2009.0619 星期五

目を覚ますと10時くらい、トイレが(シャワーも)開かないので隣に借りに行くと天辺くんは起きていて、今日はどうしようかね、の話をするがまあ流れに任せてみましょうか、とりあえず市街に出るのは体力が要るんで今日はやめてこの辺でぷらぷらするか映画でも観ましょうということになって部屋に戻り、もっかいベッドに横になるが眠れそうにないので起きだし、カメラを持ってその辺を散歩する。既に暑い。靄なのか何なのか、周辺は直線道路が思い切りよく縦横していて建物も少ないが「ずっと向こう」は霞んでいる。えらいところへ来てしまったなあ、とあからさまに歩行者の邪魔になるくらい垂れた街路樹に頭を撫でられつつ歩いても歩いても景色が大して変わらないので部屋に戻ると、隣のX氏はシャワーを浴びているようでベッドは空、鍵が開いたらしい。やがて出てきて「開いたよ、入る?」というので初めて北京で体を洗う。お湯はまあ出るがシャワーヘッド直下のホースがへなへなで、重みで折れてすぐ湯量が半分以下になる。何とか浴び終わって出てくると天辺くんが来ており、中国語でなにやら話をしている。「この人は香港からのゲスト、彼の映画がこれから上映だそうなんで、しばらくしたら出るそうです。付いてきましょうか」そだね、明後日僕らの上映をするのと同じ会場だし、スタッフにも会いたい。


一歩出るとこんな、遙かなる(略)

こういうとき一番準備が遅いのは自分であり、この時も「そろそろ出るよ」と言われつつのろのろ支度をして、何だか大荷物のX氏、ではなくてやっと呼び名が判ったケン(香港人の名前ルールがよく判らんのですがもらった名刺によると張錦雄:Cheung Kam Hung Kennethさん)と4人、だだっぴろい道路を歩く。そこら中ででかい建物を建設中であるが、どう見ても住宅ではないのでまだ美術館をつくるんだろうか、つうか僕らがいるところも「LDX現代アートセンター」と書いてある。まっすぐ歩いて何やら煉瓦造りの「カフェ」があり、どうやらここで飯が食えるらしいが(腹減った)、時間が無いのでそのまま角を曲がって、これまた周りは工事中の土をほじくりかえしたままの中に建っている「現象工作室」という建物の中に入る。門をくぐると庭があり、左手に階段が延びていて奥に登るようになっているのでぞろぞろと上がり、前にあれ庭の端っこで屋台が出ているよ、ご飯かなあ、とそっちにばかり気が向くが、二階部分に上がって藤のようなもので作ったすだれをくぐり、ホテルのロビー風の場所に入る。入り口付近にはバーカウンター、正面にはDVDや本などの販売スペースがあって映画祭Tシャツなども売っている。壁には絵画や写真作品が展示されており、同時開催の展覧会らしいが女性をモチーフにしたものだけ。バーカウンターには映画祭のポスターが並んでいて、中に入っていた女性が「来ていきなりですいませんがこの4枚にサインを」つうことなのでその他ゲストの皆さんの寄せ書きに紛れ混ませて中国製のマッキーで署名、引き換えに映画祭プログラムなどをいただく。さてここでようやくポポくんに遭遇する。坊主頭で自分より頭半分くらいでかい、ということはあまりでかくないということだが、昨日電話で話した声から推察していた通り若い子で、後で聞いたら今23歳だと。彼とは英語で話せるので映画祭ディレクターの崔子恩さん(映画監督)に紹介してもらう。既に会っている天辺くんに今朝「崔さんってどんな人だった?」と聞いたら「なんか、おばさんでした」え、女の人なの?と思っていたがポポも「He」と言ってたし男性でしょう。崔さんは英語が通じないが何故か日本語がけっこう判るので日本語でご挨拶。

時間は若干押しているがケンの作品含む(よく見たらポポの「監督作」もやるではないか)短編集の上映が始まるので、建物内のらせん階段を下って(地下にもぐったような気がするが実際は一階部分)、暗幕の入り口を払うと、ミニシアターくらいの大きさのところに入った。平日の1時、ということでお客さんはさすがにまばら、ポポが司会でなんか喋って、最初はケンの映画「Kenfil's Positive Life」の上映が始まる。来る途中に彼と話をし、作品を観てようやくこの人が何やってる人なのか、がだんだん判ってきた。彼は香港在住のアクティヴィストで、自身がゲイでありかつHIV+であることも公表して10年近く活動しているらしい。生年は1975年だから僕よりひとつ年上。今回の映画は彼を撮ったドキュメンタリーなので監督ではないが、もちろんゲストとしては本人が来たほうが内容がダイレクトに伝わるだろう。彼がHIV感染を知ってから活動を始めるに至るまでを語ったり、最近の活動(コーズウェーベイでイベントをやったり)など。映画が終わるとポポに呼ばれて質疑応答というかトークですね、しかしこの人は喋る喋る。がもちろん中国語なのでまったく判りません。イマイズミコーイチは上映中から隣の天辺くんに要所要所を解説してもらっているが自分は(目下同室だし)あとで直接聞こう、と思って待つ。トークショー後いくつか上映(「四月一日」という短編は監督来場挨拶あり、中国語の話せる在香港の欧米の人だったが「ゲイを主題にしたわけではなく、自分の友人に実際に起こったエピソードを映画にした」と言っていたらしい。だから話が錯綜していたのか?あとはトランスジェンダーの女の子が主人公の「バイバイ・アントニア」というドイツ映画、図書館で女の子がBL的妄想を爆発させる(としか思えなかったが)台詞無しの「呼喚海洋」)があって最後のファン・ポポ監督作品「台北:彩虹之城」は台湾のゲイプライドに取材したドキュメンタリー。


会場入り口

上映終わってお疲れさまおなかへった、と庭を眺めると案の定屋台は撤収しており、ごはん…と指をくわえているとポポが「近くのカフェにご飯を食べに行きましょう」と誘ってくれるのではい、と即答して崔さん、ポポ、それともう一人のプログラマーであるヤンヤン+僕らの3人で来た道を戻る。行きは素通りした煉瓦塀の中に入ると庭の野外席がまずあって、背後に室内席がある。外にしましょうか、とテーブルをつなげてもらってパラソルの下、メニューが運ばれてくるが完全にお任せである。「カラい、ヘイキ?」と崔さんが聞くので「ものすごくなければ」と答える。プルーンジュース(だったか)を飲みながら自分がリクエストしたのはトマトと卵の炒めたヤツだけ、あとは何が来るのかお楽しみ。天気はいいし(ちょっと暑いけど)風が気持ちがいい。ごはんごはん、と毎度の事ながらテーブルサイドでじたばた騒ぎ、でも15時間くらい前の機内食以来まともに食べてないので待ち遠しい。建物のほうからはいいにおいがしているし。

ごはんきた。野菜と細切り肉を炒めたのが先に来て、それから厚揚げに肉を詰めてタレがけに焼いたもの、自分が頼んだトマトと卵の炒め、山椒と赤唐辛子で炒めた牛肉、自分ところで栽培した野菜のサラダ、茄子と挽き肉の味噌炒め、と続々、みんな塩辛くて油なので(うまい)、白いご飯が欲しいねえ、と言ってみると「ちょうど切れてしまったので、麺を頼んでくれてるそうです」とのことで来た麺がまた辛くてしょっぱくて油の汁なしそば、なので更にご飯が欲しい、しかし既に腹がいっぱいというジレンマに陥っているところへ「米飯炊けましたけど、いくつ?」とおねいさんがオーダー取りに来てしまった。いいや今日は一日この一食、と決めて注文して来たのは大好きなインディカ米に何故かサツマイモ片が炊き込まれている米飯。残っていたおかずでコメを食い、同じくかなり苦しそうなポポも「頑張って、食う」とまりまりくらいつく。食前食中食後、断続的に話をする(要所要所で崔さんの「オイシー?」が挟まる。この人は過去に日本で中国語教師をしていたことがあるらしい)僕ら、とにかくこのBeijing Queer Film Festival (北京酷儿影展)については日本で得られる情報があまりに少なく、ほとんど事情が判っていないのではあるが、過去の映画祭では毎回妨害が入っているらしい事は何となく知っていたのであまり失礼にならないように、でも結局無知丸出しで質問をする。「映画祭のウェブサイトってブログがあるだけで、それも『映画祭、今年やります』って書いてあるだけで詳細がないのは何で?」と今年のベルリン映画祭バッグを持ってるプログラマー、ヤンヤンに聞くと「内容を事前に公開するといろいろまずいので、詳細は個人宛にメールで送ることにしている」との返事。さてここでこんな質問は大層ナイーヴだろうと予感しつつ「ふ〜ん、何でマズイの?」と聞き返すと案の定ヤンヤンは「何にも知らねえんだなこのチビ」という顔とリアクションを一瞬見せたのち、「『何故?』何故ってここは中(華人民共和)国よ」苦笑しながら答える。そう言われてもちゃんと聞きたいので「んあ?」と白痴のような顔で反応してみると「中国では同性愛行為は違法ではなくなったけれど、それを例えば映画で扱うとか、そういった表現活動が全面解禁になったわけではなくて、内容によっては公安から妨害が入る恐れがある。現に過去の映画祭は毎回トラブルがあったし、実際のところ無事にオープニングを迎えられたのは今回(4回目)が初めてなの」と彼女は誠実に答えてくれた。


ごはんごはん

さてこのレストランには飼い犬がいる。行きがけにも店の外で無防備にうろうろしていたのだが、気づくと僕らのテーブルの下に潜り込み、天辺くんの足を枕に昼寝なぞしておる。別に残飯をねだるでもなく、やたら尻尾を振るとか過剰に吠えるとかそういうこともないので備品みたいである。さて、と隣にいるポポにさっきの自作について聞いてみる。「以前台湾に行ったときに試しに撮ってみたんですがあまり出来が良くなくて、もっとちゃんと撮ろうと再挑戦したのが今日上映した作品です。明後日また別のドキュメンタリーを上映しますけど、それの方が更にいい出来です」だそうでなんだか多作。ではそれも観に行きましょう。ここはご馳走してくれる、というのでありがとうを言い、劇場に戻る彼らと別れて僕らはもう一つの会場である「宋庄美術館」に行ってみることにする。道はこっちだねえ、と歩き出すとお店の人が「ホテルはあっちですよ」と親切に教えてくれるのだが美術館は逆方向、だいじょーぶ、と手を振って「南湖」というこれは貯水池なのか、釣り人が結構いる水辺を通り過ぎ、あれ電気搭に鳥の巣が、と写真を撮ったりしながら(電線からジジジジジ、と音がしていてコワい)美術館が見えてきた。建物も馬鹿でかいが看板が更にバカみたいにでかい。うれしくなって観光客記念写真を撮るわたくし達。

一階部分がガラス張りの建物を壁伝いに回りこむと、映画祭のポスターが連張りされているあたりの入り口に「→上映」という指示書きがあるが、今日ここでの上映はもう終わっているはずなので、今はただの美術館入り口である。展示は有料かなあ、とよく判らないまま入ってしまうがカウンターで何も言われず(そもそもチケット買ってる人とかいない)広大な部屋の中に作品が無尽に並んでいてすごいねえ、とか言っているうちに本来の目的を忘れてしまいそうになるが「上映会場」は展示スペースを抜けて更に奥にある。受付席には誰もいないのだが「入れるかもしれませんよ」と天辺くんはそこからシアターに通じる階段を上がって行き「あ〜鍵が閉まってますね〜」という声がして、じゃあ後でまた来ましょう。


無茶なでかさが伝わりますでしょうか

「ここよりももっと見た目のすごい美術館があるんです、入ってみたいので行きませんか」と僕らより2日先乗りしている天辺くんは地図を取り出し「歩くとちょっと遠いですが、近くにはスーパーもあるし、美術館に行ってスーパーで買出しをして…」とここでイマイズミコーイチが「6時から現象工作室で上映される映画が観たい」と言い出したのでじゃあそれまでに戻るとして、方向は判るんだけど遠いかも、という道をたらたら歩き出す。日本と車線が逆なので道路を横断するのがちょっとこわい。「あれです、すごくないですか」と天辺くんが指差した先に見えたのは、確かになんだこりゃな建物、ドラム缶を束ねたような形の巨大なツートンカラー、それ自体がオブジェみたいである。進行方向からすると一番奥に入り口があるのでふぅふぅ言いながら見るとカウンターに男の子がいるが、ここも入場無料らしい。敷地内に入ると外から見えていたドラム缶は現在準備中で、外側の城壁部分がギャラリーとして開放されている。広大なスペース(しかも半分工事中で閉鎖されてる)をロッカー状に区分けしてそこへ1マス1作家で作品を展示しており、水墨画、油絵、彫刻、ミクストメディアに焼き物とありとあらゆる種類とジャンルの美術作品、館の外には大量の兵馬俑があり、メガホンがやたら付いたけったいなポールも、あっ犬だ、と自分は美術鑑賞は終了して写真をばしばし撮る。

美術館の向かいはスーパーマーケット(「超市」ってそのまんま、日本語もそういう訳語を作ればよかったのに)なので買い物をしよう、と中に入るとかなり暗い。食品、雑貨、飲料に薬に一応何でもそろえているらしいが基本的に飲みきり用ペットボトルとアイス以外は常温販売である。イマイズミコーイチは天辺くんに少し両替してもらっていたので人民元を持っており、自分は、といえば日本から持ってきた1.1元しかない。これでは仕方ないのでイマイズミコーイチに借りる事にして、でも何が欲しいかというと水とタオルくらいだなあ、他の二人はカゴを満杯にして買っているが「個人用にコップが無いと不便だよ」言われてそれはそうだ、とほとんどリサイクルショップのように雑に商品が詰め込まれている一角で「上面」というロゴが入っているマグカップを選んだが、これ何のロゴだろう。同じようなカップで酒造メーカーのがあったので、たぶんそういった類のものかもしれなかった。由来が判明しなかったので以後「上っ面マグ」と呼んで愛用しましたが、買った時から底が欠けてます。天辺くんはチェック柄にバスケットボールがプリントされたバッグを見つけて嬉しそうである。


また別の無茶な美術館

あ〜時間が無い、上映に間に合わない。がこの荷物を持って会場に行くのはイヤ、ということで一旦ホテルに戻り、急いで朝と同じ会場に向かう。残念ながら映画は始まってしまっていた。途中で入るとこの劇場は真っ暗なのでおそるおそる壁伝いに一番前の席に滑り込み、僕らの配給でもあるInD Blueプレゼンツの長編映画「欲望之空間」鑑賞。香港で実際にあった事件を一つの軸としたドキュメント+フィクションという構成。

観終わって物販コーナーで崔さんのDVDやらTシャツやらを見ていたが、ふと「ヨッシ&ジャガー」のスチール写真が表紙になった本があり、クィア映画大全中国語版、「卍」とか載ってる。ふうん、と何気なく著者名を見るとあれ、ポポじゃねえか。23歳で既に著書あり、スゲー、ということで若き俊才の著作を購入してあとでオートグラフでも貰っとこう。スタッフに「今夜はあとでクィアカラオケ大会だけど、来ますか?」と言われてジャカルタ、ジョグジャの記憶がフラッシュバックするがきっと歌える歌なんて無いだろうしどんな事になるんだか様子はちょっと見たいかしら、と「はい」とお返事をして、他の2人が「ちょっと食べたい」と言うのでお昼にも寄ったレストラン「Mina's Restaurant」に行く事にした。

顔を覚えていてくれたウェイトレスさんが席に案内してくれて、こちらは顔を覚えているわけが無いわんこが近寄ってきたりあっちいったりする中、2人は「麺の熱いのと冷たいのと一つっつ」頼んでいるが自分は昼ごはんを食いすぎ、全然お腹が減らないのでビールだけにして、ようやく3人でゆっくり会食というか今後の予定を確認する。ここの映画祭は放任主義らしく何一つ予定の確認が無いが、まあ自分らの上映(明後日)に行きさえすれば後はいいんであろう。ガイドブックを開いて(ウェイトレスさんが気を利かせてどんどん明かりを持ってきてくれるのでテーブルは祭壇のよう)、結局市街地が遠いんだよねえ、とそこがネックで、いわゆる観光スポットっぽいのとか両替とかは街に出ないといけないが、今回行きたい場所を効率よく廻るにはどうしよう、と検討した結果、明日はバスで市街地へ行って両替と故宮と市街地とゲイクラブ(土曜だし)に行き、明後日はちょっと早めに出かけて市街を経由しないで万里の長城に行って夕方くらいに戻ってくれば上映に間に合うし、というスケジュールを組んだ。さてビールも飲んだしと会場に戻るとケンがおり、「カラオケ行く?」と聞くので「ちょろっと覗いてこうかと思う」と答えると、「じゃあ一旦ホテルに戻って一緒に行かない?会場は知っているから」と言うのであ、会場はここじゃないんだ。いいっすよ、と歩き出すと彼はお腹が空いたので、とさっきまで僕らがいた「Mina's Restaurant」へ入っていくので自分らも微妙だな、と思いつつ付いていき、またテーブルに付くのかと思ったら何かテイクアウトを頼んでいるようだった。ちなみにここのオーナーの名前が「Mina」さんというのであるが、彼女は戻ってきた僕らを見て「あら、また来たの」という感じで見送ってくれた。

部屋に戻り、あ〜今夜こそ寝る前には引越ししないと、と思いつつ今やる気が起きないのでそのまま出かける。道が暗い。道がよく判らない。ケンもしばしば標識で立ち止まっているが会場は名前しか知らないらしい。このあたりからケンは天辺くんの手を握って離さないようになり、とそこへ彼の携帯が鳴って「あ、香港の彼氏」と言いつつなんか話をして終話後、「彼氏が『今何してんの?』って聞くので『日本から来たちょーイケメンのゲストの手を握って夜道を歩いてる』って返事した」と嬉しそうなのでこの人は各地でこんな事してるんでしょうか。ちなみに「これが彼氏」と見せられた携帯のモニタには大層かわいらしい男の子が写っておりました(その後馴れ初め話やらなんやらを聞きましたが割愛)。

さて、やや迷ったものの「カラオケ会場」は何のことは無い宋庄美術館の隣にあるお店だったのでした。美術館との関連は不明。外側には屋外席と屋台があり、階段を下りていくと崔さんやポポがちょうど着いたところなのか外に立っており、人の顔を見るなり「あなた方は付き合って長いそうですね、長続きの秘訣は?」などといきなり聞くので不意を突かれ、「ええと、くよくよしない事です」ってそりゃ泉重千代の長寿の秘訣だ。しかしカラオケねえ(チームハバカリはカラオケを好みません)、と若干尻込みしながら前進していくと確かに入っていきなりのスペース(なんとも中途半端なスペース)には巨大モニタとカラオケマシーンとマイクと歌っている人がおり、でもほとんどギャラリーはいなくて飲み屋で客が勝手に歌っているような感じである。左手にある更に大きな部屋では長テーブルでスタッフ、ゲスト、その他よく判らない人がぐわ〜っと並んで飯食ったり酒飲んだりしておる。こっちの方がいいや、と席に付く、といきなり「あれ食え」「これ食え」の善意の皿が次々と来るのでまずはビールぐへへ、とか誤魔化しつつ自分はさっき食べてないため食えるような気がするのでまずは鶏手羽先の串焼きのようなものを食す、うむカレー味。北京の料理が存外カレー味なのは予想外でした。その他たいていの料理に乗っかってる香菜がたいへんうれしい。


最終日打ち上げ、じゃないけど毎晩やってるんでしょうか

 カラオケは、と言えばめいめい合間を縫っては歌いに行きまた戻る、というサイクルを繰り返しており、みんな一丸で盛り上がる、という感じでもない。ずいぶん遅くなってからまた集団が来た、と思ったら「Mina's Restaurant」のミナさんを筆頭にお店の皆さんでした。自分の店を閉めてから店員引き連れて他の店へ飲みに来るママ。その後も断続的に食い、呑み、歌いたい人は歌って喋りたい人は適当にしゃべくり、よく判らないタイミングで乾杯数度、と全く統率の取れていない宴会は続き、いちいち書くのにも飽きてきたのでこの辺にしますが一つだけ書き漏らしてはいけないのはポポの食いっぷりで、何か枝豆(日本の茹で加減命、というのとはまた違う調理法)が出てきた途端に無表情のままものすごいスピードで絶え間なく口に入れているのでこの人は相当疲れているのか(別に驚きゃしませんが)、ここでポポ一口メモ:彼氏は在上海。カラオケ歌っている「Mina's Restaurant」のウェイトレス嬢の隣でミナさんと話をしつつ横目で入り口から外を眺めると、煙草を喫いに行ったイマイズミコーイチがそのまま屋外で寝そうになっているのでそろそろ帰ろうか、と天辺くんに言い、しかしどうしてこんなに喉が渇くのか、とビールをグラスに一杯もらってから、崔さんやポポに「部屋に戻るです」と告げて、ケン共々4人で真っ暗な道を戻る。方向は合ってるはずだけど来る時にこんな階段を通った覚えが無いわははは、結構酔っている。

はへー疲れた、と自分はやっとこさで荷物を引っ越しすることにしてスーツケースをいい加減に閉じて、「お世話になりました、つうかお騒がせしました」とケンに言ってついでに今回誰かに渡そうと思っていた(毎度持ってきている)Rainbow Ringのリーフレットやらは彼に渡そう、と決めて簡単に説明をしつつ差し上げる。隣に移動し、2階に上がって荷ほどきしてまた階下の天辺部屋に行くとケンが来ており、持参のPCでなにやら動画を開いている。「香港での自分の活動」らしい。昼間のドキュメントと彼の話を総合して判った範囲では、彼の活動はHIV予防啓発+同性愛者の権利運動+政治活動がセットというか具材全部乗せになっているらしく、まあなんかいろいろやっているようなのだが佐敦(ジョーダン)に彼の団体の事務所があるそうだ。僕らも待ち合わせで何度となく行った銅鑼灣(コーズウェーべイ)のそごう前で彼が「フリーハグ」をやっているビデオなどを見る。

さてこのあたりの前後関係がよく判らないのですが気づけば一つしかないベッドには天辺くんとケンが入っており絶賛添い寝中、外出中に直してくれたらしいシャワーを浴びるために下に降りてきた(と言うことはいったん2階に上がったんだろうがその辺がどうも)自分は一応その様子を写真に撮り、「Facebookにアップロードしてもいい?」と聞くとケンはチェックしたあとで「問題ない」だそうでホントかよ。シャワー(うむ、ぬるい)から出ても2人はまだそのままなので「Good night, guys.」とか適当なことを言って自分は上へ戻ったが「な、なんか活動的です〜」「わ〜触られた」とかいう天辺くんの声が午前2時の北京郊外にこだましていました。あたしゃ、寝ます。


2009.0618 北京へ
2009.0619 宋庄一日目
2009.0620 遠足:北京市街へ
2009.0621 上映、映画祭クロージング
2009.0622 移動:北京市街へ
2009.0623 帰日