2002.12.07 o sabado
#1
今日IちゃんKさんが帰国する。出発までまだ時間があるのでみんなでご飯食べに行くことにする。イテウォンの駅前で11時に待ち合わせ、遅れてボリも到着するが、同じホテルの4人(IちゃんKさんW嬢N嬢)が来ない。ぼくらは遅刻の原因オッズをやることにし、僕はN嬢(タクシーで違う場所を言ってしまう)に、イマイズミコーイチはKさん(海苔を値切ってて迷子)に5000ウォン賭ける。がしかしやっと登場した4人に聞いたら遅刻の原因はIちゃんでした。2人して大外れ。近道のつもりで道に迷ったと。まずは近所のスーパーで食料品を買い込む。急に寒くなった中を地下鉄に乗って景福宮(ギョンブッギュ)駅近くのサムゲタン屋へ。去年も行ったのだけど、主なメニューが2つしかなくてそれでも繁盛している。トランシーバー持った店員が客を誘導する中、客の話す日本語もちらほら聞こえる座敷へ。みんな同じメニューを頼む。その前にちょっと便所にでも行ってくんべ、と席を立ち、しかるのちに戻ると何か雰囲気がヘン。料理は来ていて食うばかりだというのに皆やや上の空。原因はすぐに判った。Kさんが白い顔をして「リュックがないの」とあちこちを覗き込んでいる。どうやら背負ってきたリュックサックをハンガーに掛けようとして見当たらないのに気付いたらしい。全員で探してもそれらしいものも見当たらず、どうやらホントに無いらしい。もしかしたら電車で落としたのかも知れないと言うとボリが素早く駅に電話。「色は?」と言うので「ブラック」と答えるとKさん違う違う、という口ぶりで「黒!」と何度も叫び、まあどのくらい動揺してるのかは伺えました。同行のIちゃんに「どんなものが入ってるの?」と聞くと「いつも大事そうに持ってるんだけど私も中身は良く知らない」というので心ここにあらずといった感じのKさんに尋ねてみる。「家の鍵と、」あらら。「メガネケースと歯ブラシセットと」これはまあ最悪無くても。「でもパスポートと帰りのチケットはIちゃんに預けてあるし」それなら帰れる。しかも家の鍵はスペアをIちゃんが「持ってる」との事でなんだ出て来なくても帰国に支障は無いわけね。一時はどうなるかと思ったが結局大事には至らなそうと判り、一人気持ちの切り替えの出来てないKさんを尻目に眼前のサムゲタンに取り組む。ちっと冷めちった。けどやっぱうまいなあ。食前の高麗人参酒(これはおいしくない)に酔っていい気分で食う。他の人も気に入ったようだ。よかった。Kさんはまだ「サムゲタンどころじゃなくなっちゃった」とか言ってる。それはこっちのセリフじゃぼけ。
食い終わった頃に後にいた日本人と思しい団体客が帰っていき、その途端Kさん「あった!」と声をあげる。何じゃらほいと振り向くと、例のリュック。どうやら床に置いたリュックが何かのはずみで後ろの席のテーブルの下に押し込まれていたらしい。「あれだけ騒いでたんだから教えてくれればよかったのに」とぶちぶち言ってるKさんと、紛失時にSPばりの素早い対応をしてくれたボリがずっこけてる様との対比が印象的でした。Iちゃん、「この際だから何が入ってるのか見てみる」とリュックを員数点検。しばし覗いたのち顔を上げたIちゃんは、困ったように眉根を寄せて一言、「すごくくだらない」。ボリには飯代おごるので勘弁してもらう事にし、店を出る事にする。やでやで。駅にいく途中薬局の店頭で各種パックがワゴンで売ってて、Kさんそれにひっかかる。夢中になって「泥のはどれ?泥の!」と言ってる背後からリュックをあけ、中身を取り出して全部をデジカメに収める。Kさん、気付かない。鍵と、歯ブラシセットと、使い捨てカメラと、眼鏡ケースと、これが「お気に入りなの」ってボールペンか。ふんふんふん、このサイドのポケットには、と開けると大量のポケットティッシュが出てくる。ううむこれではあまり同情のしようがねえな。すると泥パックを掴んだKさん、すっかり空になったリュックを背負って小走りにレジへ行ってしまった。僕らはリュックの中身を全部持って路上で再撮影。戻ってきてようやく荷物を抜かれてたのに気付いたKさんの反応は省略。こんなKさんは目下恋人募集中。「当方29歳、かわいくて、タッちゃん以外ならどんな人でもオッケー」だと。ストライクゾーンが広いんだか狭いんだか。ホテルに戻って荷物を取って、近くのバス停から空港行きのバスを待つ。結構慌ただしかったけど、IちゃんKさんとはここでお別れ。大量の食料品とともに、バスはやがて見えなくなりました。アデュー。
とあるスーパーの陳列の様子。
#2
一旦別れていたボリと待ちあわせをして、某所でレズビアンのオーナー(パワーアップそっくり)がやってるインターネットの会社に行く。会員制で動画の配信をやってるようだ。そこで「韓国のゲイポルノ」というモノを見せてもらう。その他この国の性描写規制などに付いていろいろ興味深い話をうかがう。ここは決して違法な会社ではないんだが、この先いろんな作品を流す事で現在は禁じられているラインを押し下げようとも考えていると言っていた。すばらしい。会談を終えて家に帰るボリと別れて、時間があったので光化門にある美術館に荒木経惟展を見に行く。初日に告知を見掛けて場所をチェックしておいたのだが、機会がなくて今日になってしまった。最寄り駅に着くと、地下鉄構内出口階段至る所に警察官が隊列を組んで駐留している。警官隊はひっきりなしに移動してて何だろうと思っていたが、どうやら外でデモをやってるらしい。米軍が女の子を車で轢いて死なせてしまった事件に対する抗議らしい。そう言えば映画祭の会場や先日行ったお寺でも祭壇が作ってあった。この駅はアメリカ大使館に近く、美術館の向いが一番騒がしい。デモ参加者、警官、そして野次馬で混雑する中を向かう。ここで撮影したらヤバいかなあ捕まるかなあと思って様子を伺っていたが、野次馬にもビデオ回してる人とかいたのでイケるかも、とイマイズミコーイチはビデオを回す。僕はDATとカメラで。なかなかうまく撮れなかったけど、一廻りしてから真新しい美術館に入って展示を見る。アラーキーの作品展示としては韓国初だそうで、内容もすごく古いものから網羅的にまとめてあって結構なボリューム。中で「ソウルフードディザイア」という韓国の食べモノを撮ったでかい一連のパネルがあって惹かれる。欲しい。こっそり写真を撮るが(会場のおねえさんずっと携帯でメールやってんだもん)、後で見たらちょいピンぼけでがっくり。しかし韓国に来てまで氷川きよしの写真に出会うとは。会場で売ってた展覧会のポスターは1000ウォン(100円)で良心的。建物一つ隔てると嘘のように静かな中を抜けて地下鉄に乗る。まだ警官がいるが気にせず駅の構内を撮る。
映画祭の会場でW嬢N嬢と待ち合わせする事にしていたがアングックの駅でばったり会い、そのまま外に出てインサドンという近くの骨董街を歩く。スターバックスを見つけて入る。韓国でもやっぱし禁煙。さて、今日は撮影の約束をしているホロくんに電話をする事になっていたのだった。韓国も携帯電話が普及しているせいか公衆電話があんまない。日本よりはまだあるけど、ちょっと細い通りに入ると見つけるのに苦労する。セブンイレブンでやっと見つけて、ついでにテレホンカードも買って電話、が出ない。もう一回かけてみるとなにやら韓国語でアナウンスが流れるが、留守電なのか電波が通じませんなのか判らない。アナウンスしては無音、またアナウンスしては無音、それを3回繰り返すとやにわにピーと音がするので慌てて伝言を残す。いいのかなあこれで。でも料金落ちてたからどこかにはつながってるはずなんだけど。話としてはまず彼の事務所近くに行くという手はずだったのだが、ここから地下鉄で結構遠い。行ってもしつかまらなかったら同行してもらってるW嬢N嬢に悪いのだが、何ぶん約束の時間に遅れそうなので観念して電車に乗る。途中から電車は地上に出て、窓から見える夜景を撮る。ぶれてしまって難しい。30分くらいで着いて駅から電話するがやはり携帯はつながらない。仕方が無いので貰った名刺にあった事務所の方に電話する。女の人が出て韓国語で「もしもし」と言ってるが強引に「ハロー」で押し切って英語で話す。ホロくんに会うために最寄り駅まで来てると言うと、こっちで捕まえるから駅の1番出口で待っていろと言う。お任せする事にして路上で待つ。W嬢N嬢はマクドナルドで待っててもらう事にして、僕らは出口付近に腰掛けるがさすがに結構寒い。ホントに来るんかいな、と思った頃、出口から黒い服を着た男の人が駆け出してきて僕に話し掛ける。もちろんホロくんではないんだが彼の名前を言ってるようなので彼の名刺を見せるとうなずく。「事務所に呼び戻しているから、一緒に来て欲しい」と言う。ついさっきマックに向かったばかりの彼女達を拾って、息切らしている彼と早足で歩く。彼はホロくんの同僚だそうだ。面目ない。着いた事務所には鈴木清順のサイン入りポスターとかあって、こないだ言ってた特集上映の話を思い出した。煙草を一本喫い終わった頃にホロくんが来る。お忙しいのにごめん。事務所の人にお礼を言って、彼の案内で近くのタッカルビ(鶏の焼肉)屋に入る。なんというか鉄板焼みたいなノリ。調子に乗って眞露を頼み、弱いので酔っぱらう。その間ホロくんとイマイズミコーイチは打ち合わせ。ついでに明日撮影する事になっている子に電話をしてもらい、約束を決める。そしてホロくんの撮影だが、結局彼の部屋は人を呼べない寮みたいなのだと判り、撮影は無理そうだという事になる。仕方がないのでボリのウチを使わせてもらうことにし、タクシーでイテウォンに戻ることにする。一日早く帰国するW嬢N嬢とはここでお別れだ。「お金はありますからホテルまでタクシーで」というN嬢の発言に一抹の不安を感じつつ、ホロくん運転手に行き先を説明してくれたので祈りつつさようなら。またね。明日起きれたら見送りに行くね。しかし今日は何時に寝れることやら。
さて僕らもタクシーで戻り、ボリに撮影で部屋を使わせて欲しい旨を伝えると、「いいけど、ミノにも一応断ってね」とのこと。だので部屋の中央、リビングで「ふとくま」とかいうビデオをででーんと見ていたミノさんにもいい?と聞く。「オーノープロブレム」とNOVAのCMのおばはん(古いな)のようにミノは繰り返すので、遠慮なく使わせていただくことにする。撮影の合間にホロくんになにやら話し掛けるミノ。ケイタイ番号の交換とかしてやがったが口説いてんのか。おまけにそこにいた全員を指差し(番号付けて)「どのタイプが好き?」とか言い出す。ホロくん、困惑する。この中から選べって言われても。ホロくんは寝不足でややお疲れだったが、撮影は割とスムーズに進む。すると急にびしっと服を着込んだミノが登場、これから出勤と言う。「オールデイノージョブ」とは言っていたけどたまには働くらしい。「今日は自分のバーでショーがあるから撮りたければおいで」というので後で行く約束をし、空いたミノさんの部屋にも入り込んで撮影続行。お疲れさま。終わって3人で例の「Homo-Hill」を下る。さすがに人出がすごい。なんでも米軍基地が近いそうで外国人(って僕らもだが)が多い。初日に行ってがらがらだったミノの店も混んでいる。よかよか。中ではいかにも「オーナー」って感じでミノがスタッフになにやら指示を出している。ぷぷ。さて行ってみて聞いたらミノはショーの時間を一時間間違って教えてて(こら)、僕らが着いた時にはもう終わっていた。やでやで。なのでビール一本飲んでからミノを撮影して帰ることにする。しかし「笑った顔と、笑わない顔の2パターンを何秒かづつ」ってだけなのに笑わないと言っちゃあジェームズ・ボンドみたいな顔になるし笑顔は妙に不自然だしでどうも根本的に意図が伝わっていないようではあった。使えんのかこれ。時間は午前3時をとうに回り、疲れてきたのでこの辺で退散。でもこの店、内装も音響もいいし天井も高いし、照明も適度でよいかんじ。疲れてなければもう少し遊んでたかったかな。撮影のみならず結局通訳ほかに引っ張り回してしまったホロくん(日本語堪能)には重ねてお礼を言って(土産が干し納豆と古本ってのはしょぼすぎたかと反省)、深夜の路上で記念撮影してお別れすることにする。彼はここに来る時のタクシー代も頑として受け取らなかったので、別れ際に握手する振りしてお金を握らせる(相手が気付いた瞬間に5メートルくらいダッシュで離れる)。なんかやってることがチップあげてるオヤジみたいな自分がいや。家に帰ると玄関に大量の靴が脱いであり、何とも言えない予感の中、家に入るとミノの部屋に映画祭のスタッフが全部いる。なんなんだおまえら。体力底無し。さすがに早々にシャワーを浴びて、挨拶だけして寝る。明日はまだ3人撮ることになってるし。そのうちの2人はいま隣室にいるスタッフなんだけど、ちょいと打ち合わせだけはする。しかし英語で話をしてると口説いてるみたいで困る。
なんだこれ。消火器か?やはり4つくらい無いと足らないのか、
と思っていたのだが、フリーペーパーのストッカーだとの事。