2005.0607 Tue 日韓ハイブリッド1 、奢られっぱなし
ソンワンと電話で話し、今日のお昼を一緒に、という事になった。彼の職場はこのホテルからほど近く、迎えに来てくれるという。多分昼休みなのだろう、お昼頃に現れたソンワンはなにやら透明なビニールに入ったお土産をくれる。中にはTシャツとカタログなど、彼の働く「アート・シネマ」の上映イベントのグッズだという。シャツがかわいい。連れだって昨夜のゲイバーがあった辺りを抜け、最近移転したというその「アート・シネマ」に連れて行ってくれる。ビルのエレベータで上がって、屋上みたいな所に着いた、と思ったら建物の半分くらいが更に上へ延びていて、デパート屋上の如きそこを突っ切り再び室内へ入ると、2つあるシアターのうち1つが「アート・シネマ」なのだった。さっきグッズをくれた特集上映は昨日で終わって今日は何もやってないらしかったが、入場口に貼ってあったかっちょいいポスターに見とれていたらソンワンはすかさずそれをめりめりと剥がしだし、まるめて僕にくれた。うれしい。一通り見終えて、割とすぐシアターを後にして再びエレベータに乗る、その途中で彼の同僚らしい女性と乗り合わせたので一応紹介してくれるが、相手もどう接していいのか判らない様子で、お互い微妙なリアクションしたまま一階に着いてしまったけど、あの後ぶりぶり怒ったりしてないかなあ、平気か?
この辺りでもう一人と待ち合わせをしている。初めて韓国に行った時に通訳を始めいろいろとお世話になったロギくんだが、彼とはもう4年くらい会ってない。今回着いてすぐソンワンに「会えるかな?」とせがんでみたのだが「今ちょっと体調が良くないみたい」と言われて心配してたのが、今日は来られるみたいで期待する。ちょっと待ち、路地の向こうから背の高い彼がひょっこり現れるのが見え、僕らは妙に嬉しくて駆け寄る。変わってないなあ。歩きながら話をしていると、ロギはちょっと咳き込んだりする。風邪だという。やや歩いて仁寺洞(インサドン)という日本で言うと何だろう、骨董屋もある仲見世(にも骨董屋はあるのか知らないが)みたいな通りのご飯屋に入った。豚肉のしゃぶしゃぶ鍋(肉を一口レタスご飯に巻いて食べる)をいただきながら近況報告、はあんまりしないでもっぱらロギの近況ばかり聞いていた気がするがなんか、仕事が忙しいみたい。海外で会う人はおしなべて忙しいというかワーカホリック気味な印象だけど、そういう人を自分たちみたいなお気楽な旅行者に付き合わせていいもんだろうか、とやや気持ちが後ろにめり込みかけるけど肉は旨いし、で最後にスープに麺まで入れて食い、げふ。
店を出て(またおごってもらってしまいました)、近くにある喫茶店に入る。韓国には「伝統喫茶」というジャンルの店があって、昔風のお茶とお菓子、が頼めるのだがどうやら彼らが連れて行きたかったらしいテラス席は時間が早くてまだ準備中だったようで、僕らは普通に室内の席に通された。入った時には他に客は誰もおらず、広げたメニューをあれやこれや検討して(何しろさっぱり判らない)、イマイズミコーイチはロギと同じくオミジャ、という甘い茶を、僕は名前を忘れたが何とか言うやはりほのかに甘い中国茶を頼んでみた。4人とも途切れなく煙草を喫みながらくだらない話をしているとソンワンの携帯が鳴った。何か話をしていた彼はふいに僕へそれを渡して寄越し、「チョンナさんだよ」と言う。チョンナさん、というのはやはり以前からの知り合いの女性で、韓国に来るたびに会ったり、彼女が東京に来た時には意味もなく二丁目の24会館前まで連れて行ってみたりしたことがあるのだが、今回は行く旨を知らせる為に送ったメールが受取り不可で返ってきてしまったので、ソンワンに頼んで連絡を取ってもらっていたのだった。拙い(僕が)英語で今インサドンにいて、今日はこれから日本の友達がソウルでやる公演を見に行くんだ、と言うと「わたしも、いきたい」と明瞭な日本語で言うのでおいでおいで、と夕方に約束をする。ソンワンに(ホントに済まん)会場の説明と待ち合わせの約束をしてもらい、じゃあね、と電話を切った。
ソンワンが「そろそろ」と言うので、昼休みにしては長いが大丈夫だったかなと思いつつ腰を上げ、ここの払いくらいは、と彼を追ってレジスターまで小走るものの、で幾らだと思ってる内にソンワンがクレジットカードを出してしまい、玉砕。ふたたびお、ごっても、らってし、まいまし、た。明日の帰国日には来られたら2人で見送りに来るよ、と言ってくれる彼らにありがとうをして、一旦ホテルに戻った。いつものように鍵はフロントに言って開けてもらう、これがちょっと心理的に負担。
おなかは一杯だし眠いし、とベッドに横になるとそのまま寝てしまいそうになるが、チョンナとの約束までの時間寝ているのももったないので、少しだけ休んでから出かけることにする。シャワーを浴びて(バスタブにはジャグジーもあって、イマイズミコーイチは試したようだ)、メールを開けてみる。別に緊急を要するものは無いけど、韓国から返事を送ってみようかな、と思うがなにぶんOSがハングルのみのウィンドウズXPなもので、「日本語入力」が選択出来ない、つうかどれだか判らんので諦め、ローマ字でしょぼい返事を書いてみた。
デパート前、ベンチなのかステージなのか、或いは兼用か。
自由時間はミーハーなショッピングとしたい、との僕の希望で明洞(ミョンドン)に行く。韓国では日本人音楽のCDが韓国内限定販売ライセンスでかなり安く売っており、でかいレコード屋があればなあ、と思っていたのだけど、ここにあるのは服屋ばかりで見あたらない。後でチョンナに聞いたら、CDの購入はもっぱらネット通販が主流で、あんまりCDショップは無いらしい。僕らの滞在している辺りには大きいのがあるらしかったが結局見つけられなかった。スターバックスでお茶を頼んで違うものが出てきたのをまあいいかと飲みながら、まだ時間あるし東大門(ドンデムン)行ってみましょか、と地下鉄に乗る。東大門には文字通り門があるのだがただいま修理中、それはいいとして門の覆いに原寸大の東大門の写真がプリントしてあったのに軽くヤられる。横から見るとまたすごい。いわゆる繁華街をぐるりとして、イマイズミコーイチは屋台で出ていた、衣のそとにクリンクルカットポテトをまぶし付けて揚げてある大変なボリュームのアメリカンドッグを買って食っている。味は「普通の方がうまい」との事。僕もすこし囓らせてもらったけど、ポテトに塩が掛かっていればかなり旨いのじゃないかなと思った。ちなみにこの屋台、大変繁盛していました。露店の先に出ていた8種類くらいあるペ・ヨンジュン靴下(日本語で「ヨン様」と添えてある。イビョンホンも2種類くらいあった)にノックアウトされつつ(これを買った日本のおばさまは履くのか?飾るにしてもわざわざこれを選ぶんだろか)、結局ホットドッグ以外何も買わずにまた地下鉄に乗る。
コンポウゲイジツ、ですかね一応。
向かった先は恵化(ヘファ)という駅、大学が建ち並んでいるので大学路(テハンノ)と呼ばれるエリアで、ワカモノノマチ、とガイドブックには説明があるがなるほど駅を出た途端になんだかいろんな呼び込みめいた事をしてる学生らしい集団がそこここにいる。通りを真っ直ぐ行くとマロニエ公園という公園が見えてきた。公園の敷地内に建っている「文芸会館」でその公演はある。時間は7時過ぎ、今回初めて思ったけど韓国はなんだか昼が長いように思うんだけど、そんなことあるのかな、まだまだ明るい。待ち合わせの時間にはもすこし余裕があるので先にチケットを確認しておこう。僕らの分は事前に友達に確保してもらっていたのだがチョンナの分は判らない。果たして受付に行ってみるとチケットは売り切れだという。がびーん。チョンナには「取れるか判らないけど」とは言ってあったが、このままだと一緒に観られない。僕らは開演前で超慌ただしいであろう受付の、赤いチャイナドレス着た可愛らしいおねいさんに、「何とか1枚、買えないすか」と言ってみる。おねいさんも困っているが、やがて「開演直前にもう一度来てください。確保できるかやってみます」と言ってくれたので頼んます、と一旦会場を出た。
待ち合わせに決めていたのは屋根のある半野外ステージみたいな所で、何のためのものかよく判らないのだが石の腰掛けがあって人が談笑していて、ステージではホームレスぽい人が寝ている。約束の時間を過ぎても現れないチョンナが心配になり、電話してみようかと思った矢先、向こうから手を振って彼女が姿を現した。なんでも仕事場からここまで地下鉄で40分かかると言うことで、急かしてすんません、と思いつつチケットの事を言うと、自分でも会場のオフィスに電話したら売り切れだと言われて知っている、構わないから、と言うのだが一応受付で頼んでいるので諦めないで行ってみよう、と約束にはやや早い時間だったがまた受付へ行った。人垣の向こうにいたさっきのおねいさんは、僕らの顔を見るとこっちへ来て、「キャンセルが確定したので、一枚確保できました」と言った。良かったあ。語彙の少ない英語で可能な限りのお礼を言って、受け取ったチケットを確認するとなんだかえらい前の席、これすごい良いチケットなんじゃないかなあ、とチョンナに幾らだった?と聞いたらキャンセルだから正価の何分の一くらいだと言う。らっき。僕らと彼女の席はすごく離れていたので、相談してイマイズミコーイチがチョンナが買った1階かぶりつきの席へ、僕とチョンナが2階席に座った。今回の公演(Dumb
Typeの"Voyages"と言うパフォーマンス)、僕らは日本での初演を数年前に観ている。やる度に内容が変わることもあるので、おそらく同じではないだろうと期待して、あの時はどんなだったっけね、と記憶を辿る。チョンナはもちろん今日まで知りもしなかった集団なので何と説明していいのか判らず、まずは観てみてね時々大きな音が出ると思うけど、と説明にならない説明をしていると、やがて"Voyages"が始まった。
進行は、最初のパートはあまり変わってなかったが、その内初めて見るシークエンスも出てきて、呑み込まれそうに面白い。照明と映像が微細にチューニングされているので、ステージと客席の境目が曖昧になっていてそれもおもろい。自分達のいる席はステージから一番離れていて全体がよく見えるせいで目を細めてみたりして楽しんだ。チョンナもタンノーしたようだった。
上演後、イマイズミコーイチと合流して出てくるお客さんを眺めていると、ロビーでは女子高生らしい制服の集団が溢れている。なんだろう、とチョンナに言うと、「足の動きがダンサーみたいだった」と言うのでもしかしたらそういうガッコか、部活かも知れない。直後の喧噪が落ち着くと、ロビーには席が設けられてQ&Aが始まった。出たのはメンバーの内2人だけ、プラス通訳さんの3人で、観客からの質問に答えていくが肝心の質問が韓国語なので答えから質問を推測するのでちょっとまどろっこしい。答えている一人は友達なので、最初は彼女をデジカメで集中撮影していたがだんだん飽きてきて、外で煙草すったり売店のソフトクリームのポスターのフレーバー当てごっこ(説明がハングルだけなので、写真の色で味を当てる、ちなみに全部ハズした)とかやっていた。
Q&Aが終わった。長かった、って僕らが言うのお門違いだが外の景色もすっかり夜になって静まりかえっている。公演が終わってお疲れさま、の友達とやっと話が出来て、この後どこかで会える?と聞いたら、機材の搬出が終わるまで動けないので取りあえずそれまで待てるか、と言うので一旦飯食いに行ってから戻る事にする。3人で連れ立って辺りをうろうろするが、この辺は割と暗くて、お店もそんなにない。目にした店を片端からチョンナに説明してもらって、チヂミの専門店みたいなのがあったので入る。メニューを見るとさすが専門店、写真はチヂミばっかりでいい加減な目からすると宅配ピザのチラシみたいだが、基本は海鮮入りらしいのでそのチヂミ2種類とトッポキ(お餅)の炒め物にした。出てきたそれは予想外に巨大なもので、うひょえ1枚で良かったかも、と思いながら遅い夕飯、チョンナとゆっくり話をする。いつの間にか日本語が上手くなっている彼女は、日本人に韓国語を教える仕事がしたい、と言い、今はデザイン会社で働いているそうだけど「私はホントに無計画、と良く友達に言われるので先のことは判らない」と苦笑しながら教えてくれた。この人も忙しそう。
戻ると会場入り口は真っ暗、まさかもう出ちゃったのか、と通用口みたいなところへ回っても閉まっている。え~、とか言いながら更に裏へ回ると、ステージの背面部分が口を開けていて、そこから機材搬出の真っ最中であった。しばらく待っているとやがて、さっきQ&Aしていたのとは別の友達の姿を見つけたので呼んでもらい、もう少し時間が掛かりそうだけど自分がやることはないから、と外で立ち話をした。彼女は「シンカンセン」の内の一本を撮った監督でもあって、僕らがソウルに行く前の上映に他のメンバーと行ったところ、誰かが「この人は監督で」と言ってしまったため本人はお忍びのつもりが「質疑応答やりますか」「挨拶しますか」などと言われてしまいおまけになんやら土産をたくさんもらってしまった、と言っていた。この人はまだスクリーンで見ていなかったのでそれは良かったなあと。
明洞で。まあこんなもんです。