2009.0618 星期四
19:30発だから二時間前で17:30に空港で、つうことは15:30に家を出ればいいね、と遅めに起きてから直前まで各種連絡などをして、さすがにもう10年くらい海外上映などにほぼ毎年行ってるので空港待ち合わせでも別段不安はないが、ただ今回マイレージで取ったノースウェストのチケットは「機械でセルフチェックイン」となっており、しかも昨晩ウェブサイトですでにチェックインをしているというのに何がどうなってセルフか判らぬまま第一ターミナルに着いて、見慣れた空港カウンター、と思いきやカウンターがなく、よく健康ランドとかに置いてある排煙装置兼灰皿みたいな台に皆さん列を作っている。「北京行きですか?ではこちらへ」と並ばされた台の先客は家族連れで、パスポート片手に3人分のチェックインをうんうん言いながらしている。自分の番が来たのでモニタを眺め、パスポートをどこかに突っ込むんだろうか、と鞄をまさぐっているとやってきた係員のお姉さんがすばやくピピピ、とタッチパネルを操作して「ではパスポートを」「お預けのお荷物は」などと全てやってくれるのでやはりどこがセルフかわからん。まあいいや、と荷物を預けると、担当お姉さんは「お客様、大変申し訳ないのですが本日のフライトは千島列島の火山噴火に伴う運行の遅れにより22:00の出発に変更となっております」と自動音声のように発語するのでえええそういうのはウチを出る前に言ってくれよ、と思いつつ「はい」と気の抜けた返事をするしかなく立ちつくしているとお姉さんはこれまたマシーンのようになにやらエチケット袋みたいなものを開封して各種書類を取り出し「これはお詫びのお品でして、次回のチケットの25$割引券に2000マイルのボーナスチケット、10US$相当のお食事券または機内でのアルコールサービス券で」と見た目はほとんど変わらない紙類を変わるばんこにひらひらさせるので自分は若干気が遠くなりつつも「ではそのボーナスマイルはこの場で付けていただけますか」と手続きをお願いして、こんなことなら2時間半くらい遅めに出ても良かったなあ、と。
何故か持ってた人民元、1元1角
さて約束の時間になってもイマイズミコーイチが来ないので、空港の外に出て喫煙所で一服してからカウンターの前に戻ると向こうからよろよろとやってきた。「遅延っす」と言うと「箱崎のバスターミナルで聞いた。出る前に知っていたらいろいろ出来たのに」と同じようなことを言うのでまあまずは荷物を預けて来なよ、昨日やったウェブチェックインで席は隣同士を取ってあるし、と送り出す。その間に自分は北京クィア映画祭の担当ポポさんに電話して「すいません、僕らのせいでは全くないのですが飛行機が2時間半ほど遅れるので出迎えの人にそうお伝えください」と言うと「大丈夫ですよ」との返事、声が結構若いなあ。やがて、というか大分してから監督が戻ってきていきなりプリプリ怒っているのでどしたの、と聞くと「僕の前の前のおばあさんが『館ひろしと行くハワイツアー』の人でもう何一つ自分でやる気がなくて立ちつくしているので僕が係の人を呼んだ。ダメだこのシステム」だそうです。後日スポーツ新聞で読んだところでは石原裕次郎メモリアルのイベント(意味不明)だそうで館ひろしが歌ったりゴルフしたりだったそうですがメイワクな。あ、そういや遅延お詫びの品々はもらった?と聞くと「何それ」と知らないようなので再びカウンター内に戻って色んな人に聞くが「判りません」「あっちで聞いてください」とたらい回しにされたのちようやくデルタの(合併するんやよね)カウンターで同じものをもらい、さて2時間半もここで何するよ、と顔を見合わせ、まあ空港内ならどこでも使えるお食事券をいただいたのでどっか入るべえ、10US$相当ってのが日本円でいくらなんだか知らないけど(円高だし)、ここでマクドナルドに突入して「だぶるくおーたーばうんだーちーず・せっと」とか言うのも台無しっぽくてなかなかいいけれど、イマイズミコーイチが「Soup Stock Tokyoに行かない?」と提案してきたのでじゃ、そこにしましょう。
レジで聞いてみたら「お釣りは出ませんが¥1,100-分の金券として使えます。足りない分は現金払い」とのことなのでじゃあビール飲んじゃえ、とスープ2つのセットを注文し、イマイズミコーイチはカレー、ああっという間に食い終わって当然ながら禁煙なので早々に立ち去り、まだまだまだ時間が、とローソンでデザート買ってから展望デッキで飛行機の発着を眺めたり、ユニクロでTシャツを買ってしまったりとこれじゃ空港見学に来た人みたいですが、ここでもやはり煙草は吸えず、もういいや中に入っちゃおう。出国手続きを済ませて免税店で煙草を買って、何をするでもなく途中の座席でごろごろ転がったり、ようやくたどり着いた搭乗ゲートでぼーっとしていると電話が鳴り、あれこの番号はさっき「遅れます」の電話をした北京クィア映画祭のポポさんだ、どうしたのかな、と出てみると「何か用事があるかと思いまして」と言うのでそれはさっき済んだけど、と最後まで噛み合わない会話をした後、「シーユーレイター、バイ」と切ってからふと発信履歴を見たら30分くらい前にもっかい自分が彼にかけており、どうやら何かの弾みでリダイヤルしてしまったらしい。ポポ、ごめん。
搭乗ゲートで出発を待つ間に、位置を確認
一時間も前に搭乗が開始になったので乗り込み、しかし北京に行くのに千島の上なんて通らないのに、とぶつぶつ言っていたがアナウンスを聞いてようやく事情がわかった。北米・欧州路線が噴火の影響で迂回をしていて、その飛行機からの乗り継ぐ人を待っているのでした。やがて乗り継ぎの方々も乗り込んできてようやく出発、やっぱり2時間半遅れました。急いでちょうだい、と言ってもフライトは4時間くらいなので隣のイマイズミコーイチと下らない話をしてたら結構あっという間に着いて、と思った途端に制服にマスクという物々しい格好の係員ズが乗り込んできて「発熱がないかチェックします」と一人一人の額に水鉄砲みたいな機械を当ててスキャンしている。新型インフルですな。幸い自分たちは引っかかることなく「オッケ」ということだったので深夜の北京首都国際空港に降り立つがどこもかしこも暗くてほぼ閉店している。時差がー1なので日本だと午前2時半のところを1時半だが、ここまできてしまうと最早どっちでもいいわ、眠いよ。入国カウンターもとっとと処理したいのだろう、「中国国籍」カウンターでも手続きするから空いているところに並びなさい、と言うのであっさり通過、と思ったら後続のイマイズミコーイチが「ちょっと来て」と呼ぶ声。「なんかホテル名を書け、と言っている」そうなのでメモしてきたやつをいい加減に書き写し、でも自分はただ「hotel」って書いたんだけど同じ係員のとこで通ったがなあ。
さて迎えは来てますかね、と。出口を出ると「いた」とイマイズミコーイチが言い、見ると若い男の子(ポポさんではなかった)と女の子が2人で僕らの名前を書いた紙を振っている。お待たせしました、でも僕らのせいじゃないんです火山がねえ、と「日本語で」言い訳しつつ煙草喫いたいなあ、と思うが2人は「ではこちらへ」とずんずん歩き出すので言い出すきっかけがなく、途中にあった灰皿を未練がましく眺めるのみ。多分彼らも早く出たいんだと思うので我慢することにした。外はどこも水びたしで、雨降ったの?と女の子に聞くと(彼女は日本語が話せた)「ちょっと前はすごい雨でした。2人はラッキーですよ」だそうでした。雨上がりで湿気が多く、蒸し暑い。駐車場には「北京Jeep」と書かれた黒くてかっちょいい(そして豪快に汚れている)車に案内され、深夜の北京ドライヴ開始である。
検疫無人
さて今回の映画祭会場は北京市街ではない。いや、北京市自体は九州の半分くらいあるので住所は北京市なのだが市街地からバスで1時間20分くらいかかる「宋庄」というところが会場。事前に聞いたところでは農村地帯を「アートで村おこし」という何というか直島みたいなことになっており、それがまた割と上手くいったために中国現代アートの一大拠点になっている、らしい。らしいがアートの拠点ではあっても繁華街ではないので空港→宋庄への移動とは郊外の空港から郊外の農村に行くと言うことになり、要は夜は全く活動が止まっている。やがて街灯すら無い道を(車の後ろを振り返ったら本当に何も見えない)ぶおおお、と男の子の運転する車は爆走し、やっと車内で煙草を喫うことが出来た自分らは女の子とお話をする。彼女は英語を専攻している大学生で、日本語は第二外国語なので「ちょっと話せます」。別の映画祭で通訳なんかもしているウチにここの映画祭を手伝うことになったそうで、「スタッフは当日ボランティアを入れて30人くらいですかね」ふうん、あ、そういえば2日前に主演の松之木天辺くんが先乗りしているはずなんだけど、会った?と聞くと「ああ、監督さんですよね」と誤った情報が流れているのでイマイズミコーイチ、「え、監督だって言ってんの?」とちょっと眉間に皺が寄る。
30〜40分ほど走っただろうか、最終的に車のライト以外は全く明かりが無いという恐ろしい状態で夜の道を「曲がって」「止まり」、どこかの建物の前に着いたようだが門扉が閉まっている。中の係員さんを呼んで開けてもらって、敷地内に入るとどうも学校というかそんな感じでいわゆるホテルではない。降車して、明かりが付いている部屋もある建物の前でスタッフの2人が中に入ったり出たりしたのちやがて「すみません、お2人には1部屋にベッド2つの部屋をご用意するはずだったのですが、いま2つある部屋のそれぞれに一人づつ寝ているんです。今夜だけ空いているベッドで別々に休むか、それがイヤだったら私たちが泊まっている隣の建物の大部屋にして頂くことは出来ませんか、明日アレンジしますから」よく見ると外部に面した入り口は一階部分にあり、そこを入るとまず一部屋、ベッドが2つあって片方にはなるほど男性が寝ている。右側奥にはシャワー兼トイレとおぼしき部屋があって、左側には二階へ続く階段が延びている、二階に上がるともう一部屋があってやはりベッド2つ、ただしここに泊まっている人は不在らしくベッドの上には大量の荷物、Mac BookやらiPhoneやらが散乱している。大部屋よりは上下に分かれて寝たほうがまだいいかなあ、それにしても天辺くんはどこにいるんだろうね、まあもう遅いし、どっちにしろ寝てるか、僕らも取りあえずもう寝よう、シャワーも何も明日にする、とイマイズミコーイチは上へ、自分は下の部屋に残り、しばらく寝台の上でぼんやりしていたがやがてイマイズミコーイチが降りてきて「トイレ」(は一階にしかない)と言って入っていき、しばらくして出てきたかと思うと「おやすみ」と言い残して悄然と階段を上っていった。自分は更に寝台の上でぼんやりしていたが、やはり体を洗いたい、とシャワールーム兼トイレのノブを回すがあれ、開かない。ロックされてるぞ。さっき使ったイマイズミコーイチが鍵を持っているわけも無いし、これはうっかり掛かってしまった感じがする。困ったなあ、と引っ張ったり押したりしていると、やがて気配に気づいたのか(というか、これだけバタバタしていれば気づくだろう)隣で寝ていた男性が「どうしたの」と起きだして来た。「中は無人なんだけど、ロックされちゃって」「どら、あれホントだ。鍵なんてどこにあるか知らないしなあ、困ったねえ」「じゃあ今日は諦めて明日空けてもらって入ります」「いや、ちょっと待ってて」というわけで深夜3時くらいにも関わらずその人は外へ出て行き、やがて戻ってくると「隣の人にシャワー使わせてくれるように頼んだから、行けば入れるよ」と言ってまたベッドに戻った。隣…があるのか?確かにうちらがいる部屋には「套1」とあり、隣は「套2」、同じような構造になっているらしい。お騒がせしてすいません、と隣のX氏(名前知らない)にお詫びして、さてどうするかな、と思っていると外からノックの音がした。
ホントに暗くってもう
で、開けてみたらおやおや、天辺氏が立ってる、元気? X氏が「話をした隣の客」って彼(は中国語ができる)か、何だ隣の部屋にいたの。X氏を起こさないよう隣に行って話を聞くと、「なんかさっきの人がいきなり入って来て、『自分の部屋に来た人がシャワー浴びたいらしいんだけど何故か鍵が閉まっちゃったんで使わせてあげて欲しい』とか言うんで来てみました」だそうですありがとう。で、あの人も映画祭のゲスト?と聞くが「わかんないですさっき初めて会った」ということで詳細不明、でも手にレインボーバンドしてたしゲストでしょう。でも何でバラバラに寝てるんですかこっちは二階がまるまる空いていますよ、と言うので(さっきの子達は案内する部屋を間違えたんじゃないかと思うが僕らを配達して速攻どこかへ行ってしまった)取りあえずイマイズミコーイチを呼んでくる事にした。ベッドに横になっている彼に「天辺くん隣にいた、二階が空いているからそっちで寝る?」と言うと「そうする」と荷物を抱えて隣に移り、やっと今回のチーム集合。さてシャワーは、というと「なんか電気給湯器が壊れて水しか出ないんです」なんですと。よく聞くと最初にあ使おうと思って水しか出なかったので調べたら電気給湯器が脇のブレーカーみたいなのが下がってたんで上げた途端に「ボン」と音がして…あ〜あ〜あ〜、ちうことで今夜はどこまで行っても体は洗えないようでした。
とにかく両替もせずに一直線に来てしまったため僕ら人民元は持ってないわ食いものも飲み物もないわ(ここはいわゆるアーティスト・イン・レジデンス用の宿泊スペースらしく、食堂や売店といったものはない。ついでに言うとこの辺自体が両替できるような場所がないとのことでイマイズミコーイチは天辺くんに少し円を人民元に替えてもらう)で、おなかはあんまり空いてないけどのど渇いた、と天辺くんが買い出して来たビールやらお菓子やらをいただき、二階に上がると電気が付かない。さてはブレーカー、と天辺くんが「こわいですから止めてください」というのを振り切ってイマイズミコーイチが部屋の一階入り口付近にあったブレーカーを上げると一階も二階も(結局それまで電気が通っていたのはシャワー室の照明部分のみだった)電気が付いてエアコンも動くようになったのだった。天辺くんは「これで電気蚊取が使える」と早速装着し、イマイズミコーイチは「疲れた、寝る」と電気は通ったんだけど肝心の蛍光灯が外れていて暗い部屋の手前側にあるベッドにもぐりこんだ。自分は最初の部屋でスーツケースを全開にしてしまっているため、今これからガタンガタン荷物をまとめて移動するのはさすがにX氏に悪くてできないので今夜だけすいませんお邪魔します、と元のベッドにもぐりこんだ。これでいつもの寝言を言ってたらどっちもどっちではあるが。
2009.0618 北京へ
2009.0619 宋庄一日目
2009.0620 遠足:北京市街へ
2009.0621 上映、映画祭クロージング
2009.0622 移動:北京市街へ
2009.0623 帰日