2026.0126 星期一
昨日までの2日間上映で疲れてしまったようで、2人ともこの日は昼過ぎまで寝ていた。もっと正確に言えば調子が悪くて外出する気にならずきちんと飯を食いたいと思うほどには腹も減らず、MOさんにもらったパイナップルケーキや、昨日までの上映でGagaが差し入れてくれたドライフルーツ、ロビーに置いてあるスナックやお茶などを摂取してダラダラしていた。ここのホテルにはフロントの隣にコーヒーマシンと給湯器、それに4種類のティーバッグが置いてあってマグカップも常備されている。宿泊客は好きなだけお茶やコーヒーを淹れてよく、でも使い終わった食器はここの流しで洗ってね、という仕組みで、あと電子レンジもあるので例えば夜遅くにコンビニエンスストアで買ってきた弁当を温めて食べる、といったこともできるのでした。この共有スペースでご飯食べて歓談しているグループも結構見かけたりした。電子レンジの隣にはガラス瓶入りのチリソースがぽつんと置かれていて、毎日見るたびに中身がどんどん減っていくのがおかしかった。備品…なのか?感じは(泊まった事ないけど、最近の)ホステルっぽいというか、まあ名前からして「INN」が付いているのでそんな感じ。
今日は前から予定されていたインタビューがある。台湾に行く前の1月上旬にMOさん経由で来た話で、台湾の大手メディアである「鏡週刊 Mirror Media」の記者がカメラマンも入れて対面でインタビューしたいと言っているとのことで、自分らが台湾に行ってからのインタビューだと記事公開のタイミング的に自主上映会の宣伝としては間に合わないのでは、と思ったが、先方は何とか頑張って30日より前にオンラインで記事を出すようにする、というので可能な限り早めの日程ということで府中15での上映翌日である今日でお願いしたのだった。時間はの14時から、場所はホテルから歩いて行けるくらいのところをセッティングしてくれたので、本調子でないまま2人してヨタヨタと迪化街を歩いていく。指定された店は「Perfect Days」という喫茶店で、パーフェクトデイズ言うたらあのヴェンダースのあれですがな観てないけど、と思いながら店に入ると寒い。冷房がしっかり効いているので薄着で来たことをいきなり後悔する。店の奥にある席に2人待っていて、通訳さんとカメラマンさんだそうなのだが肝心の記者のAO氏がまだ来てないので暫し待つ。
やがてAOさんもやってきたのでインタビュー開始、直前ではあるのだけどテキストで質問予定リストももらっていたので、基本的にそれに沿って進めてはいるのだがやはり基本的な情報を説明するのにかなり時間がかかる。自分はほぼ立ち合いだけで話を聞かれる事もないのだが、じっと座っていると冷房がだんだん体に沁みてくるのでやたらトイレ(は寒くない)に行ったりしていたのがいい加減限界になり、インタビューがちょっと途切れたタイミングを狙って「あの、少し寒いのですがここ」と言ったら通訳のクニコさんが店に冷房を抑えるよう言ってくれて、しばらくすると格段に過ごしやすい温度になったのでした。台湾冷房問題は去年の一人旅でもけっこう対応が大変だったことで、結果的に出番がなかったとしても羽織るものを持ち歩く方がよかったのでしたが今日は調子が悪いから頭の回転も遅いのだ、と自分に言い聞かせる。インタビューが予想以上に長引いているので先に写真撮影になる。本当はここでのインタビューを終えてからどこかのホテルをスタジオ代わりにして撮るという計画だったそうなのだが、さっき問い合わせたら目当てのホテルがいっぱいで取れず、店内と店外で暗くならないうちに撮りましょう、ということになった。
撮影中(店内トイレ)
もちろん基本的にイマイズミコーイチ単体の撮影なのだが、カメラマン氏は時々自分に「彼に足を乗せて欲しい、顔は映らないから」という謎リクエストをしてくるので自分はハア、と気の抜けた返事をしながら言われるままに靴を履いたままの足を乗せたりするのですが、自分の顔が映るかどうかはどうでもいいのだけど結構体勢がきつい。「がんばって」と通訳さん越しにカメラマン氏が励ましてくれるのだが何だかそういう事じゃない、と思いつつ撮影は終わり、ああ疲れた。後日出来上がったインタビュー記事を見たら結局その写真は使われていなかったのでしたが、あの時カメラマン氏がどういったことをしたかったのかを知りたい、という意味においてだけちょっと見てみたかったでした。撮影後、飲み物の注文をし直してインタビュー再開、お店のサービスでドーナツみたいなものが出てきたので食べつつもしばらくしてそろそろ閉店です、とお店から言われたので時間を確認したら19時近くで5時間くらい経っている。何とかインタビューを終えて店を出て、暗くなった路上でAO氏とクニコさんとしばらく話してから、自分らは暗くなった道を歩いてホテルに戻る。
さていきなり初めての名前を出すがデヴィッドのことである。デヴィッドとは誰か。そりゃこっちが知りてえよという感じですけれども元々は、と言えばMOさんから鏡週刊のインタビューについての話が来たタイミングで自分のLINEに突然現れて友達リクエストをしてきた「David」さんという人がいてMOさんに「この人が鏡週刊のレポーター?」と聞くと「いいやそれは僕のボーイフレンド」という返事が来たので自分はああそうですか、と返すしかなく、でも「ハズバンド」とは言わなかったので結婚はしてないようだけどそれは兎も角、何故にここで彼氏が出てきたのかについての説明は無いままMOさんと彼氏は1月半ばに旅行で日本にやってきて、自分らが台北に行く前に東京で会えるね〜とか言っていたのだがMOさんが(台湾で彼氏にうつされたらしい)風邪を悪化させてしまい日本で会うのはやめましょうということになり、彼氏のデヴィッドがどんな人で今回の上映会に関わるのかどうかもよくわからないまま台湾に来てしまいました。だもんで最初にMOさんに会った時にオレンと一緒にやってきたミスター・ブルーが彼氏のデヴィッドなのかと一瞬思いましたがそうではなく、相変わらずデヴィッドはよく判らない人のままAOさんを含めたインタビュー用のグループチャットで活発に発言をしているので、どうも何かしら手伝ってくれるっぽいのでした。
台北に来たあとで、ニコラスだったかAOさんだったかはたまた別の人だったか記憶が定かでない誰かに「MOさんのボーイフレンド」の事をちらっと話したら「ああ、有名な作家ですよ」と言われたのでへえ、と思ったものの相変わらずMOさん本人は何も説明してこないので(上映会の準備でそれどころでは無いのかもしれない)、LINEで「Gagaの上映は無事終わりました。今日のインタビューも何とか終わりました。もし時間があれば明日あたりデヴィッドに紹介してもらえたら嬉しい」とメッセージしたところ「オーケー、彼の予定を確認して空いていたら夕飯を一緒にしよう」という返事が来た。自分らは今日初めての食事となる夕飯を昨日と同じく延三観光夜市で見かけた食堂に入って排骨スープというものを頼んでみたけどこれはいまいちで妙に甘く、でも薬膳っぽいので完食してから甘いもの、と昨日とは違う豆花屋に入って今回もうんうん唸りながら注文してイマイズミコーイチは豆花入りのぜんざい、自分はタロイモ団子入りのぜんざい(どちらも熱)、と思ったら団子ではなく茹でた芋がそのまま入っていて、これがバカうまかった。台湾で食べる小豆は日本のより豆っぽい味だと思うのだが、そこに芋の味が加わって何だか異様に喜ばしい。
芋 in 紅豆
ホテルに戻って、同じ建物の一階にあるかなりコンパクトなコンビニエンスストア「Hi-Life(萊爾富)」に入る。店のカラーリングはピンクと白と青なので、何となくトランスジェンダー・フラッグを連想する。こういうところでビール一本とかを買ってちまちま小銭を減らしているのである。ちなみにもう少し歩けばセブンイレブンやファミリーマートもある(しかも隣り合っている。)
2026.0127 星期二
午前中は起きてはシャワーを浴びて二度寝したりお茶を飲んだりしていたのだがようやく起きる気になってきて、ただイマイズミコーイチはまだまだ寝たそうだったので夕方までには戻るってくるね、と声をかけて一人で出かける。まずはいつもの延三観光夜市がある通りに行って、昼も開いている店に適当に入る。焢肉飯便當、というのが壁のメニューにあったので指さしでそれくらはい、と言って注文するとやがて豚角煮に野菜炒め、厚揚げなどが白飯の上にどっかり盛られた一皿料理がやってくる。台湾の「便當」は日本語の「弁当」から来ているようでテイクアウトの弁当形式のものもあるようなのだが自分がもっぱら知っているのはこういう食堂のメニューにある米飯とおかずを一皿に持った、日本で言えば丼飯みたいなものだけで駅弁とかは買ったことがないのでした。本当は一品ごとに食べたいものを頼んで自作定食みたいなのを作れればいいのだろうけど、初心者にはそれも難しいのでメインを選べばいいだけの「便當」メニューはありがたい。うまい。
ここから少し歩いてバスに乗る。向かうのは前回も行った台北市立美術館、というのも去年の一人旅では台北で行けるだけの美術館・博物館を回っていて、ここで展示されてて本当に偶然知った黃麗音(Steph Huang)という人の展示を自分はいたく気に入ってしまい、その後なんと東京にも展示が来て作家ご本人にも会えたのですが、その時に初めてこの台北での展示カタログが存在することに気づき、台湾にまた行くことがあったらそのカタログを買いに行こう、と心に決めていたのでした。自分はカタログが買えればそれで良かったのですがちなみに今は何の展示を、と見てみたら台北ビエンナーレの会場であるらしく、ではそれも観てきましょう、と軽い気持ちでバスに揺られて15分くらい、平日なので混んでないかもと思ったけどそれなりに人がいる美術館の、有料エリアの外側にあるミュージアムショップで探したけど目当てのカタログは無いようなので聞いてみたら「それは地下の書店で扱っています」とのことでチケットを買って入らないといけないのでした。でもチケット代は普段と同じ30ドル(150円くらい)なので小銭3枚で気楽に入れますです。
ビエンナーレ会場は地下から3階まであるのですがまずは書店に行って無事カタログを購入する。今の自分の財布にはGagaからもらった現金紙幣が唸っているので今後は概ね現金払いで行けそうである。そのまま地下の展示を観て廻り、順番がよく分からないが段々とフロアを上がっていくことにする。この美術館はかなり広くて展示スペースがたっぷりありかつ上から見ると「井」の字のような形をしているので、どこは観てどこを観ていないのかがいまいち判らなくなってくる。時間はあるので同じ展示を何度も観てしまうのは別にいいのだが、「これで全部観た」とは自信を持って言い切れないのが何だかである。四川省出身で台湾で活躍したゲイの画家、席德進(1923〜1981年)の絵があったり、自分の『犬漏』とクィアイースト映画祭(英国)のオンラインショーケースで一緒だった高田冬彦さんの映像作品があったり、また1982年生まれで高雄出身のゲイの画家、Skyler Chenの展示だとかでなかなか興味深い。結局行ったり来たりしながら閉館時間近くまで居てしまった。
2025台北雙年展「地平線上的低吟」臺北市立美術館
時間がなくなってしまったので寄り道せずにホテルに戻り、支度をしてからイマイズミコーイチと出かける。MOさん&デヴィッドとは18時に近くのレストランで待ち合わせている。昨日のインタビュー会場の喫茶店よりだいぶ近いのでそれほど歩かなくてもいいのだがポツポツと雨が降ってきた。傘はいらないくらいの雨だけど、もっと降ってきたら困るな。Googleマップを頼りに来たのはいいが、店がどれだか分からない。同じところを何度か往復したのち、指定されたレストランは通りに面したお茶屋の奥にあることがようやくわかり、入ってみると誰もお客がいなくてやっているのか、という空気だがお店の人が出てきて「席にどうぞ、注文はこちらから(とQRコードを示し)メニューはこれです。が、今日はもう4品以外売り切れです」だそうでもしかしたら閉店時間が近いのかもしれない。デヴィッドからはLINEで「渋滞にはまってしまって10分ほど遅れそう、外は寒いので席についていて」というメッセージが来た。待つのはいいけど先に注文するわけにもいかず、お店の人には友達が来るので少し待ってください、と頼んで古い建物っぽい店内を眺めたりして時間を過ごす。
やがて小さいキャリーケースを転がして男性が入ってきた。MOさんではないのでデヴィッドであろう、と見当をつけて初めましての挨拶する。どこかに出張旅行だった帰りですか?と聞くとデヴィッドは「いや、体への負担が一番少ないと医者に言われて普段からこれ」だそうでした。やがてMOさんとオレンもやってきて、通りに面した表の店とここをつなぐ空間には屋根がないのだが、見ると自分らが来た時より少し雨が強まってきているようだ。ぬれちゃったねえ、とオレンに話しかけるチームハバカリ。店の人はさっきと同じように「今から出せるのはこの4品だけ…あ、もう一つあったので5品です」とのことでその中から選ぶ。どれも定食っぽい感じなのだが自分はでかい肉団子がメインの定食にする。最初は昨日受けた取材の話をしていたのだが、実はGagaOOLalaのクワン経由であと2件インタビューの申し込みがあり、事前に送られてきた質問リストの中に「BLの隆盛についてどう思うか、自分の作品への影響は何かあるか」みたいな質問があるんだけど答えようがない、と愚痴ってみたところデヴィッドは「そうだねえ、僕は大学でクィア文学を研究しているのだけど、やっぱりBLについてどう思いますか、みたいな質問は(学生からに限らず)結構来るよ。僕はBLの研究者じゃないのに」と笑って、では台湾のクィア文学と映画について少し教えてくれた。
Skyler Chen "Favorite Novel" 2022
「台湾は割と最近まで軍政が続いていて(戒厳令の解除は1987年)、その時期に同性愛者が国内でできたことと言えば公園でハッテンするか小説を書くことくらいなもので、ポルノフィルムの制作はおろか、一般映画に(男女の)セックスシーンが入るなどということもなかったので、香港や日本とは違って『映画の中の性表現』というものに作り手も観客もいまだに慣れていないようなところがある。その代わり、まさにその代わりとしてのクィア文学の伝統には長いものがある。だから現在台湾でも盛んに商業BLドラマが作られているけれど、まともなセックスシーンはなくてまあ恋愛劇だよね。今泉監督作品のようなゲイ映画は台湾からは出てきそうにないし、あとこの香港映画は観たかな?こういう作品も台湾では作れないだろうと僕は思う。台湾には大して儲からなくてもいいからクィア映画を作りたい、みたいな監督がいない(みんな稼げるBLドラマの方に行ってしまう)」と見せられた「香港の映画」とはJun Li監督の『Queerpanorama [眾生相]』という作品のことで、知ってはいたけど日本で観る機会がなかったものだった。「この監督は絶対今泉映画を観ているはず」とデヴィッドは言うのだが、まあ香港だったら観ている可能性はある。「いま台北の映画館で上映中だから、観に行くといい」と横からMOさん。
これもまた観ていないけど台湾の映画だとちょっと前に『紅楼夢(The Story of the Stone)』っていうゲイ映画があったよね、予告編を観た限りではかなりセックスシーンがありそうだったけど、とデヴィッドに言うと「あれは例外的な作品で、映画としては出来が良くないけどセックスがたくさん出てくるのでいい映画」と妙な褒め方をする。自分も台湾のゲイ映画で良かったもの、と言われるとこれというものが思いつかないし、この間クィアイースト映画祭オンラインショーケースで観てすごく面白かった台湾のゲイ短編は監督が女性だったし…とか考えはするものの、かと言ってデヴィッドは文学者で映画の人ではないし、この人の話がどのくらい台湾の実情を時反映したものかは判断できない。ただもちろん台湾のクィア文化に関する知識は当然すごくある人なので、自分が今日のビエンナーレで観た席德進の生前エピソードを始め、いろいろ教えてくれた。デヴィッドが小説を書いていたのは昔のことで今は大学で教えているのだそうなのだけど、日本との交流もかなりしているようだった。たいへん楽しく食事をして(めし、うまい)オレンにも遊んでもらってニッコニコのチームハバカリはそろそろ帰宅。でも雨なのでMOさんが車で送ってくれると言う(すみません…)
な〜〜〜〜〜〜
ホテルに戻って、明日は高雄に日帰りで行くので早めに寝なくては、と思いつつ珍しく喫煙したくなったのでちょっと外に出て、でも雨なのでホテル建物周辺の屋根のあるところをグルグルするだけでしたが猫が2匹いて、全然逃げないと言うかこちらがしゃがんだら寄ってくるので、このあたりでは苛める人間がいないのかもしれない(のだとしたらいいこと。)あげられるものはないのでごめんね、と思いつつ撮っても撮っても「この恨み晴らさで…」的な顔になってしまうのがたいへん強烈でした。部屋に戻り、申し込みがあったその他2件のインタビューのうち書面でお願いします、ということになった一件の返事を書いて送り、明日は早起き。
けっこうフレンドリーだったのに顔が悔しそうなのはなんでなのか
目次
2026.0123-0125 台北まで/『すべすべの秘法』上映/『家族コンプリート』上映
2026.0126-0127 インタビューその1/台北ビエンナーレほか
2026.0128-0129 高雄へ/インタビューその2
2026.0130-0201 自主上映会1/自主上映会2/自主上映会3
2026.0202-0204 縦横/帰国と成田山
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