2026.0128 星期三

 さて今回の台北(自主)上映会の準備をものすごく熱心にやってくれているMOさんを自分らに紹介してくれたジャクソン先生、自分はなんとなく台中にお住まいだと思いこんでいて、かつ最初は「映画を拝見します」とか言っていたので台北で会えると思っていたのですが台湾に来てみたら「諸事情ありまして残念ながら今回は台北に伺えません、高雄に住んでおりますのでお時間あればぜひお越しください」ということで高雄か、遠いよな…と思ったけどここまで来て会わないで帰るのは違うな、と調べたら台湾高速鉄道(新幹線)の外国人観光客限定の乗り放題3日間チケットというものがあることを知り、この割引チケットは一枚10,000円くらいなのだが指定席の台北〜高雄往復だけでも15,000円くらいするので普通に買うより安くなる。乗り放題と言ってもジャパン・レール・パスのように見せて改札を通るタイプのカードではなく、まずはオンラインでバウチャーを購入し、その後に台湾高速鉄道のサイトでパスポート番号などを始めとした個人情報を登録してから乗りたい日時の列車を予約して、当日駅の窓口で発券してもらうという流れであるので適当に来た列車にすぐ乗れるというようなものではない。最初は一泊くらいしてみようかとも思ったのだけど適当なホテルが見つからず、日帰りにした。

 新幹線は台北から乗るのだが、ホテルから台北駅まではMRTよりバスの方が一本で行けて早いようだ。結構混んでいる午前7時台のバスに揺られて台北駅、前回の一人旅ではここで迷ったというか建物がでかすぎてどこがどこだか判らなくなりかけたので用心して時間より早めに行く。発券窓口はすぐに見つかり、大して混んでなかったのですぐに受け付けてもらえたのだが、窓口の若い男性職員は携帯の予約画面を出すとろくすっぽ見ずに「まずは予約してください」と冷たく言うので自分は努めてにこやかに(マスクしてるので見えないと思うが)予約はしてあります、と答えるとおにいさんはちょっと慌てた様子で「そうですか、少々お待ちください」と何やら手帳みたいなものを出してきて、出力されたシールを貼り付けている。すでに往復の車両座席情報が記載されているので、あとはこれを改札で見せれば乗れる。まだ時間があるので何か買って食べることにする。イマイズミコーイチはマクドナルドのタッチパネルで苦心惨憺注文をして、自分は構内でワゴン販売していたサンドイッチを買う。ベンチが全て埋まっているので大廳(ロビー)の床に座って朝飯を食べる。他にも座っている人がいっぱいいて別に問題なさそうだったのだが、イマイズミコーイチが寝そべった瞬間に警備員がやってきて注意されたので寝てはいけないらしい。


ホームのはじっこ

 出発時刻が近づいてきたのでホームに移動することにする。行きの座席は1号車なので先頭だが、号車ごとに入り口の指定が違うのでちょっと迷い、ややあってなんとか見つけて係の人に手帳型乗車券を見せて改札を通る。やがて来た 9:11 発の新幹線に乗り込む。車内はそれほど混んでない。自分らは終点まで乗るので寝てしまっても大丈夫である。イマイズミコーイチは車内で飲もうとファミリーマートでコーヒーを買ったら「なんか濃い麦茶みたいな薄さ」と不満げで、コンビニエンスストアで売っているコーヒーというものはまあスタンダードとみなしていいと思うがそれが薄いとなると、台湾で普通に飲まれているコーヒーは日本のより薄いのかもしれない。もう随分行っていない韓国のコーヒーも25年くらい前は薄かったなあ、というようなことを考えていた。新幹線は台湾島の西側をずっと南下していくので途中の駅で止まるたびにああここが、とは思うのだがすぐに過ぎ去ってしまうのであんまり印象が残らない。乗車時間は2時間ちょっとで高雄の左營駅に着いた。ホームに降りると台北よりかなり暖かい感じがする。改札を出たところでジャクソン先生が待ってくれていた。自分は初めましてでございます。その隣にまた男性がいて、「わたしのパートナーのヒューゴです」と紹介してくれる。今日はよろしくお願いします。

 「ランチに行きましょう」とMRTに乗って凹子底駅まで移動し、外に出てしばらく歩いているとやや汗ばんでくるくらいの気温。しばらくして到着したのは「就愛餡面食館」という名前の食堂で、確か台湾じゃないところの中華料理、と言っていたような記憶なのだけど忘れてしまった。小籠包、焼き物、冷蔵ケースから取ってくるパック入りの作り置き惣菜みたいな和え物、みんなおいしい。やはり地元の人と来るのが一番(ラク)だなあ。自力で注文してない&食べるのに夢中で写真を撮っていなかったため、とりわけパリパリしてたのが旨かった、程度の記憶しかない。ジャクソン先生が肉を食べないということもあって、野菜をたくさん食べられたのも嬉しい。満腹になってしばし休んで、では次は路面電車に乗ります、と目の前にある「愛河之心」という思い切った名前の駅から青虫みたいな可愛らしい電車に乗って自分らはどこへ行くのでございましょう、「フェリーに乗ります」だそうでわ〜い海だ海だ海だ。とその前にお茶しましょう、と電車を降りてカフェに入る。自分が注文したバスクチーズケーキと中国茶はたいへんよい味で、そしてこの店は冷房がキツくなくて居心地がいい。とりとめなくいろいろ話してから店を出て、この辺りは日治時代に砂糖の集積場だったので当時の線路や建物が残っている、と高雄育ちのヒューゴが教えてくれる。ヒューゴと雑談しながら歩いていてどういう話の流れだったか忘れたけど自分がこないだシンガポールに行ったよ、と言った途端にヒューゴが「自分はもう2度と行かない」と言い切ったので何があった(のかは聞きませんでした。)


線路はそのままに公園になっている

 いよいよフェリーに乗ってどこへ行くのか判っていませんが交通系ICカードで乗れるので特に問題はなくて、そしてこのフェリーは観光というより地元の人の足らしいのでバイクに乗った人なども大量にいる。「あっという間ですよ」とジャクソン先生が言ったように本当にあっという間に着いてしまったここはどこ。滞在中は調べもしなかったのですがここは「旗津島」という、元々半島だったところに航路を切り開いて島にしたところで、港町なのだと思うが降りてみると船着場からず〜っといわゆる観光地になっていて、歩いた先にある灯台などを目指すらしい。らしい、というか自分らも目指したのだが山頂にある灯台まで行くのは大変そうなので止めて海を見ながらダラダラして、そののち甘いもの屋に入って豆花などを食べ、セブンイレブンでイマイズミコーイチの悠遊カードにチャージをしてから戻ることにした。戻った側のフェリー乗り場付近も海っぺりは今風の商業施設になっていて、ジャクソン先生が「友人がやっているいいバーがあります」とここでみんなでビールで乾杯する。今日ここまでず〜っと映画の話をしているが、この屋外バーのところまで来てやっとゲイ映画/ドラマの話にたどり着く(それまでは日本の古い映画の話だったのである)。時刻は夕暮れ時になり、ここは海の見える素敵☆なロケーションではあるのだが、何故かすぐ近くで一人で延々カラオケで歌っている人がいて練習なのかパフォーマンスなのか判断できない感じで、自分はトイレに行くついでに回り道をして様子を見てみたが、一人では運べるくらいのオールインワン・カラオケマシンみたいなものを地面に置いておられました。謎。

 日が落ちて冷えてきたので、すぐそばの建物内にあるフードコートで夕飯にする。平日なせいかあんまり混んでない。中の店は日本風の屋号のもの(ラーメンなど。あとやたら北海道の名前をつけたものが目に付く)が結構あるけど自分らはビストロに入ってめいめい軽めの食事を頼み、そろそろ出発の時間を気にしながら話し込む。さっきのビールでだいぶ廻っているため、話の内容はあんまり憶えていない。店を出て今度はMRTで美麗島駅まで行き、名物だという駅舎内のステンドグラスのドーム「光之穹頂」を改札内から観て、乗り換えて左營駅に向かう。時間はまだ大丈夫なはずだけど、早めに着けると安心。最後に4人で写真を撮って、自分らはホームへと向かう。今日はありがとうございました。またいつかどこかで。帰りの新幹線は全駅には止まらない便なので行きよりも所要時間が短く、1時間半くらいで台北に着く。台北駅からホテルまではまたバスなのだが、そのバス停に行く途中で15年前に泊まったホテルの前を通りかかる。金馬映画祭が用意してくれたすごい高いホテルで、今の自分らが自腹で泊まろうと思った時に候補に入りもしないくらいの高級ホテルだけど、息災で何より、と思いながら運賃15ドル(75円くらい)のバスに乗って宿に戻る。


フェリー(復路)


2026.0129 星期四

 昨日の遠足で疲れたので朝早くは起きられず、10時過ぎになって起きだしてシャワーを浴び、まだ寝ているイマイズミコーイチを置いて一人で遅めの朝食を食べに出かける。今日は夜市の通りではなく、ホテルのすぐ近くにあって前から気になっていた食堂「珠記大橋頭油飯」に入ってみた。店頭にはテイクアウトの人が並んでいるが奥に席もある。壁にかけられたメニューにあった焢肉飯便當を指差しで頼むと、野菜を3品選ぶよう言われたので青菜の煮浸しとインゲン炒め、それと何か瓜みたいなのの炒めを注文する。白飯に焢肉飯が乗って付け合わせが3種類の一皿飯であるがたいへんおいしい。選んだ野菜も全てが旨い。他にもいくつかメニューがあるので通ってしまいそうです。ホテルに戻る途中で市場に店がたくさん開いていたので覗いてみる。ホテルの部屋の窓から見えていたのはこれか、とようやく全貌が判ったのだけど朝から生鮮食品や料理などを売る店が開く一帯らしい。その中にあった八百屋では前から食べてみたいと思っていたバンレイシ(釈迦頭)を売っていて、店のおばはんにこれください、と言うと初めて買う観光客だと判ったのだと思いますが何度も「今日は食べられない、必ず2〜3日は置くように」と英語で念を押されました了解です。ともあれ山になった果物の中からおばはんが念入りに選んでくれた一個なのでうまい、はず。

 今日は16時半からGagaOOLalaのオフィスでインタビューを受ける事になっている。Googleマップで調べるとホテルから50分くらいかかるらしい。MRTを一回乗り換えて最寄駅から徒歩。雨ではないけど曇っているので少し肌寒い。オフィスのあるビルに着いてクワンにLINEで連絡すると「エレベーターで上がってきてください」と返事がくる。去年も一人で行ったので勝手は知ってるビルだが、初めてだとここでいいの?という感じの建物ではある。8Fまで上がるとクワンが出迎えてくれる。「レポーターはまだ来てなくて…コーヒーを入れるので待っていてください」と出されたコーヒーはたいへん薄く、普段コーヒーを全く飲まない自分にはちょうどいいものでしたがイマイズミコーイチにとっては果たして。クワンは「日本語通訳が用意できなかったので、オンライン翻訳を使ってみます」とテーブルに置かれたノートPCをこちらに見せて、「音声を認識するので日本語で喋ってもらえれば中国語に訳されて表示されます」だそうなのですが自分らには訳された中文が妥当なものかどうかが判断できないのでこれで安心、とは言えないなあというのが正直なところである。開始前に、先日デヴィッドから聞いた話も踏まえてクワンにGagaも手がけている台湾BLドラマについて聞いてみる。「そうですね、商業作品として作られているBL作品は確かにセックスシーンは控えめで、よりロマンス的なものです。視聴者には『曖昧な関係』みたいなのが好まれるので」との事でした。ふむ。


あかんらしい(柴語録)

 ややあってインタビュアーがやってきた。スコットです、と名乗った若い男性で今回は2つの媒体にこのインタビューを載せる予定だそうなのだけど、一昨日会ったデヴィッドによると「一つは有名だけど、もう片方のは知らないなあ」だそうでした。元々は書面インタビューで申し込まれていたものをこちらの希望で対面にしてもらった。事前に受け取っていた質問リストにはいくつか誤認識があるようだったので、会って話した方が早いと思ったのである。インタビュー開始でリスト掲載順に質問は進んでいくが、やはり段々やっていくうちにイマイズミコーイチが日本語で話して自分が英訳、それをクワンが中国語に、という感じになってしまった。リストを見る限り、ライターのスコットくんはかなりたくさん調べた上で質問を作ってきてくれてるようなのだけど、やはりネット検索の限界というかイマイズミコーイチが俳優として出た薔薇族映画を監督作と誤解している質問があったりするので、それをいちいち書面で指摘するのは(自宅でやるならまだしも)旅先で時間を見つけて縷々書くのはちょっと厳しい、なので対面にしてもらえて良かったと思いました。

 そうこうしているとインタビューを受けている部屋の入り口がざわついて人が入ってきた。今回の契約担当のジャネットである。メールの返事が異様に遅い人ではあるのだが会うとフレンドリーだし話すと優秀っぽいので何と言ったらいいのか、まあお世話になっております、としか言いようがないのでにこやかにご挨拶をし、またインタビューを再開してしばらくすると今度は社長のジェイ・リンがやってきた。自分はやあやあまたお会いしましたね、ではあるのだけどイマイズミコーイチは10年ぶりくらいなんではないだろうか。ニコラスからはジェイはいま高雄に住んでいることを聞いていたのだけど、日帰り旅行では訪ねる時間があるわけがないので昨日は高雄に居たんだよ、くらいの話にしておいた。彼が「次回はぜひ高雄で会おう」と言ってくれたのはありがたいが次回とはいつだろう。ジェイには今回の配信と上映会が実現できてとても嬉しいありがとう、と伝える。何だかんだ言ってアジア地域のクィア・カルチャー(・ビジネス)のハブ的な人なので、一度ちゃんと協働してみたいとは思っていたのでした。さてこの先の3年(契約期間)でどうなるかな。ジェイとあってる最中にニコラスが入ってきたのがちらっと視界に入ったのだけど、声をかける前に引っ込んでしまった。

 インタビュー再々開、で時間も結構過ぎて3時間くらい経っている。スコットくんは「質問リストの最後まで行かなくていいです、ここまでで充分なので」と最後の質問をしておしまい、おつかれさまでした。片付けながらクワンにニコラスはまだいるかな?と聞いたら社内を探してくれたのだけど「帰っちゃったみたいです」だそうで残念。自分もオフィスを覗いてみたけどもうあんまり人も残っていなくて閑散としてました。クワンにお礼を言って辞去し、自分らは次の目的地に向かう。


オフィスでジェイと記念撮影くん

 これから行くのは南港にある「喜樂時代影城」というシネコンで、こないだデヴィッド&MOさんに教えてもらった香港映画『Queerpanorama [眾生相]』の台湾上映会場である。これがまたここから45分くらいかかるらしい。台北のこういうところは本当に東京みたいだ、と思いつつルートを検索する。MRTを一回乗り換えて行くのが良さそうだ。南港というのは昨日乗った新幹線の「台北の次」の終点駅でした。南港駅に着いた…のはいいけど映画館はどこだ。この辺りはまるで3年前に行った香港の新興開発地区のようで、でかい建物+人があんまりいない+暗いので方向感覚がおかしくなってくるが諦めてはいけない、とGoogleマップを頼りにヨタヨタと彷徨う。どうもこのビルらしい、と入ったところにあった2基あるエレベーターの間にモップが立てかけてあってこれは何かのメッセージだろうか、と2人で考え込むが判らないのでそのまま乗りこむ。上がってみると映画館は閑散としており、チケットカウンターは無人。「チケット購入はこちら→」と書いてある方に行くと何もないので困惑するが、場内を何往復かしているうちにもしかして唯一いま人がいるフード売り場でチケットも売ってるということなのか?と気づいて聞いてみると「ハイそうです、どの映画ですか?」と言われて拍子抜けする。こちらが何度「クィアパノラマ」と言っても判らないようなのでデヴィッドから送られてきた映画の紹介ページを見せたら「ああコレか」と判ってくれてようやくチケットを買うことができた。

 シアターはさらに上の階で、チケットを見ると「シアター21」と書いてあって全部でいくつあるんだ、という感じですがやっと入り口まで辿り着き、係員に何か言われたのでチケットを見せるとあっそ、みたいな感じでどっかへ行ってしまったのでここで待てばいいんだろう、とロビーにあったテーブルに着く。シアター21の入り口付近にお知らせ掲示板みたいのがあるのに気付いて見に行ってみると「上映5分前に開場します」と大層刹那的なことが書いてあった。しばしあってようやく開場したようなので劇場に入り、やがて映画が始まった。小さめの劇場で、お客さんは自分らを入れて6人くらい。あらすじとしては、主人公である香港に暮らす青年があらゆる男たち(ただし香港地元民以外)と出会っては決して自分の「本当のプロフィール」を相手には告げずにあらゆるセックスを重ねる、という内容。時には「ニューヨークに彼氏がいる」とか言ってみたり、相手の出身国について質問したり、または彼らに広東語の単語を教えてみたりはするので国外への関心はそれなりに持っているキャラクターとして設定されているのだが、この主人公は(少なくとも性的には)自由奔放なようでいて、実のところ香港という箱庭の中をぐるぐる周回するばかりで決して何故か外には出て行けない世界が展開するのでした。ともあれ登場人物が作品世界の中でひとりでに動いている感じがすごくするのが好もしい。台詞はほぼ英語で、しかも英語字幕が付いていたのでかなり助かりました。

 映画が終わった時点でもうかなり遅い時間だったので大人しく帰る事にする。路線検索では新幹線に乗って台北駅へ、みたいなルートが出るのだが3日間チケットで今から予約するのは面倒すぎるのでMRTで帰る。ホテルに着く頃には深夜0時前くらいでお店は空いてない、のでイマイズミコーイチは階下のコンビニエンスストアでオムライス弁当を買って、ホテルのロビーにある電子レンジで温めて食べている。自分は少し離れたセブンイレブンに行って見つけた飯糰を買って帰り道で歩き喰い。さあ明日はいよいよ自主上映会の初日だ、がんばって寝るぞ。


『Queerpanorama [眾生相]』


目次
2026.0123-0125 台北まで/『すべすべの秘法』上映/『家族コンプリート』上映
2026.0126-0127 インタビューその1/台北ビエンナーレほか
2026.0128-0129 高雄へ/インタビューその2
2026.0130-0201 自主上映会1/自主上映会2/自主上映会3
2026.0202-0204 縦横/帰国と成田山

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