2010.0404 星期日
11時半起床。やっぱり曇っている。今回は僕ら以外の全ての皆さんが初香港、なので何をするに付けなるべくご当地らしい感じで、と今日は飲茶に行ってみましょうか、ということで約束をしていたのだがジョナサンから電話があって「ヘンリーが迎えに行きます。私はジン太さんをピックアップして合流します」とか言っているのでああそう、じゃあ煙草でも喫うか、とホテル玄関からかなり外れた「喫煙所」というか小さくてすぐに満杯になってしまうスタンド灰皿のあたりでぼんやりしているとリュック背負ったヘンリーくんが「やあ」とか言いながら来たのでおはよう、さて起き抜けに油物すか、と出かける。「レストランはジン太さんのホテルに近いんです、なので電車で行きましょう」と地下鉄に乗り込む。地下鉄で、っても一駅なんですが「奥運(オリンピック)」駅で降り、なんでここはこんな駅名?と聞くと「香港が初めて金メダルを取った競技(カヌーだったか)の練習場だったから」という…ああダメだ大して興味の無い話題はちっとも正確に憶えていませんが取りあえず北京五輪にちなんで作った駅かなあ、という自分の漠然とした予想は大外れ。
グッドアフタヌーンがっかり、のホテルのエレベーター
今日は日曜だからなのかこの辺のビル群は営業してない感じの照明の暗さ、でも店は開いている。ビルの中のフロアにあったレストランにジョナサンとジン太くんがいる、はずなのだが見当たらない。4人でめいめい勝手に探すがなんかやたら広いのねこの店は、と数分うろうろしたのちようやっと2人が着いているテーブルを見つけ、おはようございます。2人の前には突き出し程度の食べ物がぽつんと置かれているのでもう注文したの、と聞くと「まだちゃんとしてない」とのことでやはりここはヘンリーさんでしょうか、とお任せお任せ。僕らの座った席は厨房が丸見えの場所にあるので、でかい中華鍋で豪快に何やら揚げたり炒めたり、を見られて結構面白い。途中ウェイトレスさんがキュウリの入った皿を持って強力にお勧めしてくるがヘンリーとジョナサンは断っている。やがてやってきた揚げたり炒めたり蒸したりしたものを次々に食い、いやあ旨いね、と言っているとさっきのおねいさんがまたキュウリの皿を持ってきてさっきより更にパワープッシュしているようだ。香港人達は何やらひとしきりもめていた(としか見えない)が結論が出たらしくウェイトレスさんは叩きキュウリの和え物を僕らのテーブルに置いて行き、どうしたの安くするからって言ってきた?と聞くとヘンリーは笑って「いや、彼女は『もうこの一皿で最後なの。これが捌けたらあたし上がれるんだけどいい加減手が疲れた、だから買え』って言ってきたんで降参した」と言った。ははは、でもけっこううまいよキュウリ、とバリバリ食ってさて、午後の朝ご飯おしまい。
しゃてどこへ行きますか、と聞かれるとイマイズミコーイチは「モンコック、オタクビル」とやけにきっぱり言うのでじゃあそこへ行きましょうか、歩いてきましょう。なんだか一日中曇天かねえ、とか言っているうちに旺角(モンコック)、信和中心。まあ中野ブロードウェイみたいなもんです。地下からみっちり中古CD(やたら日本のCDがある)やら漫画本やらフィギアやら、時間を決めて集合しましょうと解散したものの自分は最近物欲の方向性が変わってきているのか香港で「くるりベスト」買ってもなあ安いけどさ、と地下の売り場を3周くらいしたのち結局何も買わずに外に出てきて、時間通りに表の通りへ出てきていた田口さんジン太くんヘンリーとバス停の辺りで適当に写真を撮りあったりなどし、さっぱり出てこないイマイズミコーイチ(とジョナサン)を待つ。約束の時間を20分ほどオーバーして「まだ…」と名残惜しそうな招待監督をお迎えして商店街を通り抜け、イマイズミコーイチは途中で鶏の絵が描いてある陶器調のiPhoneカバーなどを買い、途中「傷心酸辣粉」という黄色地に赤字の看板があって何アレ、とヘンリーに聞くと「とにかく辛くて酸っぱくて泣いてしまうような…」食いもんだそうでよく見るとこれは第二号店で、心の折れそな二号店。疲れた(主に自分が)ので大家楽(ファミレスと言うか)でビバークしてたら自分のリュックにでかいシラミのような形の虫が乗っかっていたり、ああなんか生き物として弱ってきてるかも次は金魚屋街へ行ってみましょうか、方向がどっちだか判んないけど。
ウーマンズウェアー
僕らも来るのは久しぶりだが金魚を中心に観賞魚、とあとペットショップが軒を並べている辺りまで歩いて来て(でも両隣ペットショップに挟まれたレストラン、というものもあり日本だとこういうところに出店するのは結構チャレンジャーだと思うんだけど)、水槽にみちみち入った近所、熱帯魚、ビニールパックに吊るされたベタなどを見るに付け、基本ここは毎日金魚(あるいは亀)すくいのようなもんではないか、と思う。香港初のお二人(特に田口さん)はかなりこの辺が気に入ったようで、よかった。しかし路上に水が入った不透明ビニール袋がたくさん置いてある、と思ったら何かの稚魚がみちみち詰まっていました。何かの拍子に破けたらえらいことになるなあ、と慄然としつつ写真を撮っているとヘンリーが「こっちこっち」と手招きするので付いて行くと食べ物屋の前で止まり、「ここは有名な台湾の麺チェーン、香港の人が台北に行くと必ず寄るんだよ」って説明はともかく別に入ろうか、という話の流れでもなく、とにかく食べ物関係はすべてこの人に流れ着くようだった。
やや日も暮れかけ(ているが元々曇っているのでたださっきより暗くなったというだけ)、そろそろホテルに戻ろうか、今日は夜に上映があるしその準備もしないとね、とタクシーに分乗して僕らのホテルにたどり着く。車だとあっという間なんだけど。ジョナサン達は下で待っているから、ということで時間を約束してエントランスで別れようと思ったら「そうそう、今日の舞台挨拶での通訳さんですが」とジョナサンが話を切り出す。実は昼間に一階の映画祭受付で確認した「通訳さん」の名前は自分らの知り合いの方と同じ名前で、ただ彼女とは別にいつも連絡を取り合う間柄でも無くこの映画祭に来ているのかも全然知らなかったのだがううむもしかして、と名字を確認したら(その時ヘンリーに聞いたら「知らない」とか言うもんで)やっぱり存じ上げている方でした。わはは。彼女の名前は昨年北京の超郊外であったクィア映画祭で不意に出たりしてなんかご縁がね、と勝手に思っていたのはこういうことか、と妙に納得して、はいはい何でしょう、とジョナサンに聞いたのだがすると彼は「明日の雑誌取材なんですけど、その通訳も彼女にお願いできないでしょうか」できないでしょうか、って言われてもまだ会ってもいないし、と何とも答えかねて「でも僕らからは連絡取れな」まで言いかけたらすぐそこにその藤岡朝子さんがいたのでした。あ〜あ。あ〜あ、てことはないか、僕らのご無沙汰してますのご挨拶をそこそこに切り上げてしまったジョナサンが「あの、明日彼らの取材があってその通訳をですね」と言い出すが無論藤岡さんも映画祭の通訳として来られているのでヒマではない。結局ちょっと、むり。ということでえらいすいません今夜はどうぞよろしくと別れるとジョナサンが「では明日の通訳はあなた(わし)にお願いすることにしたいのですがいいでしょうか」ってわちゃあこっちにお鉢が回ってきた、どうなったって知らないよ、わしにも判らんどうなるか。
さて、行くか。
けっきょく通訳さんやるんでしょうか明日問題はなんだかうやむやになったまま僕らは部屋に戻り、俳優陣(含むイマイズミコーイチ)は舞台挨拶用に着物に着替えるのでジン太くんがアイロン(台もある。さすがお高級)かけたり田口さんが気付けを直したりしているが自分は部屋の隅っこにあるエキストラベッドに寝っ転がってiPodで音楽聴いたりしてるだけ、なんだか妙に眠気が襲ってきて現実味が薄れてくる。2人の仕度ができたので階下に降り、ヘンリーに着物を褒められつつジョナサン、藤岡さんと集まってまたタクシーに乗り込む。今日の会場は尖沙咀にあるHong Kong Science Museum、直訳すると「香港科学博物館」だがそこの講堂での上映。僕らは初立ち会いだが3月に既に一回やっているので「世界初公開」ではない。映画祭後半のほうがやっぱ注目度があがるので、ということで世界初公開の「つぎ」の上映です。開場がまだらしく、外の回廊に人が並んでいる。ロビーで今日の司会のレイモンド・P(香港LG映画祭のプログラマーで「初戀」を選んでくれた人だったりもするのだが、初対面)と挨拶して、一足早く客入れ前の劇場に入り、挨拶後の席を確保したり段取りを軽く打ち合わせて、やがてお客さんが入ってきた。席数は忘れましたがかなり大きい劇場で、「売り切れ」の表示も出てはいたけどさすがに満席ではない、が十分な動員でしょう。レイモンドピーのMCで舞台挨拶、広東語で挨拶して受ける監督、ジン太くん、田口さん、わしと呼び込まれてご挨拶して、でかいスクリーンで初めて見る「家族コンプリート」、さて。
さて、というかあれ?と思わず言ってしまいそうになるくらい色が悪い。何かレンタル落ちのVHSビデオ見てるみたい。光ってるところは異様に飛んでいるし、暗いシーンは妙にざらついている。前々から「この劇場はあまりプロジェクションが良くないのでDVカムだときついかもです」と言われていたのだが長さの関係で代替のテープが用意できず、結局全て1本のDVカムで回すことになったのだがそれにしてもだ、全然集中できない。音はまあこんなもんかと思うけど(でも低音がモゴモゴいってるなあ)、それにしても。気が散ってしまってお客さんの反応とか、そういたところにもあまり注意が行かず(何でここで笑ってるんだろ、という箇所はいくつかあったような気が)、じゃっかん上の空のうちに上映終了、一応エンドクレジットは最後まで映っていたような、気はするがすかさずQ&Aで、かなり時間が遅いにも関わらずお客さんはけっこう残ってくれている。観客から質問が飛ぶがほぼイマイズミコーイチのみ、何か「熊の意味は」「熊の」「意味は」つう質問連発でこりゃ音楽まで質問が来るこたあるめぇ、と自分は壇(じゃないけど)上と客席の間をちょろちょろしつつ気の毒なくらい一人でたくさん喋っている監督ティーチインをジン太くん越しに撮ったりなどしているうちに「さてそろそろ」「時間です」とレイモンド・ピー。当然ながらと言うべきか「初戀」の時と質問の出方とかが全然違い、そうか新しい映画なんだなあ、という実感が遅ればせながらおぼろげに芽生え、間抜け。
ソールドアウトっす
ロビーに出て自分はトイレに急行し(おしっこもれそう)、香港ゲイにガチムチが流行ってるってのは本当なのだなあ、と妙なところに感心したりしつつ戻ると、監督と俳優くんはお約束の写真&サイン会絶賛開催中で、でももう時間が遅いので早々に追い出しをくらい、明かりも少ない外の通路で(「禁煙です煙草消して」とか警備の人に言われつつ)まだ残ってくれているお客さんと少し話す。今日の画質の事が気になったので「あのさ今日の上映の事なんだけど」とジョナサンに言いかけると慌てて「待ってくださいここにはスパイが居ます」などとまた訳の判らない事を言って「皆さんお疲れなのでホテルに戻るとか言って巻きましょう」と歩き出し(何をどうスパイされるんだか、うちらは脱北の人か)、でも付いてくる人(「初戀」の時からの顔見知り)居るけど…、まあいいやこっちは別に何を聞かれても困るという事は無いしジョナサンの気の済むようにさせましょう、とその辺の路上で監督と俳優くんの記念写真を撮りながら「うむ、食うなら粥だな」と言うとやっぱりヘンリーが見立ててお店を決め、まあ初上映(立ち会い)なのでビール、と青島を瓶で頼んででもジョナサンもヘンリーも呑まないから…と思っているとヘンリーはグラスに一杯ビールを注いで「乾杯」、どうでもいいけど初めて彼が酒を飲むところを見た。結局まだスパイが居るからなのかすっかり忘れたからなのか、上映に関する話は全然出ず(路上では少しした、というかジョナサンが一方的にベラベラ話し、スパイはどうなった)、ただ皮蛋粥と腸粉と揚げパン食っていや〜相変わらず炭水化物ばっかだね、とビールをくいくい呑んで本日終了、ジン太くんはこれから一人でホテルに戻るのもなんだし泊まって行けば、ということで4人でWホテルにタクシーで帰りジン太くん、すいませんが僕の私物で周りが巣みたいになってるエキストラベッドで今夜は寝てもらえますでしょうか。
「真夜中の虹」2:28:42 AM
2010.0403 香港へ
2010.0404 上映一回目
2010.0405 インタビューなど
2010.0406 遠足+上映二回目
2010.0407 成田へ