2010.0722 木

起き上がって窓の外を眺めると、雲は多いけど晴れていて、ソウルであんなに雨だったのが嘘のようです。朝食を摂りにレストランに行くと大久保賢一さんがいて、今日も同席の方がいらしたのだが「今日帰ります」と告げると「じゃああとで少し話そう」と言ってくれる。やがてこちらの席に来た大久保さんはNETPAC賞の審査員として急遽来られることになったらしいのでしたが何度かお見かけはしても常に忙しそうなのでなかなか話す機会がなかったのだった。「映画祭はどう?」という定石の質問に「面白いです」と幼稚園児並みな感想しか言えないぼくら。大久保さんは「家族コンプリート」の上映に行けなかったのでメディアセンターで試写用DVDを探したらしいのだが(僕らが送ってないので)見つけられなかった、と言ってましたすいません。大久保さんは「アンフェタミン」の監督とここで呑んだらしく結構詳しく彼のバックグラウンドを知っていて、映画も評価してるようでした。自分らはどうしても毎回スケジュールが合わなくて見らんない。その他も色々とお話をお伺いしているウチにそろそろ時間なのでまた日本で、とお別れして3人で席を立った。


しかし道が広大

フライトが16時40分なのでまだ時間はあるのだが、ホテルは午前中にチェックアウトしないといけない。土産と言っても今回は大した量ないのでさっさと荷造りをして(これでもだんだん上手くなってる)忘れ物チェックしてから階下に降りる。チェックアウトっても支払うものナシ。フロントデスクで荷物を預かってもらって自分らは最後に一本、映画を観る事にしていた。会場はCGV。けっこうギリギリになってしまったので急いで会場まで歩いて行く、その途中でこういうのを魔が差したと言うのだろうか、交差点で信号を待っている間に自分は持っていたイマイズミコーイチ分のチケットを一枚渡し、イマイズミコーイチはズボンの尻ポケットに入れた。自分でも何故こんな事をしたのか、たぶん焦っていたんであろう。さて間に合うかな、会場も見えてきたと思った辺りでイマイズミコーイチが「あ、ちけっとがない」と妙な声色で言い、会場到達目前で一名脱落、仕方なく引き返す。「開映後の入場は出来ません」とパンフに書いてあるので観られるかどうかは微妙だな。一番近い交差点まで行くと横断歩道になんやら紙が一枚、通る車の風圧で右に行ったり左に行ったりしている。あれかも、と指差すとイマイズミコーイチはさささっ、とその紙片を回収してきて「あった」走れ。

部屋に置いておけなかったのでリュックに入ったMacBookがずしりと重い中をエスカレーターを駆け上がり、当然始まってましたが断られはしないで、ゲスト用タダ券は前の方の席なのが幸いしてあまり苦労せずに座って、PiFanで観る最後の映画は「Down Terrace」というイギリス映画。解説には「(全略)とはいえこの作品の大半は家で座っているか、呑んでるか、煙草を喫ってるか、だらだらと言い争いをしているかまたはギターを弾いている」ということで台詞は半分も判りませんが(イギリス映画なので当然英語字幕はない。しかも半分くらいは「F**k」とか言ってる)、まあいいや。話が進むにつれ思った以上に人が死ぬが、全然怖くはない。だらしなく濁ったような映像の中に時々、ふっとこれまた気の抜けた清冽な瞬間が訪れたりする、空気感のすばらしい映画でした。空気感がいい、とか言うのは映画を褒める言葉じゃない気もするが。大体みんな殺されてしまって映画は終わり、隣で鼾かいてたイマイズミコーイチ(音が高くなると自分が鼻をつまんで止める)とロビーに出ると、全作品のチケット情報パネルがあって、遅ればせながら「家族コンプリート」売り切れ記念写真を撮る。


★が付いてるのがソールドアウト

会場を出てまだ時間あるね、と近所の喫茶店に入った。店の造りはスタバみたいですがおっさんおばはんが超盛りフルーツとかも注文していたりする、そんな店。自分はよく判らない「チェリー・ミルク」とか言うものを頼み、もりもりクリームが盛られた甘いさくらんぼ牛乳を飲みながらぼんやりと煙草を吹かし、ふと「Free Wi-Fi」とあるので用もないのに持ってるからつないでみようか、とラップトップ開いてみはしたが最初のページが韓国語なので挫折したり、最後に一息。どうだったかね映画祭は、今回はえいがをたくさんみた、と自分は満足げに総括をする。飲み物があらかた無くなったので(おいしかったけどクリームのせいで飲むほどに見た目が汚くなる)再び日差しの強い路上に出て、とここでパクジンから携帯にメールが入り、「出発前に連絡ください」とのことで「ピックアップ前にロビーに居るよ」と返し、さて戻るか。

ロビーで荷物を受け取って電話すると、ジンはすぐに来てくれた。すごくいい滞在だったよ、と言うとジンはちょっと改まって「ご来場に本当に感謝します。映画祭もあなた方をお迎えできて本当に嬉しい。本当は自分も日本に行きたいんだけどこの映画祭だと日本作品担当はクォンさんなのでなかなか機会がなくて…、まあバケーションで行きますよ」と最後は笑い、スタッフの子に頼んで3人で写真を撮ると「ごめんなさい打ち合わせを抜けてきたのでこのへんで」というジンとさようなら、ありがとうおかげさまで楽しかった。きっと僕らの気付かない部分でもすごくいろいろ細やかな気遣いをしてくれていたのだと思う。元気でね。行きと同じくタクシーが空港まで乗せて行ってくれるらしく、送迎担当のスタッフに「あっちです」と案内されて車に乗り込んで、自分らはプチョンを後にした。


37番ゲート

金浦空港まではあっという間で、下手に仁川〜ソウルとかより全然ラク。レンタル携帯を返却して精算し、前回来た時に国際線は羽田と同様で入ってしまうとほぼ何もないという事が判っているので上手い具合に残ったウォンでアイスクリーム買ってたべた後、2時間のフライトだけどきっちり出される機内食(しかも味が微妙)を食って見た事もないオーストラリアビールを飲んでいたらもうすぐ日本、であと30分なんだけど右耳が猛烈に痛くなり始め、いくら耳抜きを(こわごわ)やってみても締め付けるような痛みは増すばかりでどうしようかと思っていたけどどうにもならず、ただ耐えるのみ。日本に帰ってもしばらくは痛みが引かず、引いた後もぼんやりとした違和感がしばらく残ったのだった。羽田では入りたい店がなかったので品川まで出てから駅中でドーナツ屋に入りイマイズミコーイチはカレー注文、というよく判らない旅行の締めでした。


2010.0716 羽田発金浦行き
2010.0717 上映一回目
2010.0718 プチョンへ+短編集1本
2010.0719 インタビュー+長編3本
2010.0720 上映二回目+長編1本
2010.0721 長編1本+"Mega Talk"
2010.0722 長編1本+金浦発羽田行き