20151028 Mittwoch
ええとわたしのマフラー問題である。あの店に忘れたのはほぼ間違いないのだが、果たして取っておいてもらえてるのか何とも言えない。が、今日はシメオンと12時に約束があるので寄れるのは開店前、従って帰宅時になる。今日は結構寒いのでマフがあれば、とは思いつつ仕方ないので出かける。シメオンが働くブルーノ・グミュンダー社はWittenbergplatz駅が最寄りで、たぶん初めて来た駅だけどKaDeWeとかあって妙に開けたお高級そうなところである。メールによるとリカーショップの隣のビル…ということでここの3階か、受付の人にシメオンさんをお願いするとやがて出てきた(お仕事中恐れ入ります)。彼は田亀源五郎さんの担当さんでご紹介を頂いたのですが田亀さんに後でお伺いしたところでは「非常にマメと言うか細かい所を気にするというか」だそうで給湯室では「コーヒーがいいか紅茶がいいか」「では紅茶を」「ティーバッグはすぐ出すか入れたままにするか」「…入れたままで大丈夫です」と何かものすごく気を使ってくれるので申し訳ない。このオフィスは何匹も犬がいるという羨ましい環境である。さて今回のご訪問も新企画関連ですので詳細は省きます。まだ何とも具体的な話になっていないのでお互い掴みづらい感じではあったのですが、「手伝える事はあると思う」と言う事でありがとうございますお邪魔しました、と帰り際にはこちらで出してるゲイ雑誌やら本やらを大量に頂いてしまう。
いただいてしまう
ミーティングはあっという間に終わってしまったのでどっかでご飯でも、と見回すが高そうなオープンカフェしかない。イマイズミコーイチは「あの『Kaiser’s』ってのはバーガーキングみたいなのかな?」と遠くに見える看板を指差すのですがあれはスーパーマーケットです。カイザー(皇帝)って名前のハンバーガー屋だったら度胸のいいまるぱくりですがそもそもバーガーキングってドイツにもあったかも。しかしこの駅広場はダメだ高そう、とちょっと外れるとカフェがあったので入り、サンドイッチとごつい菓子パン(アップルクランブルがパンに乗っていてお好み焼きくらいの大きさ)を頼んでお茶を飲みながら今日の予定を決める。もう人と会う約束はないので美術館に行きたい、先に絵画館に行ってからユダヤ博物館に寄って帰宅、とあっという間に決めて、コーヒー飲みながらiPhoneをネットにつないでいるイマイズミコーイチをちょっと残して自分は隣の「アジアン・スーパー」に入ってみた(さっき通りががって気になっていたのです)。店内は香港の乾物屋みたいな匂いがしていますが日本の加工食品もある、つうか残念ながら昨日ソフィーにあげたようなものは大体あるな高いけど。自分はベトナムフォーのスープキューブ(チキン味はよく見るけどビーフ味はあんまりない)を買ってカフェに戻る。
ビーフフレーバー
美術館に行く前に隣駅のNollendorfplatzでゲイショップ「Bruno's」にちょっと寄り、虹色のクマと恒例の記念写真を撮ってからフリーペーパーやらを貰う。2年ぶりに来てみると本格的にデジタル配信時代やなあ、という感じでポルノDVDコーナーは大幅に縮小、その他DVDと書籍雑誌は現状維持、下着&水着が大幅拡大してました。店を出るとイマイズミコーイチが「あっ」と言ってうずくまってしまったのでどうした鼻緒でも切れたか、と見ると2008年にブラジリア国際映画祭でもらったショルダーバッグのストラップが切れている。「ああ…」と言いつつどうしようも無いのでさっきシメオンに貰ったブルーノ・グミュンダーのビニール袋に荷物を全部(ほぼエロ本)入れ、今日は帰るまでこれである。絵画館の最寄駅はPotsdamer PlatzでNollendorfplatzからは乗り換えなしで4駅程度なのですが、駅からが遠い。多分バスを使えばいいのだけど却って混乱しそうなので歩く。ここは7年前『初戀』でベルリン国際映画祭に来た時にうろうろしていた辺り(つうかほぼここだけが行動範囲)ですがポルノ映画祭のエリアとは違うので来るのはあれ以来だなあ。イマイズミコーイチに「ほら、いつもここを歩いてホテルに戻ったりしたじゃない」と言うが全く憶えていないようなので(普段から「ベルリンとベルリナーレは僕にとっては特別」とか言ってる割に)大丈夫かこの人、と正直思ったが「ああ本当だ、『VA PIANO』がある」とパスタ屋を見て思い出したようなので私もあの店で自分だけ二重会計されそうになった事とか味はまあ美味しかったけど、とにかくユーロ高の絶頂期で会計がバカ高かったとか要らん事を思い出して念が切れそうでした。イマイズミコーイチはソニーセンターの富士山を眺めながら「アイルビーバック」などとつぶやいていました。さて絵画館はどっちだ。
後光が(ちょっと外れてますが)
けっこう歩いて地味な建物の前に着く。毎日地下鉄のホームでそのかっこいいポスターを見かけていた「The Botticelli Renaissance 1445-2015」がここでやってるので先日会ったアキコさんに「どうすかね」と訊いてみたところ「そうですね、大回顧展というよりは彼の作品をモチーフにした現在作家の作品もあったり、面白いそうですよ」との事だったので来る事にした。中に入ってチケットを買う、がいまいちどこから入ったらいいのか判らんね、としばらく迷い、イマイズミコーイチが「おしっこ…」とトイレに行ったら「掃除中、1フロア下のを利用せよ」とあったのでぎゃふん、と下に行くとトイレもロッカーも入口もあったので、荷物を預けて中に入る。ボティチェリ関係は、当然オリジナル真筆はそんなにないわけですが、それでもその数少ない本物は素晴らしい。絵画館の常設にそのままつながっているのでこの順路でいいのかなあ、部屋番号からすると逆行しているような気がするけど(いつものこと)しかし広い、フェルメール、ルーベンス、ブリューゲル、カラヴァッジオ、ヤン・ファン・エイク、ラファエロ、ティツィアーノ、ベラスケス、レンブラント、ラ・トゥール、ジオット、フラ・アンジェリコなどなどなどが普通に展示してある(しかもガラガラ)ので自分は狂喜して回るが途中でイマイズミコーイチが「疲れちゃった、もう歩けないのでここのベンチで休んでるね」と言い出したため一人で観る。きっといっぱい見逃してるんだろうなあクラナッハはどこだろ、と思いながら閉館時間ももうすぐだし残してきたおとぼけ監督も心配なので残りはささっと回ってからさっきのコーナーに戻る…のも一苦労であるが(広いのに加えてどこもかしこも同じような造りの部屋なので)何とか戻って眠っていたイマイズミコーイチを回収し、次の店(じゃない)へ。
バスが使いこなせていないので強いて言えばそれぞれ最寄りのPotsdamer PlatzからHallesches Tor駅まで電車で移動して、あとは歩く。大分暗くなっていて街灯もまばらだし本当にこっちでいいのかな、と不安になるが地図ではこの方向だ。迷ったりはしなかったけど初めての道は遠く感じるもので、後で調べたら高々800メートル程度でした。見えてきたユダヤ博物館は入口が18世紀の建物で展示部分が斬新なジグザグ建築(昨日会ったカタリーナによると「建物は素晴らしいけれど常設展示は退屈」とのこと)。隣の売店でお菓子を買って食べてから空港みたいなセキュリティーチェックを抜け、チケットを買う。クロークで荷物を全部(ほぼエロ本)預けたイマイズミコーイチがチケットも入れてしまったため「ソ、ソーリー」とか言いながら大汗かいて出し直してもらっている。さて特別展「Obedience: An Installation in 15 Rooms by Saskia Boddeke & Peter Greenaway」は2階から。タイトル通り15の部屋にわたる巨大な展示ですがテーマは旧約聖書のアブラハム・サラ・イサク・ハガル・イシュマエルのエピソードから取られているのでスティーヴ・ライヒの『THE CAVE』と同じだな、部屋ごとにインスタレーションだったりビデオだったり、或いはプロジェクションだったりするのですがこれが面白い。博物館が収集した歴史資料(古い聖書など)や他人の作品(ダミアン・ハーストもあった)を組み合わせたりもしつつ旧約の世界をユダヤ教・キリスト教・イスラム教の現在に接続しようとする、と書くいかにも紋切り型ですがとにかく今やらなきゃいつやるんだよ、というテーマであるのも確か。イマイズミコーイチは全体的に気に入ったようでしたが、自分は追い出されたハガルとイシュマエルが砂漠をさまよっているシーンを表現した部屋が好きでした。
創世記第21章(文語訳)
14. アブラハム朝夙に起てパンと水の革嚢とを取りハガルに與へて之を其肩に負せ其子を携へて去しめければ彼往てベエルシバの曠野に躑躅しが
15. 革嚢の水遂に罄たれば子を灌木の下に置き
16. 我子の死るを見るに忍ずといひて遙かに行き箭逹を隔てて之に對ひ坐しぬ斯相嚮ひて坐し聲をあげて泣く
さすがガンマお勧めだけあって良かったですが取りあえずグリーナウェイ単体の展覧会では無かった。何のサイトなのか良く判らないもののここ<http://www.luperpediafoundation.com/>に展覧会の様子も載ってます。更に常設展は観られるのか観られないのか良く判りませんがもう30分で閉館なのでもういいや、元来た道を戻り、また非効率な感じで最寄駅に戻り、お腹が減ったので件のベトナムレストラン手前のケバブ屋(屋外席はなく全席室内)で自分はドネルと揚げイモを頼んで先に席に着いて、スープを頼んだイマイズミコーイチが料理を受け取り、そのまま自分の座ってる前を素通りして行くのでどうしたんだろう、と思うと店の端っこでサッカー中継見ながら食べていた男性の席に行って何やら話しかけた、と思うと急に弾かれたように戻ってきた。「あれイワサくん何でコーラなんか頼んでるの、って言ったら知らない人だった」ってこの人はそろそろ大丈夫か。映画祭会場近くのケバブ屋はどこも小さくてノンアルコールだったけどここは広くてビールも売っているがまあ「トルコレストラン」というよりは「ケバブ屋」。ポテトフライがうまい。食べ終わっていよいよ私のマフラーを探しにベトナムレストランに行って訊いてみると壁のフックに引っかけて保管しておいてくれていた。ありがとう、とベトナムコーヒーを一杯注文して帰宅。
コーヒー
相変わらずライナー氏はいないがここにご厄介になるのも明日までなので鍵の返却とかどうしよう、と携帯にメールしてみると返事が来て「今は誕生日パーティー(誰の)に来ているので遅くなる。鍵は外からかけずに部屋に残しておいて」って本当にこのまま会えないんでしょうかね、と思いつつパッキングしていると大分遅くなってからガチャ、と帰ってきた音がした(犬はどうしたんだろ)。ライナーさんライナーさん、あしたかえります、と幼稚園児のようにまとわりついてライナーさんライナーさん、あの、あの、いっしょにしゃしんをとりたいです、となおも言うとライナーさん、ちゃんと眼鏡を外してからセルフィーに収まってくれました。さて明日はどうやって空港に行こうか、と調べるといつものYorckstraßeからU7で終点のRudowまで行き、そこからシェーネフェルト空港行きのバスが出ているらしい。1時間もかからなそうですな。
2015.1021 北京からベルリンへ、映画祭1日目
2015.1022 映画祭2日目
2015.1023 映画祭3日目
2015.1024 映画祭4日目
2015.1025 映画祭5日目
2015.1026 ベルリンオフ1日目
2015.1027 ベルリンオフ2日目
2015.1028 ベルリンオフ3日目
2015.1029 北京経由の帰国
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