2010.0403 星期六
さて10年パスポートが切れそうだ、と更新スケジュールを確認したらギリギリ有効期限の当日に出すと最短受取日は自分の誕生日、ハッピーバースデー自分。だけど誕生日にいちまんろくせんえん東京都に払わんとあかんのか、それも微妙にむかつくな、などとブツブツ言いながら古い旅券を窓口に出し、受付の女性は「期限は…あら今日なのね」と仰り、約一週間後に受け取った新しい赤い手帖には現在の自分の顔写真、10年前のと比べて結構ツラ構えなど違っていて笑えるがうむ、ナウの方がユーはいい顔だよ、と今日だけは自己愛を丸出しにしてハッピーバースデー、自分。10年前の初海外もそういや香港でした。つまんないと言えばつまんないが(ま、二冊目ですし。例えばいきなりエストニアとかジンバブエとかコスタリカとかさ)、そのうちどれが最初か判んなくなるしまあいいや、と中央に固い紙が挟まったパスポートを鞄にしまう。
そしてかっきり一ヶ月後。前日までの痔になりそうな残業の果てに自宅出発は6時台なので朝5時に起きて、買ってあったサンドイッチをもりもり食べ(あったかいもんの方が良かった、体が冷える)茶を飲み、全てのぬいぐるみに行ってきますの挨拶をして出発、気温差を考えてアウター二枚重ね着して、いつもの都営新宿線→京成特急で成田空港へ。今年買ったiPod+カナル式イヤフォンのおかげで結構退屈せずに第一に到着する。改札付近に差し掛かったところで携帯が鳴り、イマイズミコーイチが「着いた」とのこと。南ウィング、と適当に歩いているといきなり到着ロビーに出てしまったので一瞬間違えたかと思ったが出発ロビーは更に上、でけでけ歩いてイマイズミコーイチと田口さんの姿を見つけた。おはようございます眠いっすねしかも寒いし成田は遠いし、とここにいる何千人が同じように思っているであろうことを言い。
相変わらず果たして省人化に役立っているのか疑問な自動チェックインマシーンで発券と荷物の積み込みを終え、イマイズミコーイチは別便で飛ぶ(間際になって行く事になったので同じ便が取れなかった)出演俳優のジン太くんと連絡を取っているが、僕らはANA(第一ターミナル)で彼はJAL(第二)、「出発時間はほぼ同じだから、それぞれ済ませてお茶でも」などと言っているのを聞きつつ第一と第二じゃ駅も違うけど正味一時間で会えるのかなあ、とちらと思ったがまあ今回のメンバーではこの人が一番旅慣れてる(先月もダンス公演で香港行ってた)のでアテンドは任せてるです、と田口さんに言ってから喫煙所で煙草をふかし、隣のどう見ても千葉のじいさん、と言う感じの男性二人がポルトガル語で会話しているのを興味深く観察したのち戻るとイマイズミコーイチが顔を曇らせ「なんかね、こっち来るにはバスで移動しないといけないんだって。しかもバスがすごく混んでるから無理みたい」とのこと。どうやら北ウィングと南ウィングくらいの距離と思っていたらしいが(僕もよく判ってません)そうではないようで、まあいいよ間際にバタバタするのもなんだしさ、と3人で出国審査へ向かった。
香港まで153里
さてANA。3年前の上映で乗ったときの記憶はパンダキャンペーンやってたくらいの記憶しか無いのですが出発は10時過ぎ、これはごはんがご飯が機内食がすぐ来る、でもその前にビールかなあ、前日2時間しか寝ていないので早いとこアルコール摂って眠りたい、と思っていると取り合わせがやや謎のブルボン製スナックミックスと共にドリンクサービス、3人とも「ビール」と言ってみるが来たのがそれぞれアサヒにキリンにサントリーでみんな違う、上に何だか判らないが銘柄は選べないような雰囲気で、何か配慮があるらしかったが何でもいいっす、と自分のところに回ってきた一番搾りで乾杯、内輪の壮行会をする。あとはすき焼き機内食を完食して(もう一つは魚)前日iPodに入れたトニ!トニ!トニ!ザ・ヒッツを聴いてうとうとしていたら結構すぐに着陸体制でございます電子機器はぜんぶ切れ、ということでどかん。
※余談:自分の前に座ったじいさんが気付けば豪快に席を倒してきており、まあ倒す前に一言無かったのはいいとしよう。いいとしますがその後も微妙に前に戻したりまた倒したりで全然定位置を決められないでいるので流石に自分は耐えきれなくなり(1)まずアイマスクをして(2)次にイヤフォンを耳に押し込み(3)どこから見ても寝てる人の装いになったのち、相変わらずゆらゆらしている前の席を六割くらいの渾身の力を込めてドガッ、といっぱつ膝蹴りしたらその後はおとなしくなった。こちらも一言「あの、止まってください」と言えば良かったんですが、我ながらひどい事をしました。
ニュー旅券での入国審査は全く問題なし、自分は。ところが自分より先にカウンターに行ったはずのイマイズミコーイチが引っかかっている。どうも先月の公演で取った労働ヴィザを見た係員が「今回の目的は何だ」と質問しているようなのだが本人の説明がうまく伝わっておらず何やら止まっている。仕方が無いので自分が係員の背後から「今回この人は観光なので労働ヴィザない、なんか文句あるか(とは言わなかったけど)」といった事を不断あまり出さない大声でわめくとやっと解放してくれた。やれやれ、とゲートに向かいイマイズミコーイチは前回の残りがあるのでいいけど僕らは現地通貨を持っていないので空港内で両替して、さすがにレートが悪いが仕方ない。さて、と出口を見ると僕らの配給InD Blueのヘンリーとジョナサンの顔が見える。イマイズミコーイチは先月会っているが自分は2年以上ぶり。ジョナサンとはメールのやり取りが多いのであまり久しぶりと言う気もしないが、お元気そうでなにより。やがてやってきたジン太くんと田口さんを2人に紹介して、さてどうやってホテルへ、と聞くと「香港国際映画祭の車で公式ホテルへ向かいます。他の作家を待っているのでしばらくしたら」というのでややするとまた2人来た(日本人らしい)ので連れ立って出かける。映画祭スタッフらしい若い女の子もいるが、彼女はとっとと先頭を一人で歩いて行ってしまい、後から来た2人の日本人まで「僕らの」ヘンリーが案内しておる。仕事しろよねえちゃん。
くるま(それ以上の感想が…)
一応整理すると映画祭の送迎車は映画祭が用意したホテルに泊まる人だけを空港⇔ホテル間に運ぶので、僕らと宿泊が別になる(諸事情により)ジン太くんは乗せてもらえない、ので香港に来る前にメールで打ち合わせ、空港に着いたらヘンリーがイマイズミコーイチと田口さんと自分の3人に連れ立って映画祭の車でホテルに行き、ジョナサンがジン太くんを連れて彼のホテルに行き、僕らのホテルで再集合という手はずになっていたのだった。「招待」されるのが監督のみなのでこんなややこしいことになっているわけですが、まあ一人分でも出してくれるなら受けましょう、とは思うものの手続きの煩雑さは出してくれない映画祭に行くときの倍以上です。まあまあでもホテルはイマイズミコーイチ便乗でエクストラベッド料金でいけるし、便利だけど高い機場線(成田エクスプレスみたいなやつ)乗らなくていいし、と心の中で節約できた小銭をちゃりんちゃりんと貯めつつ僕ら3人とヘンリーを乗せた(他の2人と映画祭のおねいさんは別の車)黒塗りのアウディは島から島へと走ってゆく。
曇り空の中をホテルに着く。
なんかー、
なーんつーんですかー、これはー。
あまり適切な表現が見当たりませんが、
バブル。
ですね。
気を取り直して。僕らの泊まる映画祭公式ホテルは「エレメント」というでかいショッピングモールの一角にあたる「W hotel」という真新しいホテルで、日本でこれと似たようなホテルに泊まった事などありませんが2007年に香港レズビアン&ゲイ映画祭で提供されたコーズウェイベイのホテルに近いか、なんか非現実的。昼なのにナウなナイトクラブみてえ、みてえですがもう何も言うまい。ヘンリーと連れ立って1階の映画祭受付に行き、パンフレットやらゲストパスやらをもらい(「バッグがしょぼい」とぶーたれるイマイズミコーイチ)、パチンコ屋を思わせるステキ☆なエレベーターに乗って6階のレセプションへ、巨大なモニターを背に応対してくれたおにいさん曰く「お客様のお部屋はエクストラベッドの搬入が済んでいないので30分ほどお待ちいただけますか」だってさ、仕方が無いのでまた1階に戻り、外の喫煙所で煙草を喫っているとさっきのレセプションでも会った空港から一緒の日本人ゲストのお2人がやってきて、少し話をする。彼らは短編映画の制作チームらしいのだけれど空港では別の長編作品の監督と思い込まれており(映画祭に。仕事しろよ)誤解は解けたものの映画祭は割とほっぽらかしなのでチェックインしたはいいが「部屋にはどうやって行くんだか判らないので出てきました」と頭の痛くなるような事を言うので(だから仕事をしろよ映画祭ゲストアテンド)「僕らの」ヘンリーが「1階からのエレベーターは8階までにしか行かないので、6階で一旦降りてエレベーターを乗り換えてください」と指南。大丈夫なのかこの電影節(映画祭)は。
あんまりバブル感が伝わりませんが、エントランス
もうそろそろよかろ、とレセプションに向かう。キーをもらってヘンリーの言うとおりに6階で乗り換え、乗り込んでも目的の16階が押せない。あれ?と思っているとヘンリーが「カードキーをそこのセンサーに当てて」と言うのでカードをかざすと一瞬光り、ボタンが押せるようになる(ハイテクセキュリティー)。着いた16階はまあ何と言うかステキ☆なラブホテル(行った事ありませんが)みてえ、どこまで行くんだの回廊を二度ほど曲がって#1618、ここだ。重い扉を開けると案の定スタイリッシュつうんですか、やっぱコーズウェイベイのホテルっぽいな。あからさまに「とにかく入れただけ」という風情のエクストラベッドがお部屋の空間バランスを著しく損ねていますが構うもんか、でも流石にこれでは導線が無茶苦茶なので一人がけソファと位置を入れ換えて何とか動けるようなお部屋にはなりました。部屋でしばらくぼんやりしながら莫迦高そうなミニバーの値段当てクイズをしたり(プリングルス800えん)、インターネットは一台まで無料なんで田口さんのMacをつないでみたりしているとやがてヘンリーの携帯電話が鳴り「ジョナサンから。ジン太さんと一緒に到着したから迎えに行ってくる」とカードキーを持って部屋を出て行く。そうかキー持ってないとここまで上がれないのだね。ややあってジン太くんを伴ってジョナサンがぴょこぴょこやってきて、これでやっと再集合。
「これからどうしますかおなか減ってますか」とジョナサンが言うのでそうね、飯でも食いましょうか、とホテルを出る。巨大なショッピングモールを抜けてたらたら歩き、ああやっと僕らの知ってる香港ぽくなったと思えるジョーダンの辺りまでやってきて(ホテルがあるのはお台場みたいなところで、市街からはちょっと外れている)ジョナサンが「雲呑麺なんてどうでしょう」と指差した店に入る。わ〜い、と店内になだれ込んであ、5人座れる席がないか、と隣り合わせで3+2の席に別れて注文。田口さんもジン太くんも初香港なのでここはやはりイマイズミコーイチが注文担当だろう、と雲呑麺と芥藍茹でっぱなしを頼んで食う。うまい。あっという間に食い終わり「じゃ、次は甘いもん」ということで喫茶に入って牛乳プリンかな、と思っているとヘンリーは「麺じゃ足らない」といきなりモーニングセットみたいなトーストを注文する。しかし食うね。席に着いた瞬間に注文が来て、注文するそばから厨房にオーダーが入り、最後の人が食い終わった瞬間に総額を書かれたメモが飛んでくるという忙しない店では明日の上映に向けた相談などできるわけもなく喫茶終了、店を後にし、僕らは二週間ほど前に既に一度見ているイマイズミコーイチが「強力にお勧めする香港ライティングショー」というものを見る事になってチムサッチョイに向かって歩き出した。
今日は曇っていて、夜になると結構寒い。九龍半島と香港島の海峡に向かっているのでなおさら空気が湿っている。で、その「ライティングショー」ってのは何じゃらほい、とイマイズミコーイチに聞くと「とにかく、ちんこばくはつ」としか言わないのでジョナサンに聞くと「私もいつからやってるのか知らないのですが毎日やっているはずです」という大分ズレた回答しか返ってこないので諦め歩いているとやがて、海岸に着く、煙っている。結構な潮風に吹かれながら待っているとやがて広東語、北京語、英語のアナウンスがひっきりなしに流れ、併せてシンセ一発みたいな音楽に乗せて対岸のビルが光り始める。レーザー、スポットにその他いろいろなライティングが連携しながら光って行く様はなんつうかすごく豪華な地方のパチンコ屋大会というか、間抜けさ加減では高速沿いのラブホテル群みたいですがうむ、これも客寄せかな。20分くらいだったんだろうか、「香港ライティングショー」は感動の大団円を迎え、すっかり冷えた体の自分らはジョナサンに先導されてでかいホールに入る。「ここも映画祭の会場です。みなさんの上映はここじゃないのですが」と言われてとにかくでかいシャンデリアを見上げつつチラシを漁る。「小野麗沙(リサ)コンサート」のチラシなんぞもありました。ここで田口さんはやってきた現地の友人とどこかへ出かけて行き、さて僕らは。
シャンデリアー
「どうしますか、もうホテルに戻りたいですか?疲れているみたいですし」とジョナサンが聞くのでそうね、なんかどっかゆっくり座れるところでお茶とか飲みたい、と言うと「では」と少し雨の混じっている中を歩き、ブランド屋の取り合わせがまるで表参道な辺りを過ぎ、「ここなんてどうです、バーガーキングですけど」というご提案があり、よかです。店に入るとヘンリーがまた最大限に彼の能力を発揮して「あれとこれとこのセットだとお得、でこのクーポンを出せばアイスが安くなって」などと教えてくれるのでああじゃあハンバーガー食おうか、という気になったがいまいち「お得なセット」が面倒くさくなったので自分は普通にマッシュルーム何ちゃら、というこってりしたものを注文し、イマイズミコーイチはアイスも頼んでいる。自分は常食のフライドポテトを黙々と食いつつ、「今後の展開」についてちょっと話をしていたがなんか集中できないので続きはホテルに戻ってから、ということにした。ホテル周辺はまったくコンビニエンスストアとか無いので、この辺で水とかビールとか買おう、と「あるかな?」とジョナサンに聞くと「近くにセブンイレブンがあったはずです」つうのでまた別のビルに入って「地下へ」とエスカレーターを下ったがセブンらしいものは無く、「ああ移転したんでした、上です」と巨大なイースターエッグのオブジェを横目に下がったばかりのエスカレーターを登り、「ここに移転…したんですがまた移ってますね、確かに少し前まではここだったんですが」と指差した辺りはカルチエで、セブンイレブンのあとがカルチエってのはいいのか、いいのよね。3度目の正直でやっと見つけたセブンイレブンで水やらビールやら買い込んでからタクシーに分乗し、「では私はジン太さんをホテルに送ってからあなた方の部屋に行きます」というジョナサンと一旦別れて自分とイマイズミコーイチ、ヘンリーは夜の道をホテルへ戻った。うむこの道は、歩けない。
部屋に入ってやでやで、と狭い冷蔵庫に青島麦酒を寿司詰めにして、やがてジョナサンがやってきたので香港国際映画祭以降の上映はどうしましょうか、という相談をしてから明日の時間を約束し、田口さんも戻って来たので(登山電車でピークに行ってバーで一杯、というデートコースのようなことをされたとのこと)、お疲れさまでしたまた明日、とこれまた妙にアーティスティックなシャワー(蛇口が異様に回しづらい)で体を洗って就寝。ぼくはエクストラベッドなので一人だけあさっての方向を向いて眠ります。
2010.0403 香港へ
2010.0404 上映一回目
2010.0405 インタビューなど
2010.0406 遠足+上映二回目
2010.0407 成田へ