2023.0615 THU

自分は早くに目が覚めてしまってサンフランシスコは朝の6時半、気温は13℃でやや曇り。窓の外に見えるマーケット・ストリートは大きな通りで、路面電車や路面バスなどが通るのが見える。隣室ではピートとディエゴ(とバーボンくん)の気配がするがやがて二人は出かけたようで、自分ももっかい寝ることにする。10時ころにまた起きてイマイズミコーイチと一緒に買い物に出かける。まずスーパーだ、と昨日の散歩で確認してピートにも聞いていたホールフーズマーケットというオーガニック系の品揃えも豊富なちょっと高いスーパーチェーンに入る。ちなみにピートとディエゴはベジタリアンで、冷蔵庫に卵やバターはあっても基本的に家には肉魚がない。加えてキッチンには自分が飲みたい「普通の紅茶」がなく、イマイズミコーイチは自分用のコーヒー豆を買っておきたいのでした。さてホールフーズは確かに値段がお高め、というか噂に聞いていた米国の物価を実際に目の当たりにするとビビるものがあります。高いと言うよりも「安いものがない」という方がより自分の印象に近いかもしれないが、ともあれここで先に買ってしまうとおそらく後悔する、と何も買わずに向かいのより庶民的なスーパー「セイフウェイ」に入る。こちらも「日本の感覚からすると安いと思える値段のものがない」という印象は変わりませんがホールフーズよりはまし。紛らわしいのは値札を見てセール価格かと思うと「会員価格」だったりすること。帰国後に調べたら会員になるのは旅行者でもできるみたいでしたが、滞在時はよく判らずそのまんまでした。次に行く(事はあるのか…)時には作りましょう。散々悩んで自分らは紅茶とコーヒー豆をそれぞれ買い、あと唯一許容範囲な値段だった巨大なサンドイッチとビール6缶パックをカゴに入れてレジに並ぶ。自分は知らなかったが酒類を買う時は年齢確認が必須だそうでレジで生年を訊かれ、係の人がそれを打ち込むと会計が通るみたい。本来はIDカードを出すべきだったようなので、次回は気をつけよう。

お次は古着屋。日本にいる時にわたくしが何度も「サンフランシスコは気温が急に下がることがあるそうですから、羽織るものを持ってきたほうが良いようですよ」とクドクド言っていたというのにほぼ何一つ聞いていなかったイマイズミコーイチは「だって初夏のカリフォルニアなのになんでこんなに寒いの?」などと巫山戯たことを抜かしているが知りません私は言いました。まあ来てみると予想以上に気温は低く湿度も低く、3〜4枚重ね着してちょうどいい感じの事が一番多かった。陽が差している日中や屋内はそれだと暑い場合もあるのだけど、夜間や風の強い時などは体感的には「寒い」。自分は半袖のTシャツと長袖のTシャツとトレーナーとウィンドブレーカーと、あと一番上にダボッと着られるでかいパーカー、という季節感不明な取り合わせで持ってきたので何とか凌げそうである一方、持っている羽織物は薄手のジップアップパーカーのみのイマイズミコーイチは昨日から早速「寒い寒い寒い、何か服を買わないと」とのことで自分はお付き合い。サイズが合うメンズ上着の中でいくつかピックアップし、イマイズミコーイチは「アメリカのナンバー1ポン引き(英語)」などというひどい文言が金糸の刺繍で入ってる真緑のパーカーも候補に入れて悩んでいたが、結局40ドルちょっとするカルバン・クラインのコートを買っていた。「バカみたい。家に帰れば似たような服がいくらでもあるのに」ってそうですかそれは残念…ですね…。

帰宅するとピートがいたのでちょっと俎板借りますね、と断って買ってきた巨大サンドイッチを切り分けて食べる。具材はハムチーズ野菜というごくありきたりなものですが味は悪くないし、何より量があるので久しぶりにちゃんと食べている気がする。パンを食べているせいかバーボンが寄ってくるが、ピートから「ダメ」と言われている。バーボンは今11歳、この家に来たのは9歳のときで、そもそも南カルフォルニアで野良犬として保護された子なのだけどその時に病気が見つかり、辛くも手術を生き延びてこの家に住むようになったとのこと。「バーボン、って名前は多分その毛の色から保護施設の人が付けたもので、出会った時はもうその名前だった。元は飼い犬だったようなので以前の名前を当てようと思いつく限りの犬の名前で呼んでみたんだけど、反応がなくて」とピート。バーボンはパンの他にはピザが好きで、それは残飯を漁っていた野良時代に味を覚えたのではないかと言う。「ピザの上のチーズも食べるけどあげないようにしている。本当に好きなのはクラスト(ピザ生地)部分だし。」しばらくして何ももらえないのが分かったのかバーボンは離れた床の上で寝はじめたのだが、寝息がまるで人間のそれでちょっと笑ってしまう。「バーボンは普段ほとんど吠えないけど、寝ながら吠えることがあってそれが可愛い。あと自分より大きな犬には攻撃的になることがあって吠えたりする。そして自分より小さい犬は無視。」しかし少なくとも人間に対しては大人しくて懐こくてお利口、という素晴らしい犬である。そういやベルリンでいつも泊めてもらってたお宅にも犬がいたなああれはすごく吠える子だったけど、と思い出す。


寝てるバーボン(だいたいいつも)

食後、今日は夕方から映画を一本観るので散歩がてら出かける。劇場はカストロではなく、もう一つのメイン会場「ザ・ロキシー」。ここもまた歴史のある劇場で席は300くらい。滞在中のピート宅はこの劇場にもカストロ劇場にも徒歩で行けるという素晴らしい立地なのでありがたい。さて我々来場ゲストは一人15枚まで無料でチケットを入手できる事になっており、個別にバウチャーコードが送られてきている。一般販売用サイトでチケットを選び、購入時にコードを入れて適用すると0ドルで会計でき、そののち登録したメールアドレス宛にQRコード入りのデジタルチケットが送られてくるという仕組みである。ちなみに普通に買うと大人一般で料金は17.5ドル(2500円くらい)と結構なお値段。そしてチェックアウトするたびに「いくら寄付しますか?」という画面が出るのでその都度「すまぬ!金ない!!でも俺ゲスト!!!」と甲斐性無し3連発をつぶやきながら「No Thanks」を選ぶ自分。ともあれ、チケットを申し込む際には毎回この面倒げな作業を(しかも2人分なので2度)やらないといけないので出来るだけまとめて申し込んだ方が手間が省ける。なので出発前にある程度観たいものを選んで9プログラム分は申し込んでおいて、残り6プログラムは現地で決めましょう、ということにしておいた。携帯上に表示したQRコードをスタッフがスキャンして入場するのだけど、ロキシー劇場はロビー部分のスペースがほぼなく(キオスクとトイレくらい)、並んで待つ列が前の道路の果てまで延びていくので、列の先頭から順に事前スキャンしていたスタッフが交差点の角まで来てしまい「ごめん、ここだともうWi-Fiが入らないので建物に近づいたらスキャンさせて」とか言い出すということもありました。

今日これから観るのはトルコのドキュメンタリー『Blue ID』。トルコで著名な若手女優として活動していたRüzgarがトランジションを経て男性として「青いIDカード」を求めて裁判を起こす。そして有名人である彼はマスコミに追い回される…。エルドアン政権下のトルコでLGBTQアクティビズムに対する弾圧が続く中、ネット含むメディア上で好き放題に中傷されながらも何とか自我を保とうとする姿が観ていて辛くなってくる。本人は途中でめげそうになりながら「もう青い(男性用の)IDも赤い(女性用の)IDカードも要らない、わたし用には紫色したやつでも発行すればいい」と半ばキレ気味に言っていたが、その後トルコではIDカードの色を性別で分けなくなったそうで、彼の貢献も少なからずあったのではないかと思う。自分はトルコにおけるLGBTQ問題を単純に「イスラム vs. リベラル」の対立として捉えてどちらか一方を応援すればいいとは思えないのですが、制作陣が以前からRüzgarと個人的に親しかったので撮れたというこの映画は良かったし、また監督によるQ&Aも充実していて、ああ映画祭というものに戻ってきたなあという実感が嬉しく湧き上がっていました。ロビーに出たところでスタッフバッジを下げた若い女性に「もしかして『SOLID』の監督さん?」と話しかけられ、聞けば彼女が短編部門のプログラマーだそうなのでした。「ジョーが集めた候補作の中にあったあなたの作品を観て、すごくいいと思って今回選んだ。特に地震速報が鳴る度に観ててビビらされるのが面白い。」というありがたい感想をいただく。明日の上映では彼女がMCだそうなのでよろしくお願いします、と言って別れる。


ロキシー劇場(と無関係な車)。小さそうに見えるが奥行きはかなりある。

劇場を出てすぐ辺りの路上でこちらに向かって歩いてきたピートとディエゴに出くわしたので「これからロキシーで観るの?」と聞くと「そう、日本の『エゴイスト』を」とピート、あれでも自分の記憶では『エゴイスト』の会場はカストロ劇場だったような、と言うとピートはチケットを確認して「あ」と言い、ディエゴは「しっかりしてくれよおっさんよう」みたいな感じになっている。今から行けば間に合いそうなので、何故か自分らも一緒になって早足でカストロ劇場に向かう。開映5分前くらいのカストロ劇場入口前で2人をお見送りし、自分らは隣のパビリオンへ。もう夜なのでバーが開いているし、この後は映画も観ないしビール飲んじゃおう、と骸骨のイラストが付いたIPAビールをもらってソファーで寛いでいる間にゲスト監督の若い女性と話すことになり、彼女はアメリカ人なのでサンフランシスコの面白いところを教えてくれた。彼女の映画(短編)も上映されるそうなのだけど時間的に厳しいかも、まあ彼女も明日はいないそうで「ごめんなさい、あなたの映画は観られない」と言っていたのでおあいこということで。パビリオンを出て『エゴイスト』上映中のはずのカストロ劇場の前は閑散としているので自分らゲストですが映画観るわけじゃないんでいいですか、と初めて劇場内に入る。ゆったりとしたロビーに二階に続く階段(ただし閉鎖中。少なくとも今回は使わないらしい)、適度に薄暗くて落ち着く内装だ。扉の向こうからは『エゴイスト』の濡れ場らしい音が聞こえてくるのでちょっと笑いましたが、観客席やスクリーンはどんなだろうなあ。まあ明日の上映本番になれば中に入れるわけですが。カストロを出るのが遅くなってしまったのでセイフウェイの閉店時間21時に間に合わず、22時閉店のホールフーズの方に寄って一番安いポテトチップスを買って家に戻る。ただ行きの飛行機に持ち込んだお菓子の残りを食べたら空腹は治まってしまったので今日はこれで終わりにしようかな、とそこへピートとディエゴが帰ってきた。『エゴイスト』どうだった?と聞くとディエゴは「君がこないだ言ってたように後半はクィア映画じゃなかったね。悪くはなかったけど」だそうでした。


夜のカストロ劇場

2023.0616 FRI

さて今回の渡米の一番の目的がもう来てしまった。自作短編映画『犬漏(SOLID)』を含む短編プログラム「Shorts: The Ace of Wands Tarot」は本日13時スタート。ちなみに映画祭の短編プログラムのタイトルはすべてタロットカードにちなんだもので、自分はタロットはさっぱりなのでこの「ワンドのエース」と名付けられたプログラムに入っていいのかどうかも判断できないのですが、ともあれ上映時間は平日の午後早めだしカストロ劇場は1407席あるそうだし(おそらく現在は行けなくしてある2階部分も含めてだと思うけど)、客席がスカスカだったら悲しい。悲しいが、それは自分ではどうしようもないので事前に送られてきた映画祭からのインストラクションにあったように45分前までに劇場へ、の前にパビリオンに寄るとコーヒーとパウンドケーキが置いてあるので食べる。ケーキは甘い。ケーキおいしい。それから劇場に行って昨日会った短編作品プログラマーで今日のMCのクリスタル・ソトマイヨールに挨拶してイマイズミコーイチは本人の希望で上映後のQ&Aには立たない事を伝える。自分らはようやく客席部分に入ることができたが、予想以上に広々としていて美しい内装で、ここで上映できるのは嬉しい。他のゲストと共にまたパビリオンに戻り、設置されてるケッタイ、もといゴージャスな背景をバックに公式カメラマンが個別写真と集合写真を撮ってくれる。さて時間です、と実は繋がっていたパビリオンと劇場の連絡通路を通って劇場に向かう途中で「今回のそもそもの発端」であるジョー・ボウマンが向こうから歩いてくるのに出くわしたのでごく短く、ここに来られて嬉しいですありがとう、を伝える。

上映前には何もすることはないので、ゲスト用の席に座って改めてシアターを見回す。天井には巨大な花のようなシャンデリア。自分は現地の友人トラヴィス・マシューズが「君たちも劇場を気に入ると思うよ。カストロ地区の錨(アンカー)だからね。」とメールに書いてきた一文を思い出していた。時間帯にも関わらずお客さんはそれなりに入っていて、ガラガラな感じがしないのには安心した。あとは自分でも初めて観るDCPがどうなってるのかというのは少し心配で、というのも今回の上映で初めてDCPが必要になり、映画祭が紹介する業者なら素材を送るだけでDCPの作成から映画祭への納品まで全部やってくれる&ディスカウントもされる、というのでその業者とわからん専門用語(英語)でやり取りして素材をオンラインで送り、向こうからは「何か問題があったら知らせます」と言われたきり連絡はなかったので問題はなかったのだろうと思いつつ、観るまでは何とも言えない。クリスタルの前口上に続いて上映が始まった。上映されるのは8本で、うちゲストが来ているのは自分らも含めて4作品。上映順は映画祭サイト掲載の順でも無いようなので、自分が何番目なのかは判らない。自作の上映が済むまでは他の作品もあんまり落ち着いて観てられないよなあ(次かなあ)を繰り返しているうちに7本上映されてしまい、予想外な事に『犬漏(SOLID)』はラストでした。劇場の設備のおかげもあるのでしょうがDCP上映は画質も音質も文句なく、何十回となく観たはずの14分弱がとても新鮮に眼に映りました。サンフランシスコで鳴り響くゆれくるコール。お客さんも所々笑ってくれたので少し緊張はほぐれました。

上映終了。呼び込まれて他の監督と一緒に壇上に上がる。特に事前の打ち合わせはなかったのだが、MCのクリスタルがお題を振って各人が答える形式で、観客からの質問コーナーはなかった。観客からの質問受付はロキシーではやっていたが、ここまで広い劇場になると質問者にマイクが必要だし、それをスタッフが渡しに行くだけで時間がかかってしまうからかもしれない。クリスタルが出したお題というのは「今回の短編プログラムは自然との関わり、という共通点があるという観点で編んだものなのですが、みなさんは作品制作にあたって自然というものをどう意識しましたか」といったものでした。えええ全く意識しなかった、というのが自分の正直な回答ですがそれだと一瞬で終わってしまうのでもう少し関係ない話で膨らませつつ何とか答えて、あとはたくさん喋ってくれる他の監督にお任せ。最後に今後の計画を訊かれたので、パートナーのイマイズミコーイチの新作での作業が控えてます、と言うとクリスタルは客席最前列で舞台挨拶の写真を撮ってくれていたイマイズミコーイチを紹介してくれました。4作品分5人がそれぞれ答えるとこの2つくらいで時間いっぱいになり、それでは皆さんご来場ありがとうございました。これにてマイ・ビッグ・デイは終了ですが監督としてはやっとスタート地点に立てた、という感じ。これまた映画祭のflickrページに公式な写真アルバムができてました。集合写真を撮る際に自分は後ろの人を隠さないように中腰になったのですが明らかに体勢がおかしいですね。


カストロ劇場のシャンデリア。


終了後、劇場ロビーでトイレに入ろうと列に並んでいるとお客さんに「面白かったよ」と声をかけてもらえたりして嬉しい。会場では会えなかったけどピートからも「上映おめでとう!セックスと死生観との対比も興味深かったし、あとあの部屋は君のアパートじゃないかなあと観ながら思っていたよ。」というメッセージが後から届いた。そうこうしているうちに劇場でスタッフから「今日はこれから秘密のラウンジがある。とにかく秘密なのでパビリオンで詳細を訊いてほしい」という意味不明な事を言われる。だもんでパビリオンに戻ってビールをもらうついでに受付でその「ひみつのラウンジ」の住所だけを教えてもらって検索すると歩いて行けそう(ロキシー劇場に近い)なのでたらたら歩いてみる。着いてみるとそこは"The Secret Alley"という名前のスペースで、別にイベント自体が秘密というわけではありませんでした頑張れ私の英語力。とにかく面白い場所で、例えばトイレもやたら広くて本棚に映画などアート本が詰まってるなど凝った作りでしたが、入口で言われたバーは2階の奥の方にあってまだあまり人が来ていない。フレンドリーなバーテンのおねいさんにバーボン(バーボンくんではない)を勧められたので、普段ウィスキーは全く飲まないのだけどそれにしてもらい…ああ随分なみなみと注がれてしまった、ロックでいただく。けっこう甘いねバーボンくん。そのうち人も集まってきたので話したりしてましたが、あとから来たメールによるとこれは関係者用の「ハッピーアワー」で、毎日どこかの店を借り切って午後5時〜7時までこうしたラウンジを開催します、ということのようでしたが結果的に自分たちが行けたのはこの日だけでした。まあ酒が飲みたきゃパビリオンのバーでいいわけではあるが。

ラウンジを後にし、帰宅前にセイフウェイ(スーパー)に寄る。出掛けに朝飯をピート宅にあったパンと卵と豆腐から作った謎のハムで簡単に済ませただけなので腹が減っている。夕飯はどうしようねえ、と散々悩んで(もちろん物価のせいである)、惣菜コーナーに巨大な鶏の甘酢あんかけ弁当みたいなものがあったので2人でそれを食べることにした。自分は全然知らない料理でしたが「General Tso's chicken(左宗棠鶏)」という北米の中華料理店では定番メニューらしいもの、食べる前に電子レンジで温めるだけ。腹が減っているのでまあ美味しくいただきましたが、個人的にはタレが甘すぎ、かつ多すぎるような気がする。日本で食べる酢豚みたいな味だともっと良かったんだけど。食べてる時点ではピートもディエゴも不在で例によってバーボンくんがうろうろしだすが、流石にあげて良さそうなものは無いのでダメですそんな可哀想げな顔してこちらを見たってあげません(そして顔を舐められる)。

ピートとディエゴが映画から帰ってきた。彼らが観た『Bottoms』は自分も候補に入れていて結局やめた作品だったので、ディエゴにどうだった?と聞くと「すごい面白くて笑ったよ〜」と楽しそうなのでやっぱ観ればよかったか…とは思ったのだけど、自分が関心を持ったのはニコラス・ガリツィンが出てるという一点だけで(ディエゴは彼を知らないと言い、顔と名前が一致した後にも「でもあんまり大きな役じゃなかったよ」とのこと)、英語のコメディで少なくとも英語字幕がないと楽しむところまでは到達できない気がして、かつゲイものではないこともあって外したのでした。「それはそうだね、字幕も出せばいいのにね」とディエゴ。そのうちNetflix辺りに来るといいなあと思う。

上映祝い、というわけでもないのだろうけど自然にワインで酒盛りが始まり、4人でゆっくり話ができた。イマイズミコーイチが「映画祭のゲストを泊めるのは何回目?」と聞くと意外にもピートは「今回の君たちが初めて」だという。重ねて「どうしてホームステイプログラムに加わろうと思ったの?」と聞かれると、ピートはちょっといたずらっぽい顔になり「何で?って、ここにいい部屋があるから」と冗談めかして笑う。これは昨日知った事だけどディエゴはブラジル人で、彼らは10年ほど前にブラジルで出会ってディエゴがこちらに引っ越してきたということらしい。ディエゴは30代だけど昔のブラジル音楽に詳しいらしいので、お互い好きな音楽家の繰り出し合戦になる。ちょうどアストラッド・ジルベルトが亡くなったばかりだったので、自分はジョアン・ジルベルト来日ライヴ(有楽町の東京国際フォーラム)に行った時の話をした。ディエゴは「自分の母親はブラジル音楽が好きじゃなくて、セリーヌ・ディオンとか聴いてる」と悲しげに言う。ちなみにピートはシコ・ブアルキのファンだそうだ。ワインの後にアイスを出してくれたので食べていると「ああそうだ、僕らは明日の夜にブラジルからきたミュージシャンのライヴを観に行くことにしているんだけど、良かったら一緒に行く?」と誘ってくれたので、明日は映画の予定もないので是非、とお願いする。おおなんだか「現地の人とのふれあい旅」みたいになってきたぞ。


昼間に見かけた猫と"QUEERS AGAINST CAPITALISM"

目次
〜2023.0614  出発までと出発当日、サンフランシスコ到着
2023.0615-16 映画1本/『犬漏(SOLID)』上映+ひみつのラウンジ
2023.0617-18 GLBT博物館+SESSAライヴ/アジア美術館+映画2本
2023.0619-20 映画2本+TTさん/映画4本
2023.0621-22 トラヴィスその1+映画1本/トラヴィスその2+引越し+映画2本
2023.0623-24 SFMOMA+映画1本+プライド・キックオフ・パーティー/中華街+映画3本(映画祭クロージング)
2023.0625-28 サンフランシスコ・プライドパレード/帰国

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