2010.0604 金

やること(両替)ができたので9時半に起きる。このゲストハウスにはコーヒーメーカーも豆もフィルターもあるのでほたるさんがコーヒーを入れているが、そこへ女の子がやってきて「これ使ってもいい?」と聞いてくる。どうも彼女が例のカザフスタン、よく判らないのでほたるさんに聞くと「2人分入れたからいいよ」とのことで「飲んでもいいし、新しく入れてもいい」と伝える。一服したのちに出かけてまずは銀行を探す。本当は路上違法両替屋の方がレートがいいらしいがさすがに大金なのでまあ銀行でいいや、と昨日到着した辺りにあった銀行に入る。一応英語で「すませんりょうがえ」と言ってみると受付のお姉さんは日本語がすこし出来たのでスムーズに(途中までは)いったのだが「50万ウォン分は高額紙幣(50,000ウォン札)で、残りは細かいので」というのがなかなか伝わらずに難渋する。何とか終えて、レートは空港に比べて凄く良い訳ではないがこんなもんか、残りを4人で分けて(行内の椅子を占領する僕ら)、まずは待ってもらっている宿泊代を払わないといけない。インサドンに戻って指定されたお店(「僕の奥さんか、義理の妹がいるはず」とオーナー)を探すが見つからない。凄く近くのはずなんだけど…と炎天下を行ったり来たりしてやっとこさ見つけた店は茶器のお店でした。日本語が話せるお店の女性に全額を支払い領収書をもらってやれやれこれで終了、さて朝ご飯。


こんな部屋でグッドモーニング

どこで何を食べましょう、という当ても無かったところで急にイマイズミコーイチが「僕らが初めて来た時に連れて行ってもらった韓定食のお店ってこの辺じゃなかったっけ」と言い出し、ああそう言えば、と思い出すとこの道を向こうに行ったへんじゃなかったかなあ、でももう7〜8年前だけど、まだあんだろうか。自信が無いもののその辺りはほたるさん持参の「ガイドブック(のようなもの。ヴィジュアル重視であまり情報は無し)」に載っていて行きたい、というので散歩がてら歩いてみる事にする。両脇を学校に挟まれた石垣の道を延々歩いて行くと「あ、あれじゃないかな」と指差すイマイズミコーイチ。本当だ確かにこんな感じの白壁だった、と記憶がよみがえる。が、表に出ているメニューを見る限りでは韓定食ではない。なんかピザとかパスタとか書いてあるけど、もしかして業態が変わったのかもね、僕らが来た時にはお座敷だったけどテーブル席しか見えないし、と残念ながらここは昔のようでは無かった。諦めてしばらく歩いて行くと、突き当たりにまた見覚えのある建物が、「Art Sonje Center」だ。ここは自分らが初めて韓国での上映したところで、またしても懐かしい。しかし暑い。僕ら2人(だけ)は想い出に浸っているがそうもしていられないので7年前には無かった案内所で何か無いかな、と探していると今度はほたるさんの友人が展覧会をしたとか言うギャラリーが見つかり、見てみる事にした。小道をやや入ってしばらく行くと目当ての建物はあって、ちょろっと覗いてみたほたるさんは「まあ普通のギャラリー。今の展示はそんな好きな感じでもなかったかな…」と呟いている。これでいく先を見失った自分らはあてもなく来た道を引き返す、とそこへ入り口に日本の紹介ウェブログかなんかをプリントアウトしたものを貼っているレストランが眼に留まり、何か定食っぽい。どんなもんだろうか、とうろうろしていたらお店の人がメニューを見せてくれ、何とか頼めそうだったのでそこにすることにした。

メニューをよく見ると単品の他にコースがある。組み合わせて注文できるほどの技量は無いので「この、一番安いコース」4人前。すると続々と一品づつ運ばれてくるのだが何かイメージしている「韓定食」と違うなあうまいけど、と思いつつ食べているとやがてサラダが出てきて(しかしこれまた見た目を裏切る味付けで、ちょっとびっくり)やっぱこれ、韓定食風創作料理のようでした。水餃子と言うか小龍包みたいなのもあるし。「初ソウルのお二人に韓国伝統料理を」という素人の計画はちょっと頓挫しましたが面白い(味な)ので良しとする。もっと高いメニューは更に品数があったけど、これで正解だったな。お約束小皿に乗ったいろんなもの、が途中で(いつも最初に出てくるのだけど)登場して全員で検討した結果、「これ辛い」「これは平気」「赤くないけど地味に辛いわ」


辛いけどあらかた食ってみる

結構食った、とお昼の朝ご飯を終えてインサドンにまた戻る。今に至るまで半径数百メートル以内でしか活動していないような気もするが15時から上映なので(これまたすぐ近く)まあいいか。大した事してないくせにホテルで少し休憩して、昨日とはまた別の伝統喫茶に入る。ここも前回行ったところ、で今回は3年前の記憶だけを便りに行動しております。何だか私は今回も緑茶。そして全員ぼんやりお庭を眺め。それにしても壁のそこら中に落書きがあって、なにやら興奮した感じの日本語があったりするとなんだか恥ずかしい。そろそろ、とお会計してから歩いて劇場に向かう。途中歩いているとコーヒーショップがあったのでほら韓国もすっかりコーヒーが定着でねえ、と初めて行った時に「紅茶」と言ったのに濃いめの麦茶みたいなコーヒーを出されてしまった事などを思い出してもっぺんよく見たらばそのお店は「スター」バックスじゃないのか、「STARMOON COFFEE」?パクりかどうか悩ましいところだが取りあえず混んでいるので素通りして、車がびゅんびゅん通る道を渡り、ビルの一階へ、3年前に「初戀」を上映した劇場なので慣れたもんである。エレベーターを上がり、一旦コンクリートの屋上(階差があるビルがくっついている)に出てから劇場の入り口前に立ってああなつかしいねえ、とのこのこ入って行く。ドンボムいない。いないので仕方なくスタッフの女の子に話しかけてみるが英語が通じないのでどうしたもんか、と思っていると会場内でブースを出しているゲイ人権団体の人を引っ張ってきて通訳をさせている。こんなに英語の通じない映画祭だったかねえ、と3年前を思い出しながら取りあえず次の回での上映時にまず挨拶して、終わったらQ&Aという段取りだけ聞いて(通訳さんがいるのかいないのかさっぱり判らず)まあ時間でもつぶしていましょう、とさっきの屋上で煙草ふかしたり写真を撮ったり。


屋上からの眺めはこんなかんじ

開場したので中に入る。時間は金曜の午後3時、堅気の皆様は働いているはずでまあ普通は来ないわなあ、と思っていた通りお客さんはまばら。でも取りあえず僕ら(4人)よりは多いので良しとする。さっき自分が話をしていた女の子が司会して、なんやら抽選会(指定席が番号になっている)をやり、どなたかに何やら当たったようでしたコングラッチレーション。予定通りに紹介されて客席より挨拶をして、さて開始。この短編プログラム、自作以外は全て韓国の作品。以前から噂に聞いていたピーター・キム(イソン・ヒイル「No Regret」のプロデューサー)監督作品が2本目にあって、この作品は釜山国際でやったはずなのに英語字幕が無く、細かいところが判らないので何とも言えませんが好もしい感じもあった、とは思う。ただし冒頭のポンチャックみたいなミュージカルシーンとエンドクレジットの学芸会の女装みたいなので作品全体が台無しになっていたのも事実。その他それぞれ面白いんだけど自分でも驚くほど好き、というのは無かった。自作「卜凸」は最期から2番目、なんせお客さんが少ないので反応もあるやらないやら、という感じではありましたが多少笑いが起っていたのでいいかなと。

全ての上映が終わり、さっきの司会の子が手招きしているのでHくんほたるさんを連れて壇上へ。とそこへ若い女の子がやってきて「通訳さん」らしい。映画を観ているのか不明ながら3人それぞれご挨拶。さてこの感じで質問など出るんであろうか、と思っていたら結構手を挙げてくれる人もいて、「日本の占いってどんなのですか(実態は知らないのでほたるさんに振る)」「最期の方でカメラが動くのは何でですか」「次回作の予定はありますか」「(Hくんに)ゲイ役をやるのに抵抗はありませんでしたか」などなど、一応順当な質問が出て何とかQ&Aにはなり、時間切れ、つうことでお開きになりました。客席から写真を撮ってくれていたイマイズミコーイチが「他の監督は一人も来なかったけど何でだろ」と言うのでそういやそうだ、彼らも今日が初日のはずなのにね。ドンボム、呼んでないのか?ロビーに戻るとさっきの女の子が「これを」と封筒を渡すので見てみると招待券で、どうやら見たい作品があったら使うようだった。ありがとう。次の次の上映プログラムが「オープニングイベント付き」の今日の目玉らしくそれには出席して欲しい、と事前に言われていたのでじゃあ次の回は飛ばして夜に戻ってくる、と伝えて外に出て、ああそうだと思い出して友人ソンウォンに電話してみる。今日は上映には間に合わなかったんだけど夜なら会えるよ、と言っているのでじゃあオープニングの頃に来てもらおう、と時間を約束してからアートシネマのビルを出た。


Q&A、しましたよ。(撮影イマイズミコーイチ)

どうしようか遠くには行けないけど、と取りあえず元来た道をふらふらしているとさっきの「STARMOON COFFEE」が割と空いているのが眼に入ったのでそうだお茶が飲みたい、と入ってみる。と何つうんですか、日本で言うとエクセルシオールカフェの広いやつ、みたいな感じ、ちなみにけっこういいお値段。注文して、奥のカウンターで受け取るスターバックスと同じ方式だが違うのは会計時にプラスティック製の珍妙な円盤(分厚い)を渡される事で、何だろうなあと思いながらその場で待っていたら先客がその円盤を持ちながら受け取りにきていたのでこれ、ポケベルみたいなもんか?でもどうやってお知らせが、と思いつつ屋外の喫煙席にぼんやり座って待っているとテーブルに乗せた円盤がぶるぶるぶる、と震えて赤く光りだした。なんか、ハイテク。豪快にティーバッグが2個入ったアイスのアールグレイを飲みつつ、となりのHくんはカウンターにあった「スフレ」を食べているが味はどうかね、と聞くと「普通に美味しいけど、この別添ヨーグルトソースが要らない味」とのことでした。しかしこのカフェ場所柄か(ゲイバーがいくつかある)あんまりノンケには見えない男の子が結構おり、隣のテーブルなどは入れ替わり立ち替わり似たようなのが(失礼な表現)社交してましたが、しかし映画祭には来ていない感じがありありとあり、ううむ集客と言うのはうまくいかないものですね、と思いつつ眺めていた。

午後の紅茶は終わりましたがもう少し時間がある、では近所のタプコル(パゴダ)公園にでも行ってみましょうかと地図を片手に少し歩いて、ぐるっと巡らしてある石塀の隙間からガラスに覆われた国宝(石塔)が見える辺りまでは来たが入り口が閉まっている。まだ明るいけど時間は7時前なので閉園か?諦め悪く反対側にも回ってみましたがそっちは更に歩道までがゴミやら飲食店の席やらで歩けもしなくなっており、仕方が無いので早めに劇場に戻る事にした。トイレに寄ってロビーに戻り、物販コーナーなどを見ていると肩を叩かれ、あソンウォンだ。久しぶり、元気?と3年ぶりの挨拶をしてイマイズミコーイチほかの座っている席まで案内する。彼は最初にソウルクィア映画祭で上映した時のスタッフとしてあって以来、ある時はこのアートシネマのスタッフだったり最近はフランスに行ってたりして今はまたソウルに戻って来ているが、「フランスでちょっと体調を悪くして」というメールをもらっていたので心配していたのだった。でもまあそんなに具合は悪くなさそう、良かった。えっと、この次の回の映画観てからご飯でも行かない?と誘うと「オッケー」ということで招待券を指定席に替え(ここでドンボムがやってきて実はもうチケットはあったと言う事が判るが割愛)、かなりな人が並んでいる(良かったねえ)劇場に入った。うわ僕らの隣にピーター・キムがいる(自分の上映には来なかったのに)、3年前に会ってるがなんかややこしいことになりそうなので気付いていない振りをしているうちに僕らの時と同じ女の子が司会で出てきて再度抽選会、「今回の商品はフライパンです!!(韓国語だけど言ってる事は何となく判った。笑った)」そしてどこかの誰かに栄誉のフライパンは当たりコングラッチレーション。


公園のそばで本を売ってた。奥の建物がアートシネマ(ほか)

そして「オープニングセレモニー」。何やるんだろうと思っていたらまずは関係者各位のご挨拶、無論ドンボムも挨拶するが何だかやたら笑いを取っている。それも笑わせているちうよりは笑われているのではないか、という印象だが無論韓国語なのでよく判らない。何を喋ってるんだろうなあ、と非常に気にはなるものの爆笑ディレクターご挨拶は終わってしまい、いよいよ「10代のゲイの子が踊ります」とかいうメインの出し物、どういうものだったかと言いますと(言いますと)「7〜8人くらいのウサ耳付けた男の子(露出などなし)がK-POPに合わせてふりふり踊る」というモノでした。うむ、エロくは無い(というかこれをエロいと感じられる境地にはわたくし達せそうにありません)途中ウサ耳を吹っ飛ばした子が一番目立っていましたが何となく織田信成公を思い出しました。ええと、続きまして上映作品は「The Big Gay Musical」、ミュージカルと言っても正確には「ミュージカルを演じる人々」のお話なので舞台半分、芝居半分。白状すると自分、ミュージカル(映画)にはとんと興味が無く、ということはこんな機会でもなければ多分観ることも無い作品だったかも知れません(なので良かった、のかな)。アメリカ映画なので当然英語字幕はナシ、だもんでさすがに台詞の理解が追っ付きませんが華やかだし、いかにもオープニング作品、ってわたしゃプログラマーじゃないけれど。

上映が終わってさて飯だ、とソンウォンと連れ立って歩き出して、「何か食べたいものがある?」と聞かれるとすかさずイマイズミコーイチが「タッカルビ!」と叫ぶのでソンウォンは一瞬面食らった顔をしたのちに笑って、「オーケー、でもこの辺でいい店があるか知らないから友達に聞いてみる(すいません…)」とどこかへ電話したのち、「こっち」と裏道を進んで行く。途中Hくんが「あ、マクドナルド」と言う。彼は(なぜだか知りませんが)ソウルにはマクドナルドがあるのか、というのが気になるみたいで、そりゃあるだろうけどやっぱロッテリアじゃないかな、韓国と言えば。やがて着いたお店は新しめな造りで、丸いテーブルにどかん、とコンロが設置してある。タッカルビ(鶏肉と野菜のコチジャン炒め)をそんなに好きだったとは、とイマイズミコーイチに聞くと「そうなの、自分でもびっくり」と訳の判らない事を言う。ビールで乾杯してじゃんじゃん焼きます真っ赤な鶏肉を。「辛いけど、大丈夫かな」とソンウォンは少し心配そうだが大丈夫大丈夫、水があればと最後のご飯突っ込んでチャーハン、までがっつり食って、その他さっき見た映画の感想や彼の近況などを取り留めも無く話す。たのしい。

さて食った、ソンウォンにありがとうを言って会計して、明後日の上映には来られるからまた会おうね、とバスに乗る彼を見送って寝酒を買い(ほたるさんが)ゲストハウスに戻ると僕らのではない部屋からテレビの大音響、どうやらカザフスタン嬢もご帰宅らしい。それぞれシャワー浴びて寝ましょう、明日は何も予定が無いから観光に行きましょうねガイドも頼んじゃおう、と日本にいた頃に友達になったジュンミに電話して明日の約束をする。「大丈夫ですよ明日明後日と会社休みだし、ゲストハウスまで行きますよ」と快諾してくれたのでじゃあ11時に、と電話を切って一番近いトイレは詰まってるらしいけどシャワーは出るよね、と体を洗ってから一服して就寝。イマイズミコーイチは既に眠っていた。


2010.0603 羽田発金浦行き
2010.0604 上映一回目
2010.0605 ぐるぐる
2010.0606 上映二回目
2010.0607 金浦発羽田行き