2008.0427, sun
ぐったりとして起きる。相変わらず鳥の声やらコーランやらの音がする。皆勤賞のレストランでリサ達と朝ご飯。そういえばナミさんに教えたリサの携帯番号がロンボク島のおっさん(声からしてきっとおじさん、と言い張るナミさん)のだった問題ですが自分が「リサから来たメールに書いてあったのを良く確認せずにメモしてきたんだけど」と説明したところリサ、「ローランド…ねえ…あ、もしかしてジョグジャ以外の観光地でお勧めの宿泊先リストとして書いたのかもしれない。確かロンボク島のキャンプ場オーナーの名前がローランド」ということで僕のうっかりが原因のようでした、すいません。「でもローランドって名前はいかにもビーチボーイっぽいというか嘘くさい名前だわねえ」と言うので「他に典型的なのというと」と聞いてみるとリサ、「あとは…ロメオとかラヴェンダーとか…かな」何故かラ行に集中しているのが笑えるが、ラヴェンダーってのはゲイ向けなんじゃないかなナミさんとこには来ないよ、きっと。ちなみにローランドは「たしかドイツ人」だそうです。話をしている間にもセバスチャンは僕らのカップが空いたのを見ては向こうからポットを持ってきてコーヒーやら紅茶やらを注いでくれるので僕らはワル乗りして「そんな優しくされたら好きになってしまいそうです(メイワク)」と口々に言ってみたりする。
道ばたに目をやればいつだって「ここはどこだ?」
おみやげ(自分用)を買うならスーパーでよかろ、と先日クラトンに行く途中で見掛けた所に行くことにする。ナミさんは「あたしは行かないけど、水とか頼んでいい?」ということで承りました。今回は、まあ歩いて。途中鳥(七面鳥かな)のヒナが路上に出張してきているのを見たりしながらスーパー発見、入ってみたらこぢんまりとした店でしたが特に欲しい物はなかったのでナミさんのお使いだけを済ませてあっという間に帰ってくると、ナミさんとリサ達はまだレストランにいて、セバスチャン(ドキュメンタリー作家)が過去に撮った映画をパソコンで観ている。僕も見せてもらったがかなり面白い。「セバスチャン、日本でCFの仕事が出来るよ」とナミさんはいたくお気に召したようでした。
これで最後なのでプールで泳ぐ。カメラを持ってきたというのに今日まで一枚も撮っていないイマイズミコーイチは急に「僕も撮る」と言い出して部屋からカメラを持ってきたが、「バッテリーが切れてる」と泣いている。仕方ないので(何が仕方ないのかよく判らないが)僕のカメラで何枚か撮った後、満足したようで水着になってプールに入ってきた。
さて本日帰国の僕らはチェックアウトをしなくてはいけない。フライトは8時なので6時くらいまでジョグジャに居るのだが、ホテルが大繁盛で僕らの部屋に今日の予約が入ってしまったため、最初の約束では出発まで居ていい、ということだったのが急遽「すいません、出てもらえますか」という事になってしまった。幸い一泊延泊するナミさん(この後バリへ行く)の部屋は明日まで借りているのでそこへ荷物を置かせて貰うことにし、大雑把に荷造りをしてホテルの人に運んでもらった。
荷造り、このやる気の出ないもの
リサ達は僕らと同じ飛行機なのでやはりチェックアウトして受付に荷物を預け、友達と会うと言ってどこかへ出かけていった。僕らは昨日ニーノに教えてもらった「バティック買うならここ」という店(しかもそこのオーナーがクロージングパーティでドラァグショーやってた)があるマリオボロ通りへ行くことにし、タクシーに乗り込んだ。「ミロタ・バティック」と言うと運転手さんは判ったみたいで北へと走り出す。やがて車はマクドナルドのある建物に差し掛かり、あ~ここが2日目にニーノが待ち合わせようと言っていたところだ、と今さらで確認した。もっと小さな店を想像していたのだが、店舗の外にも布や服がみっちり出されている。ちょっと覗いたらすぐにセールスの人が「買え買え」と勧めてくるので店内に避難すると、中では全然店員さんの干渉はなくて、どうやら外は違う商店主のようでした。
店には布製品だけではなく食品(香辛料とかお菓子)のコーナーもあり、総合伝統製品取扱、という感じかも知れないが多いのはやはり布と服、ポールやホテルの人が下半身に巻いてたサルンが欲しいよねえ、と思ったがパッと見シャツとかドレスはあるんだけどサルンはどこだか判らない。たまたまジャスミンティーか何かの試飲販売をしていた男の子が巻いていたのですいません、それ(お茶じゃなくて)はどこで買えますか、と聞くと彼は店の奥の方を指さして「あそこにあります」だそうでありがとう。向かってみると棚一面に小さく畳まれた布が積み上がっており、まさに反物。靴を脱いで棚の前の一段高くなったところに上がり、3面ある棚はそれぞれ色調や模様で種類が分かれているようだった。商品の布を畳んでは棚に戻している女性2人にナミさんがいろいろ聞いていたが「左のがジョグジャの、真ん中がソロのだって」ナミさんは更に何事か聞こうとしていたがそこでハタとこの人達は店員さんではなくて先客だったと気づき、「クレジット使えますか、って聞きそうになっちゃった」と冷や汗をかいていた。
柄と布自体の品質によると思うのだが最安で500円くらいのから高いのは5000円くらいまであって、「お目が高い」ナミさんとイマイズミコーイチは選んでも選んでも高いのばかりなので悩み始め、でも日本で買うとしたら絶対こんな値段では買えないはず、と散々悩んだ末にちょっといいヤツを選定し、自分は、と言えば買わなくてもいいかな、と思っていたのだがジョグジャ産の、焦茶を基調とした植物モチーフに淡く藍がぽつぽつと乗っている渋い布がそれほど高くなかった(600円くらい)ので早々にそれに決め、あとはぶらぶらワゴンセールで250円くらいの豪快に粗雑な造りのシャツを選んだり、甘いのか辛いのかも判らない調味料を手に取ったりした。
ナミさんとイマイズミコーイチは「サルンには帯が要るよねえ」と言い出して探すが見つからず、店員さんに聞いても違うものを案内されてしまうので仕方ない、とさっきの試飲の男の子の所へまた出かけて彼のシャツをまくり上げたりしつつ「これはどこにあるかな?」と聞いた挙げ句に案内してもらって、サルン売り場にほど近いケースの中にあるのを教えてもらって(重ね重ねすいません…)、ムチャムチャ長いほぼ単色の布帯を選んでそろそろお買い物終了、イマイズミコーイチは二階(工芸品など多し)で土産の楽器などを購入し、集中レジでお会計してここは終了、「あ~久々に買い物が楽しい」とナミさん。結局オーナーには会えませんでした。
良く見ると道には馬糞も落ちていました
もう少ししたら僕らはホテルに戻らないといけない。歩いて例のマクドナルドが入っているショッピングモールまで行き、ふと気付くと前を歩いているのが「クィア・カラオケ」で歌を歌っていた男の子だったりしつつも時間がないのでナミさんはATM&携帯ショップ(既に料金チャージがあやういとのこと)へ、僕らは階下のスーパー「HERO」に入って最後のお土産探し、「234」という日本では買えないガラム煙草を数箱買って集合、タクシーでホテルに戻り、大急ぎで荷造りをしてリサ達と約束をした6時に間に合わせた。いいホテルだったなあ、僕らが急に出なくてはいけなくなったのも予約が6月まで一杯だからだそうで、また来たい。そういやガイドブックではカップル向けと言いつつ家族連れも多かったよ。
6時を過ぎたがリサとセバはどこ、と探すとレストランで食事をしている。「国内線だから、1時間前までに行けば大丈夫だよ」と言うので僕らも最後のご飯を頼んで、ミー・ゴレンをイマイズミコーイチと2人で食べつつリサ達と記念撮影なんぞをして、あっいけないもう6時半過ぎ、会計をして出ようと思おうがナミさんが食べ終わってなくて「部屋に持ってっていい?」とレストランの人と交渉していた。ややあったのち、ホテルの出口でナミさんは「なんでみんないっぺんに帰っちゃうの、寂しいじゃないよ」と言う。まだ1人で海外を旅したことのない自分はちょっと返答に詰まり、でもここで知り合いがいっぱい出来たから(ゲイばっか、ニーノにも"Gay is girl's best friend"とどっかで聞いたようなことを言われていた)大丈夫だよ、と返事になってない返事をして、さあ出発だ。今回の旅行では、ナミさんと一緒で本当に楽しかった、ありがとう。残りのバリもお気を付けて、と手を振って、僕らを乗せたタクシーは発車した。
よるのれすとらん(の天井)
空港まではそんなに時間も掛からず(タクシー代はセバスチャンが出してくれたのでまたしても「好きになってしまいそうです」)、リサが「ちょっと待ってて」とガルーダ・インドネシア航空のカウンターで何事か手続をしている。やがて戻ってきて4人で国内線のカウンターへ、発券してもらって荷物を預け、あんま時間がないけど煙草喫いたい、と(最近ではめずらしく全員喫煙者)さがすと喫煙スペースはあったのだが有料の喫茶しかない。まあいいやと入って注文して、すぐに搭乗開始のアナウンスが流れたので自分は自分でもなんでコレを頼んだのか意味不明だが数年ぶりに飲むミロをずずず、とストローで吸い上げて行こうか、と言うとリサはいたずらっぽい顔をして「ここで私がおごったら『好きになってしまいそう?』」と言うので僕ら「なるなるなる」と首を激しく縦に振ったので(セコいねどうも)、ここのお勘定はリサ持ちになった。ごちそうさま、ミロ。オバルティンでも良かったかな、なんて。
発券カウンターでは別々に並んだため、僕らとリサ達は離れた席になってしまっていた。「じゃ、ジャカルタでね」と入り口も別々で乗り込んだら、自分の隣に座ったインドネシアの男の子が話しかけてきて「日本人?日本は素晴らしいですね」などと言うのだがまさか「そうでしょうともよ」とは言えないので話があまり弾まず、相手もあまり英語が得意でないようで残念。彼が日本のどこが「グレート」と思っているのかちょっと知りたかったけど。彼には機内で出た軽食セットのパウンドケーキをもらってしまいました。
1時間くらいでジャカルタに着き、建物とは離れているようでバス移動だったのだがリサ達はどこにいるのか見えなくて、まあいいやどっかで会えるでしょうと先発車に乗り込み、着いた建物内をずんずん進むがさすがにここから先では会えなくなっちゃうかも、という辺りでイマイズミコーイチが「おしっこ」とトイレに行ったため小休止、したらやっとリサとセバが来た。イマイズミコーイチも戻ってきたので4人で出口へ、とそこには僕らを待っている人がいた。ジャカルタQ! Film Festivalのボス、ジョン・バダルだ。今回てっきりジョグジャで会えると思っていたのだけれどなんだか忙しいようで結局来られず、ニーノやリサに連絡を取ってもらって空港に来てもらうことにしてもらっていたのだが、果たして本当に会えるのかちょっと不安だったのでやっと安心できた。
リサとセバスチャンとはここでお別れ、楽しかったよ、ありがとうと抱擁をして、またどこかで。僕らとジョンは久しぶり、でもないかベルリンで会ったもんね、2ヶ月くらいか。ジョンは「お茶でもしよう」と言うのだがまず先にチェックインをしてもいい?と言うと「そうか、じゃ行っておいで」と国際線のカウンターへ。国際線カウンターはえらいヒマそうで、おっさんがやたら陽気に話しかけてくるがあからさまに僕ら担当お姉さんのジャマになっているので「仕事しろよ、おっさん」と日本語で言うと「何?日本語は判らない」と全然意に介しない様子でした。お姉さんはラゲージに貼り付けるシールを破るのに失敗して何食わぬ顔でもう一枚を出していたが、気付いた僕らは笑いを噛み殺していた。
再び出口を通った僕らは外で待っていてくれたジョンと近くのファーストフード店に入った。屋外なので空気が暑い。でも風の通る席に座ったら慣れて、インドネシア最後の空気を味わうことができた。ジョンにおごってもらってしまった甘い甘いレモンティーを飲みながらまずはジョグジャの報告などを。映画祭はとても良かったよ、と言うとジョンは嬉しそうに「それは何より」と笑った。ジョンはベルリン以後の「初戀」の展開についても気にしてくれ、そもそも彼がいなかったら実現していなかったであろう色々な事を思って僕らは何というか、普段あまりしおらしくはないのだが「ありがとう」ばかりを言っていたような気がする。「今年のジャカルタでの映画祭はどんな感じ?ニーノはゲスト40人とか言っていたけど」と聞くとジョンは笑って「それは間違いだ、ゲストは15人くらいだよ」ってニーノ、バケーションのことで頭がいっぱいになってやがったな。「でも今年は後援が取れたから片道と国内移動の旅費は出せそうだよ。来る?」と言うのでいー、もう出すもんが無いよ、と言うと「じゃあ今から撮りなさい、ノー・ダイアログの短編を」と言うので僕らは笑い、でも映画祭が着実に大きくなっているのが判ってとても嬉しいよ、と言うとジョンは「私も君たちの活動領域が拡がっていることが本当に嬉しい。僕らは一緒に成長しているんだよ」と言ってくれた。初めてジャカルタのQ! Film Festival(第2回)に行ってからもう5年、その時は(もちろん、すごく楽しかったのだけれど)こんなに長いつき合いになるとは思っていなかった。蒸し返せば一年前、東京L&G映画祭での上映を吹っ飛ばした時も、何でこんな扱いを受けなければならないのか、と打ちのめされながらも頭の片隅には「でもインドネシアにはジョンがいる、僕らは孤立無援じゃない」という事が大きな支えになっていたのだと今になってみれば理解できる。もちろん彼にはそんな僕らの状況をいちいち伝える必要もないし、彼と東京LGのカスを並べるのもイヤなので細部の比較検討などしないけれど、それでも「母国語」で何万弁費やしても伝わらない人には伝わらないのだなあ、とだけは思った。
搭乗時間は11時15分、もう少し時間はあったけど遅いし、そろそろお別れをすることにした。日本から持ってきたお土産をジョンに渡して「じゃ、行くね」と告げ、さっき出てきた入り口の前に立った。今年はここへは来られないかな、たぶん日本の暑さに耐える夏になりそうです。ジョンと写真を撮って、もう一度セキュリティチェックを通って振り返ると、彼はまだそこにいて手を振っていた。さよなら。深夜なのでほとんど何も営業していない空港内は静まり返っていて暗い。どこの店も11時閉店らしくて、すいませんちょうど閉めました、という感じ。両替しちゃおうか、もう買い物する店も無いし、とシャッターの閉まった土産物屋にふと気が向くと、「クィアカラオケ」でみんなが何度も何度も歌っていた大人気曲(なんか「セクシー・セクシー」と連呼するやつ)が掛かっていた。で、よく見たら両替カウンターも11時閉店、数千円分くらいは残っているんだけど仕方ない、日本で換えるか。
GECKO GECKO / CICAK
ここでも喫煙はカフェでするしかないのだった。自分はうれしくないが、喫煙者対策としてはうまい手だと思う。窓が無くて風が入る(要は暑い)店でお茶を頼んで、カゲロウがふらふらと迷い込んでくるのをぼんやり眺めながら静かだねえ、と言い終わらないうちに入り口付近から不穏なざわつきがして、行きと同じような(ほんとに同じ人達もいた)日本人集団が一気に入ってきた、ってことは同じ便に乗るんだよね…。そりゃ成田に行くんだから日本人が多いのは不思議じゃないんだけど、飲み物オーダーしないで吸殻を床に落とすわ店員さんに無理な注文をするわ何だで店員さんの表情もなんだか硬くなったようだ。「こいつらならボッていいと思うよねえ」とイマイズミコーイチが小声でつぶやく。さっきまでジョンと会っていた時に受け取ったあの幸福な感じはサーファー様ほかのバカ笑いを前にはかなく消え、乗り込んでみたら何でか席は一列飛ばしで離れ離れになってしまっており(たまたま自分の隣が空席のようだったので離陸後イマイズミコーイチが来た、どういう座席割り当てなんだガルーダ)、終わりの終わりがちょっくらよろしくないね、と総括して
<<中断:飛行中>>
成田に帰ってきた僕らが2人合わせて1万円もないインドネシアルピアを両替しようとしたら京葉銀行、「これでは小額過ぎるので両替できません」と両替票を書いている傍から言われてしまって最後の最後がちょっとよろしくなかったです。
2008.0423 バリ経由ジョグジャ行き
2008.0424 上映一日目
2008.0425 上映二日目
2008.0426 ボロブドゥールほか
2008.0427 布まみれ、帰国