2014.0516 FRI
さてどうしようか、昼ご飯は13時くらいになるはずだからあまり食べないほうがいいか、と写真からすると量の少なそうな「ウェスタン」を頼んでみる。確かにあっという間に食事は済んで、部屋に引き揚げてだらだら過ごす。「何か妙に爪が伸びるのが早いんだよねえ、切ってきたのに」と手の爪を見ながらつぶやくイマイズミコーイチ。そう言えば自分もそんな気がする。そろそろ約束の時間(会場に近いホテルにしておいてよかった)なので出かけよう。昨日の昼間は部屋から出なかったのでルームメイクは頼まず、回ってきた掃除の人にタオルと水だけ交換してもらっただけなので今日は掃除してくださいの札を下げて鍵を閉める(オートではない)。
Meta Houseの一階部分でぼんやり待っているとやがてトゥクトゥクが着いた。サオとポレン、と…それにお子様が2人。「私の子供」とサオ。誰との、というのは置いておいて上が6~7歳くらいの男の子、下が2歳くらい女の子。あとなんか親戚の人もいて…で定員以上になって走り出す。初めてホテル周辺以外の場所を見るような気がする。あれが王宮かなあ、割と近いような、でも歩くのはちょっと無理かもな。車はどこをどう曲がったのか既に判らない。割と高級住宅地みたいなところを抜けて何というのか、観光地の食堂みたいな店の前で止まった。「ここ」との事なのでぞろぞろ入る。店には先客が一組だけいるが他はガラガラ。「カンボジアで食事は全部陽が出ているうちに済ませるから朝が5~6時、昼が10~11時、夜が16~17時で、日本よりちょっと早い」そうでとなると今は昼食のピークが去った後なのだろうか。靴を脱いで座敷席に上がり、「注文はこっちでしちゃっていい?」とサオ。うん、よく判らないのでお任せする。イマイズミコーイチも「ダメなものは除けるから」とのことで超お任せ。スープが2種類、あと野菜炒め、魚の姿蒸し、どれもうまい。一つだけ蟹のマリネサラダみたいのがあって、運ばれて来た時に普通に一匙掬おうとしたら皆が一斉に「ダメダメダメ!」と止めるので何で、と訊くと「とにかく試しに味見をしなさい」とのことで少しだけ口に入れたら理由が判った(ものすごい刺激辛)のですが割と未体験な味。最初はミント噛んでるみたいな味がするんだけど後から辛くなってくる、と言う感じ。しばらくジャックフルーツジュースしか飲めませんでした。
これを
サオの娘、ソフィーはカンボジア料理が好きじゃなくて食べないのでフレンチフライを頼んでいる。でもそれも食べてないけど、つうか目を離すと氷水の入ったグラスを立ったまま床の上にぶちまいたりしてるけど、つうかサオも一応叱るものの「あら大変」とか言って床を拭こうとはしないし店員も飛んでくるわけでもなく(結構わりとそのまんま)。ご飯はサオの親戚の女の子がよそってくれるのだが「一回一ドルよ」ってサービス料が高いな。今日の料理はさっきの蟹以外は辛くは無くて、どちらかと言うと甘めかな。「このメニューは何て言うのかしら一般庶民の味ね、あ、私は魚の頭が好きだから頂くわ」とサオが豪快に川魚の姿蒸しから頭部をがっつり削ってる背後ではソフィーがまた氷の入った水を、だぁ。
ああ食った、と外のソファーでぐったり喫煙しているとものすごいいい加減なドラえもんTシャツを着た店員さん(?)がイマイズミコーイチのカバンを持ってきてくれた。忘れ物だと思ったらしい。「さあ甘いものを食べに行くわよ」とサオは宣言してトゥクトゥクに乗り込み、途中サオ宅で子供達を下ろして、多分子守りさんだと思うんだけど中年女性に託すと再度出発(どこへ)。しばらくぐるぐる廻った後で「マーケット」に着いた(ちゃんと確認していないけどこれが「セントラル・マーケット」だったのかなあ、今となっては推測するしか無いけど位置的には)。「甘いものを食べに」と言うのでてっきり喫茶店にでも入るのかと思いましたが違いました。でかい建物をぐるりと取り囲むように露店があり、それをかき分けてまずは一番外側の店を廻る。そこかしこでなかなか強烈な臭いが立ちこめている。サオがいちいち解説してくれるカンボジアの、まあスナックですね「あれが揚げたバナナ、サテー(串焼き肉)、フランスパンに米粉を溶いたタネで小エビを絡ませて揚げたもの、サトウキビジュース(サオが買ってくれた)、この笹で包んだお菓子はおいしいし今日いっぱいくらいは持つからホテルに戻って食べなさい」とどんどん紹介されて訳が判らなくなってくる。正直なところさっきの食事で満腹なので何をみても興味深くはあるものの「喰いたい」という気持ちにはあまりならないので眺めるのみ。生肉をただ机の上に並べただけの「店」もありそこへ蠅がぶんぶんたかっていました。とこれまた盛大に蠅の飛び交う甘味処みたいな一角で食べましょう、と席が用意されてしまったので覚悟を決めて座る。喰えるかなあ(胃袋的に)、と思う間もなくお椀につがれた小豆粥のようなもの、ココナッツミルクをかけた餅米+ドリアン(強烈)などを渡されてどんどん食べなさい、どんどん。喰ってるうちに麻痺してくるのか何かこれはこれで良いような気がしてくる(じゃっかん気も遠くなってきましたが)。
ブラジャーブラジャーブラジャーブラジャーと、ブラジャー
ああ凄かった、と完食して他人事のように席を立って建物内部に入っていくサオに着いていく。階段を上がって洋服(イマイズミコーイチは「あ、っとか思う服があると大抵女物なんだよねえ」と言う)、アクセサリー(安いけどフェイクよ、とサオ)その他有象無象がみっちり詰まった空間を縫うように進んでいき、やがて一軒の化粧品屋の前で一行は止まって女性陣がまた買い物を始める。大量の口紅やらを買い込んでいるサオに「それ、全部使うの?」と愚問を発する(当たり前じゃない、とサオ)わたくしはじっと立っているだけで体中が汗まみれです。自分が18歳まで育った街も夏は多分ここと同じくらいの気温だったはずですが、何かが違う。脱水気味なのであとで水分補給をしよう。気付けばイマイズミコーイチは彼にしては珍しく、向かいのお店の子供を「だぁ」などと言ってあやしているがやがて皆様のお買い物も終わったので帰りましょうか、と最後に出口付近でサオがベビー服に引っかかりなかなか出て来ないので自分らは外の炎天下で喫煙する。しばらくしてからサオが出てきて、では帰りましょうか、とトゥクトゥクにまた乗り、しばらく走ると「私達はここで降りて買い物をしていくから、ホテルまで送ってもらって。ポレンが最後まで乗るから最後に5ドル彼に渡して」と女性陣はまた何かの店に入っていった(買うなあ)。車はMeta Houseを通り過ぎ、もう少しもう少し、と言いながらホテル前に横付けしてもらってそうかやっぱここではトゥクトゥクが一番なんだね道を自分で横断しなくていいもの、とようやく理解したのでした。ポレンにはでは今夜会場でね、と別れて自分らはホテルへ。
部屋は片付いている。とにかく汗だくなのでシャワーを浴びて、少し昼寝をしよう、とイマイズミコーイチはバスルームに入っていったが「あれ、タオルが無い」などと言っておる。フロントに電話しようと思ったがどこにも架け方が書いてないので仕方なく降りていって「あ、タオルがありませんでしたのでプリーズ」と言うとフロントの男の子は表情一つ変えずに「番号は」とだけ訊くと奥の従業員控え室みたいな所に声をかけ、部屋に戻って待っているとすぐに「すみません」と言いながら別の子がタオルとフットマットを持ってやってきた。交代で体を洗って、冷房の効いた部屋で少しうとうとしていたらそろそろ時間だ。映画祭ディレクターのニコとはまったく事前の打ち合わせとかしていなかったのでありますが、まあ上映の少し前に行けばいいのであろう。またホテルのレストランで夕飯を喰ったような気がするがよく憶えていない。暗くなった道を轢かれないようにとぼとぼ歩いてMeta Houseに到着するとまだ前の上映をやっている(ニコが居たけど"Hi"とか言うのみで段取りの説明とか何もなし)。自分らはスクリーンから一番離れたソファー席に陣取って上映開始を待つ。暑いなあ、と朦朧とする中であれ上映がいきなり始まった。時計を確認すると5分前でありますが何だろうねこの宅飲みみたいな感じは、と思うものの映画の中の光景は真冬だと言うのにここは摂氏36度、そのせいか映像があんまり寒そうじゃない気がする。オープニング曲が始まり、あれれちょっと音が良くないな。低音が出過ぎていて中音域が潰れている。自分はそっとスクリーン正面に移動してみるとさっきの場所よりは酷くはないけどでもあんまり意図通りの鳴り方では無い。自分らの席は右スピーカー間近なのでちょっと厳しい。
こんな感じっす
お客さんは大目に見て30人弱くらいかな、でも入れ替わり立ち替わりで増えたり減ったりして行って、最後まで見てくれた人は15人くらいだったかと思う。まあ無料イベントですし外は暑いし、と振り向くと冷房の効いた中のバーには映画を観てない人が結構いるのでちょっと悔しい。ここで何本か観た中でも途中音が出なくなる・映像が止まるなど細かいトラブルが見受けられたので心配していたのだがそれは無かった。音質に関しては…やっぱ上映チェックをしておいた方が良かった。上映中の反応はそんな大受けの笑い、とかは起きなかったので何ともですが、どう考えてもバリ島の野外上映に次いでハンデのある環境だなあ。それでも1時間20分の上映は無事に終わり、ニコに呼び出されてご挨拶とQ&A、でもまあこんな環境なんであんまりビシバシ質疑応答という感じでもないですが制作日数とか予算とかについて話し、その後はベルリンでもやった(というか味を占めたと言うか)お客さんと写真、というのを撮り…していたら最後まで観ていてくれたサオがやってきて自分とイマイズミコーイチの両名が入ったヴァージョンを撮ってくれました(たいへん有難いのですがこの人は物凄い勢いで何枚も撮るのでいつまで顔を作っておればいいのか判らず困りました。さてカンボジア上映終了。カンボジア人のお客さん、っていたのかどうか…(ポレンは来やがらなかった、憶えてろ)。
さてバーに入ってビールをもらい、ニコにありがとうございましたの挨拶がてら上映DVDを返してもらう。彼は結局観たのかなあ、無いとは思うけど万が一「あ、観てないんだ」とかあっさり言われたらその後どう会話を続けたらいいのか判らないのでどうだった映画?とちょっと訊きづらい感じもあり、結局そのまんまにして呑む。ああそうだ今日は後ひとつやり残した事があった。自分は新宿二丁目のaktaでHIV予防啓発のために制作配布している印刷物やらをもらってきていて、できればカンボジアで適当な人に渡したいと思っていた、のが何度も書いたようにカンボジア人ゲイ、というものが会場には見当たらずニコに「これこれこういうものを持ってきた。誰に渡したらいいと思う?」と訊くと彼は「それならコレットがいいと思う。カンボジアでセクシュアル・マイノリティを支援するNGOをやっているアイルランド人だけど、彼女は顔が広いから」ということでメールでお互いを紹介してくれていて、彼女は今日の上映に来る、と言っていたのだったが来てるのか来ていないのか判らず、改めてニコに訊くと「居ないみたいだね、電話してみよう」と連絡を取ってくれたのでしたが「今から行く、そうだ」との事でビールが半分くらい残ったグラスを片手に外の席でぼんやり待っていた。何だろうこの消化不良な感じは、と思いながら。
自分らが唯一の海外ゲスト、のようでした。
ややあって眼鏡をかけた白人女性が階段を登って会場にやってきた。「コレットさんですか」と訊くと「私は違うけど、後から来るわ」だそうで握手を、てなことをしてたら別の女性が来て彼女がコレットでした。「ご免なさいね、上映にも来るはずだったのだけど野外エアロビクスとか、いろいろ押してしまって」ちなみに野外エアロビクスとは実態不明だがどうもリバーサイドで日が暮れてからやってるイベントらしい(実は自分らも誘われていたのですがそんなものをやったら吐きそうなので有難くお断りした。参加してなかったら僕らも上映に間に合わなかったと言う事なんだろうか)。簡単な自己紹介をしてから持ってきた資料を見せて、これを受け取ってくれますか?と訊くとコレットは「そうね、とても興味深いけれどこれは主にゲイ男性向けだから、もっと適切な人がいると思う。明日プライドウィークの最終日でいろいろイベントがあるから紹介できると思うけど、時間があったら来ない?」と言う。実態がよく判らないまま明日の予定が決まりそうなのであるが元々何も決めていなかったので「あい」と返事をすると「じゃあ明日の朝7時20分にここで」え、朝の7時ですか。「そうなの、朝からお寺に行くのよ」って何だか本当に意味不明ですがまあいいや、と彼女達のNGO「RoCK(Rainbow Community Kampuchea)」が作っているTシャツと写真集("LGBT and Family"がテーマのフォトブック)を頂いてお別れをした。帰り際にサオが「明日の19時半からカンボジアで最高齢のトランスジェンダーに紹介するから、来てね」と言うのであい、と返事をして帰宅。冷蔵庫に入れておいた市場で買ったお菓子を食べちゃおう、と笹(バナナか?)の葉っぱを剥いてみると柔らかいういろうと言うか硬めの水饅頭というか、なあっさりとしたおいしい味でした。
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2014.0518 プノンペン5日目
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2014.0521 シェムリアップ3日目
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