20030924WED jakarta
迎えに来ると言うジョンと12時に約束したので、少し早めに起きてその前に近くのデパートに行く事にする。初日に両替をした所だ。入ってみると一階にCDショップがあり、地下にスーパーマーケットがあるようだ。まず友達に頼まれていたバンドのCDを探す。無い。でもカセットテープはあった。一応チェックだけしてスーパーへ。さすがにコンビニエンスストアは無さそうなので、ホテルの冷蔵庫に入れる為に水とジュース、あとおやつを買う。なんかパイまんじゅうみたいなの。名物かどうか判らないが、食ってマズくなかったら職場にお土産として買って行こう。時間は、と時計を見るとどう言うわけか1時間早い。しまった1時間早く起きてしまったのだった。目覚ましを遅らせるのを忘れていたのだった。ジャカルタは東京と比べて2時間遅れ、香港に泊まった時に1時間遅らせてそのままだったのだ。得をしたのか何なのか、結局自分は8時に起きてしまったと判ったイマイズミコーイチがやたらぐったりしている。こうなったら早めに戻って部屋で休もう、とおっかない交差点を戻る。出掛けた時も道に出ている屋台から「すいません何時ですか」とか意図不明な日本語が聞こえて来るのをなるべく無視していたのだが、帰りもまた「こんにちわ〜」とか言ってくる。なるべく反応しないようにしていると後ろから「ナマイキ〜」などと言われてしまった。多分侮蔑してるんだろうけどニュアンスとして惜しい。60点。
ホテルのTVアンテナがキてました。
部屋に戻ってチョコレートをかじりつつ水などを飲み、約束の時間にフロントに下りて待つがジョンは来ない。30分ほど待ってみる。昨夜ケイタイの電話番号を教わって「何かあったら掛けなさい」と言ってくれたのだがまさか「あなたが来なくて困っている」とは言えないし、超忙しそうだしな、でも一旦部屋に戻るか、と腰をあげるとちょうど彼がドアを開ける所だった。遅れた事を詫びて、「そうそう」と小さな麻袋に包まれたものをそれぞれ呉れる。口が麻紐で結んであって、外には箸が一客結わえてある。開けると細長い本が出て来た。「ジャカルタのレストランガイド。英語だから、次回来る時にこれを参考に行ってごらん」と言う。この本の製作にジョンと、あとフェーが関わっているそうで名前も載っていた。ありがとう、いやあ粋ですなあ。しかしみんな何でもやってるのな。まず昼飯、とタクシーに乗る。「フライドチキンでいいか?」と言うのですごく首を縦に振ってみる。またどこをどう走ったものやら、店の入り口にデビ夫人みたいな女の人の肖像画が看板になっている店に着く。さっきのデビ夫人はオーナーだそうだ。メニュー判らないのでお任せで頼んでもらう。最初に草餅みたいな外見のものが出てくる。破ってみると中には蒲鉾のようなものが入っていて、魚のすり身を草で包んで蒸したもののようだ。料理を待っていると、女の人がジョンの横に座った。なんかドキュメンタリー作品を作っている人だという。「あなたの作品は上映されないのか?」と聞くと「私のはジャンルが違うので今回のには上映できない」と言う。どんなのだ、と聞くと「市内バスのドキュメント」ですと。どんなものやらさっぱり見当が付かないが、とりあえずこんにちわ。なんだか怒濤の勢いでジョンと喋って、「じゃ」と彼女が帰る頃には料理はあらかた運ばれて来ていた。メインは鶏を一羽丸ごと唐揚げにしたもの(衣はココナツだそうだ)、チキンスープ、ガドガドという甘味噌みたいな味のサラダ、揚げ卵味付き、それと米。あと小皿になんか褐色のモノが2種類あり、「トーフとテンペ」と言う。「トーフ」はなんかスカスカな厚揚げみたいのに稲荷鮨のアゲみたいな味が付いてる。「テンペ」は最近日本でも売っているけど要は日本で言うと納豆みたいなもんで、大豆を蒸して固めて、なんかの菌で発酵させたもの。日本で食ったものよりクセがなくて食べやすいけど、なんか一つ食べただけでスニッカーズのような満腹感が得られるのでそんなにたくさんは食べられない。僕は調子に乗って鶏の頭とか食ってみた。肉はほとんどなかったけど。後で気付いたのだけどこの店は、僕らが日本で買ったガイドブックにも載っていた。有名な店のようだ。
スイミングプール@ホテルインドネシア
またタクシーでいよいよプールへ。市内中心部の、でかい噴水のある交差点を囲むように大きなホテルが建っているのだが、そのうちの一つ「ホテルインドネシア」に入る。ここは戦後スカルノ大統領が最初に海外の賓客用に建てたホテルだそうで、費用は日本の戦後賠償金が当てられているらしい。するってえと祖父母の代の税金の一部かも知れん。それはともかくまあ古い感じのホテル。ビジターでもプールには入れるけど、僕ら自力ではたどり着けましぇん。平日料金22500ルピアを払って入ると、いかにもホテルのプールという感じ。客はほとんどいない。ジョンもおつきあいで最初水に入るが、すぐプールサイドで横になってしまう。そして実は泳げないイマイズミコーイチもしばらくして昼寝をしてしまい、結局僕だけが潜ったり浮かんだりしてあそんでいた。25メートルプールは足が着くくらいの浅さの所もあるのだが、途中からがくっと深くなり、片側は深さ3m。平日の昼間っからこんなことしてていいのかなあ、とややセコいことを考えてしまったが、まあいいか休暇だしと思い直し、ドリンクにコーラもらってプールを後にしたのだった。インドネシアのコーラはなんか味も炭酸も(色も)薄いような気がする。確かにコカ・コーラと書いてあるのだけど。
今日の上映はカメラ屋兼ギャラリーみたいなところらしい。多分ワークショップみたいなのもやってるんだろう。「オクタゴン」というその場所では「roman
homo」と題された写真展をやっていた。出品しているのはジョンとフェーともう一人がゲイ、あと3人はレズビアンで全員アマチュアだって。面白いというか納得というか、ゲイの作品は、例えば被写体への欲望のようなもの、写っているモノから受ける面白味みたいなものが伝わって来るのに対し、女性が撮ったモノは実に直線的に「言いたい事」が伝わってくる。それは例えばこちらをきっと見据えるポートレートだったり、何かの本(多分セクシュアリティー関連)の上に考える人みたいな人形が乗ってるものだったりするのだけど、言い換えれば曲解の余地がないわけで、何も写真でなくてもいいんじゃないかなあと思ってしまう。ゲイとレズビアンを二項対立で比較するのは意味の無い事なんだけど、取りあえず目下、表象として現れているモノに関してそんな解釈ができてしまうのはやっぱり味気ない。もっともっと下らない、間抜けな作品求む。
上映は5時からなのだが、ビデオが故障したとかでまた遅れる。しばらくするとビデオデッキ肩に乗っけたフェーがふうふう言いながらやってきた。しばらくして開始になる。紹介された今日の通訳はインドネシア人のかわいらしい女の子で、日本にいたのは10年以上前なので不正確だったらごめんなさい、と言いつつ結構自然な通訳をしてくれる。今回は昨日と同じく最後の部分で早々と明かりをつけられてしまった事以外は問題無し。各会場必ずと言っていいほど欧米系の人が来ているのだが(現地の子とのカップルっぽいの多し)、今日はちょっと歳のいった感じの女の人が最後まで残ってくれてものすごい勢いの英語で誉めてくれた。最初の挨拶を英語でしたのが裏目に出たわけだが、通訳の子に間に入ってもらって事なきを得る。さすがに時間帯と50席という会場のせいで、お客さんはあまり多くはなかった。上映後、昨日やった「CEMARA6」というギャラリーに戻ってそこでやっているプログラムを観る。戻る時にジョンではなくてスタッフの女の子がタクシーで送ってくれたのだが、奢られ続けている身としてはよっしゃここは僕らがタクシー代を出そう、と金を握らせると彼女は「ノー!!」と絶叫する。なんだか大変な事になってる彼女をなだめすかしてなんとか受け取らせるが、揉めているウチにメーターは上がりまくって着いてみたら足んなくてカッチョワリ。そこでやってたのはカナダの短編集だったのだが内容はいまいち、というかなんか問題ありそうなショタものとかあっていいのかなあ、と言うのが正直な感想。一番観たかった作品は「テープ破損」によりキャンセルになったと後で知る。しおしおしお。しかし破損、って。
同時開催の写真展「roman homo」
これで今日のプログラムは全会場で終わり。また中庭で蚊に食われつつ煙草を吸っていると、ジョンがでっかいイギリス人(見て判ったわけではないが)を連れてくる。この人もゲストで、イギリスで最初にゲイ&レズビアン作品の配給会社を作った人なんだそうだ。さすがに母国語が英語の人とは話すのがなかなか難しい。でもジョンも何度も聞き返していたので僕らが理解できてなくても仕方ないのであろう。この人は翌日バリに発ったのだが、その際に「ノーティーボーイズ」のプレビューテープを持って行ったらしい。欧米でいまいち受けが悪い理由を明快に説明してくれると有難いんだけど。さてジョンと彼、そこに居たスタッフと一緒に夕飯に行く事になったが、その前にジョンが自宅に寄るというので着いて行く。相変わらずどこに着いたのかさっぱり判らないが高級住宅地の「すぐそば」という感じの路地にある平屋がジョンの自宅だった。これがまたアーティストの家ってな感じで、実際ジョンとフェー、あと画家の女の人などがルームシェアしているらしい。パッと見て、実用品より作品やらポスターが目に入ると言うかんじ。少し話してジョンが支度を終えると今度はレストランへ向かう。中に入るといきなりコンボバンドがお出迎え。それをやり過ごして奥の部屋に行くと、たくさんのスタッフがもう座っている。話し始めるとバンドがアコースティックとは思えない音量で演奏を始め、声を張らなくてはならなくなる。ああもっと自分の声質が低かったらなあと思いつつ会話。飯食うのは僕らだけなので各自注文する。今日はチキンライスにする。日本で言うケチャップご飯のチキンライスではなくて、茹でで味付けした鶏肉と野菜、それから取ったスープ、ご飯のセットでうまし。ジョンが椎茸の天麩羅みたいなのを頼んでくれる。めいめい飲んでいたスタッフがいつの間にか日本語に話題になったらしく、爪楊枝を持って「こればなんて言う?」とか聞いて来るので答えたりしているとそこにいたフェーがしたり顔でいきなり「オカマ」と言い出す。スタッフ「それはなんだ」と騒ぐ。昨日彼に「日本語ではゲイをなんて言う」と聞くので「イコールではないけれど」と念を押して教えたのだが憶えてるなあ。フェー、ニヤニヤしながら男のスタッフを一人一人指差して「オカマ、オカマ、オカマ」と連呼。僕らもしっかり指差されてしまいました。ま、いいんだけど彼は以前日本人と付き合っていたらしくて、突然「スケベ、ってどんな意味だ」と聞いて来たり(教えるとジョンを指差して「スケベーヤツゥ」と言い、ジョン意味が判らなくて困惑)、「知ってるぜ、キンタマーニ!!(バリ島にある地名)だろ!」と叫んだりする。いちいち言う度にすごく嬉しそうなので放っておく。ケーシー高峰度、高し。食後、「クラブでゲイナイトがあるが行くか?」と聞かれ、行きたいけどちょっと疲れているのでパスさせてもらって明日以降にする。こういう時ジョンに「あなたはどうするのか」と聞くと「君たちにあわせる。ゲストだからね」と言ってくれるので大変ありがたいが、その度に自分達のゲストとしてありがたみが見合っていないので申し訳ない思いが先に立つ。せめてこういう時だけでもエンタテインメント性のある押し出しだったらねえ。って何言ってんだか。ホテルまで送ってもらって明日の待ち合わせ時間を約束して、シャワー浴びて寝る。インドネシアの水は洗剤の泡立ちがやや悪いかんじ。それとも僕らが汚れ過ぎているのか。
上映会場「オクタゴン」