2010.0720 火

今日もギリギリで朝食に間に合う。そして今日も油まみれパンの耳(しかし不思議な食い物だ)。まあ生活態度としては非常にダメですが食後、部屋に戻って寝ていると携帯がピロピロ鳴りハセガワさんからで、「今ヒマですか、時間があったらお茶でもどうですか」とのことなのでしばらくしたらロビーに行きます、とお返事して起きて支度。今日は出かけたらこのまま上映まで、なので忘れ物のないようにしないと。ロビーに降りると真っ赤なシャツのハセガワさんが待っていておはようございます、さてどこでお茶を。僕らは市庁で14時から映画を観るのでまあそっちの方に歩く事にして、無難な店ならいいっす、と喫茶店を探す。「前に入ったお店でスイートポテトラテとかいう謎な飲み物(ひたすらデンプン質)を頼んじゃった事があったので案外デンジャラスです」とハセガワさんは言うのだが、じゃああんまり挑戦はしないように心がけます。少なくとも本番までは。選んでみたのはイートインもあるパン屋で、さっき散々食べたんだけど見るとねえ…ということで小豆のパンとアイスティー頼んだらそれぞれ単品で頼んだときの合計金額の半額くらいになってますがこれ、打ち間違いなのかセット割引なのか。朝から元気なハセガワさんと常にロー体力な僕ら、というなかなかコントラストのくっきりした午後のお茶でした。


こんなビルばっかし

ハセガワさんと別れて市庁(深夜上映やったとこ)に向かう。今日観るのは「パーマネント野ばら」、邦画は日本でだったらあ〜どうしょっかなあ〜とか言っているうちに観逃していいとこ図書館でDVD、とかいうパターンばかりなので海外でばかり観ているような気がする。西原理恵子の原作は持っているけど正直一番好きな作品と言うわけでもなく、まさに「どうしょっかなあ」でしたがこれが意外とよいよい。原作と映画は別もんですがこれは観終わった後に原作がまた味わい深くなる、という珍しい映画でした。とくに本筋とはあんまり関係のないおばはんの入水シーンが脇腹に来てもう。日本に帰ったら読み返してみよう。日本語の映画を観た、という妙な充実感に浸ったまま次はあんまりほんわかしている訳にもいかない自分とこの上映、イマイズミコーイチは略装ですが和服になるために富川市庁のトイレでお着替え、自分はせめてもということで和柄の(いい生地なんだけどチクチクするのであんまり長く着られない)シャツに服を換えて自力で上映会場に向かう。真っ昼間、浴衣の人が韓国を闊歩しているというのは昨日のカンフー映画の残像がチラチラする中では「悪役(ただし弱い)」といった趣も無いではないがここは2010年のプチョン、ルックイントゥーサパスト/ユーキャンシーザフューチャー。暑い。

会場はCGV、ハセガワさんと合流する。昨日エリンと約束した「16:35」よりは大分早く到着したのはいいのだが着いたらどうしたらいいのかさっぱり判らず、取りあえずグッズ売店横のインフォメーションに行き、「我々は次の上映のゲストであるがどこでどうしたらよろしいか」と聞いてみたところ若い(本当に若い、10代じゃないかと思う)女の子がええと…という表情を一瞬したのち「こちらへ」とさっき上がって来たエスカレーターを下がって普通の喫茶店を示すと「ここでお茶が飲めますけど…」と自信なさげに言う。なるほど確かに「GUEST LOUNGE」とあって一般客に混じったゲスト(パス付けた人)がお茶飲んだりしているが僕らがしたいのは休憩ではなくて上映前に挨拶はあるのか、Q&Aの段取りやらそもそも司会は誰で通訳はどの人で、という打ち合わせなので、申し訳ないながら(でもってもしかしたらタダなのかも知れないが)お茶は遠慮して、またしてもエスカレーターを上がる。戻るとその子は今度はボックスオフィス横にある「ゲスト控え室」のようなところに席を作ってくれようとするのだがそれも違う。どうも僕らがホテルからのピックアップを断って自力で来たのが全元兇らしく、スタッフと言っても全然知ったこっちゃない業務がたくさんあるようでした。「上司が朝礼とか夕礼とかしないわけ、ここは」と見当外れな苦情を言いつつ仕方ないのでボックスオフィスに行ってみる。9つくらいある劇場に入るにはまず手前のゲートをチケットを見せて通るしか無いのだが、僕らは持っていない。映画祭以外の上映もやっているのでゲストパスを見せただけでは通れないのである。で、聞いてみると案の定「チケットは売り切れです」と繰り返すのみで「ぼくらその映画を作った日本人でしてですね」とか言っても動かざること山の如し。前回に引き続き「来てはみたけど入れない(かも)」という事になっております。


入り口、キモノの日本人

埒が明かないので仕方なくエリンに電話する。「もう会場に着きましたか?では担当者を向かわせます」って相変わらず惚れ惚れするような有能ぶりである。同時進行でチケット持ってるハセガワさんが中に入って僕らの上映があるシアター前で話をしてくれている。なのでやがて、というかやっと「担当者」が来て僕らのチケットをくれて、通訳さんは昨日のインタビューと同じ人、前挨拶はなし、という事がようやく判りました。これまで行った大抵の映画祭は規模が小さいので小回りが超効くか、あるいはオーガナイザーがスーパーマン(ウーマン含む)なのでその人に言えば全部片付くといったものばかりだったため面食らいましたが、大きい映画祭は余程慣れていないと「直前の予定変更」をしてしまった場合にたいへん面倒な事になるようでした、って「最後の上映」でわかってちゃ世話ありませんが。僕らの席は前の方の真ん中、終映後に出て行くのが困難な事おびただしいが仕方が無い。あとで近辺に座っていたとおぼしき人が自分のウェブログで「キモノ姿の日本人が座ってたので何だろうと思っていたら監督だったのでたまげた」と書いてた、と友人に聞かされた。

上映始まる。画質音質は問題無し、だな。市庁より良いような気がする。前半で帰ってしまう人(ほぼ女性)が合計10名くらいでしたが、きっと何か勘違いしてしまってたのかも。やっぱ笑うところとか(笑いが一番よく判る反応なので)予想外だなあ、と思いながら眺める。ディストリビューター香港Jからは散々「音楽をもっと足す気はありませんか」と言われていたのだけど、やっぱりこれが適量、と思う。すんませんすません、と隣のお客さんに退いてもらって出た上映終了後のQ&A、今作、これまでの上映(立ち会った分のみ)では私への質問は一切なく、毎回毎回ステージに立ち尽くすのみ、なので意味不明な笑いを浮かべてヘコヘコ動いているだけなのが何か申し訳ないような楽なような。いつの間にか来てくれていた司会のパクジンがガンガン進行してくれたので実にスムーズなQ&Aでした。香港でよりは「クマ」「の意味は」という質問が少なかったでしょうか。入れ替え時間になったので出口から外へ、そこらでイマイズミコーイチは観客の皆さんからのサインしてくらはい、他のサーヴィスタイム。ハセガワさんとジンはなにやらプログラミングについて話し込んでいる。私は遠巻きに写真を撮るがここ、逆光だな。


サイン中

「タクシーでホテルへ戻りましょう」とパクジンが言う。歩いたっていいのだけどまあどっちでもと思って付いて行くがおいおい乗り場まで随分歩くな。結局お気持ち程度に車に乗って(所要時間は大して変わらないと思う)ホテル着。ハセガワさんとジンとはここで別れ、僕らはどうしよっかねえ、とひとまず部屋に戻る。時間はだいたい8時くらい、夕飯どきだがあては無い。なので誰かいないかこの辺に、と「PiFanでは15本くらい観る予定」と言っていたドンボムに電話すると「今日はもう観る映画は無いから、会おうか」と言ってくれたのでひとまずホテルの名前と部屋番を教えて上がってきてもらう。やがてやってきたドンボムは仕事帰りなのか見た事の無いシャツ姿で、なんかサラリーマンみたいです。3人で部屋を出て「何食べたい?」(と聞かれたイマイズミコーイチは前回のソウルと全く同じテンションで「タッカルピ!」と叫ぶのだがどうも最近は言ってみたいだけなのではないかと思うようになった)つうことでドンボムもこの辺の事は詳しくないと思うし、成り行きに任せることにしてチヂミの店に入ってみる。チヂミと、あと「タッカルピはないですけど何か鶏肉の料理があります頼んでみましょう」とあとマッコリ、で平日の夜に酒呑んでる訳ですがこのお店はおっさんがちらほらいる程度、しばらくしたら例の「鶏の料理」が来たので見たら冷麺でした。しかしこれまで見た事の無いような豪華版、胡瓜に人参に葱に卵、そして唐辛子で味付けした鶏肉が乗っていて麺が見えません。ドンボムは「ワサビをいれるとうまいらしい」と店のおっさんに頼んでくれて、入れてみましたが旨いけどこれ、無くても良いかもねえ。

自分らの座った席のすぐ側には巨大TVが設置されておりMTVみたいなのを流していたが、ドンボムは急にそのミュージッククリップに反応して「BIG BANG知ってる?」と聞く(「名前だけは(わし)」「知らない(イマイズミコーイチ)」)。どうやら今かかってるビデオはBIG BANGメンバーのソロ曲のようだったのですがドンボムは「やっぱりゲイの間で人気があるのはT.O.P.(というメンバー)で何と言っても名前がねえ…でも本当にタチなのかどうか…」と訳の判らない事をぶつぶつ言うのでこちらは何と反応したらいいものか判断しかねているうちに日本で有名な韓国の芸能人、という話になり僕らはどうしてもチョー・ヨンピルとケイ・ウンスク、などと口走ってしまい、取りあえず僕らがあまりにテレビを指差してああでもないこうでもないと言っているので店のおっさんが見かねてテレビをぐぐっ、と見やすい角度に直してくれました。すいません。マッコリ残ってますがこれ以上は飲めないのでお会計して店を出て、夜の街をぶらぶらする。「映画祭が始まる前、プチョンは本当に治安が悪くて住環境が悪い街だったんだけど、そういった状況を文化事業で改善しようとしてPiFanが開始された」と食事中にドンボムが言っていたのだが明らさまに堅気でないおにいさんが声をかけてくるので何、と聞くと「女の子紹介する、って。要らない」だそうで「治安が悪かった」頃はどんなだったんでしょうか。時間は10時半くらい、ドンボムの家はここからそんなに遠くはないそうだけど明日も仕事だろうし今日はこの辺で、もし明日も来たら会おうね、と約束してここで別れて、僕らはホテルの部屋に戻った。


富川いかセンター


2010.0716 羽田発金浦行き
2010.0717 上映一回目
2010.0718 プチョンへ+短編集1本
2010.0719 インタビュー+長編3本
2010.0720 上映二回目+長編1本
2010.0721 長編1本+"Mega Talk"
2010.0722 長編1本+金浦発羽田行き