2013.1024 Donnerstag
到着→そのままSM映画という前夜明けの自分らは流石に昼くらいまで寝ていたが、目覚めるとイッセイくんとリョータくんは起きていた。ややあってリョータくんは元気よく何処かへ出かけて行ってしまい、自分は改めて部屋を見渡す。自分らが寝泊まりしている部屋は小さい窓が中庭に向いて空いているだけなので、昼間でも電灯が必要である。そしてこの物件は改装前、というか改装中であるらしく至る所がアンダーコンストラクションでペトラ直筆の「注意書き」がそこら中に貼付けてある。シャワーを浴びようとバスルームに入ると「タイルがまだ完全に固まっておらず、かつ微細なひび割れが出てしまっているためシャワーを長時間浴びせないで」などとなかなか上級者向けな指示が書いてあり、その他いろいろありましたが何とか体を洗って路上で一服したのち、向かいのパン屋「Brezel Company Berlin」へ朝飯を食いに行く。ここは去年見つけたパン屋でケーキがたいへんうまいのだが飯になりそうなものもあったはず、と入るとバゲットサンドとかラップとかあるので中身は何かなあ、としげしげ眺めているとおねいさんが説明してくれる。じゃあそのビーフのラップとダージリンくらはい im haus で、と注文して奥の席に陣取る。イッセイくんは自分のと違うラップ、イマイズミコーイチは巨大なシュークリームの如き甘いヤツを買っていた。あっという間に食ってしまい手持ち無沙汰なので持ってたiPhoneを取り出すとどうやらWiFiがあるらしいので聞いてみると3人分のパスワードをくれた、のだが残る二人は端末を持って来てないので「ちょっと、取ってくる」と言って出て行ったものの全然戻って来ない。まさか迷子なんてね、と思いながら待っているとかなりして帰って来て「やられた、鍵が…」と呟いている。訊くとドアはオートロックなので扉を閉めただけで開かなくはなるのだが、ちゃんと鍵で施錠しないと次に開ける時に鍵を何度回しても開かないので一旦逆方向に回らなくなるまでやらないといけないらしかった。
ぐーてんもーげん
やっと落ち着いたので今日の予定を何となく話し合う。イマイズミコーイチは3時前からの『FUN PORN』短編集を観たいと言う。イッセイくんは映画はいいや、ということなのだが夕方からの上映一発目『ラフレシア』は観るというのでチケットを取りに劇場に向かう。ゲストパスを見せれば翌日までの空席ありチケットはもらえる。発券してイマイズミコーイチはシアターへ、自分は携帯のSIMを買いにヘルマンプラッツのデパートに行く事にする。イッセイくんは「公園と、あとスーパーマーケットに行きたい」と漠然とした目的地があるようで地図で当りを付けているとの事。「でもその携帯屋をちょっと見たい」と言うのでその「公園」とは逆方向だけど、と2人で向かう。今日はいい天気で、やっぱりあんまり寒くない。目指すデパート「Karstadt」に入って店を探す。地階なのか一階なのかで手こずるが途中ばかでかい地下食品コーナーがあったので、ややちゃんとしたお菓子土産とかはここでいいかもね、と話す。やたら時間が掛かってしまったが「T-mobile」の携帯ショップは見つかった。まあ日本のとそんなに違うか、と言うとそうでもなく何となく勝手は判る。イッセイくんは「見た」とのことでここでさよならしてまた後でね、とこの人は初ヨーロッパで英語もあんま話せないのにいきなり単独行動でも全く心配な感じがしないのがいいところである。さて、
【ここからしばらく超どうでもいいドイツのインターネット&モバイル情報なので飛ばして構いません:2】
我が邦の携帯業界は世界的に見て若干特殊で、というか要は基本端末にはSIMロックが掛かっているのでわざわざ解除しないと日本で使っているのを海外に持ってって現地のプリペイドSIMを挿しても通信が出来ない。のでローミングになるわけだがどう考えてもこれは高い。日本と同じ番号が使える(日本からの電話が受けられる)というのも自分には別に大したメリットではないし何より一番連絡を取りたい現地の知り合いに国際電話を架けさせる事にもなるのであんまり気軽に使えない。なのでSIMロックの掛かっていないスマートフォンを用意し、下調べをしてドイツではT-Mobile(日本で言うとドコモみたいな感じらしい)が一番安定しているらしいというところまでは判ったので試してみる事にした。プリペイドSIMにはいくつか種類があるのだが音声通話+SMS+データ通信がセットになった「Xtra Triple」だと9.99ユーロにボーナスで15ユーロ付いてくるのでチャージしなくても差引5ユーロ分くらい使えるようだ。音声通話は凄く安いし長電話しようもないのでまあ大丈夫だし、制限はあるもののデータ通信は込み(従量制ではない)なのでこれも大丈夫。
【ここまで】
これを使いたいわけです、ここでね。
先客が数名いるので何となくその後ろに立って待つ。椅子が2つあるが後から来たおばさまが座ってしまった。おばさまは自分をチラ、と見るとドイツ語で何やら話かけて来たが「あなたの順番はもう来た?」みたいな事だろうと勝手に解釈して日本語で「あ、まだですけど大丈夫」と全く意味のない返事をする。微妙に飛ばされたような気がするが構わず手が空いたっぽい店員さんに「Xtra Tripleを自分のスマホにつっこみたい」と伝えて「Unlock?」「Yes.」とここまではスムーズだったが現住所を、というところでつまづく(紙に書いたものを持って来てなかった)。郵便番号は?と聞かれるが通り名のスペルさえもうろ覚えなので当てずっぽうで「レナウシュトラーセ」と言ってみても通じないので(実は「リーナウ」が正しい発音に近かった事が相当あとになって判明するのだがこの時はそんな事は知らず)手をぶんぶん振り回して「とにかく、この近く」と主張すると諦めたのか何となく住所確認は無かったようなことになり、パスポートを出して手続きをして「ここにサインを」と言われた紙には3カ所の空欄があったので全てにサインすると真ん中のは店員さんのサイン欄だったらしく「ああ、全部じゃないんです出し直しますね」とやり直し、今度は彼が先に署名してから寄越したので上下2カ所に署名する。アクティベートはしてくれたもののSIMカードの入ったパッケージをそのまま渡してくるので「ここで試していい?」と動作確認をする。パキパキパキ、とカードをマイクロサイズまで折って携帯に入れ、再起動して開通…のはずがおやおやネットが繋がらない。電話とSNSはできるようなのだが肝心のデータ通信が出来ないようではスマートフォンにした意味がありません。このおにいさんは新人なのか事あるごとに他の人に聞いているが解決しない、のでふと日本で試験的に入れてみていたb-mobileのデータ通信SIMの時はAPN設定してた事を思い出し、そこを確認してみた。設定はまだ残っているけどいずれにせよこの設定はもう使わないので削除して、みたらいきなり繋がった。T-Mobileの設定は入れなくても勝手に入るようでした。ああよかった、と2人で疲れた感じで笑って念のため最低金額をチャージして、とここまでこぎ着けてクレジットカードの読み取りにエラーが出るわレジの紙が無くなるわでいちいち詰まるのだがもういい、待ちます。結局一時間くらいかかってしまったので最初は「付き合おうか?」と言ってくれてたイマイズミコーイチを連れて来なくてよかった、と思いました。
もうこれでどこでも繋がるので大抵の事は大丈夫、と非常に偉そうな気分のまま劇場に戻る。テストとして初めてベルリンに来た時にアテンドしてくれたソフィーに電話してみる。幸いつながって元気そうだ。会おうね、と電話を切ってしばらくするとイマイズミコーイチが出て来たので一緒にラウンジに行ってクラウスに昨日渡した上映素材の事を確認する。「DVDは問題無し、バックアップ用のHDの方は入っているファイルが大きすぎるため確認&変換中」との事でひとまず上映は出来るようだ。少し時間があるので一旦宿に戻りちょっと寝て、この後の上映の「予習」をする。今日から3日間、1日1本のペースでイマイズミコーイチが過去に出演した佐藤寿保監督のピンク映画を上映するのでピンク映画及び佐藤監督についてざっとまとめて、それを頭の中で英語に直す(通訳さんいませんので非常に役不足ながらわたくしがやります)。別段難しい事は無いのだけど必ず「この作品は佐藤監督のXX本目の映画で自分が出演した佐藤作品としてはX本目…」という風に必ず入るので数字が並んだ時に一発で判りやすく説明するにはどうしたらいいかなあ、とちょっと悩んで(眠くなってくる)。しばらくするとイッセイくんが戻って来た。公園行けた?と訊くと「それが…何か辿り着けなかった」との事でしたがもう一つの目的地であるスーパーには行けた(でも買わないでゲートを出る口が見つからなくて買い物してしまった、とのこと)ようだったのでまずは無事に戻って来られたのを善しとする。さてインターネットは日本で借りたルーターも自分の携帯も、リビングだと電波が弱く入り口付近に置くとアンテナ1本ながらも3Gを摑む。3Gだと格段にすいすいつながるのでルーターはこの辺に置いといた方が良さそうだ。メッセンジャーによると本日到着予定のひろさんは成田→ヘルシンキと順調に駒を進めている模様、リョータくんも書き込んでいるのでどこかにいるらしいが詳細不明。さてもうすぐ時間なので3人で劇場に向かう事にする。
私が2人ほどおりますが、キューアンドエーやっております。(イッセイくん撮影)
一番前の席に座る。客席の埋まり具合は7割くらいかな、本日のMCはユルゲン大先生である。上映前に簡単な紹介と上映後にQ&Aがあります、という告知をしたのち『ラフレシア(1995)』の上映が始まる。これは海外で発売されているDVDでの上映のはずだが画質があんまり良くないなあ、と去年『家族コンプリート』を東京で上映した時に一度シークレット作品として併映した事があったので思い出しながら観る。今回上映する3本の中では一番キャッチーと言うか陰惨さが少ない作品なので観やすいかも、とイマイズミコーイチは言っていたが確かに幾度かの箇所で笑いが起きていた。上映終了、ユルゲンに呼び込まれる。イッセイくんには冒頭だけ写真を撮ってもらって、もうすぐ宿に着くひろさんを向かえるべく戻ってもらうことになっている。まずはユルゲンが質問をする。主に欧米のポルノ映画との作風の違いについて、というところに関心があるようだ。そこでさっき作った原稿を参考にピンク映画の歴史やらを絡めつつ現在「ピンク映画」はどのような状況になっているのかを説明する。いわゆるプログラム・ピクチャーなので決まり事さえ守れば作家性を発揮しやすいという事なのだけれど、そこがうまく伝わったかどうか。何とか終えて劇場の外に出るとクラウスが「あなたのとこのアクターが到着した」と言うのでひろさんだ、とラウンジに向かう。早いな、と思って探すとひろさんがスーツケースごと可愛らしい置物のようになってビールなど呑んでいるのであれイッセイくんはどうしたんだろ、と側にいたマーティンに聞くと「アパートに行ったけど誰も居なかったから連れて来た」とのことでどうも、入れ違いだったらしい。ともあれ長旅お疲れさまでした、とビールで乾杯しているとイッセイくんも戻って来た。荷物置かなくちゃだし、ひとまず宿に戻る事にする。
宿に戻る道すがらイマイズミコーイチが「しかしだな、主演女優(リョータくん)が監督出演作の上映に立ち会わずにどこかをほっつき歩いているというのはどういう事だ$&(')JHI)UWP#0)=)0A=#43278)'()」といきなり言い出し、今頃そんな事言ったって来て欲しかったのなら朝に予定を聞いた時に18時までには劇場に来いオラ、って言えば良かったじゃない何で今更、と反論すると「いや、何か急にムラムラと怒りが」といずれにせよそれは今どうよとか言った所でどう仕様もないものですよ、と若干険悪になりながら宿に入ると主演女優くんは戻って来ていてこれでやっと5人揃った。ちょっと落ち着いてから今夜の予定を話し合う。23時からの映画を観るつもりでチケットは取ってあるのだがひろさんはお疲れでしょうからお任せします、と言うと「じゃスキップで」ということでそれまでまだ時間があるからATM行ってお金を引き出して、それからご飯食べましょうという事になりややあって出発する。劇場を越えたとこにあるいつも使っている銀行でキャッシングして(何故かひろさんのカードが悉くリジェクトされて最後の一枚だけ通った)から逆方向に戻って劇場を通り過ぎ、昨夜のケバブ屋のもう少し先にチキンドネルがあったのを昼間に確認していたのでそこに入る。昨日のよりもっと広くてレストラン、みたいな感じだけど注文方法は大体おんなしなので大方はケバブかラップ巻きを頼んで「実はあんまり腹減ってない」というひろさんはスープと挽き肉入りコロッケみたいなのを頼んで食う旨い。食ったのち隣の酒屋でビールを買ってまた(ただの呑んだくれ集団である)。ひろさんを宿に送り届けてから4人で映画に向かう。
まりまりたべております。
今夜の映画は『クルージング(公開は1980年)』である。言わずと知れた古典、なのだが自分は観た事がなく、明日は関連作『Interior. Leather Bar』の上映があるので予習として観ておく事にする(しかし字幕無しか…)。シアターは平日の深夜だというのに満席、チケット取っておいてよかった"Time for Crusing"。前口上としてプログラマーのマヌエラがMCやってるが異様にノリノリ(「さて何で女がベラベラ喋ってやがる、とお思いでしょうがベラベラベラ」)である。102分間の映画、始まる(寝ませんでしたよ)。いやいや、音楽も含めてなかなかトンチキな、愛すべき映画でした。往々にして歴史を作ってしまうのは得てしておっちょこちょいな人でありますし、が当時5歳未満だったはずの自分がもしこれを観たら(観ねえよ)どう思ったか知りませんが、そしてこの頃の白人ってぜんぜんかっこよくないのね(個人の感想です)、と散発的に思いつつ公開後33年、21世紀も13年くらい過ぎて『クルージング』を映画館で観れて良かったでした。明日の上映もこれでバッチリ、台詞さえ判れば。
さて後は帰って寝るだけ、ではあるのですがちょっと寄り道したいかな、でもビール買って路上呑みにはちと冷え込んで来たので何処か入ろうか部屋に戻る道沿いにはいくつか店もあったし、と歩きながら部屋に一番近い店に明かりが付いていたので「開いてる?」と聞いたら「あと20分くらいでクローズだ」との事なのでじゃあね、と止めて先の売店でビール買ってキッチンで呑もうかひろさん起こさないように、と話しているとさっきの店の人が向こうから大声で「そこのコーナーを右に曲がって左に曲がるとバーはまだいくつも開いている」と叫んでいる(いい人だ。または互助会精神とでも言うか)ので「ダンケ!」と手を振って言われた通り右に曲がって…とこれが何だかやけに長いなあ冗談だったのかな?と猜疑的に歩くとようやく明かりが見えて来てさっきの人の言っていたのはここら辺の事であろう、と最初に目に入った店に入る。「喫煙席は外ですか?」とおねいさんに聞くと「中でも喫えますよ」との返事だったので即決する。食べ物はもういいやビールだけで、とイマイズミコーイチがベルリナーの赤いやつ(ラズベリー風味、甘い)でイッセイくんが緑(何味だったか、でも飲み比べてイッセイくんが一言「おんなしじゃない?」と真実を言い当ててしまう)でリョータくんがわりかしプレーンなビール500mlで自分がそれに蜂蜜レモンを足したやつ(でも甘くはない)で乾杯、ぐだぐだと呑む。そして今後のワールドツアーの計画などを話した、ような気がする。
緑色のほう
さて大変良心的な価格(ビール代だけだった)のこのお店を出てもう少し、と2時まで開いてる売店でビールとパプリカ味のポテトチップス(うまい)を買ってようやくそろそろと部屋に戻る。しばし明日の予定を話し合ったのち寝る前に一服、と家の前に出て流石に夜は寒い、とか言い合っていると負けず劣らず酔っぱらったおっさんが2〜3人話かけて来て「煙草くれ」でまあいいか、と差し上げると(しかし誰かがあげたのがメンソールだったのだけど「俺を殺す気か」などと言い出し貰ったもんにケチを付けるのは人としてどうか)そのまま居残ってしまい、僕らももう寝たいので出来れば早めにご退去願いたいのだが皆さんなかなか腰が重く、仕方が無いので自分はカメラで月などを撮っていたらおっさん「俺らはギリシャから来た、そんなものを撮っていないで俺らを撮れ」と仰せになるので御座也に「せーの、チーズ」したら満足したようで帰っていかれました。さすがに「ここに住んでる」というのを知られない方がいいかな、と。やでやで寝ましょうか。
2013.1023 出国
2013.1024 『ラフレシア』上映
2013.1025 『誕生日』上映
2013.1026 『盗撮リポート:陰写!』上映
2013.1027 『すべすべの秘法』上映
2013.1028 おまけ1
2013.1029 おまけ2
2013.1030 帰国