2010.1112 星期五
10月末に羽田空港が正式に国際線運行開始、ということで羽田は6月と7月の2回、韓国へ行くのに使いましたが近いしやっぱいいやね、と今回の初台湾の航空券も羽田発松山行、なのに帰りが桃園発成田着、何だこれはこの航空券は何かの残り物を組み合わせたんか、と文句を言いながら空港は好きなので台北にある2つの国際空港へ一度に両方行けるのはちょっとうれしい、とは思う。ニュー羽田はチャーター便のみだった頃に比べてさすがに整備されており、ニュースでも見た例の「江戸小路」は何つんだろう、自分はこういう腰の据わってないジャパン風味なものにことさら点が辛いので、今からでも全部取っ払ってごろ寝スペースにしてしまえソウル仁川空港を見習って、とぶりぶり憤慨する。どこもかしこもパビリオン風で落ち着けるところなどありはしないが、江戸小路の更に上にある「R BURGER」つうとこに入る。自分は朝飯食べて来たので何も頼まず、イマイズミコーイチは真っ白い中華まんのようなバンズをたべている。出国すると平日昼間、のせいかほとんど誰もいない待ち合いロビーで喫煙室を見つけて出発を待つ。しかしこの売店にある、主に中国人向けと思われる炊飯器は、ホントにここで売れんのか。
がんらがら
台北までは4時間程度、香港より近い。行きに着くのは松山(ソンシャン)空港、羽田や金浦のように市街地により近い空港で、建物も少し古びて手狭な感じがする。入国・荷物引き取り(今回はこれまで使っていた小さいスーツケース、3泊4日だし)は問題なく済んで、出口に向かうと女の子が名前を書いた紙を持って待っていてくれた。事前に映画祭から送られて来た資料では「アテンド:MAKO」とあったので服部?日本人?と思いましたが(いくらなんでも服部まこ[現:真湖]というのは我ながら古すぎるとは思いますが例えば石野真子、でも古いか、とにかくほかのMAKOが思い浮かびませんでした)そりゃニックネームで台湾の女の子、大学院生とのことなのでまだ若い。香港のディストリビューター:ジョナサンは出発前に電話口で「映画祭はお二人のアテンドに女の子を付けたんですねえ、何ででしょうねえ」と意味ありげに含み笑うのでしたがあのね、何を考えてるのか知りませんがこれがもし仮に若くてハンサムだけど何一つ使えないでくの坊が来てしまったりでもしたら困るのは僕らであって、あんたじゃない。今回はこの香港人が2人組で来るので既に目も当てられないことになりそうなのに。
それはさておき、マコに「携帯電話をレンタルしますか」と言われてあると便利なのは判ってるのだけど帰りが違う空港なので返却できないし、止めておきます。銀行で一万円だけ両替して、では車を呼びますね、とどこかに電話をかけてるマコはその細い体に不釣り合いなでかいバッグを2つ持っており、どうもこれが台北金馬影展の「お土産セット」らしいのだが映画祭もわざわざピックアップの人に空港まで持って行かせたりしないでホテルで渡すようにすればいいのに、とマコに「持つよ」と言うのだが「大丈夫です」と持ったまま、バッグは細い縄を粗く編んだような横長の手提げ型で、なかなかしっかりした造りなのが傍目にも判るけれどこれは映画祭バッグアディクトのイマイズミコーイチの趣味ではなかろう、と思っていると案の定となりで「…こういうんじゃないんだよなあ…」と少々不満そうである。まあまあ、と宥めてやがて来た送迎車(ベンツでした)に乗り込む。車内で話を聞くとマコは大学で日本文学を専攻しているそうで(「好きな作家は、」と聞いてみたら読んだ事無い人でした)、この映画祭でアルバイトをしているとのこと。
車を呼んでくれてます
30分もしないでホテルに到着する。元々は映画祭にお金がなくてホテル代も出せないので安いところを紹介します、とか言って別なホテルを指定されていたのが何でか急に直前になって「ホテルを変更しました」と連絡が来て、変更後のホテルは「君品酒店」というなんだかむちゃくちゃ新しくて(今年5月にオープンしたとのこと)ゴージャスなとこでした。しかも映画祭公式ホテルなので宿泊代は映画祭持ち。「(安宿も)払えません」からのこの待遇改善は一体いかなる理由によるものか、もしかしてチケットが早々に完売したご褒美かなあ、と下衆なことを勘ぐりながらチェックインして部屋に入るとこれがまたえらく美々しいお部屋でありました。香港国際のときのWホテル(笑)も同様に充分ラグジュアリーではありましたがこっちの方が落ち着けそうです。ほうほう、とか言っていると割とすぐにポピン、とチャイムが鳴ってああもう来てしまいました、香港のジョナサンとヘンリーが。あんたら「お二人が着く頃には別な映画を観ていると思うので恐らく会うのは上映会場でだと」とか言っていたんじゃなかったか。
「いや、何かお腹空いてしまいまして映画は止めましたあははははははは」とジョナサンは毎度の事ながら何がおかしいのか大笑いしながら怒濤のように話し始める。自分は話を聞く振りをしながら映画祭お土産セットをベッドの上に撒いてみると何か台湾名産品(高そう)なもの多数。全体的にお金持ちの贈答品っぽいが(ゴディバのチョコレートまで入っている)、このランコム化粧品セットはどうしたもんかなあ、おやおや映画祭オリジナルUSBメモリがあるぞ、これまで何度もこの手のものを買おうと思って何となく持ちそびれてたのでこれはいい。ああそうだ、と自分は自宅で荷造りしていた時に棚の奥から発見したドラえもん柄のペットボトルバッグ(サントリーの景品)をジョナサンに「誕生日おめでとう」とか言いながら渡す。すいませんねこんなのしかなくて、と部屋をどんどん散らかしている間に更にピポン、とチャイムが鳴って女の人が2人入って来た。プログラムマネージャーのエンマとゲスト担当のルビーに初めましてのご挨拶。いつもと違って今回は着いていきなり上映があるので時間の相談をし、上映開始30分前に会場で、ということなのでまだ4時間ほどある。少し休んで、早めに会場近くで軽く食べたいかな、と言うとマコは「判りました、では7時にロビーで待ち合わせにしましょう」ということでげに優秀である。
ゴーカホテルの巻
シャワーを浴びて、ここはWifiがあるのでインターネットにつないでみる。最初にホテルの画面が出るが特に料金については書いてなかったのでまあいいや、と「同意」して接続する。1時間もしたら約束の時間なのでイマイズミコーイチは舞台挨拶用に和服に着替える。ロビーに降り、「お〜」と言ってるマコと共に建物の外へ、ここは最近オープンしたらしい「Qsquare」というショッピングモールにつながっていてかつ駅とも直結しているので大変便利であります。ホテルは禁煙なので外で一服したのちエスカレーターで地下鉄のホームに向かう。最寄り駅の「台北車站」は複数路線の乗換駅なのでけっこう長い道を歩き、さてどこで切符を買うのか、自分は両替で発生した小銭を持っているがイマイズミコーイチはさっきもらった映画祭からの「おこづかい」が全て最高額紙幣(1000元)なので自販機では切符が買えない、のでマコが両替機をナビゲートしてくれたのだけれどこのマシーンはいいところまでは行ったものの肝心のコイン吐き出し段階で停まってしまい駅員さんに手動で両替してもらう羽目になる。一悶着あったのちに買った「切符」は青い、コイン型のかわいらしいトークンでした。これを自動改札に当てるとゲートが開き、出る時に投入するシステム。一駅だけ乗って「西門」駅へ。
上映まではまだ時間がある。マコが「鴨でもどうでしょうか」と言うので付いて行く。既に暗くなっている台北の繁華街は、これまでに行った事のあるところの中で言えば一番近いのはプチョンかなあ、何でだろう。もっと建物は密集しているし、人も多いのだけれどこれが香港と決定的に違うのは高いビルがあんまり無いところだ。確か台湾は地震が多いような記憶があるので、そのせいかも知れない。そんなことより鴨。入った店は2階建てになっており僕らは階段を上がる。社員食堂のように何も無い(厨房は1階なんであろう)感じのところにマイク持ったアグレッシヴなおっさんがいて注文を受けている(のでやかましい)。英語が通じるとも思えないので完全マコ任せで「鴨、それと麺」だそうですが果たして何が来るのやら、と思っている間もなく料理は運ばれて来て麺はもやしの入った汁麺(小麦粉のにした)、あっさりした塩味。そして鴨、これは煮てあるんだろうかローストチキンともちょっと違うのだけど、おいしい。下に刻み葱が、と思ってどっかり取って口に入れたらそれは刻み生姜だったのでちょっと涙目、そして鴨肉は小骨が多いので注意。店を出てちょっと歩くとなんかカエルとカエルの卵のようなものが描いてある小さな店があるので「カエルの卵屋?」と聞くとマコは笑って「違います、タピオカの入ったお茶ですけど、飲みたいですか」と言う。試してみよう、と注文して(もらって)奥の席でそれをずずず、と吸い上げているとマコの携帯が鳴って、「これから通訳さんがここに来ます」ってマコじゃなかったのか。やがて来た小柄な女性は「チョコです、チョコレートのチョコ」ということでよろしくお願いいたします。
かも、くう
さてアテンドがいると危機感が全くないのでどこへ向かっているのか方向感覚が完全に麻痺しますが僕らはぽつぽつと雨粒が落ちてくる中を歩いて行く、と古いデパート(いわゆる最新式の「ショッピングモール」じゃなくてあくまで「デパート」)のようなところに入ると「ここが会場です」ってホントか、お店の並びはなんかアメ横っぽいけど。会場の「新光影城」はここの4・5階でした。「上までエスカレーターで…、あれ?」とマコは言い、そこは下り乗り場だったのだが「なんか上り下りが時々変わるんですよねえ…」とよく判らない事を呟いている。反対側の乗り口に向かい、床面に貼ってある映画祭のポスターを踏みながら上って行くと確かに映画館はありました。でも自力では辿り着けなそう。シアターはいくつもあってロビーはかなり広く、中央にチケットカウンターがある。今は映画祭仕様なのでアクリルに印刷した映画のスチールがバックライトで光ってきれい。あとポスターも貼ってあったのでその前で記念写真など。スタッフが水を持って来てくれたので座って「出番」を待つ。今回は衣装担当のシオザワさんがたまたま台湾に来ていたので無事合流し、そこへジョナサンとヘンリーが来て…でだんだん大人数になる。やがて長身の男性がやって来て「今日の司会をするデビッドです。宜しくお願いします」つうことで時間がタイトな割にはかなりスムーズに「では、裏手へ」。
この劇場の構造もよく判らないながら付いて行って薄暗い通路で待機する。関係者以外立ち入り禁止ゾーンかと思ったらそういうわけではないらしくお客さんがばんばん通る。開きかけのドアから覗いてみると、当然ながらここが舞台袖の入り口だ。ということは一般客も通るわなそりゃ(トイレも近くだし)。上映前の挨拶は2人で、Q&Aは監督一人でやってもらって自分は写真撮ろう、とバンクーバー方式にすることに勝手に決めて(自分に質問は、まず来ないし)デビッドにも了解をもらった。時間になったので呼び込まれてあいさつ。到着早々イマイズミコーイチは「挨拶は中国語(北京語)でやるのがいいのか、台湾語がいいのか」とマコに聞いていたが台湾語と言うのはどうも香港における普通語(北京語:公用語)と広東語(ネイティヴ)のような関係ではないらしく、マコも「私も台湾語は完全には判りません」だそうで考えてみればそらそうだ、中華民国は60年前に大陸から来たんだから、と中国語でいいんじゃない?と自分は気軽に言ってみたが(中国語は発音が手強いので最初からやるつもり無し)イマイズミコーイチは果敢に「ダイガーホ、じゃないこれは広東語、タージャー、ハオ?が『みなさんこんにちは』?」と圧倒的に馴染んでしまっている広東語とごっちゃになりながら悪戦苦闘しているが本番、出だしは良かったものの最後は何だか混乱したらしく尻すぼみに終わってしまい「惨敗…」と後で呟いていた。
服務台
それはともかく今日と明日のチケットはソールドアウト、お客さんもたくさん入っていていい感じである。今回の上映テープには中国語字幕が付いているが、モントリオール(10月)で使うデジタルベータをまず台湾に送り、台北金馬映画祭がコピーを取ってモントリオールに送った、のでこれはダビング版であってそのせいか少し画質が良くないかな、でもデジベで観るのは初めてなのでこんなもんかとも思う。しかし役名や役者名の仮名に当ててある漢字が適当だなあ、事前に聞いてくれれば良かったのに、とオープニングタイトルを観ながら思うが、仕方ない。音は特に問題ないみたい。お客さんの反応もいいみたい、毎回やる場所によって笑ったりする箇所が違うのが興味深いけど、これまでで一番リアクションがあるんじゃないかな。上映が終わって呼び込まれる。隣にいたジョナサンにバッグを預けて自分は最前列の空いている席に座り、和服姿のイマイズミコーイチ、司会デビッド、通訳チョコ、つう3人をバシバシ撮影する。デビッドは(最後まで何してる人か判らなかったけど)大変進行がうまく、かつお客さんあしらいに慣れた感じなのでかなりスムーズ。自分は質問がよく判らないのでイマイズミコーイチの答えだけで推察するしかないのだが、香港を始めこれまで一番聞かれた「熊の意味はなんでしょう」というのがあんまりくどくど出なくてそこが新鮮。正直くまのいみ、つう質問はもうね、と毎回聞かれるのは自分じゃ無いにも関わらず。
この日の最終上映なのでQ&Aが終わると12時に近く、まあみんなこれで帰っちゃうかね、と思っていたらスタッフが何やら「ではそこへ」とか言い出してまだ何かあんすか、と行ってみるとテーブルにペンとフライヤー(香港で作ったやつ)が置かれていて監督サイン会すかうええ、と見ると物凄い数の人が並んでいるどええ。フライヤーにサインして、写真一緒に、とかやっているので相当疲れるはずだがイマイズミコーイチは最後の方は「手が動かない」などと言いつつ律儀に応対をしておりました。自分は、と言えばその辺をふらふらしながらその模様を写真に撮ったりするだけ、すません。ようやく最後の一人が終わって精魂尽き果てた感じの監督にスタッフが「ではポスターにもサインしてもらえませんか」と言うのでのろのろと立ち上がった監督は「ええと(サインペンは)銀がいいのか金がいいのか…」と弱々しく繰り返しているので担当エンマが「どちらでもお好きな方で」と言うのだが何か決められないようなので自分が「ゴールデンホース(金馬)映画祭だから金でいんじゃん」と超適当な理由で金色にして「ええと…この映画祭は漢字でどう書くんだっけ…『金馬國際映展』…あっ國際は要らなかった…」と煩悶している中をプレスのカメラマンが「書いているところを撮りますからこっち向いてください、ああもっとこう顔を上げて」と演出までし始めるのでお願い、その辺で勘弁してあげてください。
撮影中
終わって12時半。ビルも店仕舞なので出ましょうか、あれ雨が降ってますね。会場近くにゲイバーが集まってる辺りがあるのでそこ行こう、つうかビール飲みたいビール、と騒ぐとこういう対応に一番不向きなジョナサンが僕らには付いているのでお互い困るがまあシオザワさんも知ってるみたいだし、初対面だけど台湾人らしい人も何故かいるのでぞろぞろ向かう。途中エンマ、ルビー、マコの女性陣は帰って行き(お疲れさまでしたありがとう)、僕らは西門紅樓という建物を目指す。日本時代に建てられた市場を改装したんだったか、今は劇場らしい。その周囲にたくさんゲイバーやショップがあって、屋外席もたくさんあるけど雨でシートが濡れている、ので屋内席でも煙草喫えますから、と一番手前の店に入る。で初めましての人が2人、一人は台北映画祭(金馬とは別)のプログラマーで、申し訳ないがお名前を忘れた。もう一人はジョンソンという若い男性で名刺を見たらどうも台湾でゲイ映画とかのDVDを配給しているみたいでした。「何にしますか」「台湾ビール」と即答して僕らはだらだら飲んだりするのみ、ジョナサン達はそれぞれ中国語でがあがあ話しておりさっぱり判らんですが、まあ来た当日の夜にゲイバー入ってる、というのはこれまでになく行動が早いんじゃないでしょうか。イマイズミコーイチはこのバーのとある店員さんがかわいい、と騒いでジョナサンに同意を求めたものの明からさまに「え、そうですか?(まあ、いいですけど)」みたいな反応をされて至極不満そうでありました。
2時半を回ったので帰ろうか、ということになりその前にセブンイレブンありますよ何か買って行きますか、と言われるのだが今は水だけでいいか、と2Lのミネラルウォーターを買ってタクシーに乗る。地下鉄で一駅のの距離なので車はびゅん、と飛ばしてホテルに辿り着いたのが3時前、明日は朝飯に間に合えばいいやね、と目覚まし(時計があったんだけどけっこう操作が判りづらい)をかけてからおやすみなさい。
2010.1112 羽田発松山行、上映一回目
2010.1113 上映二回目
2010.1114 三泊目
2010.1115 桃園発成田行