2023.0920 星期三

 またしても自分だけ先の目が覚めたので散歩…というかスーパーに買物に行く。昨日飲んだビールが4本パックで特売になってるなあ、と思って棚に並んでいる他のビールを見るとクラフトビールらしいIPAが330ml缶一本が30HKD(600円くらい)で、500ml入の青島ビールが7HKDなのと比べるとえらい高いな。wellcomeではあんまり売れなそうな気もするけど、もうちょっと手頃な値段だったら買っても良かったな。部屋に戻ってイマイズミコーイチを起こし、彼がシャワーを浴びている間にどうも体が痒い、ような気がする。というか無意識に色んなところを掻いているのに気がついた。シャワーから出てきたイマイズミコーイチに背中を見てもらうと「なんだか赤いポツポツがけっこう出来てるよ」ということでこれはあれか、ダニ的なものか?ベッド下段で寝ているイマイズミコーイチは全くそういうことはないようなのでひとまず自分の寝床のシーツとベッドパッドを替える。とにかくやたら痒いので、6月のサンフランシスコ旅行の際「海外のホテルでトコジラミ(南京虫)大発生」というニュースを見て念のため買っておいたムヒを塗る。アメリカでは幸い使わなかったのだけど、ここで開封することになるとは、つうかコレすごくよく効くな。


玄関を出ると毎回このようなスペクタクル階下が展開する

 気を取り直して朝ごはん、今日はグーグルマップで「粥店」で検索して出てきた一番近い店に行く。チェーン店みたいなので観光客も気楽に入れる。英語メニューはないけどスマートフォンの翻訳APPでカメラをかざすと何となくは判る。自分は皮蛋と挽肉の、イマイズミコーイチは皮蛋と魚の粥にしてプラス茹で野菜。すぐに出てきた粥をズビズビすすりながら人心地つく。行ったのがお昼時だったため相席で向かいのお客がランチメニューらしいものを食べていて、どうもスープと白飯の組み合わせらしい。あれも旨そう、とメニューを見るがどうも膨大なスープ具材の中から3品選ぶみたいな方式らしくて自分には決められそうもない、と思い直す。ちなみに食ってる間にレシートみたいな計算書を置いてくれるので、会計前に割り勘の計算ができて便利。こういうチェーン店でも基本的に現金払いで、キャッシュレスはオクトパスかまたは微信とか中国系のQRコード決済なので、「ついでにクレジットカードも使えるように」はなっていないようなのでした。

 このまま佐敦道に行って昨日と同じバスに乗る。イマイズミコーイチは煙草を吸うのが不便になった、歩きタバコしてる人も見なくなったし…とブツブツこぼしている。自分はタバコをほぼ止めてしまったのでけっこう他人事になっているが、香港は以前からの屋内完全禁煙に加えて路上のゴミ箱兼灰皿が減ってしまっているようだ。西九龍文化区に行くバスは本数があるのでぼんやりしていてもいずれは乗れる。昨日取ったチケットは14時入場のものなので時間に余裕はあるし。昨日はちょうどバスが来たタイミングで慌てて駆け乗ってしまったが今回は余裕で車内に入りオクトパスをピ、とタッチするとイマイズミコーイチが怪訝な顔をして「あれ?残高が減ってなかったみたい」と言う。もしかして昨日のバスの運転手さんに色々言われていたのはイマイズミコーイチがちゃんとタッチできてなくて料金が引かれてなかった事だったのかも、と思い当たる。微妙な顔のままの(昨日の)無賃乗車おじさんと向かい合わせの席でお互い無言になるがまあ仕方ない私達はゲスト、しかもインターナショナルなゲストですから…。


香港故宮文化博物館とイマイズミコーイチ

 昨日と同じバス停に着く。案の定[➾香港故宮文化博物館]という表示に沿って歩くと歩道橋をエレベータで上がってまた降りる、みたいな事になり、しかも次の[➾香港故宮文化博物館]に従うと公園みたいなところに突入するのでこれは導線がおかしいのではないでしょうか。しかも博物館の建物は見えているのに、炎天下を歩いても歩いても近くならないという蜃気楼状態、そして大して歩いていないのに日光効果でヘロヘロになってるチームハバカリ。時間はあったので西九龍文化区をぐるぐる廻っているらしい循環バスに乗るべきだったのかもしれない。ともあれいずれは辿り着くものなので博物館のチケットセンターでスマートフォンの画面を見せると「ここではない、あっちに行け」と言われ、漠然と向かった「あっち」のカウンターでまた画面を見せると「ここではない、あっちだ」と言われて結局紙チケットを発券せずにチェックポイントでそのままQRコードをスキャンしてもらえばいいようなのでした。香港だと(つうか香港に限らず)自分はあまり第一印象では「外国人」っぽく見えないようで、毎回中国語で応対されるのだけど要は「説明されても全然理解しないトロい中国人観光客」扱いなので、こちらが「Sorry, I don't...」とか言い出すと相手は一瞬鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔になって若干丁寧な応対になる、という感じでした。

 やっと冷房の効いた屋内でゆっくりと悠久たる中国の歴史遺産を拝見…と思っていた矢先、チケットを係員に見せようとスマートフォンの画面を出したところで旧知の現地友人ジョナサンからのメッセージが来ていて、詳しい説明は後に回しますがこの人とは若干ややこしい経緯があるのでいま返事をしたほうが良く、そしてこの人は返信の文章が長くて頻繁であるためちょっと座れるところで落ち着いて対応したい、のですがこの博物館はあんまりベンチがない。ちょっと探したらビデオ上映をしているコーナーに座席があったのでそこに腰を下ろして返事を打つ(何年使っても携帯で文字を打つのには慣れない)。思った通りかなり面倒な感じのご連絡だったためしばし考え、映画祭が終わったあとに会うことにする。さて気を取り直して展示に取り組もう。しかし昨日のM+とは違って人が多いね、普通語を話すガイドさんに引率されてる集団は大陸からのツアー客かな。あと社会科見学みたいなお子様集団も居るけど、お子様にとっては面白いんだろうかこういうの…。とは思いつつ北京の故宮博物院から特別貸与されたという選りすぐりの宝物は流石の存在感で、加えてサンフランシスコのアジア博物館でのように展示品に日光が当たってる(いいのか?)みたいなのもなくて安心して見て回れました。


この壺は持って帰りたい、とちょっと思った

 しかし今でもよく判らないのは、自分は2009年に北京の故宮(紫禁城)に行ったけどその時はわ〜とか言いながら敷地内の建物を見て廻っただけで、いわゆる「文物」をまとめて展示する博物館的なところには行っていなくて、そういうものは一体どこに行けば観られたんだろうか。ちなみに台北の故宮博物院には2010年に行っている。

 ここもかなり部屋があるので後半はちょっと駆け足、というのもこの後に旧友のディック・ウォンと待ち合わせているからで、彼は博物館の外まで来てくれる事になっているがそろそろ時間が近づいてきたかな…とスマートフォンを確認するとディックから「ごめん、15分くらい遅れそう」とのメッセージ。こっちもまだ観終わってないので、じゃあ約束の時間を30分遅らせようか、と返信する。おかげで少し時間に余裕が出来たので、レストランと特別展会場がある最上階フロアのテラスに出て記念撮影をする。昨日のM+庭園と同じでとても暑かった…せいかどうかは不明ですがイマイズミコーイチに撮ってもらった自分の写真がものすごくアートな出来だったのであと発見してのけぞりました。おそらく手が滑ってパノラマ撮影モードになってしまったのに気づかずそのまま普通に撮ろうとして、カメラが微妙に動くたびに上書きされていってこんな仕上がりになったのだと思いますが、さすがとしか言いようがない。あとはミュージアムショップに寄り、最近とみにミュージアムショップというものへの関心が薄れているので冷めた眼でまあ一応一通り…眺めていたら大変かわいらしい陶製の魚型筆置きを見つけてしまい買う(この日録のタイトル画像に映ってるやつです)。


撮れてしまったもの

 そろそろ約束の時間なので博物館を出る、と遠くの方にディックらしい影が見えるので手を振ると、やはり彼だった。やあやあやあ来ましたよ香港、とご挨拶して歩き出す。地元民と合流した途端に解ける緊張感といいますか、後はお任せで付いていくだけなので今回初めて「引率」から解放される。歩きながら「この辺は再開発エリアだけど、前は何があったの?」と聞くとディックいわく「何もなかった。大半は埋立地なんだよ」とのこと。近所の店に入ってお茶を、というか自分は解放感ついででビールなどを頼んでしまう。ディックはイマイズミコーイチが10年以上前に出演したパフォーマンス『Tri_K』で共演した香港在住のダンサーで、香港に行くなら会わねば、と連絡をしたら時間を作ってくれたのだった。昨日のM+とは違って故宮博物館はすごく人がいた、と言うとやはり大陸からの団体客が常に来ているとのこと。「でも大陸の観光客はあまり香港には来なくなっていて、むしろ今は日本に行ってるんじゃないかな、円安だしね」とディック。パンデミック中のことや先週の洪水、またはディックの近況など話は尽きないのだけど、外がだんだん暗くなってきたのでそろそろ涼しくなったかなあ、と店を出ると全然そんなことはなくて、まあ暑いです。ただ日差しがないので日中よりかなりマシ。香港島側の夜景を見ながら、このあと自分らは近くの映画館で映画を観る、とディックに言うと「その映画館はここからも見えるけど、道が不安なら送っていくよ」と言ってくれるのでありがたくお願いする。何しろこの辺りは「見えるんだけどたどり着かない」目的地ばかりなのでね…。

 ディックのおかげで迷わずに昨日も来たショッピングモール「エレメント」には着いた。後は映画館がどこか…とまんま昨日みたいな感じで探してカウンターに行き、スタンの名前で取っておいてくれているはずの自分らのチケットを引き取ろうとするが映画館の発券カウンターの人は「判りません、映画祭のブースに行ってください」と言い、映画館の入口にL&G映画祭の幟と一緒に机を出している人がいたのでここか?と聞いてみると「違います」と言われ、気の毒なディックが再び発券カウンターでしつこく食い下がってくれたおかげでやっと自分らのチケットが出てきましたディックありがとう。よれよれと去っていくディックを見送って自分らは映画を…とチケットをスキャンして入口を通り、先にトイレに行こうとしたらトイレは階段を降りたところにあり、それはいいのだけど階段の幅が絶妙に狭く、注意しないと降りる人と登る人がスムーズにすれ違えないので新しい自分は香港の新しめな建築物って基本的に導線がダメなのでは、という安易な結論を出しそうになる。

 劇場の入口付近で上映前MCをするため控えていたスタンに会う。自分が香港に来る前に「映画祭のプログラムを確保しておいて欲しい」とお願いしていたのを持ってきてくれたのだけど、現地に来てみれば会場で取り放題だったのでちょっと申し訳ない。ありがとう。スタンの隣にはこの映画祭の創設者で映画監督のレイ・ヨンがいた。「やあ久しぶり、なんでマスクしてるの?」というのがレイの最初の一言でした。まあほぼ誰もマスクしてないけどさ。今日これから観る映画はサンフランシスコで見逃していたスウェーデン映画『OPPONENT』。イランから妻や娘たちを伴ってスウェーデンに来て難民申請をしている元レスラー選手が、難民認定に有利になるかも?とスウェーデンのチームに参加するが…というサスペンス。予告編の音楽がおどろおどろしいのでちょっと身構えてましたが実際はそうでもなく、お父さんが「オレについて来い(くれるよね?)」をやろうとしてはうまく行かないという話でした。どっちの言語も知らないので次第に耳に入ってくるスウェーデン語とペルシャ語の違いが判らなくなってくるのでしたが、そうなると内容の把握が格段に雑になる、というのは新しい発見でした。映画館から出て当てずっぽうで宿に戻ろうとしたら駅に突っ込んでしまい出口が判らなくなり、やはり導線が…ダメなのでは香港の新しい建築物…。

目次
2023.0918 出発までと出発当日、香港到着
2023.0919 M+、『犬漏(SOLID)』上映
2023.0920 香港故宮文化博物館、ディック、映画1本
2023.0921 マカオ
2023.0922 エイドリアン、パトリック、映画2本
2023.0923 映画1本、映画祭クロージングパーティー
2023.0924 ジョナサン、クリフォード
2023.0925 帰国

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