2005.1119 sat
昨日と同じく起床。今日は上映が無い。もう少しスタッフとコミュニケーションが取れていれば他の上映作を観るとか(ハスラーホワイト観たいなあ)、一緒にご飯食べに行くとかしたいと思うのだけど、香港L&G映画祭は5年前もこんな調子でフェスティバルが始まったら後は実務を劇場に任せて最低人数で回す、みたいな運営だったので今回はホテルを用意してくれただけでも良しとしなくてはいけない。それに今日は日本にいた時から澳門(マカオ)に行くことに決めていたのでどうしようかとか考えているヒマはない。まずは裕華デパートに行って10時の開店を店の前で待ち、その間にイマイズミコーイチは向かいのワトソンズ(マツモトキヨシみたいなドラッグストアチェーン)に湿布薬を(足が痛いらしい)買いに行く。日本でもやらない「開店前から並んでデパートでお買い物」だがW嬢がお茶を買いたいと言うことなので僕らは乾物くさい地下1階に直行し、ど高いのからお手頃のまでを量り売りしてくれるお茶コーナーでまあそこそこのを選んで(しかし秤の受け皿に前客の茶葉がパラパラ残っているのは、商売としていいのか?)買い、デパートを出て尖沙咀まで歩く。昨日は香港島へ渡るフェリーに乗ったが今日はマカオ行き、連日船に乗っている。途中にある九龍公園を通り抜け、池にいるフラミンゴなどを見たりなど。しかしいい天気だな。電車で言うと駅ビルに当たる「中港城」というでかい建物の中にフェリーの切符売り場と乗り場があって、マカオ行きは155$、土曜だから平日より高い。空席状況を見ると早い便はすでに満席締切で、次発を買ったが時間に余裕があるのでビル内の、以前は見掛けなかったスターバックスでコーヒー飲んで眠気を、覚ますつもりが甘いカフェラテと座り心地のいい椅子で逆に眠くなる。
香港もマカオも既に中国なわけだが、旅行者にとっては返還前とどこか変わっているのかよく判らない感じで、中国本土へ行くにもマカオに行くにも出国手続きが必要になる。従ってフェリー乗り場に行く前に空港と同じく出国審査があり、それを済ませてホームに至る。喫煙所があったので煙草喫おうと足を向けた途端、僕らの方におねいさんが近寄ってきて、イマイズミコーイチがアンケートを求められてしまった。普段こういった場面で捕まるのは大抵自分であるが、今回はなんか番狂わせがあったのであろう、妙にいろいろ質問事項のあるアンケート(内容は何の目的で香港に来ましたか、どこに滞在していますか、とかそんなの)に答え終わったイマイズミコーイチにおねいさんは「では」と言う感じで海老饅頭をかたどったピンバッヂをくれ、イマイズミコーイチううむ、とそのバッヂを見つめた後、速攻でW嬢にあげていた。
フェリーの中では3人ともうつらうつら、乗り込んだ時にイミグレーションカードを書いた以外は別に何もなく、たまに起きては窓の外に見える島を眺めたり、前面モニターに映し出される映画のような「香港を愛そう」キャンペーンとおぼしき異様にリキの入った宣伝映像(しかし香港がまるごとデートスポットみたいな印象しか残らなかったが)を見たりしていた。あ、これから行くマカオの宣伝ビデオもやってたけど、これがまた行ったことのある人間から見ると美しく底上げしすぎであろう、と言う感じ、ヒジョーに勉強になりました。香港に行くならマカオに立ち寄ることは決まっているようなもので、実際毎回行っているが、別に大した目的があるわけではない。博打好きにとっては別な意味合いがあるだろうけれど、カジノ行かないし。むしろ何の商業施設もない住宅地に、ちょっと道を外れるといきなり出られる感じが好きなのかも知れない。またそこら中さびれててさ、とおそらく他人にはさっぱりな「マカオの魅力」をやたら揺れる船内でW嬢に話していたのだったが、着いてみるとそこには予想外の光景が広がっていた。
原因から述べる。
・土曜日だった(カジノ目当ての人多し)、これはまあ予想できてたが
・年に一度のF3マカオグランプリ(車が走るんでしょ、知らないけどさ)やってて
・ドッグレース(競犬というのか? 土曜はこれもある、直前まで忘れてた)もどっかでやってたはず
そしてとどめは
・今年5月にマカオの市街が世界遺産に登録された
ためにいままで見たこともないほどたくさんの人がいたのである。どうするよ。まずはフェリー乗り場から市街に出るバス路線が訳の判らない変更をされていて(これは多分レースの影響で普段の道が使えないからであろう)、目的地行きのバスが全然走っていない、加えてレース関係者と観光客で大混雑。僕らはしばし思案した後、観念してタクシーを拾うことにする。安いし、目的地はおそらくマカオ中で一番メインのとこだから運転手にも通じるであろうと思うのだが問題はこのタクシー待ちの行列だ。どうするよ、と考えていても時間ばかりが過ぎるので仕方なく並んだ。ウゥオォォーーンゥゥ、とスポーツカーズが発する爆音が鳴る中、思ったよりは早く番が来て、目的地の名前「セナド」と一言呪文のように言うと、おっさん運転手は至って冷静な感じで車を発車させた。ウゥオォォーーンゥゥ。
大して掛からずに着いた(でも車酔いした)「セナド」というのは市庁舎を中心とした広場で、洋風建築がぐるりと立ち並んでいる。壁の色は南欧趣味、なんだろうか黄色とかピンクとか。それに加えて世界遺産を見に来た人達がみちみちいる&そこら中に案内パネルがあるもんで本当にテーマパークみたいになっていた。うへえ。それはさておき僕らは朝から何も食べていないので、今回のマカオ行き最大の目的である昼飯を食いに行く。セナドから離れ、市街地をちょっと外れて裏道にはいると、目指す「マーガレット・カフェ・ナタ」が見えてきた。ここは言ってみればイートインの出来るパンとケーキの店、なのだがマカオに来るたび必ず寄る、と言うかここに行きたくてマカオに来るようなもんだ。見るとちょっと席が空いていないみたいなので、その辺で写真を撮ったりしながら空くのを待つ。向こうの方にはここのカジノの代名詞みたいなホテル「リスボア」が見え、げに悪趣味な外観を堪能する。タクシーで通った時にも見えたけれど、こういう町中から建物の頭だけが見えているのが一番ゲヒンな感じでよい。やがて店の前に戻ると割とすぐ席は空いて、タクシー酔いの自分は先に買いに行った2人を待ってオープンカフェ風の席で留守番、あ~なんとも適温ですなあ、と焦げ茶と白のツートンカラーで出来たパラソルを仰ぎ見る。戻ってきた2人と交代して、店内に入った。
すっかり買い方を忘れてしまっていたのだが、要はサブウェイみないなサンドイッチ屋を思い浮かべてもらえばいいので、パンを選び具を選び野菜を選んでその場でサンドイッチを作ってもらい、それを乗せた紙皿に値段を書いてくれレジに持ってって会計、他に欲しい物があったらレジで言うとショウケースから取ってくれる。ええと、普通の食パンにチキンベーコンを挟んだサンドイッチとミネラルウォーター、エッグタルトを一つお願いします。どうも。マカオにもパタカという独自通貨があるが、香港ドルが1対1でそのまま使える。ただし貨幣価値としては香港ドルの方が強いので、店側はなるべくマカオパタカで釣銭を返そうとする。マカオパタカは香港では使えないので、丁度で払うかここで使い切った方がいいのだけど、ま、いいか。席に帰ると2人は既に食べている。みんなエッグタルトを頼んでいる。サンドイッチもおいしいけれどこのエッグタルトがぼくらが固執する地元銘菓、カスタードクリ-ムをパイ皮に包んで焼いたお菓子で、濃厚な焼きプリンがパイに入っている、と形容するのが一番近いか。運良くオーブンから出したてのを買うことが出来れば、本当に最良の状態で味わうことが出来る。残念ながら自分たちのは焼きたてとはいかずちょっとあったかいという程度だったけど、おいしいなあ。前回と前々回には会えたここの店主マーガレットさんの姿は見ることが出来なかった。支店がもう一軒あるので、そっちにいるのかもしんないが、瑪嘉烈(漢字で書くと)はどこ。
うまいのと空腹なのとでサンドイッチをもう一個たべて、セナドに戻る。過去2回来た中でこんなに混んでるなんて無かったよ、と方向感覚が狂いそうになるのを抑えながらも地図(そこら中にあるのでこれはまあ、便利)を見ながらまんま世界遺産コースの道をてくてくてくくてく。坂を上がって、やがて世界遺産(くどい)聖ポール寺院が見えてきた。正確には聖ポール寺院跡、と言うべきか、近世建造のカトリックのでかい教会が、19世紀に近所の中学校から出火した火事で焼け落ち、石造りの正面部分だけが残って壁となっていて、元々の敷地部分は礎石を保存した更地を展示、後方が小さい博物館になっているというものだ。しかし毎回見るたびにその威容、もとい異様な間抜けさに笑う。坂を上がったてっぺんに、すこーんと壁だけ立ってるんだもの。空は青いし、後ろには何にも見えないし。でも人が多いせいか、なんか以前より小さくなったように思うんだけど、とイマイズミコーイチ。そうすか? お決まりの、併設博物館見てW嬢が壁の裏側に階段で登ってというのをやったのち、隣の澳門博物館に入る。ここはなんだか僕らには因縁の場所で、過去2回来た時はたまたま両方とも月曜日で休館、外側だけを眺めて帰ったのだったが今回は入れた(5年越しの実現である)。建物はけっこう立派で、その展示内容は割と民俗博物館、といった感じ、民家や商家の再現セットがカッコイイ。イマイズミコーイチは雀荘を再現した部屋に住んでみたいと騒ぐ。別室のスクリーンで上映されていた、かつて漁村だったマカオの漁民、一生を船上で暮らす人々を撮った記録映画がとても良くて収穫だった。壁に日本語ナレーションが聞ける電話型の装置が付いていたのだが、再生されるテープにはオリジナル(展示室のスピーカーから流れる)と同じBGMまで入っていて(要らない、と思うのだが…)それがまたオリジナルとずれているので非常に聞きづらかった。この部屋には6畳ほどのプールがあって、そこに水を張って漁船を浮かべてあるのだが、何でかそこには小銭が投げ込んであった。
この博物館は「モンテの砦」(という昔の要塞跡、大砲とかある)に寄り添うように建っているのだが、3階(工事中だった)の出口からその砦の頂上に出ることが出来る。まあ大砲、と言われてもねえ、と思うが眺めはよい。そこら中カップルだらけでみな正気を失い嬉々として大砲と恋人、とかの写真を撮っている。ここから下に降りるには、砦を取り巻くように作られた道を歩く事になるのだが、途中休憩所というか土産物屋みたいな店があり、前の通路に繋がれていない犬がぐったりしているのに出会う。えええぇ、この犬は4年前にもいた。確かその時一緒に行ったN嬢が懇意になってしばしその犬と話をしてて、今に至るまでその写真を見るたびに笑っていたものだったが、居たわ。世界遺産も何のその、マカオはまだまだ時間が止まってますよNさん。ここに彼女(その時バードガーデンで鳥籠を買ったのもこの人)が居ないのが非常に悔やまれるが、あとで写真を送ろうと犬を撮って、とこれがまたダれた犬で…、疲れたんだか満足したんだか自分でも判らないまま、モンテの砦を後にした。
適当に坂を下って迷い、このままではまずいと戻って地図を確認して再び歩き出す、どんどん住宅地の路地裏に入っていく。民家の奥から麻雀やってるらしい女の人達の声と麻雀牌をかき混ぜる音がする。不意に真っ赤な祠が見え、いきなり非現実的な光景になる。これも何かの縁、と線香の良い香りの中を通り抜ける時にちょっとおじぎした。そして再びセナドへ、結局大した距離を歩いてはおらず観光スポットと呼べる物も数えるほどしか見てはいないが疲れたし、本屋で土産に地図を買って(行ったところで現地語の地図を買う、というのが自分の趣味)、雲呑麺屋で軽く食べて(旨かった。僕は牛肉野菜炒めを飯に掛けたもの、2人は雲呑麺を頼む)菓子屋でクッキーみたいなのを買って(選んでいる最中ずっと店員さんが両脇に付くので選びづらい。ちょっと手に取るとすかさず試食が飛んでくる)、フェリーに戻ることにした。さすがにカーレースは終わったのだろう、バスは普段通りに運行されていて、乗り込んだ車は夜のマカオ市街を抜けていく。窓の外のカジノホテル群はますます精気をみなぎらせて、あきらかに生き生きしている。途中中学生みたいな子が乗ったり降りたりするけれど、こういうところで育つってのはいいのかわるいのか、関係ないか。途中でバスが止まってみんな降りていくのでまだフェリー乗り場じゃないんだけどなあと思いつつも人波に付いていくと、その先に止まっている別のバスに乗り込んでいく。理由不明ながら車を替わらされるらしい。ふへ、と混んでいるバスに再び乗ると、すぐに船着き場に到着した。気分はディズニーランドの帰り。あれフェリーの料金が上がっている。行きは155$だったのになんで帰りが175$か。理不尽だと思うが喧嘩も出来ないのでしぶしぶ買い、さすがに疲れて船の中では眠ってしまったので、感覚的にはあっという間。
尖沙咀に着いたら歩いてホテルのある佐敦へ、夜はちょっと寒いとイマイズミコーイチは言う。途中大通りを渡る地下道で間違えて全然違う方面へ出てしまったりとかはあったが、だんだん賑やかな街並みが見えてくる。ホテルへ帰る途中でガイドブックに載っていたお茶の店を探す。あった。茶器とお茶が整然と並んでいていかにも高そうだが、観光客には判りやすいディスプレイ。お店の人も日本語できたりして、試飲もさせてくれる。流石においしい。サンプルの茶葉もすばらしくいい香りなので、自分用に龍井(緑茶)を買う。買う時にお店の人が、普段から用意しているらしい日本語の説明書を付けてくれた。朝に裕華でお茶を買っていたW嬢は更にここで買い足し、保存用の缶も買っていた。随分と歩いていると思うのだが、小腹が空いたというイマイズミコーイチが近くのマクドナルドでフィレオフィッシュ買って、ようやく部屋にたどり着いたのだった。部屋に戻って、映画祭のヴィッキーさんに電話をし、明日の上映について確認する。昨日は会場でうまく話が通じなかったので、明日はスムーズに入れるようにしてもらえますかと頼んだら、担当に手配すると言って電話は切れ(げに有能)、しばらくして別の女性から電話が掛かってきた。大丈夫だという。「あと、明日上映後にご飯食べませんか?」と言ってくれるのでじゃあ9時頃に、と約束する。ちょっと休んで、またしても牛乳プリン屋に行き前回とは違うのを頼んで(チョコレート味、というのがあったがまさしくココア味、均一に溶けきらず下に溜まっていた)みた。
2005.1117
来港
2005.1118
第一回上映
2005.1119 マカオへ
2005.1120
第二回上映
2005.1121
帰国