2010.1012 TUE

 昨夜遅く、プートリからメールが届いていた。僕らのバリ行きのeチケットが添付されている。ジョグジャからバリまでの航空券は映画祭が用意してくれる事になっていたのだが、結局何日がフライトなのか確定しておらず、そろそろパパやママにもいつ帰るのか、と(ついでに毎日毎日何してるんだろうと)思われ始めているような気がしていたところだった。でやっと決まった出発日は明日、13日でした。それも午後遅めの便(どうせ遅れるんであろう)なので結局五日間もお世話になってしまうことになる。良い事としては本日帰宅予定のニーノにもう一度会える事と、もしかしたら明日ジョグジャにくる友人セバスチャン(リサの彼氏とは別の人)と会えるかも、ということだ。朝食の時に「明日の夕方に帰ります」とパパに伝える。パパは「そうか、ニーノは今日の7時くらいに戻ってくるよ」と笑った。しばらくするとパパはニーノと携帯で話し始め、自分にも替わってくれたので「予想外に長くお世話になってしまう事になりました、今日またね」と短く話して電話を返した。

 部屋に戻るとどうも胃の辺りが重い、ような気がする。腹痛は普段も珍しくないけど、これまであまり胃が痛いという経験が無く今後の展開の予想がつかない。持っている薬と言えば下痢止めと頭痛薬しか無いので強いて言えばこっちの方が近いか、と頭痛にセデスを飲んでみるがあんまり効いた気はしない。腹をさすりながら布団に横になって、とりあえずじっとしている事にする。そういえば昨日まであんなに懐いて来た猫2匹は今日は全然寄り付かない。猫アレルギーが出たのは初日だけで、やはりあれは疲れていたからかもしれない。胃を締め付けるよなう痛みは和らいだかと思うとまた押し寄せて来て、なんだろうこれは。数時間して「お昼ご飯だよ」パパがと呼びに来てくれた時にはけっこう痛みが引いていたのでこれは大丈夫かな、と食べてみたのだが(食べ始めるとけっこう普通にいける)、部屋に戻ってしばらくするとまた痛みがぶり返し、あああダメかも夕食はごめんなさいでパスさせてもらおう、と思う。


あうー。気分としてはこんな感じ

 そういや今日はまたネットがつながっていなかったのだった。今回はwifiは来てるんだけど通信ができないので回線の問題かも、と無線ルーター(電源は入っている)のつながっている先をたぐってみるが、ケーブルはなんだかものすごいところを通って建物の「外」に出て行っておりそこから先はどこへ収容されているのか追跡不能でした。まあいいや必要な連絡は全部終わっているし。何より胃がががが。イマイズミコーイチはプールサイドに行こうよ、と言う。自分はどっちにせよ泳ぐ気にはとてもなれないが、あとで行く、と答えて部屋でごろごろ寝返りを打つ。だいぶ休んだので疲労ではない、じゃあ食べすぎかなあ。しばらく眠って、少しラクになったような気がするので一階に降りる。パパに「すいません、ちょっと食べ過ぎたみたいなので夕飯は僕だけナシにしてもらっていいですか」とお願いしてからプールサイドへ、プールの向こう側にも庭があって、犬が放し飼いにされている。なかなか難しい犬で、パタパタ尻尾を振るかと思えば次の日はすごく吠えたりするので僕らは替わるばんこに今日はどうかねえ、と言いながら近寄ってみるのだった。夕方が餌の時間らしいのだが急に立ち上がって庭をぐるぐる回り出すので何だろう、と思ったらやがて餌皿を持った人が来て、もしかしたらキッチンの方でいつものお皿をガチャ、とかやる音を聞きつけたのかもしれなかった。

 イマイズミコーイチも結局泳がず(毎日本当に涼しいので、プールサイドにいるだけで充分)、今日もまた日が暮れる。照明を点けると虫がやってくる。そして天井には10匹以上のヤモリが色んなところから出てきます。少し冷えてきたので部屋に戻る事にして、あと1時間くらいしたらニーノが帰ってくる(多分夕飯はその後)はずだけど、カリムンジャワへはセマランという街からボートで、そのセマランへはジョグジャから車なので「7時」という時間もおおよその目安だろう。さて部屋でイマイズミコーイチは「ではニーノをお迎えすべく着替えて」などと言い出してスーツケースから着物を取り出す。「イワサくんも着ればいい、ああでも帯が…これでいいか」などと2人してインドネシアで浴衣を着付けていますがまあ余興ですしね。しばらくするとパパの声で「ニーノが帰って来たよ」と呼ばれる。ではお座敷(自主営業。誰も頼んじゃいません)、てな感じでととととと、と橋を渡って自分は着慣れていないので歩きづらいです。


プールサイドの夕暮れ

 4日振りのボンはなんか日焼けしてないか?まあ元気そうで「おかえり」と言うとニーノは「お邪魔します、キミんちはいい家だねえ」などとふざける。ご家族にも割と着物は好評で、ママは見るなり「あらあら」と布を触ってくる。どうもどんな生地か、に関心があるようだ。その後ママは「サムライ」「ハラキリ」「ウエー」などと言い出して自分の胸を刀で突くポーズを何度何度もするのですが奥様、頭の天辺から爪先までその知識は間違っています。ニーノが「フランクには会ってないんだよね?紹介する」とボーイフレンドと2年越しでようやくご対面なのだが向かったのは何故か暗くなったプールサイド、から出て来たのは海パン一丁のでかい人(びしょびしょ)、「初めまして、フランクです」ってこんな初顔合わせ。「変な格好でごめんね、向こうを出てからずっと体が塩っぽくてたまらず」帰宅していきなり泳いだようなのですが、それならばシャワーを浴びればいいのではないでしょうか(変わった人だ…)、と言いたくなるのを堪えて「初めまして」僕らも変な格好なので、いい勝負ですが。

 ニーノ+フランク+僕らで夕飯。自分も食べられそうな気もするが、昼もそんな事を思ってしっかり食べてまた痛くなってしまったので控える事にし、お茶だけ頂く。カリムンジャワのビーチハウスはどうだった、と聞くと「良かったよ。一緒に行けなくてごめんね、でも初日は雨がすごく降ってしまったので、君らも疲れていたし、来ていたらそれはそれで大変だったかもしれない」とニーノ。フランクは東ドイツ出身で、インドネシアには13年くらい、ここで一緒に暮らし始めて3年と言っていたか、さすがにインドネシア語も話せるので家族とも普通に会話している。ああそうだ今日はインターネットがつながんない、とニーノに言うと「ホント?じゃあプロバイダに連絡する」と部屋に戻っていき、フランクは「インドネシアのインターネット環境はあんまり良くない。切れやすいし高いし」だそうでした。やがて戻って来たニーノは「ボクが超ビッチに苦情を言ったのですぐ直るよ」と涼しい顔をしている。自分は日本でそういう「苦情」を受ける仕事をしているよ、と言うと「いやいやさっきのは冗談、ボクはごくごくジェントルで」と澄ましている。食事を終えてニーノは「じゃあ僕らはメディテーションがあるので1時間ほど失礼するね、あ、インターネットはもうつながるから」と言うので何するんだかよく判りませんが(インターネットで、と言っていたが通信講座みたいなものか?)まあいいや行ってらっしゃい。2人が去った後でイマイズミコーイチがフルーツバスケットに乗っかったゴツゴツした果物を見て「これは何ですか」とママに聞くと「ナンカ・ブランダ」と言う。じゃあ昨日のジャックフルーツの仲間か、しかし不細工な格好をしている。とママはそれを切って出してくれる。果物なら平気かな、と自分も食べてみるとこれまで食べた事の無い酸味と甘み、そして繊維の多い感じ。おいしい。


ナンカ・ブランダ

 食後、自分はふと思いついて部屋からMacBookを運んで来て、テレビ脇のソファで開く。ここで働いてるみなさんもくつろいで、煙草を喫いながらテレビを見ている。自分はブラウザを2種類起動して、それぞれでGoogle翻訳に接続する。片方は「インドネシア語→英語」でもう片方は「英語→インドネシア語」。これで意思の疎通が出来るかもしれん(「インドネシア語⇔日本語」も選べるのだが翻訳結果は結構めちゃくちゃ、英語とだとかなり精度の高い訳が出る)。こないだガムランやってた人がいたのでえと、とまずは自分がモニタを見せて英語を打ち込む。入力するそばから変換されていくインドネシア語がどうぞ失礼な文言でありませんように、と祈りつつ「ガムランはどこで習ったの?」とか聞くと最初は自分でキーを打とうとせずに「J?」「A?」と言っていた彼もしばらくするとボタンをポチポチ叩き始め、何とか「会話」が成立する。ガムランは特に学校に行ったわけではなくて、僕らが練習を見たサークルで憶えたらしい。とても良かった、と伝えると「グッド」と返してくる対面チャット、めんどくさいけど面白い。しばらくして彼は自発的に何やら打ち始めるのだが、なかなか英語にならないので言いたい事が判らない。やがていくつかの単語が訳され始めるのだが(「翻訳」ボタンを押さなくても時間が経つと勝手に暫定的な訳が出る)、数文字直しただけで文章が全然変わるので面白い。なんか日本について聞いているようなので地図を見せてここが東京でここが横浜(彼は何故かヨコハマを知っていた)、などと解説する。もう一文、となにやらうんうん言いながら書いていたのだが翻訳結果がいきなり「現金くれ」などになりおいおい、と思っていると言いたい事はそうではないらしく(どうなっているのだインドネシア語というのは)またすぐに文章は変わり、「ここで過ごした事を忘れないでね」と言いたいようでした。ありがとう、とここらで会話おしまい。みなさんと写真を撮ってから部屋に引き揚げる。

 シャワー兼トイレは部屋とベランダの間に入り口があるのだが、そこへ行くにはニーノの机周りのところを通る事になる。スタンドライトだけ点けた机でニーノはなにやらラップトップに向かっているが、ああそうだ1つ願みがあった。「明日の飛行機のeチケットを印刷したいのだけど、出してもいい?」「いいよ、そこのプリンター使って」とのことで自分のMacBookをhpのプリンターにUSBでつないでみるとドライバが必要です、とか出てどうもうまく行かないので「ごめん、メール転送するので印刷してもらえる?」「いいよ、明日の朝までに出しておくから一応明日、忘れてたら言って」すません、と転送をかけてみて気付いたらこのeチケット、A4一枚のPDFなのに何故か4MBもあって全然終わらない。むむむむむ気まずい、と思いながらぼんやり終了を待つ、かなりかかってやっと送信完了。これでもう大丈夫。部屋に戻るとイマイズミコーイチが「ビール…」と言うので今日はニーノがいるので一応断ってみたら、と言うと「わかた、ええとなんて言えばいいのだろ」と1分間ほど英会話の練習をしたのち部屋を出て行き、ビール瓶とグラスを持って戻って来た。「自分でできる?」って言われたそうですが(相手の言ってる事がだいぶ判るようになって来たらしい。いい傾向である)ジョグジャ最後のビンタンをプシュ、とあけてかわいい王冠は自分が拝借して大瓶を空け、さて寝よう。


インドネシア・ジャカルタ編
2010.0929 成田発仁川経由ジャカルタ行
2010.0930 二泊目
2010.1001 三泊目
2010.1002 「傘脱」上映

カナダ・バンクーバー編

インドネシア・ジョグジャカルタ編
2010.1008 香港経由ジャカルタ経由ジョグジャカルタ行
2010.1009 二泊目
2010.1010 三泊目
2010.1011 四泊目
2010.1012 五泊目
2010.1013 ジョグジャカルタ発バリ行

インドネシア・バリ編
2010.1014 クロボカン2時間徒歩
2010.1015 長編1本
2010.1016 バリ発ジャカルタ経由仁川経由成田行