2013.1023 Mittwoch
ロンドンにもパリにもおニューヨークにも未だに行った事が無い(だって上映してくれないのだもの)チームハバカリですがベルリンだけは今回で4回目。もう慣れたものではありますが今回はメイン俳優が3人参加かつ皆の旅程が全て違うのでいつもの「自分以外は解読しようという気すら起こらない」エクセル予定表に全員のフライトなどを書き込んで色分けしてみたら地味に色とりどりになってしまいメインイベントは飛行機かよてな感じ、私は出発前に5人分の予定を把握するだけでめげそうでした。今回の渡独は2011年から3年連続で通っているベルリンポルノ映画祭という非常に思い切りのいい映画祭における「イマイズミコーイチ:レトロスペクティヴ」参加のためであります。思い返せば2年前、直前までイマイズミコーイチは結構な大怪我のため病院に3ヶ月ほどおり、その退院ののち数日で飛行機に乗ってその映画祭で上映をしたのでしたがそこで出会った映画祭ディレクター、ユルゲン・ブリューニンクが「新作を作りなさい。そしたら過去にキミが出演したピンク映画も合わせて特集上映を組むから」と言われてその気になり、なりはしたものの色々あって2012年は間に合わずその時はただのお客として遊びに行った(のですが機体トラブルで行きが一日飛ばなかったり自分のスーツケースが破壊されて携帯ほかをピッキングされたとか、かつてなく祟られて成る程、自分達の上映がないと覿面にこんな目に合うのだね、と妙に納得はしたのですがそれは置く。しかし俺の携帯ほかを盗んだやつ許さん)だけで、撮影したのが今年の2月、粗編集が上がったのが9月、そこからええと音楽付けて字幕付けて…とかやっていて何とか上映してもいいようなヴァージョンに仕上がったのが上映2日前。しかも無茶苦茶マの悪い感じで香港のデュストリビューター"J"が「ついに!ついに私は初めて!!東京に行きます!!!ワオ!!!!」などと自分らが出発するまんま4日前に初来京なさり正直この時期にだけは来て欲しくなかった、と思いつつ編集中の自宅でちょっと会ったりしているうちに一日先行で行くことになっていたリョータくん(役名)はモスクワ経由で飛んで行きました。順調に行けば僕らが家を出る前にはベルリンに着くはず。ご無事で。
寝ようかな、どうしようかなとパッキングしながら結局1時間半くらいしか眠れず、仕方がないのでインターネットなどをだらだら見ているとリョータくんからメッセージが来て「空港に着きました、迎えの人と会えました」とのこと。ひとまず自分らの事に専念していいのだね、と出発しようとしたらイマイズミコーイチから「スーツケースの鍵が見つからないっ」という悲鳴のような悲鳴が入って来て、開かない(これからパッキングな)のか閉まらない(パッキング仕上げな)のかによって事態は大分違うがもう私にはどうしようもないのでややスルーして「でかけますね」。確かにSNS他テクノの進歩で各種連絡は格段に便利にはなった反面、あまり細かく相手の状況が判るのも考えものだ、と冷たい事を思いつつ2時間ほどかけて成田空港へ向かう途中の電車でこれまた監督とは対照的に盤石な感じのイッセイくん(役名)からは「なんか妙に早く着いちゃったので喫煙所の近くで待ってます」とのメール、実に安心。第2ターミナルで合流してややすると、それほど遅れずにイマイズミコーイチがよたよたやって来た。幸いな事にスーツケースを「閉めよう」として鍵が見当たらなかったらしい。自分は「ちょっと、モバイルルーター借りてくる」とJAL ABCのカウンターへ。
じゃるー
【ここからしばらく超どうでもいいドイツのインターネット&モバイル情報なので飛ばして構いません:1】
これまではまあ緊急通話用に現地で使える携帯があればいいか、で済ませて来たのですがユルゲンに聞いてみたところ今回の宿にはネットが繋がってないらしく(理由は後述)、流石に宿でもつながらないのはなかなか不便なので自前で何とかしよう、と調べて結局(クレジットカードの特典も駆使して)一番安く上がるこちらで現地で使えるモバイルルーターを借りてみんなで割り勘ね、ということにしておりましたが現在ソウル在住のリョータくんは自分で現地SIM入りスマートフォンを使う、と言うし僕らより一日遅れで来るひろさん(役名)は「持ち歩きたいので、自分で借ります」との事で残る3人だとちょっと高いけど、まあ仕方ない。加えて自分は海外でスマートフォンを使ってみたくなり、香港からアンロックのWindows Phone(自体が人気薄のため、同じ価格帯のAndroidより高性能という理由による)を取り寄せて現地でSIMを買うつもりだったのだが到着時間からすると最寄りの携帯ショップには到着当日には寄れなそう(加えて使いたい会社のショップがテーゲル空港内には無いみたい)だったため、やはり日本で借りてった方がよかろ、との結論になる。ちなみにこの同時に5台まで接続可能なレンタルルーター、保証に入らないで(入りませんでした)壊したり無くしたりしたら7万円くらい払わされる(仮に保証に入ってもタダにはならない)爆弾である。
【ここまで】
微妙に不親切な感じの接客でレンタルを済ませ、チェックインする。フィンエアーのコードシェア便JALなのでJALのカウンターに並んだら「申し訳ございませんがフィンエアーで発券せよ」と言われて内心ぎゃふんのままフィンエアーに並び直す。時間はまあ、あるし平日便なのでさして混雑もしておらず、イマイズミコーイチが「うどんが食べたい…」とうわ言のように呟いているがううむそこまで時間はないかも、と免税店で煙草を買って、自分の銘柄は妙におまけが充実しているのだが今回くれたのは紐パンみたいなお洒落なポーチでありました。袋部分は延びる素材だけど、延ばしても煙草くらいしか入らないなしかも腰に巻くにはバンドが短い、太腿くらいならいけるかも…と使い道に悩むような代物でしたがこれが現地で意外と役に立った事が一回だけありました(伏線)。時間が来て乗り込んでみると満席でもなく、でも最近は多分ネットで事前に座席指定している人が多いせいだと思うのだけど後ろの方の席になる。いっそ一番後ろならまだいいがこれまた微妙に最後尾の一席前、とかそういう感じ。後部座席だと何が困るかと言うと飯が最後にやってくる、という事で、特にイマイズミコーイチは四足獣の固まり肉が喰えないため「本日のお献立は牛肉のなんちゃら又はマグロのなんやらでございます」とのアナウンスを聞いて以来ずっと「ボクにはマグロしかない、マグロが売り切れたらどうしよう」とブツブツ言っているのでじゃあ先に頼んじゃったら、と提案したのだがそれもせず「今日は(団体っぽい)日本人のじいさんばあさんが多そうだし、マグロが先に売れ(略)」と言っているうちに本当に眼の前で最後のマグロが手前で配膳されてしまい、「申し訳ございません。これしか無いので喰え」と置かれたビーフメニューを前に明からさまに落胆しているので止むを得ず自分が「すみません、彼はこれ食べられないのですが今からでもどうにかなりますか?」と聞いてみる(先に言えよ、という話)と日本人のアテンダントさんは有能で「マグロは本当に無いのですが、少々お待ちください」と「温かいものはこれしか無いのですが…」と恐らくビジネスクラスかなにかのスープと交換して、ついでにパンをもりもり盛ってくれたのでようやく監督の表情が明るくなる(スープうまい、だそうでそれは重畳)。
さてフィンエアーはマリメッコ押しでした
フィンエアーは相変わらず景気よくワインを配ってくれるので少し多めに貰って爆睡していたら「あと2時間くらいです」てなことで朦朧としたままの頭でヘルシンキに到着する。2年前、初めてポルノ映画祭に来るために乗ったのでこの空港は2度目。イッセイくんはヨーロッパ自体が初めてなのででは、とムーミンショップ(グッズはなかなか可愛いがぼったくり値段なので注意が必要である)にご案内する。乗り換え時間は2時間しかないので入国審査(フィンランドはシェンゲン圏なのでここで入国)に並んだりしていたらあっという間に搭乗時間。雨のヘルシンキを小さいジェット機で出発する。現地は午後5時、この時点で日本は翌日の深夜零時を越えている。2時間くらいのフライトで夕暮れを追いかけながらベルリン、テーゲル空港に到着した。毎回「今回が最後のテーゲルかねえ」と言いながらベルリンを発って来たというのに何で未だにテーゲルに着くのか。
あとはスーツケースを引き取るだけでゲートの向こうはすぐ出口である。イマイズミコーイチは既に迎えの人を見つけたらしい。全員が荷物を引き取ると(今回はピッキングされてなかった)、大柄なヒゲのおにいさんが僕らの名前を書いたフリップを持って待っていてくれました。実は昨日のリョータくん出迎えの時に気を利かせたのか何なのか、彼の名字を漢字でも書いた(そして思い切り間違った)フリップを持っていたのを僕らは知っていたので果たしてどんな漢字表記だろう、と内心楽しみにしていたのだが3人分はスペースが無かったのかローマ字表示だけで肩透かしでした。そんな事はどうでもいいのですが彼、マーティンは「では行きましょう」とすたすた階上の駐車場に向かい、自分らは一服させてもらってから車に乗り込む。「今日は恐ろしく渋滞していて」とマーティンは言うのだが東京の感覚からするとそうですか、という程度の交通量。でも普段ならもっと早く着くらしい。サービスかも知れないけどマーティンは戦勝記念塔やブランデンブルグ門やポツダム広場(さすがになつかしい)などを通るルートで走ってくれて、名所観光の予定などを全く入れていない自分らは「これでいっか、しかも夜景だし」と写真をパチパチ撮って「観光、終了」。さて西から東へ、そして南下して劇場近くの宿に着きました。この時点で日本は翌日の午前4時くらい。
ぶれてますが
「今週は妙に暖かいよ、異常気象だと思う」とマーティンが言うのでそうだね、東京の装備で全然大丈夫だし、ちょっと拍子抜けるけど極寒よりはいいのでボーナスと思う事にする。さて「宿」は映画館の本当に近くで自分とイマイズミコーイチは過去にきっと何度も前を通った事があるはずの場所にある。事前にユルゲンは「今回はホテルではなく個人的にオーガナイズしているアパートメントに泊まってもらう事になるのだがいいか」とメールして来ていたのでてっきりジャーマンヤリ部屋かと思っていましたがそうではなく、「友人が」「個人で借りてる」「部屋」を提供してくれるという事のようでした。大通りから一本入った住宅街(暗い)を2ブロック過ぎて車が止まり、通りに面したほの明るい部屋は何かギャラリーみたいだなあ、と思ってマーティンを先頭にずんずん入ると、カーテン越しの向こうの部屋でリョータくんが待っていてくれました。奥からは更に坊主頭のでかい外人がにこやかに出て来たので誰だろ、と思いながらご挨拶して、さて今夜はこれからオープニングフィルムを観るので割とすぐに劇場に行かなくてはいけません。
マーティンは車を置くので何処かへ行き、でかい外人(しかしあなたはどなた)もこれまた帰って行ったので4人で劇場に向かう。ドイツに来た、などと言う実感まるで無しなのでイッセイくんに「どう?」と漠然とした感想を求めてみましたが「う〜ん…どうでしょう」という返事でやはり皆そんな感じのようでした。コットブッサーダムまで出て、もうここからは知ってる道。アンペルマンの信号を渡って劇場に「戻って来た」よ。階段を上がった劇場はあんまり変わってなくて嬉しい。混雑する中を映画祭ブースのある映画館のラウンジに向かうとブースにはスタッフのクラウスが居た。ハロー、来たよ〜と抱き合ってからゲストパスなどをもらい、こちらは上映用ディスクやら土産の羊羹(とらや)を渡してその場でクラウスに喰わせたりこれまたアジア映画担当のヨハンを探して映画のチケットを貰ったり、などしているうちにオープニング作品の上映が始まりそうでチケットを見ると、劇場は「シアター4?」去年までは3までしかなかったはずだけど、と取り敢えず「シアター4は、あっち」とクラウスに指差された方に入ってみると去年は無かったスペースにシアターが出来ている。が、何と言うのか絶賛改装中みたいなコンクリ剥き出しの壁に簡易椅子が並んでいるだけのすごいシアターで、何でもいいけどチケット切られなかったね、と4人で並んでベンチに腰掛ける。オープニングの前にディレクターのユルゲンが登場してご挨拶(ここで初めて彼の姿を見た)、映画祭開催の口上…というよりは何かパブリシティに関する愚痴がかなりの部分を占めていたがまあ色々と苦労があるのであろうお疲れさま。今更ながらでチケットチェック(持ってますか、と言われて見せるだけ)があり、映画が始まった。
こんな映画がね
オープニング作品『KINK』はアメリカのSM専門ビデオレーベルを追ったドキュメンタリー、なので「英語字幕」はありません。ありませんが要は諸人こぞってヒューマンボディーの限界に挑戦している様をビデオに撮っている様子を更に撮っておりますので登場する各プロデューサーの細かいフィロソフィー部分を除けばまあ判るかな、しかし皆キッツイことやってんなあ、と自分はひとまず目下のところSMに性的な欲望を憶えないのでとにかく人体が切り刻まれてなければ大抵のものは楽しく観られますがその点は安心な作品でした。「胸を叩くときはこうだ」とか言いながらボスボス音を立てて演出する人、何やら高尚な事を言いながら左手は女優さんにつながっているマシーンを休まず動かしている人、逆さ吊りにされて股間にドリルをどががががが、と挿し込まれなから「THAAAANKYOUUUUXXX」とか絶叫している女優さんなど、まあ12時間フライトの後に観るもんでは絶対ありませんが割と平気、とか思っていたら右隣に座っていたイッセイくんが「ちょっと、出てますね」と席を発ってしまった。しまった流石にキツかったか、と気になりつつしっかり最後まで観てエンドクレジットは端折って自分もシアターを出る。イッセイくんはすぐに見つかり、「なんか、空気が良くなくてちょっと出たかった。映画も英語判んないし」とごめんごめん外の空気と煙草を吸いに行こうか、と劇場の外に出てからしばし休憩して戻り、そうだねここは空気が薄い、と思いつつ上映後のQ&Aも終わったらしいので劇場に戻る。やっとユルゲンと話ができた。「しかしイカしたシアターっすね」と言うとユルゲンは笑って「いやこれは仮設シアターなんだよ。劇場がトイレの改装をしたらお金が無くなっちゃって来年やるんだってさ」との事。このままでもいいような気もしますが…。ともあれ何とかここまで辿り着けてうれしい。劇場には旧知の人がちらほら居て、「パーティに行く?向こうで会おう」と言ってくれるのだが今夜はこれ以上は厳しいかな、と飯喰ってから帰る事にした。
飯。それはケバブ(以外の選択肢はほぼ無い)。この辺りはトルコ移民街なので酒屋に飯屋、ほぼターキッシュ経営である。そして安上がりにかつ野菜もちゃんと食べたい、と思えばドネルケバブ(焼き肉と大量のサラダを挟んだホットサンドみたいなもの)が一番なので迷わず一番近い店に入る。残念ながらこの店にはイマイズミコーイチも食えるチキンドネルは無かったが大抵ピザも売っているのでそれでいい、と4人で入ってああだこうだ言いながら注文する(サブウェイみたいな店先を想像されたし)。基本的にアルコールは無いのでトルコ名物ドリンクヨーグルト(ただし塩味)を買って食う。うまい。ちなみに日本で売ってるのの二回りくらいでかくて値段は半額くらいである。全員「たいへん、まんぞく」してこれまた近所の深夜営業している酒屋で瓶ビール(その場で栓を抜く)を買って路上で乾杯。500ml入り瓶でも200円くらいです。家に帰ろう、とでけでけ歩いて家に到着する。最初はよく見ていなかったが造りとしては二間続きの部屋と隣にバストイレ、更に奥にキッチンがある。通りから丸見えの部屋はバーカウンターがあるスペースで、オーナーのペトラ(彼女とは劇場で会えた)がゆくゆくはギャラリーにするために借りたとのこと。次の間はリビングでピアノやらベッドやらが雑然とあるが天井が高くて狭苦しい感じは無い。ベッドにソファーベッドに、あとマットレスが立てかけてあるのでそれを全部使えば5人は寝られる。今日は4人だけど。ペトラはここではなくて歩いて10分くらいのところに住んでるそうだ。壁に面した奥のベッドは自分とイマイズミコーイチ、マットレスを引いてリョータくんとイッセイくんが寝る事に決めてめいめいおやすみなさい、懸案のWiFiは繋がるんだけど非常に電波が弱くて(しかも2Gだよ)、まあいいや明日電波探しの旅に出よう。
室内、まだ空間の使い方がいまいちこなれてない
2013.1023 出国
2013.1024 『ラフレシア』上映
2013.1025 『誕生日』上映
2013.1026 『盗撮リポート:陰写!』上映
2013.1027 『すべすべの秘法』上映
2013.1028 おまけ1
2013.1029 おまけ2
2013.1030 帰国