今は深夜12時近く、もうすぐ日付けが変わる。一応。まずは飯。今回も屋外にテーブルのあるレストラン、ここはイタリアンとインドネシア料理を両方やってるとこだった。インドネシア来てわざわざパスタ頼むのも何だかだし、と鶏肉のそばを頼む。イマイズミコーイチはナシゴレン。ジョンに、他の映画祭に落ちまくった話をしつつ今後の予定などを聞く。この映画祭をインドネシア各都市でやる予定だという。来年は12月の予定だそうなので、次回は是非新作も持って来てくれ、と言われる。今回プレビューを持ってきた旧作は来年やる、と言ってくれたのでまた来たいと思うけど、やっぱり新作もあった方が楽しいよなあ、と料理が来る。汁なしそばに鶏を醤油で煮付けたものが掛けてあって、それにチキンスープが付いている。麺はラーメンよりはやわらかいかと言う感じの小麦粉のもの。インドネシアで食べたものはけっこう形容しづらい味なんだが、これはとても好きな味だ。ジョンが、この店はアイスクリームが美味いからもらっておいで、と言う。建物に入るとアイスクリームがサーティーワンとかみたいにバットに入っていて、欲しいのを言うとカップかグラスに盛ってくれる。すごく濃そうなチョコレートを頼む。途撤もなく甘いのではと一瞬思ったがそんなことはなくて旨かった。ぼたぼたたらしながら食う。ジョンも映画を作りたいと思っていると聞いていたので、是非東京の映画祭に出品してくれ、と言う。「東京国際とL&Gとどっちだ」と言うのでううむ、やっぱL&Gかなと答える。「僕が作るなら暗い、抑圧された雰囲気のものになると思う」と言っていたけどどうなるかな。単純に見たい。飯は最後までごちそうになってしまった。2人とも最初に両替えした1万円がまだ残っていて、ジャカルタ空港で空港税払っても足りてしまいそうだ。日本で僕らがこんな接待したら月収の半分くらいは飛んでしまいます。一応経費とは言え大丈夫か。ありがとう。結局憶えたインドネシア語もこの「トゥリマカシー=ありがとう」「サマサマ=どういたしまして」くらいだったなあ。あ、「エナ=おいしい」ってので全部だ。並べてみるといかにごっつあんばっかりしてたかが判って異様に恥ずかしいぞうおお。
すべての会場には当然ポスターが貼ってある。 見掛けた野良猫は総じて痩せていた。
荷物を置く為にジョンは自宅へ。僕らも付いて行く。今日は同居している画家の女の人がいる。挨拶して、シャワー浴びてるジョンを待つ。ついでに自宅にいる彼を撮る。ポスターやらペインティングに囲まれて、またこういう家にいるのが似合うやね。画家の彼女と4人で少し歩いてタクシーを拾える通りに出る。同行者がいるので安心してその辺の写真を撮りまくってはぐれそうになる。ここからそう遠くない所にジャカルタで最初に開かれた高級住宅地があり、政府要人やお金持ち(多分ほぼ同義だろう)とかの大邸宅がある。僕らも昼間何度も通ったけど、なんか門が高くて庭が広そうだ。そしてまた地理関係が良く判っていないのだが、フェーが言うにはゲイやドラァグ(と言っていたがホントか、トランスの人ではなくて?)の売り専が夜になると立ってる一帯が近くにあるとの事だった。「今度タクシーで回ってみよう」とフェーは言っていて、是非見たかったのだが時間がなくてそれきりになってしまった。その時「売ってる人は路上でだけ?お店とかないの?」と聞いたら「ボーイズマッサージというのはある」と言っていた。閑話休題。
クラブに着く。外観はシンプルなのっぺりとした建物。独立して建っているようだ。なんか写真を撮りづらい感じ。やはり特にカメラを持ち込ませない為にとロッカーで荷物を預けさせられてキーを取り、まず地下に降りる。入ると結構広い。青山スパイラルのCAYよりもう少し大きい感じか。そしてその3分の1くらいのニ階部分がある。その二階でフェーに再会すると、「オカマは大体二階にいる」と言う。ジョンに聞くと「二階はゲイが多いけど、一階はミックス」と説明してくれる。映画祭では先週ここでゲイナイトをやったそうだ。そんな空いているわけでもないのにフロアには人が少なくて、みんなその外側で踊ったりしている。なんでかな、とフロアに立ってみたら、スピーカーの音がここだとあんまり来ないのだ。むしろ周辺の方がよく響いている。だから音に打たれて踊るって感覚がなくて敬遠したくなる。クラブとしてはなんか設計ミスじゃないのかと思うのだがまあいいや。話はしやすいしそんな暑くないので快適だし。さてここは一階を見下ろすように、二階には張り出したバルコニーみたいな部分があって、金属の手すりがあるだけなのだがお調子者というかノリのいい客がそこで踊ったりする。お立ち台みたいなものか。しかしみんな男女/男男の取り合わせのどっちかで(3人組もあり)腰摺り合わせてセックスの真似ポーズしてるだけなのでだんだん飽きて全員ランバダに見えてくる。一階に降りてその張り出しを見られるトコに座っていたら、別に曲調は変わらないのだが急に女の子が3人出て来た。揃いの衣装なのでこれはショー出演者であろう。着てるのは、何と言うのかボンデージ風というのか、露出度は高いけどそんなに食い込んではいないという黒いビニールレザー調の、胸は胸だけパンツはパンツだけっていうツーピース。この人たちが二階から降りて来てバルコニーに並ぶ。そしてめいめい決めポーズを取る。たまに激しく踊る。髪かきあげる。手すりに絡み付く。たまに3人集合してくっつく。これの繰り返し。ヌルい。美人なんだけど。曲も変わらなくて(これがまたBPMが微妙に遅くて踊りづらいんだ)、照明も特に当ててあげないし。要は起承転結しないのでだんだんダレてしまうのだな。以前ベトナムのビアン映画でこんなふうにセクシーねえちゃんがぞろぞろ出てくるのを観た事があったけど、このヌルさ、相通じるものがあるなあ。さていつの間にか女の子組が終わってた、となると次は男の子でしょうか。まさか無いなんて事はねえいやいやいやまさか、と話しているとまた、3人来ました。男の子は上は透ける黒の網シャツ、下は黒の短いパンツ。マドンナが昔のツアーでこんなダンサー引き連れてましたか、といった感じの衣装。多分網シャツ着てた方が体の線が強調されるのだろうけど、脱いでた方がカッコイイよなあ。しかしなかなか二階からの階段部分で動かないで手すりに跨がったりポーズ取ってたりして下まで来ない。一番前の子以外は顔しか見えない。パフォーマンスは、女の子とほぼ同じなので省略。ショーにしては演出がダンサーの動きだけだし、にぎやかしにしては違和感が。いまいちどうしたいのか半端だった。みんな見た目は「グッドルッキング」なだけになんかもったいない。しかしイスラム圏のクラブってのは初めてだ。いろいろ考えるとすごく面白い。タンクトップ筋肉ムキムキのバーテンも二階のオカマフロアにはいるんだけど、飲み物運んでるのはだいたいパートのおばちゃんみたいな女の人だし。なんか深夜の養老の瀧とか連想してしまいました。その後ひとしきり踊って、疲れてバーでコーラなど飲んでいると、ジョンがやって来て「疲れたのならホテルに戻るか?」と言ってくれるので、相談して少ししたらここを出てホテルで荷造りする事にする。すごく申し訳ないがジョンが空港まで送ってくれると言うので朝まで付き合ってもらう事になってしまった。3人とも寝れないや。そこにいたスタッフにさようならをして、2時半を回った夜道を歩く。1メートルごとにゴキブリがいる。別のクラブの前でジョンが冗談めかして「ここもゲイナイトやってる。寄ってくか?」などと言う。もう笑うしかない。持久戦ギャグ。
ホテルに戻って貴重品を金庫から出し、3人で部屋に入る。ジョンには座って待っていてもらい、僕らはシャワーを浴びて荷造り。それでもあと2時間したら出なくては。改めて見てみたら僕の土産は食品ばかり。安っす〜。2人とも準備が終わり、もう少し時間があるので、寝てしまわないように話をする。この時語学が不充分なことのデメリットにようやく気付く。言う言葉がどうしても青臭くなってしまうのだ。恥ずかしい。徹夜で拙いコトバで映画について語ってるなんてな。ひょえ。買い置きしておいた水を出し、すいませんあげられる物はこれくらいしかないです、と僕らの煙草を1箱づつ渡し、部屋を出てチェックアウトする。
思ったより眠くない。うつらうつらしているジョンを起こさないように大人しくしている。到着した時には気付かなかった多分国内線の空港を通り過ぎる。なんか空港とは思えない呑気な建物で、飛行機が無かったら地方のPAかと思うくらいだ。ヤシとか生えてるし、と国際空港に着いたらこっちもでかいだけでまた同じだった。そうだよな飛べばいいんだものなあ、と得心する。チェックインしたらお茶でもするか、と言うジョンに、ホントは早く戻って休んで欲しいのだがこっちも名残惜しいのでもう少しだけ付き合ってもらうことにする。航空券を発券してから一旦ゲートを出て、歌舞伎役者みたいなイラストが描いてあるファーストフード店に入る。日本食かと思いきや、写真を見たらなんか中華料理のプレートみたいなのだった。だが開店したばかりで水しかないというのでミネラルウォーターのボトル(高い)を買う。ここで初めてジョンにオゴる。何枚か記念写真を撮り、煙草を何本か吸っていよいよお別れだ。しかしジャカルタは面白かったなあ。カルチャーショックって感じではなかったけど(面倒見られっぱなしだったし、当然)、もっと見たかったな。ありがとうありがとう。映画祭終わったらゆっくり寝てね。あと2日くらい残ってるみたいだけど。握手して、別れ際に財布に残ってたインドネシアルピアをジョンに「ドネーション」っと言って渡す。さっき最後に空港税払ったので、もうこの通貨は使わない。使ってくれ、と言っても1000円も無いくらいだけど。もう一度セキュリティーチェックを通り、ゲートの向こうでまだ立って見送ってくれているジョンに手を振ってさようなら。見えなくなってから戻って覗いてみようかと思ったが小躍りとかしてたらヤなのでそれは止めてイミグレーションの方へ歩く。建物の中はひんやりしていて気持ちが良かった。
多分なんかの広告なんだが。 搭乗ゲートに至るまでこんな感じ。手前は電話。
搭乗ゲートの近くの喫煙室で、でもこれは屋外になるのだが煙草を吸いながら外の景色を眺める。しかし中の施設ものどかだ。こうして高台から緑豊かな光景を見ていると高原のペンションとかにいるみたい。早朝なので静かだし。なんか急に眠気が。飛行機は問題無く飛ぶ。予定フライト時間がいやに長いなと思ったら途中でシンガポールに止まるようだ。シンガポールから先に乗り継ぐ人間は荷物を全部持って待ち合い室まで出るか、機内に留まるかのどっちかなのだが、寝ていたいので機内に残る事にする。1時間くらいだし。案の定あっという間に出発。そしてやっと香港に着く。帰りもここで一泊だ。ホテルに着いて、初日泊まった時に予約しておいた部屋の鍵をもらう。あ、同じ部屋だ。ってことはまたお湯が出ないのか、今度は最初に言おう。と思っていると初老のドアボーイがものすごい勢いでヘンな日本語を喋りながら荷物を運んでくれる。このおっさん(谷啓似)、やる気ありすぎて僕らの部屋を通り過ぎてしまい「あれあれ?」とか言ってるので「こっち」と指差して開けてもらう。部屋に入ってからも怒濤の勢いで部屋の説明を続けている。「これが空調で窓は開かなくて冷蔵庫には飲み物があって電話は使えてこのスイッチを入れるとお湯が出て」、っておいこら湯はスイッチ式か。初日には気付かなかっただけなのだ。だせえ。フロントに何と言って抗議しようかと思っていた僕がバカでした。ついに説明する事がなくなったペーター(おっさんの名前、ネームバッジ付けてた)最後に「え〜チップく〜ださ〜い」。もう用は無いので小銭渡してお引き取りねがう。どうも。スイッチ入れると確かにお湯がびゅうと出やがる。くやしい。でも出るに越した事はないのでシャワーを浴びて少し寝て、夕飯に行く事にする。疲れた。
まずは近所のスーパーでまたレトルトの料理の素を買う。唐揚げにレモン味のソースをかける「レモンチキン」は日本では売ってないので買い込む。3個で10HK$。地下鉄で旺角(モンコック)に向かい、インターネットが使える店を探す。フロントでここにあると教わって実際ここにあったのだが、いざ自分のメールをチェックしようと思ったら記憶してきたパスワードが違っていて結局使えず。どひゃあ。諦めて今度は逆方向に電車に乗り、尖沙咀(チムサッチョイ)に雲呑麺食べに行く。ガイドブックにも載っている店だが、店の前面のガラスに一面ヒビが入っており、「触るな危険」と貼り紙。直す金がないのだろうか、でも店はやっていてけっこう繁盛しているみたい。僕は欲張って牛肉煮込みと雲呑が両方入っている麺を頼む。行きに食べた店より落ち着いた味。ここもうまい。腹ごなしに近くのDVD屋に入って多分海賊版のえらい安いソフトを見る。日本映画とかも結構あったけど買いたいと思うほどのものは無し。ちょっと足を延ばしてHMVにも行ってみるがCDとかは普通の値段でこっちも無し。日本人のCDは直輸入と現地プレスとあって帯にあるアーティスト名は当然全部漢字だけど、漢字に直されてて一番面白かったのは「瀧&翼」になってた「タッキー&翼」。思わずピエールを前に付けたくなってしまうな。出ると、イマイズミコーイチが路上のソフトクリーム売りのトラック屋台でアイス買って食べていた。これからデザート食べに行くと言うのに。そう、そのデザート屋が混んでいるのでこうして時間を潰してるわけなんだが、大分疲れたので店に戻る。この「糖朝」は去年日本にも支店が出来たけど、昔からすごい有名な店のようだ。相変わらず混んでるが、入ると割とすぐ席に案内してくれた。2人でマンゴプリン、マーラーカオ(蒸しパン)、お汁粉に入ったあったかい豆腐、羊羹みたいなの、タピオカを頼む。これだけ食べても日本の半額くらいじゃないだろうか。直帰できないのでこれくらいの事はないとね。帰りがけにまたスーパーに入ってタイ米2キロを買う。そういえば前来た時も閉店直前のスーパーに入ってタイ米買ってたな。でも5キロ、あれは重かった。ここのレジ打ちのおばちゃんがこれまで見た事もないくらいトロくて、あまりのスローさに客の方があれこれ指示している。僕の時も米一袋スキャンするだけでなんだか大変な事になっていた。しかも袋もくれないので自分でストッカーから抜くしまつ。なんだか一気に疲れて帰る。明日の出発も結構早いので、コンビニで水を買って、もう帰って寝る事にする。
機場線の車内。天井にはユナイテッド航空の広告。 牛乳プリン屋の看板。でももう閉店しています。