2007.0608, fri

 10時起床。今日は朝からイマイズミコーイチと映画祭に『No Regret(原題も「後悔しない」だ)』という韓国映画を観に行く。T氏とは17時半まで別行動ということにし、置き手紙をして一足お先に部屋を出る。 おぉ、オートロックべんり。駅に向かう途中、昨晩歩いて帰宅する時に見掛けた訳の判んない像がそこら中に付いている店を明るいときにもう一度チェック、と観察してみたらば、何て言うんだろうエクステリアというのか、要は庭とかホテルのロビーとかに置く噴水ものの専門店なんですね。しかし小便小僧と自由の女神とボッティチェリのヴィーナスとその他有象無象のものから一斉に水が出ているというのはシュール以上のものがある。


じょんべろりんじょんべろりん

 映画祭会場に着くと、昨日のDくんがチケットを渡してくれる。しかしスタッフと言えそうなのは彼とも一人と、売店にいる女の子だけ。友人RもSは基本的に会場の人なので、隣の事務所に詰めていてもぎりとかはしていない。シアターに入ると、お客さんが数人しかいない。平日の朝だからか? 今日の夕方はウチとこの上映ですが、この映画祭は大丈夫なのか? と不安を憶えるが指定席なので(どこに座っても良さそうなもんではあるが)席を探し、Dくんがコーヒーをくれたのでストローでずずず、と吸い上げながらイマイズミコーイチとううむ、と顔を見合わせる。と、またしてもDくんがブルー地の柄に黒ネクタイをしめた男の子を連れてきて、「彼があなたがたの通訳をすることになりました」と紹介される。あ、通訳さん決まってたの、とちょっと安心して自己紹介をする、とイマイズミコーイチが凄い勢いで「今日の上映の後でインタビューを受けることになっているのだけど、時間があったらそれも通訳してくれない?」と急に交渉を始める。彼、Yくんは多少面食らった様子ではあったが「いいですよ」と言ってくれ、「僕もこの映画、観ます」と隣に座って、『No Regret』が始まった。


会場前の屋上中庭

 相変わらずお客さんは10人にもならないが、時間なので映画祭のトレーラーの上映からスタート、なのだがスクリーン上部に覆い被さる形で掲げられている「Selff(映画祭の名称)」の看板がそのまま。幅はスクリーンとほぼ同じなので、映像の一部が看板に投影されてしまう。どうすんだろ、と思っていたが別にどうにもならず、そのまま本編が始まってしまいひええ、と思っていたらやがてようやく看板がするする、と上に引き上げられた。この映画祭と映画館、大丈夫なのか。韓国で恐らく唯一オープンリー・ゲイの映画監督、イソン・ヒイル監督『No Regret』は今年の4月に東京で上映され、僕らもその時観ていたので、当然ながら字幕無し(でも英語字幕もなかった)でも何とか観ることが出来た。細かい台詞はどうしても抜けてしまうのだけれど、やっぱ大きい画面はいいね。後で聞いたら韓国のゲイの中からは否定的な意見も結構あった作品だったそうなのだけれど、自分は好きな作品だし、興行としても昨年、かなりヒットしたそうなので良いことです。が、何でか自分は途中でトイレに行きたくなり、終盤で中座する。実は東京でも最後に放尿したくなり、しかしその会場は超満席だったので立てず、クレジットが始まった瞬間に座っていた補助椅子を蹴倒してトイレに走ったのだったがこの映画、尿意を喚起させる何かがあるのだろうか。


インサドンで。こういうポーズで煙草喫ったり携帯掛けたり、って人がけっこういました

 映画が終わり、僕らの上映までには結構時間があるのだが今から市内観光、ってのも半端やしねぇ、昼ご飯食べに行かない?とYくんにナビしてもらってインサドンの韓定食屋に行く。蒸し玉子、焼き魚、茹で豚など旨し。その後さらに時間があるので近くの伝統喫茶(日本で言うと甘味処という感じ)に行き、中庭に席を取ってお茶を飲みつつYくんと話をする。自分は韓国に来て初めての緑茶、水色が薄くて、味がきりっと鮮烈なので猛烈に気にいる。さてYくんは学生で、まだ若いけれどいくつかの映画祭で日本人ゲストの通訳を結構してきたそうで、本人が言うには「何人か担当がいると、その中で僕はいつもヘンな人担当です」とこれまでに当たった「ヘンな人フロムジャパン」列伝をしてくれるので聞いている内になんだか多少申し訳ない気持ちになってきたが、Yくんがふと「だから今回珍しく普通の人に当たったので」と言うので思わずイマイズミコーイチと顔を見合わせてしまった。フツーだってさ。よかったねえ。

 4時くらいになって、遠くで雷が鳴り空模様がちょっとあやしい。日本の友人Gさんらが僕らの上映とK氏のパフォーマンスを観る(+焼肉)ために今日来るのだが、Gさんは自分のことを「強烈雨女」と言っており、なんでも自分の公演(彼女もダンサー)とか、気合いを入れると雨が降ってしまうらしく、今回はどうぞ肩肘だら~んでおいでください、と祈っていたのだが、時間的にはそろそろ出国したはず、さては焼肉に気合いを入れたな。Yくんが「ここ数日降る降ると言って降っていないので、今日は雨かも」と言う。ううむ、雨で客足が鈍らないといいのだけど、と思ってもどうにもならないので、そろそろ出なくなったお茶を無理に飲んで、塀を横切るスレンダーな猫を見たりしているウチに時間、劇場に戻ることにする。


緑茶、器が3つに魔法瓶が1つ

 上映開始にはまだ早いので、ロビーにはまだ人もそんなにおらず、上映は18時からだけど写真家T氏もまだ来ていない。屋上で煙草を喫いながらぼんやりしていたら、背後からスタッフDくんに連行、もとい伴われて主演Hくんが何だかやたらビビッドなポロシャツ姿でとことこ歩いてくるのが見え、ああ良かった、着いたね。Hくんは初海外+いきなりの一人旅なので気を揉んでいたのだけど無事についてえらいね、遅刻しなかった?と聞くと「寝坊しました~」と言うので先ほどの「えらいね」を4割ほど減点してから長旅をねぎらう。後で聞いたら飛行機の時間帯が近いGさんが連絡をくれて、成田に着いた途端に右から左へ送り出してもらったそうで、やっぱ頼んでおいて良かったわ。Gさん、ありがとう。さすがに主演俳優が到着、となると会場もざわざわして、スタッフもポスターとHくんを見比べてはしゃいでたり写真撮ってくださいとか言ったり、うん、いい反応じゃないですか。そんな中Yくんの友達、という人が来て、Hくんを「韓国ではオダギリジョーの次に有名な俳優が来るというので映画アワードの取材を抜け出してきた」と写真を撮り出し、何か大きな誤解があるようではあったが、彼もその「オダギリに次ぐ」人の名前が出てこないというあやふや合戦なので、まあ映画を観てってくれればいいや、と思って黙っておいた。後で聞いたら「オダギリの次じゃないのか」としょんぼりして映画を観ないで帰ったらしい。何だったんだろ。

 やがて写真家T氏も到着して、韓国語でする挨拶をみんなで暗記しだし、それぞれがお互いの挨拶とごっちゃになりそうになりながら練習、Yくんにも作文&指導してもらって「チョヌン、…イムニダ、カムサ…」などと3人で念仏のように唱えていたら18時、上映が始まる。今から『チェッサラン(初戀)』、アジア初公開です。最後のお客さんの後、僕らは最前列へ。アートシネマのスクリーンは大きく、席は300のかなりいい劇場だ。これまで何度観たか知れないハバカリロゴマークに続いて、映画が始まる。大きい画面で、しかも最前列で観ると、制作者としてはやはり細かいアラが気になってしまう。特にカメラの手ぶれがきつく、酔いそうになる。これでお客さんのテンションが削がれないといいんだけど、と気が揉めるけれど、その内(慣れただけかも)笑い声やら反応が聞こえだしたのでホッとする。しかし中には全く理解不能な箇所で笑いが起きたりして、画面の脇に縦書きで出てる韓国語字幕は大丈夫なんだろうか、と少し気がかり。


上映開始前、挨拶練習中

 緊張していたせいか、上映途中自分はやはりトイレに、しかも2回も行きたくなり(お茶がいけないのか?)、最前列から最後尾の出口までの長い通路をそろそろ歩いて、用を足してさて戻るか、と受付に体を向けたらスタッフDくんが後ろを指さし、その先に座っているメガネを掛けた小柄な男性を紹介してくれる。彼がソウルLGBT映画祭ディレクター、PJ氏なのだった。初めましての挨拶と握手をして、「上映後の舞台挨拶で司会をするから、よろしく」と言われる。なんか眼に力がある、というかそれも威圧的ではなくて光っている、という感じだった。こちらこそ、どうぞよろしく。

 上映が終わった。壇上にPJが出てきて、僕らを舞台上に呼ぶ。イマイズミコーイチ、Hくん、自分、Yくんの順で上がり、T氏はそれを撮るから、と壇上には上がらず、3人でイマイズミコーイチから韓国語でご挨拶。残ってくれたお客さんは100人弱くらいか、やっぱり時間が早いせいか満杯、と言う感じではなく、しかも前の方が空席なのでちょっと観客との距離が遠い。「こんにちは」を韓国語で言うだけでお客さんは「おお」とどよめく。続けて名前と役職と「ありがとう」を何とか言い終わってかなりの拍手をもらっていた。Hくんは堂々とカンペを出して笑いを取ってから同じくご挨拶、大拍手。最後に自分、「この映画で音楽を制作しました」とかちょっと複雑な文にしてしまったもので音だけで憶えるのはややきつく、最後のほうがごにゃごにゃ言って誤魔化してしまったが、それでもま、通じはしたようだった。

 Q&Aが始まる。割とすんなり最初の質問が出た。順番があやふやなので箇条書きにしておきます。

 ・「みんなゲイですか?」と聞くのでこっちが逆に「出演者?僕ら?」と聞き返すと「どっちも」と言うので「はい」と答える。
 ・「初戀」と言う感じがあまりしなかったんですが、と言われたので公式通り、「何度しても恋は初めてのようなもの、ってことで一つ」と答える。
 ・(Hくんに)この映画に出たことを親は知っていますか?

 ・それと、これはQ&Aの冒頭でPJがイマイズミコーイチに「この映画を作ろうと思ったきっかけは?」と聞いたのだが、それに対して「ある時寝ていたら神の声がして『この映画を撮りなさい』と言ったので」などと真面目な顔をして答えたので、通訳Yくん曰く「これが一番受けてました」とのことでしたそう言えば。優秀通訳Yくんは「神の声、と言うのは直訳してしまうと日本語のニュアンスからずれるので、神様のお言葉、に変えました」と後で言っていた。

 何か答えるたびにPJが喋ってやたら笑いを取っていたが(おどけるおどける)結局何だったのか判らず。でもとても和やかにQ&Aは進行し、Yくんの通訳も優秀でスムーズでした。やがて次の上映があるので時間切れとなり、最後に田口さんをご紹介して葉書セットとサントラCD売っているので買ってね、と自分がCMをして、お客さんと一緒にロビーへ出た。すると、既に葉書を手にしたお客さんがHくんやイマイズミコーイチにサインサイン、と言ってくる。こういう事態を見越して(いやらしいねどうも)日本から持ってきたマッキーをHくんに渡して、その辺で自然発生サイン会。よかよか、と満足げに眺めていたら自分もCDもった人に頼まれてしまった。韓国はもうあんまりCDではないらしくて(ネットダウンロードが普及している)、しかも手作りだし、実はあまり売れるとも思っていなかったのだけれど、グッズとしては葉書とCDしかないので、結構買ってくれているよう。さっきQ&Aでは別に自分が質問される事もなく、まあ音楽についての質問もそんな無いだろうとは思っていたが、その人は僕に「××のシーンの音楽がとても良かったので、話をしたかった」と言ってくれた。うれしい。


サイン会中

 Hくんが大人気を博している中、自分はロビーにいたKさんとちょっとお話。開場前にお会いしていたのだが、Kさんは10年以上韓国在住の日本人で、前作の上映の時に情報を知って見に来てくれ、その翌年の東京パレードで再会していながら未だお名前も連絡先も存じ上げないのでお知らせできなかったのだったけれど、今回も向こうから来てくれた。3度目の××、と言うことで今回はちゃんと名刺交換し、やっと「おしりあい」になることが出来た。韓国語字幕はKさんの友人がやったそうで、それで知ったのかもしれなかった。

 日本にいるときにPJから来た話だったのだが、今日はこれから朝に観た『No Regret』のプロデューサーにインタビューを受けることになっている。ロビーでPJにそのプロデューサーPKを紹介されたのだが、聞いてみたら彼はKさんの友人だそうで、何か色んなものが一気につながってくる感じが面白くてわくわくする。お客が引いて、PKとじゃあどこで取材をしようか、という話になり、インタビューとしては僕とイマイズミコーイチだけでいいらしいのだけれどせっかくだし、PKもオッケーと言うのでT氏とHくん、通訳Yくん、Kさんとそのご友人、PJ、それとPKの連れの女性の10名で会場近くのご飯屋に入って宴会のような席でインタビューが始まった。通訳はKさんがしてくれることになったので、YくんはT氏Hくんなどと歓談していただく。


インタビュー中、つうか懇親会

 このインタビューをどこに掲載するのかが良く判らないのだけれど(PJは「彼のwebzineに」と言っていたけどメルマガか?)、事前の感触だとPKはどうも僕をプロデューサー、イマイズミコーイチをディレクターと思っている節があったので、話をしている途中で「分業と言っても僕らは2人しかいないチームなので」と誤解を解いてから、制作に関する(要はお金の)話や上映に伴う問題などを聞かれる。向こうはもちろんプロの映画関係者なので、何にせよいちいち桁が違うのだが、こちらの超家内制手工業な内情を聞いても別に失望した風もなく、どんどん出てくるプルコギやらビールやら、初めて食べる方式のビビンパブ(石焼きの雑穀ご飯と木の器に入った具材が別々に出てきてご飯は木の器に入れて混ぜ、それと別にまだ熱い石の器にはお湯を入れておこげの重湯でいただく)に囲まれて楽しくお話をして、次第にインタビューというよりは交歓会になってきたので自分は途中で抜け、みなさんとくだらない話などして、最後にT氏による記念写真撮影会などあり、お開きとした。店を出て、PKは赤い水玉模様でスケスケのミニのスカートを取り出し、「明日コレを着てG-voiceに出る」などと言う。G-voiceというのはゲイのコーラスグループで、明日コンサートがあるらしい。6月2~10日までソウルではKorean Queer Culture Festival開催期間で、映画祭もこれに含まれるのだが、G-voiceはその内の一つ。「歌うの?」って聞いたら「いや、司会」と答えるので思わず「変態!」と叫び、ついでに「で、上は何着るんだよ」と重ねて聞くと「着ない。裸」変態っっっ!!!

 いろいろ腹一杯でPKと別れ、さてどうしようかホテルに帰る?と話しているとKさんが「じゃあ彼氏が近くで待っているので僕はここで」と帰ろうとするので、「彼によろしく」とか言っているうち、近所にいるのなら会いに行こうか、いい?という事になりインサドンにある、Kさんたちのお友達がやっている伝統喫茶に向かう。すいません、滞在が短いものでやや遠慮が後退してます僕ら。インサドンには伝統喫茶がたくさんあるので、そこも入ったことのないお店で、階段を登ったところにあるこぢんまりとしたお茶屋さん。オーナーさん(女性)はKさんたちがゲイだと知っているので、その日の客層によっては「ゲイバーみたいになっちゃうこともあるんです」ということでしたが、まさに今日がそうか。何故かさっき舞台でやった韓国語での挨拶をもっかいすることになり、まあ明日の予行演習ということで、とオーナーさんに自己紹介。一応及第点をいただく。

 普段芸能人の話とか、ホントしないんだけど韓国に来るたびに「韓国のゲイに人気のあるのって、誰?」と聞くことにしていて、前回まではぶっちぎりでウォンビンだったが、今は+ヒョンビンだって。だって、とか書いててもヒョンビンの顔が浮かびません。Kさんたちと、「何故韓国の人は他人の肌状態に厳しいのか」という問題について話し合うが、もちろん結論は出ず。しかしホントにタレントを評するときに「でも肌が汚い」とかいう減点ポイントがあるのですよ。実はYくんからも、「『初戀』に出てくる高校生のヒゲが濃いのでちょっと違和感があるという感想を聞きました」と言われとても意外だったのだけれど、それはまあ仕方ない、民族差でしょうよ。しかし韓国にだっておっさんぽい高校生っていると思うんだけど、そういう人への風当たりはきついんだろうか。


韓日交流のようなもの、集団見合ではありません

 そろそろ閉店ぽかったので帰ろうか、電車終わっちゃっててもタクシーあるもんね、と言うとKさんは「12時前後というのはなかなかタクシーつかまりません」と言う。何でですか、と聞いたら要は終電を逃した人を狙ってなるべく遠くまで乗せたいので、運転手も客を選ぶから、だそうです。「夜も1時くらいになればまた乗せてくれますけど」と言うのだったが調べてもらったらまだ電車あるみたい。つうわけで地下鉄の駅に向かう。近所に住んでいるというYくんとはここで別れ、Kさんたちと電車に乗り込んで一駅、お付き合いいただいてありがとうございました。駅に着いて、コンビニエンスストアでお茶とか買ってから帰ろうか、と思ったがホテル近辺にはそれらしい灯りは全くない。しばしうろうろして、やっとガソリンスタンド付属の、物販コーナーみたいな所を見つけて水やら酒やら菓子などを買う。レジには遠近のメガネを二重がけにしたおじいさん一人。「ワン、ツー、スリー、」と数えながらチェッカーに品物を通し、値段を韓国語で言われるが判らない。身振り手振りで何とか支払って、妙な感じのまま店を出たが、帰り道でT氏がぽつりと「日本人だ、って思うだけで微妙な世代の人なんだろうね」と言う。知っていたかもしれないけど、頑なに日本語を使おうとしなかったのはそのせいかも知れない。


よく判んないけど、「マッサージ」はしてくれないと思います

 Hくんは空港から会場直行だったので、ここでやっとホテルまで到達、エレベータで「八階です」というアナウンスが女声で流れるのだがその、「パチンイムニダ」にHくんが妙に反応する。まあ確かにセクシーボイスではあるが、そんなにいいか?これ。Hくんは以後もずっとエレベータ乗るたびにこのアナウンス聞いてモゾモゾするのだった。部屋に着いて荷物を置き、もう遅いけどちょっと屋上に行ってみようよ、とさっき買った食料を持って15階へ。そこから内階段を延々登ると、時間が遅すぎて灯りも全て消えた広い屋上階に出る。周囲に高い建物が全く無いので360°パノラマヴュー、夜景がうつくしい。風が強くてちょっと寒いのが難だったが、ソウルタワーから東大門(ドンデムン)あたり、近場も遠くも光るものはすべて見える。時刻は午前1時半、建物の間から巨大な月が登ってきた。

 部屋に戻ってシャワーを浴びて、ベッド(ダブル1:シングル1:ソファベッド1、で4人分)に乗っかってだらだら話をしている。そういえば自分は寝言大王ですが、昨晩はご迷惑をお掛けしませんでしたでしょうか、と聞くとT氏、「寝言で起きた訳じゃなくて、僕が夜中、水を飲もうとキッチンまで歩いてって、ガサガサ、って音がした途端に君は『雨だ、いい音楽だ』ってはっきり言ったよ」と言われてあぁ、やっぱり。意識があるときより明瞭に発語できるというのは意識下になにか深い抑圧があるのでしょうか、って知りませんねそんなこと。しかしT氏、普段とあまり変わらないテンションだと思っていたら既にさっき買った眞露をあらかた飲んでしまっており、Hくんやイマイズミコーイチが何か(まあ失言です)言う度に上に腰掛けてお仕置きをしたり更には懲りずに失言を繰り返すイマイズミコーイチをにらみつけた、と思った瞬間、何故か自分は右肘ウラをおもいっきしひっぱたかれ、「お前の躾がなっておらん!」と怒鳴られる。この理不尽さ加減、げにおそろしきはアルコール。まあ気を取り直してお茶を、と自分のペットボトルを探すが、見当たらない。ふとT氏を見ると、眞露を空になった麦茶のペットボトルに持ち替えて演説中。「あの~、そのお茶は…」とおそるおそる聞くと最初「あ?」と言う顔をしてから、「あっごめん、自分のだと思って飲んじゃった」と今度は平謝りされる。T氏はカバンから自分の飲みかけの麦茶(ヘンなタレントの写真がプリントしてある)を出してきて「飲み…ますか?」とか言ってくれるがいえ、水飲むからいいですけど、それにしても酔いすぎでは。ちなみに翌日この話をT氏に振ってみたが驚いたことに「またまた、何を言い出すのかと思ったら」と全く信用してくれず「知らない」「記憶にない」の一点張りであった。げにおそろしきはアルヵホール、お酒は楽しく、適量を。おやすみなさい。


2007.0607 訪韓
2007.0608 第一回上映
2007.0609 第二回上映
2007.0610 クロージング
2007.0611 帰日