2008.1109 domingo

今日は上映無し、人と会う約束無し、何時に起きてもいいはずではあるが朝ご飯ですね、10時まで。なので遅めに起きていつものカフェへ行き、今日は果物をたくさん食おう、とバナナを取ってみるがうまい。調子に乗ってカシューナッツの実(パプリカに似ている、根元に付いているのをナッツとして使うが果肉も食べられる)も取ってみたがあからさまに痛んでいるのでこれは飾りか。定番としてはメロン、パパイヤ、マンゴー、スイカ、パイナップル、その他ジュースもあります。

部屋に戻って昼寝をしているとあっという間に昼ご飯の時間、スポーツしない人間にはヒマなところだ。焼いたシャケにジャガイモというものを食べてからレセプションに行き、タクシーを頼む。イマイズミコーイチはそのままインターネットをやっている。レセプションには女性と、彼女の子供らしい男の子(6歳くらい)が座っている。「お客様のお名前は」「イワサです」と言う会話ののち「はい、イワサさんにご挨拶なさい」と子供に言うおかあさん。この子は従業員か?何か仕事があるのだろうか。車はなかなか来なかったがやがて呼ばれ、駐車場で乗り込む。「カテドラル・メトロポリターナ」と告げると観光名所なだけあって一発で判って車は走り出した。


カテドラル、どらやき供養塔、ほとんど映ってませんが右端が鐘楼

ここはアルと動いた2日間でも行けていなくて、でも2人で行けるよ、と今日にしてあった。タクシーは間際まで着けてくれ、降り立つともう入り口。いろいろな写真で紹介されているミルククラウン状の姿はその通りなのだが、もちろん土産物小屋(カテドラルミニチュアなど売ってます)なども無秩序にあってそんなに澄ました感じでもない。ただ人が少ないのと曇っているので閑散とした感じではある。半地下状の入り口から内部へ、通路は暗く、室内は明るいので向こうに光が見える、という造りになっている。あったかい、というか少々暑い。これが真新しかったらパビリオンにしか見えないが、経年によって壊れたり割れたりしている箇所もあってそれなりに馴染んでいるようです。しかし鳥が中を飛んでいるが明らかに出られなくなっているようでこの先どうなるんだろ、とちょっと心配。

外に出る。聖堂に向かって右前には4つの鐘がぶら下がったT字形の台があり、左手には球をつぶしたような巨大な石が置いてある。この石がよく判らないので何だろうね、と近づいてみましたが落書きを消した跡がある以外には特にこれと言った説明もなく、調べればすぐに判るんだろうけどまあいいや、ということで「どらやき供養塔」と命名、記念写真を撮る。大聖堂の周りには水壕がめぐらせてあって(水はかなり汚い)、大きな鳥が立っていたりしますが芝生にも3羽くらい、見たことがない種類の鳥がいるので近寄るとびゅう、とこちらに向かって飛んできて威嚇、逃げません。案の定芝生の上には鳥の死骸が落ちていたりしますのでこれは明かりに突っ込んだのか。

向こうには中華まんじゅうのような白くて丸いものが建っているので行ってみると博物館、下の入り口から入ると「モザンビーク展」を開催中でした。パンフレットとバッヂをもらって中へ入る。趣旨としては同じポルトガル語圏の国特集、ということでしょうか。展覧会と言うよりはちょっと洗練された企業の展示、といった趣。上にも細長い通路があって別の展示室への入り口のようでしたが行ってみたら「展示替えに付き閉鎖中」ブラジル近代デザイン展は見られませんでした。仕方がないので更に歩いて一昨日行ったショッピングモールへ、そこへ上がる前にバスターミナルの雑誌スタンドでエロディスクを買ってみる。さてVCDはウチで再生できるのか。


しまってるねえ

ショッピングモールではかなり歩いたが本屋もCD屋もあまり収穫はなく、疲れたねえとフードコートに行ってイマイズミコーイチはマクドナルドでソフトクリームを買い(ブラジルのマックはハンバーガーなどはけっこう高い)、サンパウロで見かけた「Bob's」というチェーン店(「フレッシュネスバーガーみたいなの、日本で言うと」とネイが教えてくれた)があって、旨そうなので買いたいのだが残念ながら今はあまりお腹が空いてない。いいや、と座るだけにしてイマイズミコーイチは更に水を買い、また歩き出す。これから春なので洋服屋では「スプリングセール」開催中、でも服は買いません。でかそうだし。最後に一昨日も行った地下のスーパーでCD売り場を見つけ(まるで下着売り場のよう)、カズーサの追悼盤らしいのが10ヘアル(500円)だったので買う。駐車場の前で一服して暗くなってきたしそろそろ帰ろうか。適当に大通りに出たらタクシー乗り場があったので、運転手さんにホテルの住所が入ったメモ用紙(部屋から持ってきた)を見せると判ったようで、夕暮れの道を走ってホテルに戻ったが、海外で自力でタクシーに乗るといっても緊張感はまるでなし。

部屋に戻って着替える。今日は映画祭最終日、クロージングセレモニーがある。ので一応襟のあるシャツで、とは言えしわしわ加工のやつですが。7時半になったら別棟の大きなホールに来て下さい、と言われていたのではあるが、『初戀』も一応コンペティション対象作品とは言え「もし来たかったら最初から」と言われたのからしてまあ気楽なものである。みなさまのNHKも来てないしね、とベルリン直前のドタバタを思い出しながらもあ、7時からブラジル短編集やるので観たい、と劇場に向かう。チケット売り場のところで最後だし、と「映画祭と僕ら」の証拠写真を撮っていたりしたら「『初戀』観たよ、おめでとう」と声をかけてくれる人や「あなたが首にかけている(ゲストパスです)のに書いてあるのは何?ゲストなの?へ〜」とやたら笑顔で話しかけて来る女性2人組などがいてなんか、ゲストっぽい。時間になったのでシアターに入る。最初はドラマ、台詞が判らないと話が判らない。カニが印象的な作品でした。次はアニメで、どうもじいさんが戦争の頃を思い出すという内容。結局2本観たところで時間が来てしまって劇場を出て「セレモニー会場」に行く。シアター前のロビーでカクテルパーティーやっておる。馴染まないねえ、と言いながらも仕方がないのでビールなどをいただく。そこへドナテラ大先生がやってきた。黒っぽいドレスにヴィヴィッドな布を腰に巻いている。自分は何と声を掛けたらいい(怒られない)かと思いつつ殆ど無意識に「お綺麗ですね」と言うと大先生、「そうでしょ、ちょっと日本ぽいでしょ」と胸を張る語尾が上がる。その通りでございますとも。「一緒に写真を撮りましょう」とカメラ持ったプレスらしい子を呼んで集合写真。なんか、ゲストっぽい。


壁面には過去10年分のフラッグが

会場にはOさんと、このコンペ部門の審査員の一人でもあるジョルジュ氏がいたのでご挨拶。しばらくお話などをしてから外で煙草を喫っていると、開場したらしく人が中へ吸い込まれて行く。とそこへ声を掛けて来た若い男の子が2人、「『初戀』の方ですか?観ました。とても良かったです」と言ってくれる。今日は上映が無かったのに一番お声がかかるなあ。入ってみるとシアターは莫迦でかい。壇上には申し訳程度に机とか置いてあるが絶対こんなにいらないというくらいのステージの広さ。やがて司会の人が登場してセレモニー開始、もちろんポルトガル語なので進行などさっぱりである。しかしお金かかってんなあ、とかそういう感想しか浮かばず、ぼんやりしているうちに全ての賞が発表された、ようだ。ジュショウノガシタ、スグカエレ。特別ゲストの俳優(クロージング作品の出演者)が登壇してスピーチした後、映画が始まった。クロージング作品はジェニファー・リンチの「サーヴェイランス」。いきなりこわいシーン続出で若干縮むが、まあいいやと観始めると、なんか音が変だ。スピーカーの位置がおかしいのか、僕らの座っている後ろの方の席では音が遅れて聴こえる。しかも前からもオンタイムで遠鳴りに聴こえるのでなんか気持ち悪い。わりとすぐにイマイズミコーイチが「トイレ」と席を立ってしまって一人でしばらく観ていたがだんだん耐えられなくなってきた。映像が怖いからじゃなくて純粋に音が、これでは軽く拷問だ。イマイズミコーイチが戻ってきたので「あのね、音がすごく気持ち悪いから、ここを出たい」と言うと「判った」と一緒に会場を出てくれた。

部屋に戻り、あ〜あ〜あ〜、と自分はしばらく呻いていたが、やがて猛烈に腹が立ってきて「何か別の映画を観る、絶対観る」とプログラムをめくり出した。他の劇場ではクロージングと同時進行でまだまだ上映をやっているのでスタートに間に合う作品はいくつかあった。あ、この「Favela Bolada」というのが一番腰が抜けそう、「マイアミベースなどアメリカのエレクトリックミュージックに影響を受けた"ファンク・カリオカ"、リオのスラム街の貧困と暴力と共にある音楽を追ったドキュメンタリー」という解説文を読んで行くべし、「これ観たい」と言うとイマイズミコーイチは「おんがくえいがか、いいよ〜、よく寝れるかな。」と呑気な事を言っているが多分そうではないと口で説明するのが困難なため取りあえず連れ立って劇場に走った。会場はだんだん撤収モードだが、ちょっとおなかすいたね、と会期中みんなが食べているのを見たポップコーン売り場に行くと最後の一つを紙パックに詰めているところで「ください」と言ったらタダでした。さすが金持ち、だったら2つ貰いたかった、などと貧乏人は貧乏な事を言いながらシアターへ。しょっぱな映像が出なくなって途中から音だけになりやり直し、というアクシデントがありつつ(HD再生も怖いね)その後は映画は快調に進んだ。


"Favela on Blast(Favela Bolada)" 紹介ビデオ、これが一番近い感じ


結果的に大正解でしたファヴェーラ・ボラーダ、面白いのなんの。出てくる人出てくる人(ほとんどスラム街=ファヴェーラの住人)、1人で平常人3人分くらいの体力があるんじゃないかといった感じの皆さんが次から次へと歌う歌う踊る踊るスピーカー作る作る。観ている人は始終大笑いしていましたが、外国語が判らないのがこんなに悔しかったことはありませんでした。イマイズミコーイチは最初「これは寝れないね」と当惑したように言ったものの、ディスコ(みんなくねるくねる)のシーンで大喜びして「ここ行きたい(危険です多分)」と大喜びして、更には途中で寝るという超リラックス振りを発揮していましたが、全体的には楽しんだようで、よかった。

いやあポップコーンはうまかったね、でもお腹減った、と思うがもうレストランは閉まっているし仕方ない、と部屋でスーパーで買ったナッツをかじり、明日は帰るから片付けないと、と何となく荷造りを始めて、でもまずは電話かな。サンパウロのネイにかけるがやはり留守電、「明日日本に帰るよ、いろいろありがとう」。アルに電話してみると「ホー」とかそれに類する声が聞こえてきてこんばんは、お元気ですか。彼にもまたお世話様でしたのお礼をして、さてかたづけ、と思っていたら電話が。日本にいた頃からの僕らの担当の女の子(という割にはここでは全然一緒に行動しておらず会えば挨拶する程度)ルースからで、「いま『湖水』にいて皆さんと食事中なんです。良かったら来ませんか」はいもちろんです、ごはんですね。というわけで初めて営業中の「湖水」に行くか、パンフレットには何かサーモンの刺身がみちみち写っていたけれど、と向かったレストランテ・ジャポネーズはいきなり「やきとり」とか「寿司」と書かれた赤提灯がぶら下がる和風建築で、照明も何もやたら赤い。ブラジルの店員さんに「いらっしゃいませ」と迎えていただいてしまう違和感はともかく、何でこんなに客席が暗いのか。入り口から右手奥が映画祭関係者打ち上げのようでした。


こんな店でお待ちしております

打ち上げ、と書いて気が付いたがそうそうここは日本料理屋と言うよりは和風おしゃれ居酒屋だ。そこへこの店のオーナーママが、ではないドナテラが出てきて「来ましたね、どうですか?あなた方のためにね、焼きそばを注文しておきましたよ」と言い終わるか終わらないかの内にドン、と机に焼きそば到着。食べてみると味はほとんど日本のいわゆるソース焼きそば、若干麺が太いけど。しかし赤くて暗い照明の下では色味がわかりません。続いて天ぷらが出てきましたが(この取り合わせはどうなのか)こちらは衣が厚くてフリッター風でした。塩をかけて食す。何故か僕らは上座に席を設けられてしまったがOさんが近くにいるのでまだ気が楽である。「なんかブラジルの超有名人が結構来てるよ」と言っても映画・演劇関係の有名人は知らないのでふへー、と言うのみ。イマイズミコーイチはサンパウロで撃沈食らったカイピリーニャを頼み、僕はビールのみたい。

僕らは一杯持ったまま店の外へ出て、煙草を喫っていたらOさんが出てきて写真を撮られる。しばらくしたら皆さん段々にお帰りになり、一旦戻って(グラスを返し)僕らも帰ろう。ドナテラ、夫(映画祭ディレクター)などとご挨拶、とそこへドナテラのところにルースがやってきて何やら話をしている。なんか良くない事だ、とすぐに察して身構えていたところ案の定ルースはこちらへ向き直り「あなたの飛行機代を、明日精算しましょう」とにっこり微笑んで言う。…今日まで催促がなかったからこのままばっくれようと思っていたのだが時効ギリギリで逮捕された人と言うのはこういう心境なのでしょうか。

ドナテラファミリー(子供も来ていた)にさようならをして、Oさんとジョルジュ氏と「湖水」の前で記念撮影して(しかし暗いので何が何やら)、高い、焼きそば、だったね。と肩を落として家路につくチームハバカリ、惨敗。


おしまい


2008.1103 ミラノへ
2008.1104 サンパウロへ
2008.1105 サンパウロで
2008.1106 ブラジリアへ、上映一回目
2008.1107 ブラジリアで、上映二回目
2008.1108 ブラジリアで、上映三回目
2008.1109 ブラジリアで、クロージング
2008.1110 ローマへ、帰日