイさん達も面白げに見ているが、このイベントが何だか判っている人はほとんどいない筈だ。沿道に出ているブースではスポンサー提供の水や団扇、スタッフが風船などを参加者に配っているのだがジイさんとおっさん達も何の疑問もなさそうに受け取って、タイのニューハーフダンサーズのショウやサムルノリを一緒になって見物している。一番面白かったのはフレディ・マーキュリーの「バルセロナ」でリップシンクしたドラァグ&男装のパフォーマンスで(オリジナルと性別逆のデュオ)、正直スーツ着た女の人はどうでもいい感じだったのだが、アフロかぶってピンクのドレス着たむちむちのドラァグクイーンがサビに合わせてバク宙するのに大びっくり、ええっこの人が?というので驚いている内に合計3回位してウルトラびっくり、いいもん見た。場所を取るパフォーマンスはだいたいトラックの前スペースでやっているので、立っているこちらとの高低差が全くなく前に立っている人の頭が邪魔でよく見えない。唯一必ず見えるのは一人壇上に登ったままのMCミノリで、この人の司会がすごい。パフォーマンス中も構わず喋るわ始終「拍手!」の号令を掛けるわ、何があっても動じないところなど超大物の風格であった。普通こういう人は前面に出ないものであるが、以前会った時にはかなりおどける人ではあったので人前であれやこれやするのもやぶさかでない、のかも知れない。しかし今回ステージ上ではあんまり愛嬌を振りまいてはいなかったので、路線を変更したのかも。
すいません、あんまり人を写せないモンでこんな写真。
どうやら予定を30分以上遅れてパレードが出発するみたい、と沿道に引き返して先頭を見られる位置に陣取る。フロートのトラックは風船やCDで(なんだかカラス除けに見えないこともない)飾られているが誰も乗っていないのがあったりして勿体ないけど自分が乗るわけにもいかないので空のトラック(運転手はいかにも雇われ、という感じのおっさん)を見送ったりしているうち、さっき写真撮ってもいい?とか言われてお互いに写し合ってみた子達が歩いてきたのでそこで混ざって歩き出す。一昨年来た時にはもっとルートが短かったし、聞けば去年は雨だったと言うし、2年ぶりのパレードは暑いけどけっこう楽しい。歩道にも見物人が集まっている。僕らの周りの人々は何を見ても面白い人らしく、バスが通っただけでピギャーとか叫んでいるおかげでテンションだけは落ちないで済む。音楽が途切れないというのも大きいな。僕らがペナペナの看板を持ってその辺にアピールしているとまたしても写真を撮られる。考えてみると撮影不可もしくは顔出しNGの目印である赤リボンを付けている人が多くて(パフォーマーにもいたけどどうすんだろ)、自分たちみたいに2人でも撮影可の「集団」は少ないのかも知れんが、今回は到着早々2回ほど間違われてますけどわたくし韓国人に見えてますでしょうか、って知るか。
YMCA前で「YMCA」のポーズとか一昨年と全く同じ展開にくらくらしつつ終点、へばって何とか言う銀行の建物わきでぐったりしていると、どこかへ消えていたソンワンがポカリスエット買って友達と一緒に戻って来た。彼はもしかして一昨年一晩部屋に泊めてくれた人ではないだろうか、と思うがその彼はその夜、初対面の僕らに家だけ貸してどこかで夜を明かしに行ってしまったので顔に記憶がなく、非常に申し訳ないがうろ覚え。あ~、どもども、とだけ。空が青いなあ。